Alchemiastory 【故郷を忘れた2人の秘密の冒険記】 作:rekko
「あ、れこちゃん!ラトちゃん!いらっしゃい!ちょっと待ってね。もう少しで消えるはずだから」
「リーティン様、これで10回目です。流石に一応魔王ではあるかと」
「魔王って倒す度に強くなるんでしょ?なんか同じように感じるのだけど」
私達の目の前に広がる光景は傍からみるとちょっとシュールな光景だと思う。ジャージを来たオネエが、片足で魔王と思われるネズミの頭をグリグリと踏んでいて、その側でメイドと思われる女の子が虫をつつくようにそのネズミの頭を人差し指でつついている。そのネズミというのは、まさしくあのトッポだった。レイティの発言からして、魔王ではあるようだが強くなったようには到底思えない。
というか、強くなっていないらしい。
滅びの村に来てリーティン達の家のドアを叩いたはいいものの、家から反応はなかった。
仕方なしに先にトッポを見に行こうと地下工場まで行ってみたら、この有様。そして現在に至る。
「この子、倒れてから消えるまで結構時間かかるのねぇ」
未だグリグリと頭を踏みつける彼女、もとい彼の姿は、見方によればトッポよりも魔王に見える。それもまあかなり性格の悪い魔王で。
「やめてあげなよ……。魔王といえど痛みは感じるだろうし何より可愛そうだよ……」
見ているだけで罪悪感を抱いたラトは、リーティンの悪魔のような行為を止めさせようとした。命を粗末に扱うことが嫌いな彼は、敵に対しても優しかった。つくづく甘いな、と思う。自分が生きていくための必要最低限の命は頂いても、八つ当たりで命を奪うなど意味の無い犠牲は彼は決してしない。それについては私も思う。だが
「リッティ!いいぞもっとやれ!」
トッポにそこそこな恨みのある私から見れば、もう少しやってもらってもいいと思った。それに「次は殴る」と言った時に私はラトに許可をもらっている。リーティンが代わりにやってくれているし、なんなら私よりも優しい方だろう。しかしそんなことは彼には関係なく、ぎこちない顔をした。
「リッティ……敵でも生きてる事には生きてるんだから……もう少し優しさというか労る気持ちというか……」
ラトは遠回しに情けをかけるように言った。だがその言葉遣いは私にはもちろん、リーティンにも届いていない。トッポの頭の上に踵をめり込ませ、つま先は左右交互に揺れている。やられていなくても「あ、痛そう」というのは言われなくともそこそこわかる。
「頭蓋骨を砕かない優しさ!」
「優しい!」
キランっという効果音がつきそうなほどのキメ顔で彼女、もとい彼は答えた。そんな漫才のような事をしている私達を見て、ラトはさらに不満そうな顔をした。
「優しくない。今すぐやめてあげて」
いつもより低めの声でそういうと、リーティンは渋々と足を退けた。その瞬間、トッポの体は黒い霧に包まれ消えていった。「あー……」と気まずそうな声を出すリーティンに、ラトは呆れため息をついた。
「そ、それより何か用があって来たんじゃないの?」
取り繕うように話題を変え、ラトの機嫌を少しでも良くしようとするも、
「いや、もう解決した」
と冷たく返される。リーティンはどうすればいいかわからず、チラリとレイティを見て助けを求めた。それに気づいたできるメイド、レイティは小さく「はぁ」とため息をついた。
「あのネズミの事なら心配しないで。1日1回復活するみたいだから、毎朝の運動にでも利用させてもらうわ。いいですよね、リーティン様」
彼女の提案に全力で首を縦に振るリーティン。疑問形でなかったあたり決定された事と受け取っていいだろう。この2人、というよりもこのメイドがいればトッポの事は心配いらないだろう。それに私達と比べて彼らは強い。おっちょこちょいとはいえ家を魔法で吹き飛ばした。この2人なら問題はないだろう。
「今日はお昼後の運動になっちゃったけど明日からは朝ご飯の後にでも運動しましょ」
「そういう事で、もう心配ないわ。2人はゆっくりシュリンガー公国でお散歩でもしてみたら?最近忙しかったでしょ」
レイティがフフッと微笑んで言った。確かにここ数日色んな頃に振り回されてあまり公国をゆっくり見れていたなかった。濡れ衣、裁判、不老不死。公国を観光しようと思うこともなかったし、ましてや公国を見て回るなんて暇、1秒たりともなかったのだ。せっかく提案してくれたのだ。たまには2人でゆっくりしよう。
「それもそうだね。レッコ、市場でも見に行こうか?」
ラトもこうして誘ってくれている。彼にはいつも無理をさせている気がする。私が無理に強いモンスターに戦いを挑んで死ねば、彼は一緒に倒れるかもう無い体力を死にものぐるいで使って逃げて教会まで来たり。たまには、休んでもらわないと。
「うん。夜ご飯まで公国観光しよう。リッティ、レイ、ありがとう!」
「またお礼しに来るね!」
2人にお礼を言い、私達は滅びの村を後にした。