Alchemiastory 【故郷を忘れた2人の秘密の冒険記】 作:rekko
賢者石。何気なく集めていたらいつの間にか袋に入っていた不思議な石。この石がどんな物か、魔物の女の子に教えて貰ったが忘れてしまった。一つ一つはとても小さく、基本は手のひらにも満たない小さなひとつの石が100個の賢者石の集まりとなっている。これを30個、手に持ち魔力を送るのだ。
「えっと……賢者石を3000って多いな……これを……わっすごい!1つになったよ!!」
「見て!石の中になんか見える!」
3000個の集まりとなり、1つになった賢者石は形はあまり変わらないものの、片手いっぱいの大きさまで大きくなった。その中にはぼやっとだが、魔物の姿が2体見える。ラトが魔力を送ると、だんだんとはっきり見えてきて、ついに姿が見えた時は2人とも驚いた。
「あ、この子って魔物ちゃん!?」
「もう一体はゲルミだ!」
何度か出会った魔物の女の子。賢者石について教えてくれた魔物の女の子。魔物ちゃん。その子が何故賢者石の中にいるのか。2人は不思議でたまらなかった。だが必要な分の魔力は送りきったので、魔物ちゃんはその場に留まることはなく、ゲルミを持っている杖で叩き消した。
「なんかレッコみたいな戦い方だね……」
「私ここまで殺伐としてない」
「あ、オークだ」
「聞いてる?」
レッコの文句をスルーし、続けて賢者石を覗くと次はオークが現れた。魔物ちゃんは、変わらずオークも一撃で倒した。その後だった。
オークが消えた後、何と見たことも無いドラゴンが現れたのだ。
「え!?何これ!見たことないよ!」
「魔物ちゃんこれ大丈夫なのか!?危ないって!」
2人は騒ぐがそれが魔物ちゃんに届いているはずも無く、魔物ちゃんはいとも簡単にドラゴンを倒した。呆気なく光の粒となったドラゴンに2人は驚くも、いつもの魔物と同じようにその場所に宝箱が出現した。宝箱が開いた瞬間、賢者石は弾け飛び11個の欠片になった。武器や防具、アクセなど計11個のアイテムに欠片は変化し、2人の目の前に並んだ。
「えーっと……。これは帽子かな、んでこれは剣……レッコ剣使ったら?」
「使いたいのは山々なんだけど杖の方が強いんだよなぁ……。でもクリスタルみたいでかっこいいな……」
「だったら一応持っとく?あ、服だ。取っとこう。これは……アクセかな?サザンスターオウルだって」
「動物がアクセってお前……毛皮着てるセレブじゃないんだから……」
武器や防具を一つ一つ拾い上げては分別し、また拾い上げて分別しを繰り返し、やっと残り1つのサザンスターオウルを拾った時だった。突然サザンスターオウルがラトの手から羽ばたいて逃げ、ラトの頭に着地したかと思えばサイズが少し大きくなった。
「えっ!?どういう事!?」
「飛んだ……!デカくなった……!」
「吾輩は魔力を持つので自身の大きさを変えるなんぞ朝飯前である」
昔の人のような話し方でその鳥はレッコ達を見下している。驚きを隠せない2人の顔をじっくりと見て、フッと馬鹿にするように鼻で笑った。
「間抜けた面のヤツに召喚されたようだな。まあ仕方ない。おいそこの。吾輩は名がない。名を持つことにより更なる力を得られるのだ。名をつけよ」
どこまでも上からな鳥に、ラトは混乱しレッコは腹が立った。だがラトの上に居るため、掴みかかろうとしても飛ばれてお終い。ラトに被害が行く未来が珍しく予想出来た。いつもは考える事は苦手なレッコが、今回は珍しく脳みそを回した。ずっと自分を睨みつけるレッコにイライラしたのだろう。鳥はもう一度名付けを催促した。
「さあ早く名を」
「ボルシチ」
「は?」
