でも何とか形にはなったと思うので、よければ見てやってください。
『お前のせいだ』
『お前に勇気がなかったからだ』
『お前が選択を間違えたからだ』
『お前は自分の手で、お前にとっての星を汚したのだ』
『
『ファンなんて名乗る資格はない』
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「ッ!!」
頭をガツンと殴られたような、胸をきつく締め付けられたような。そんな苦痛とともに意識が覚醒する。
時刻は6:45、窓の外は既に明るかった。
気分最悪の状態で、俺は身支度を始める。
――4月某日
――彼女とのファーストコンタクトから、既に数日が経過していた。
――――――
――――
――
「行ってきます」
中にいる両親に挨拶をしてから家を出る。
春の、まだ少し冷気を帯びた風が身にしみた。
(今日は何限だっけ)
身体計測と健康診断といった年度始めに行われるものは一通り終了し、学校では既に本格的な授業が開始していた。
と言っても、まだ初歩の段階だからそこまで難しくはない。数学に関しては因数分解とかそこらの範囲だ。
特に一緒に登校する相手がいる訳でもなく無言で通学路を歩いていく。
――――――
――――
――
「――――今日はここまでにしておきましょう。各自、復習をしておくように。それでは日直さん、挨拶をお願いします」
「きりーつ、礼」
『ありがとうございました』
二時限目の授業が終了する。午前の授業も既に折り返し地点だ。
春の日差しの気持ちよさにやられたのか、それとも単純に疲れてきている為なのか。先の授業では眠気と必死に格闘している生徒や、見事に眠気に敗北して顔を机に伏せている生徒が数名目に入った。
朝と昼の中間地点、昼食後に続いて眠気がその勢力を増す時間帯。
――そんな時間になっても、自分の後ろの席の少女は以前学校にその姿を見せていなかった。
「戸山さん、来ないねー。何かあったのかな」
「…………さぁ」
前のあの出来事から、俺はまともに戸山さんとは話していなかった。前後の席ということで特にペアを組んで何かをするということもなく、互いに干渉しない日々が続いている。
「『さぁ』ってお前………もういいや。それでお前、そろそろ部活は何入るか決めたか?」
「あー……その……」
「……早く決めろよ? 入らないなら入らないでも別にいいけどさ」
部活動。学生の大半が所属するであろうそれに対して、自分は頭を悩ませていた。
中学の頃は帰宅部だったので、高校に入っていきなりスポーツクラブに入るのは正直辛いものがある。しかし文化系クラブの中にも、自分の興味を引くものは特に無い。
(趣味という趣味がなかったことがここで祟るとは思っていなかった)
おそらく帰宅部になるだろうなと、心の中で呟いていたらガラガラっと少し慌てたように誰かが扉を開ける音がした。
「……はぁ……」
扉の前には先程まで話題に上がっていた少女、『戸山 香澄』その人がいた。彼女は小さく溜息を着くとこっちに歩いてくる。
すると自分の視線に気がついたのか、一瞬こっちをちらりと見た………が、すぐに視線を外された。
(声をかけようにも、どう話せばいいのかわからない。それに………)
一人、悶々としていると今度は黒板側から扉が開く音がした。入ってきたのは教師だ。時計を見ると既に授業開始まで1分を切っている。
(次は現国か)
あらかじめ机の中にしまっておいた教科書とノートを取り出す。先日から授業で取り扱っている小説のページを探す為に取り敢えず教科書を開いたそのページは、『恋はスタンプカードのようなものだと私は思う』と言った1文から始まっていた。
変な文章だな、と思いつつパラパラと教科書を捲ってお目当てのページを開ける。
それと同時に授業開始を知らせるチャイムが鳴り響いた。
(さぁて、つまらないつまらないお勉強の始まりだ)
日直の声も、心無しか気だるげなように思える。そんな声での『礼』という挨拶を合図にして、今ここに『50分授業』という名の長い拘束時間が再び幕を開けた。
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時は流れ、放課後。
長い授業を終えて、既にちらほら帰宅している生徒も見られた。
「修斗、部活動の用紙まだ提出できねーんだよな?」
「あぁ、もうしばらくは出せそうにない。悪いな」
「部活動見学は?」
「今日はパスで」
「スタ子、早!」
「ウケるんだけど」
桂と話していると自分達より少し離れたところからくすくすと、クラスの女子の笑う声が聞こえた。
彼女達の視線の先には、俯いたまま走り去る戸山さんが見えた。
「スタ子って、現国のアレのことか」
桂の言う、現国のアレ。それは現国の時に起こったちょっとした事件のことだ。
端的に言うと『戸山さんが音読した範囲が、来月やる予定の範囲のものだった』というもので、それを面白がった女子達がこうしてネタにしているのが今の現状である。
「おっかねぇなぁ女子達」
「………そうだな」
複雑な感情をなんとか飲み込んで返事をする。ただでさえこういうノリは嫌いなのに、その上対象が彼女と来た。『こんな所にいたくない』『ここから離れたい』という思いが自分の体を急がせる。
「悪い、桂。先に帰る」
「ん? おう、お疲れさん」
軽く挨拶を済ませ、早足で教室を出た。一刻も早く、ここから立ち去るために。
――――――
――――
――
「はぁ………」
溜息を着きながら帰り道を歩く。そこまで期待していなかったが、それ以上……いやこの場合それ以下か。取り敢えず、そんなレベルで面白くない高校生活を送っているんだ。溜息の一つくらいつきたくなる。
……自業自得の部分が大きいのは否定しないが。
――自分が何もしなかった故の結果だろう。何が『面白くない』だ。そんなことを言う権利が、お前にあるのか?
――分かっている。今頃笑えていたかもしれない彼女に、何も手を差し伸べなかったのは俺だ。
自分の中に燻る自己嫌悪は、消えることは無い。恐らく長い付き合いになるだろう。己の墓場へも連れていくことになるかもしれない。
――当然だ。それこそが臆病な自分に出来る数少ない罪への向き合い方だから。
朝の夢と学校での不愉快な出来事が、自分の心をブルーにしているのだろうか。最近は少しマシになってきていたのだが、今日は一段と後ろ向きな思考が止まらないようだ。
そんな風に思考の海に浸っていたから、自分はずっと顔を俯かせて歩いていた。
――今になって、この時のことを思い返すのならば。この日、この時間に、自分が
――人が俗に『運命』と呼称するモノ。あの時の俺はそれに出会ったのかもしれない。
「……? なんだこれ……マスキングテープ?」
――そう、顔を俯かせでもしない限り見つからないこの星と矢印が書いてあるマスキングテープの発見は。"下を向いている人間にだけ見つけられる星"との出会いは。
――俺と彼女の関係、その変革の始まりだったのだと思う。
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