Alchemiastory 【故郷を忘れた2人の秘密の冒険記】   作:rekko

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謎の宗教

救済者を呼ぶ男はすぐ近くにいた。

跪く男の前には白衣装の女がおり、男に優しい笑みを向けていた。

女は男に手をかざし、ゆっくりと瞼を閉じる。

その様子を私は遠くからじっと見ている。

「ねえ、置いていかないで」

ふと、後ろから怒り気味の低い声が私の肩に手を置いた。

一瞬警戒はしたものの、声の主は先程置いていってしまったラトだと遅れて気づく。

振り返って顔を見るとジト目でこちらを睨んでいる。そこそこお怒りのようだ。

「ごめんって。あ、ほら、あそこで不老不死の儀式してるよ」

「もう終わってるよ」

気を紛らわせるために言ったものの、ため息混じりにスパッと軽く返されてしまった。

急いであの2人の方を見ると、男はもう立ち上がっており、不老不死の説明を終えたあとだった。

「その力、淀むことなく美しき世界のため尽力して下さい。では……素晴らしき世界へようこそ」

震えた声で礼を何度も言う男に、私は嫌悪感を抱いた。『素晴らしき世界へようこそ』という女の言葉も、私にとってはゾッとするものだった。なるべく見つからずにこの場から去りたい。そんな私の願いは叶わなかった。

「あら、貴方も神の奇跡を賜りたいのですか?」

「いや別に」

この女の話など聞く気にもならない。あんな宗教地味たもの、興味もないし入りたくもない。信じていないものを無理やり信じさせられる、そんな感じだった。

「奇跡を受けると永遠の命を手に入れることができます。与えられた生は、神のため、世界のために尽くすことになります。その覚悟はありますか?」

「いや……僕達受ける気は無くて……」

「おや……貴方達は神の加護をお持ちのよう」

「よく分かりましたね」

「神の奇跡を頂戴するのは、旅が終わり加護が終わったあとでも遅くないでしょう」

私達が冒険者とわかっていただけかもしれないが、彼女は私達が神の加護を持っている事をすぐに見破った。

受ける気は無いと言ったのに、それでも神の奇跡とやらを勧めてくるとは相当受けて欲しいのだろうか。

突然、彼女は何かを掲げるように手をあげた。

見方によれば神に願うようにも、我が身を捧げるようにも見える。

「救いを求める人は沢山いるのです。人々を、1人でも多く救うのが神が私に与えてくださった宿命なのです」

そう言って彼女は一礼し、去っていった。

ラトの顔を見てみると、先程の不満げな表情はなかった。だが別に笑っているわけでもなかった。特に怒っている様子もなかったので多分、話しかけても大丈夫だろう。

「冒険終わったあとにだって。受けたい?」

「やだよ」

「だよね」

彼女は本当に人を不老不死にしているのだろうか。私は全く信じられなかった。仮に魔物に倒されて平気だったり、街で死んで生き返ったとしても、寿命で死ぬだろう。

正直、もう関わりたくは無いので今すぐこの村から去ろうと思った。

だが、やはり不老不死が本当なのか気になるところでもある。ここから去るか不老不死の正体を突き止めるか、どうしていいかわからず葛藤していると、

「あら、おふたりさん。いいところで会ったわね」

ツインテールをした元気な女の子が来た。

一応、冒険者としては先輩のエナだ。

「あいつらの話、聞いた?なんか、うさんくさくない?」

「おう、全く信じられんな」

「あいつは新興宗教の勧誘員。死ななくなる術を人々に施してるんだって言うけど本当の目的が全くわからないの」

「それってこの村の人以外も受けに来てたり?」

話が長くなりそうなので、オブジェの段差に座って話を続ける。

ラトの質問にエナはうん、と頷いた。

「そりゃ、確かに私達『冒険者』も神の加護を受けているから同じように死ぬことは無いけど……それとは全く別のものに見えるのよ」

「やっぱりあれはアイツらのそれっぽい魔法だったりするのかな……。宗教の為に洗脳してるとか?恐ろしいな」

寒気がして思わず二の腕をさすった。

それが本当だとすればなんとかしなければいけない。エナも同じような考えだったらしく、嫌な予感がするとの事。何かを情報が入り次第報告し合おうと約束し、エナはこの場を離れた。

ついでに、彼女はまたパートナーとはぐれたらしく、パートナーのマナを見つけたら言ってくれとも言われた。

エナが去った後、私達の周りには数秒の静寂が訪れた。

「とりあえずその辺歩こっか。この村がどんな所か見てみたいし」

「だね。歩いてたら何か見つかるかもだし。行こうか」

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