鳥が言い終える前にレッコは名前を叩きつけるように言った。
「お前は今日からボルシチ。ほら立派な名前だろ」
「ウッソだろお前!?」
適当な名前をつけられた事により、サザンスターオウル、もといボルシチはレッコの鼻の先まで飛んできた。モフモフの翼でレッコの顔をがっちりホールドし、頬を足でキュッと掴んで離さない。頭が開放されたラトは、レッコの顔面に張り付いたボルシチを剥がそうとしたが、足の爪でレッコの顔が引っかかれることを恐れその場でオロオロするのみだった。
「おまっ、名前つけろとは言ったがもうちょいかっこいい名前つけるやろ!?なんやボルシチて!!しかもお前きっちり魔力まで送りやがって!ワイの名前ボルシチで決まってもうたやんけ!!どうしてくれんねん!!!」
先程の古臭い喋り方とは一変し、独特な喋り方でレッコに詰問し始めた。
「名前つけろっつったのはそっちだろ!」
「まさかそんな名前つけるとは思わんかったんや!」
「相手を見誤ったなこのクソオウル!!お前はずっとボルシチって名前を背負って生きるんだよ!!!」
「おまえぇ……!!!」
「ストップ!ストップ!落ち着いて!」
レッコとボルシチの言い争いは徐々にヒートアップしていく一方で、ラトが止めようとしても止まる気配を見せなかった。
顔と顔が密着していると言っても過言ではない体勢でよくあんなに喧嘩ができるものだ。
ラトは冷静に考えるとだんだん馬鹿らしく感じてきてしまった。
「もういいよ。死ぬまでやってれば……」
いつかレッコがラトとリーティンに言っていた言葉をそのままそっくり返してやり、ラトは桜の根元に腰掛けた。そこでやっとレッコはラトに見放されたことに気づいた。
「えっ……ごめ……ごめんもうやめる。ルーチェさんのとこ行って武器引き取ってもらお……?」
ついさっきの威勢のいい声とは一変し、少し弱々しい声で謝る。ボルシチはその様子に少し首を傾げたが、空気を読んで自分も何も言わなくなった。
「大丈夫。ごめんね。ルーチェさんのところに行こうか」
ラトは申し訳なさそうに笑って言う。ボルシチは再びラトの頭に乗り、先程のでかい態度ではなく少し優しい口調で
「お?下取りいくんか?」
とラトの顔を覗き込んだ。
「うん。僕達さっきガチャの存在を知って、今からその下取りに行くところだよ」
「そうか。新米冒険者やったんか」
「まだ冒険に出てそんなに経ってないし。分からないことだらけなんだよな」
ラトがおしりの土をパンパンと払って、さあ市場へ、と思った時だった。
「ところでお前、杖持っとるけどお前占星術士か?」
ボルシチがレッコの星夜銀漢杖をじっと見つめ聞いた。
「いや、幻術士だ。昔幻術を少し習ってたから」
「幻術士って短剣が1番力出しやすいんやなかったっけ?」
そう呟いても答えられるほどの手練の冒険者は周りにいなかった。ボルシチは「うーん」と少し唸ったあと、「そうや」と何か閃いたのか目を見開いた。
「お前杖使えるんやったら占星術もやってみぃひんか」
「レッコは杖使ってるけど物理型だよ!やめといた方がいい!幻術だって結局途中で逃げたらしいし!」
「幻術士だけで十分だ!占星術なんて習わん!早く市場行こうよねえ!!」
2人がいきなり声を張り上げたのでボルシチは思わず怯んだ。同時に当初の目的からかなり脱線していることに気づいたボルシチとラトは、この話は後でしようと話し合った。レッコはそんなのしなくていいと言ったが、「知識が増えたら強くなれるよ」と言われ仕方なく占星術の指導を受ける事にした。
市場では、ちゃんと武器を下取りしてもらい、錬金石を受け取ることもちゃんとできた。