Alchemiastory 【故郷を忘れた2人の秘密の冒険記】   作:rekko

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ご飯

「ばあさん、しっかりしろばあさん」

「あら……あんた……」

フニエさんが倒れてベッドに寝かせて数分後、フニエさんは弱々しく目を開けた。

「ワシの面倒を見るのに無理をさせちまったな」

「いいえ……それよりも……じいさん、おなかはすいていないかい?」

眉を下げ申し訳なさそうに言う老父に、フニエさんは気にせず、優しい笑顔で聞いた。

今、なぜそんな事をきいたのか。唐突に聞いてきたので、その場にいた全員は一瞬わけがわからなかった。

「なんだ、突然に」

老父は戸惑いながらも聞いた。

まさか、自分の死を悟って……と縁起でもない事を考えてしまったが、そんなことは無かった。

「だってもうご飯の時間だよ」

「無理をするな!そんなのはワシが!」

「あら……あなたが元気だった時もあなたが食事を作ってくれた記憶なんて私にはないけどね?」

フニエさんはクスクスと笑いながら懐かしむように、でもすぐに消えそうな声で、言った。

辛いはずなのに、それを隠すように笑うフニエさんを見かねたエナが、痺れを切らして

「……ああ!もう!今日は寝てなさいよ!後で酒場から調達してあげるから!」

と、珍しく人を気遣った。

やはり我慢して笑っていたのか、だんだんと笑みが無くなっていき、フニエさんは俯いて

「……すまないね……」

と呟いた。

なんだ、エナも優しいとこあるんだなと関心して、完全に気が抜けていた時だった。

「あ!行くのは私じゃなくて……」

エナはそこまで言うと、純粋無垢な笑みを浮かべながらこちらに目線をやった。

「このふたりなので、お礼はそちらへどうぞ!」

「うぁっ?」

流れ的にはどう考えてもエナが行く流れだったはずなのに、予想の斜め上を行った発言に思わず間抜けた声が出る。

本人は悪気などは一切無いようだが、ちゃんとわかるように言って欲しかったというのはあったりする。

「レッコ……僕一人で行こうか?」

「ううん。私も行く」

「本当に……すまないね」

別にめんどくさいってわけじゃない。ただ、いきなり来たことにびっくりしただけだった。

でも、ラト達には「めんどくさい」と思われてしまったのか、少し反省した。

本当に少しだけ。

「いや、すみません大丈夫っす。行ってきます」

ちゃんとした謝罪はできず、ちょっともやもやとした感情を抱えながら酒場への道を走った。

さっきラトとゆっくり歩いた道は一瞬で過ぎ、私達が走った事で踏まれた花や草が次々と地に這い蹲る。

さっき時間をかけて目に焼き付けた風景は一瞬で変わった。

酒場は、すぐに着いた。

カランカランとなるドアを開けると、大きな体の男と、椅子とテーブルが並んでいるだけだった。

男のエプロンの左胸に、「ロック」と書かれた名札がある。彼はロックという名なのだろう。

ロックは険しい顔をして私達をじっと見つめる。

「冒険者がこんな田舎の酒場に何用だ?」

口を開いたかと思えば軽く皮肉を言われる。

冷やかしに来たとでも思われているのだろうか。

さっさと要件を言った方が早い。

説明が下手で丁寧な言葉が使えない私よりも、説明が上手で丁寧な言葉を使えるラトの方が、頑固そうな男に話を聞いてもらいやすかった。

「なに?フジのじいさんが元気になってフニエさんが倒れたって?」

なるほど。じいさんの方はフジという名前なのか。

一通り話すと、ロックは血相を変えて2人に渡すご飯をすぐに作り始めた。

最初は驚いていたロックだが、徐々に落ち着いてきたのか手元が焦ったようなドタバタした動きから、だんだんと丁寧な動きになっていった。

「そうか……ついに救済者の奇跡を受け入れたんだな」

ロックは呟くようにいった。

説明の理解が早かったり、「ついに」と言っているあたりあの老夫婦はロックと相当仲がよかったのだろう。

「この村は、あの救済者のおかげで、賑わいを取り戻した。本当に彼女が来てくれて、よかったよ」

手際よくクロケットをバスケットに入れながらロックはこの村について話してくれた。

だが、やはり不老不死という単語を受け入れることは難しかった。

不老不死で村が復興……なんだかわからないが、何故か、「嫌」という感情がそこにあった。

「と、できたぞ。このクロケットを届けてやってくれ。これなら歯の弱い年寄りも

食べられるし力もつくぞ!」

バスケットをラトに手渡し、軽く微笑むロック。単純な事に、こんな小さく口角を上げただけでも私はホッとしてしまう。それは、人が笑っているところが好きなラトも同じだろう。

その小さな微笑みに、お返しするかのように小さく笑い、

「ありがとうございます」

と、私達は酒場を出た。

自分の考えが単純すぎる事を少し気にしながらラトが持つクロケット入のバスケットを、少し懐かしむように眺めた。

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