Alchemiastory 【故郷を忘れた2人の秘密の冒険記】   作:rekko

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お久しぶりの友人達

先程席を立った女の子が、ちょこん、と目の前にいた。

肩につくかつかないかくらいの桜色の髪。輝く黄色い瞳、髪に隠れてチラリと見える赤い左目。驚きで一瞬何かわからなかったが、足元から頭まで順に見ていくと共にだんだん記憶が鮮明になってきた。

「レイ?」

「そうだよ。久しぶりすぎて忘れてた?」

苦笑いして顔を覗き込む彼女はサーヴァントのスカートをひらひらさせ、どこか嬉しそうだった。

「ホントに久しぶりだね。1人なの?」

レイ、もといレイティはとある国に、主人と2人で暮らしている。公国からは遠いので、1人で来ることはなさそうだ。と言うより、彼女は1人でも大丈夫かもしれないが主人の方がそうさせないと思う。

「いいえ?あそこにいるじゃない。見えない?」

彼女が手を伸ばした指の先には濃いめの桃色の綺麗な長髪を持つ人が、頬杖をついて優雅に座っていた。

コーヒーの入ったカップに手を伸ばした時、サラサラと髪が揺れ探していた顔が見えた。

目付きの悪い顔。間違いない。

「リッティ!!」

「れこちゃん!ラトちゃん!1年ぶりじゃないかしら!」

言葉遣いは女性のものであったが、その声は男性のものだった。しかし、少し高めの声であり、そこまで気に触るものではない。

先程見た目付きの悪い顔は消え、優しい笑顔がこちらを照らす。

私達に気づくなり両手をバッと広げ「こっちにおいで」と言わんばかりに手招きをする友人に、何も変わっていないようで安心していた私達。

が、嬉しさのあまり顔以外を見ていなかったので、違和感に気づいた瞬間、勢いよく走っていた足が急ブレーキをかけた。

「リッティ……服……どうした……?」

「この1年で何があったの……?!」

違和感の正体は彼……リーティンの服。

彼はちょっとした貴族の生まれであり、前にあった時はマントやら綺麗なローブやら貴族が身につけるにふさわしい衣服を着ていた。

だが今はどうだろう。明らか貴族のするような格好ではない青いジャージに身を包んだ彼を見て私達は開いた口が塞がらなかった。

「えっとね~。まあ色々あって……。まあまあ!!とりあえずお座りなさいよ!せっかく会えたんだから一緒にお食事したいわ~!」

何かを誤魔化すように左の頬に左手を当て、右手で手招きするというなんともおばちゃんのテンプレのような仕草をするリーティンに思わず苦笑いする。

「事情は後で話すからさ。とりあえずご飯食べよ?席空いてないでしょ」

「いいの?」

「もちろん」

「じゃあ、お言葉に甘えて」

席の問題はラトとレイティによって解消され、私はレイティのとなり、ラトはリーティンのとなりで、無事席につくことが出来た。

 

 

 

────で、何でリッティそんな格好してんの?」

欲していたゲルミアヒージョを頬張って私は聞く。ゲルミアヒージョはこれでもかという程青く、食欲をそそらないが口に入れると結構美味い。実際、私もそうだったし出された瞬間顔をしかめたレイティも今はその虜になっている。

「その……ちょっとやんちゃしたと言いますか住んでた所を失ったと言いますか……」

目を逸らしながらモゴモゴと話すリーティンの声は周りのガヤガヤとした音からなんとか聞こえる物だった。

レイティは申し訳なさそうに額に手を当てて静かに私達に言った。

「魔法の練習して家が吹き飛んだのよ」

「いや何してんの?」

「要するに逃げたと……」

「いやもうホント……私はいいけどレイちゃんに申し訳なくて……」

今、うなじに大きな岩でも乗っているかのように俯いているリーティンには漫画などでよく見るズーンとした描写が似合うだろう。

1人ジメジメとした空気を漂わせる中、周りは構わず騒いでいる。

「私はリーティン様に何があっても付いて行くと誓ったのですから私の心配はしなくてもいいのです。それよりも、家以外に貯金も飛んだのですからこれからどうするか考えなければ……」

流石はメイド。主人よりもしっかりしている。

お金も飛んでいるという事は、持っていた物以外に、着ていた服すらも売ることになったのだろう。なんとなくジャージの理由は察せた。

「じゃあレイの服は?その服も結構高価そうだけど……」

ラトが言ったレイティの服とは、サーヴァントGのセット。赤色の結構お高そうな物だった。

「流石に従者の服売る訳にも行かないでしょ。しかも女の子。てかレイちゃんにそんな事させてたまるか」

「とりあえずレイが大切ってのはわかった」

リーティンは真面目な顔でラトを見つめながら言った。ラトはその圧力に耐えられずもうやめろと謝っているがリーティンはまだまだ不満そうにラトをじっと見ていた。

「もう死ぬまでやってろ」

私が2人に呆れていると、レイティがハッとして話しかけてきた。

「2人は宿取ったの?この人数じゃもう満員になっててもおかしくないけど……」

「あ」

気づいた時には時既に遅し。急いでチップに聞きに行くもさっき埋まってしまったらしい。

レイティはなんとなくわかっていたのか対策を考えていてくれたらしい。するといい案を思いついたのか、私の手を掴んで少し嬉しそうに提案をした。

「ねえ、もし良かったら私達の家に泊まらない?滅びの村の1件を借りたの」

リーティンも直ぐに反応し、ラトを見ていた虚ろな目にだんだんと光が宿った。

パッと立ち上がりテキパキと用意をして私達を担いだ。

「いいじゃない!そうと決まったら早く帰るわよ!レイちゃんお会計お願い!」

「はい!」

「おい待て」

指示をしたリーティンも、それに従ったレイティも、目がキラキラしていた。

そして私達はウキウキのリーティンに担がれたまま滅びの村まで直行した。

 

 

 

 

 

 

 

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