Alchemiastory 【故郷を忘れた2人の秘密の冒険記】 作:rekko
酒場に入るとすぐ、赤いバンダナを巻いたガラの悪い商人と目があった。
商人は常に口角があがっており、こちらをみると軽々しく声をかけてきた。
「よお!そろそろ来る頃だと思ってたぜ!冒険者さんよ」
僕達が来ることをわかっていた時点ですでに怪しかった。人は見かけに寄らないとは言うが、この人は例外だと思う。
レッコは「グルかもしれない」と言っていたが、早速その可能性が高くなった。
「うちは公国にも採用される、一流の武器を取り揃えているのさ」
「へぇ……」
商人は自慢げに言う。
すると声のトーンが変わり、囁くように、
「必要なんだろ?!俺の武器が。無実を証明するために……」
と言った。
「なんで知って……まさか」
「おっと!仕入先は秘密だぜ?」
他の人に聞こえるとまずいのか、レッコの言葉に被せるように商人は言った。
「これは黙っておいた方がいいよ。余計な事言うと武器が貰えないかも」
「わかった」
商人に聞こえないように、静かに隣にいる短気なパートナーに呟く。
今回は快くわかってくれたようだ。
「わかりました。それで……武器は?」
僕が聞くと、商人は腕を組み、
「欲しければ1つ10万ゼル。全部で200万ゼルだ」
値段の数字ごとに人差し指、中指と立てていく。
「えっ」
僕達は同時に声が出た。
「レッコ、ちょっと」
レッコの肩を持ち、後ろを向いて少し身を縮める。
「今いくら持ってる?」
「5万ゼル……て、は?!買うつもり?!あっても無くてもバカ正直に買うわけないでしょ?!」
「しっ!もうちょっと声のボリューム落として」
自分達の少ないお金を見ながらコソコソしていると、商人が痺れをきらし、口を開いた。
「ん?なんだ?高いとでも言うのか?……あのな、俺は無理してお前らに売らなくてもいいんだ。どうせ国が買い取ってくれるんだからな」
「くそっ……」
レッコが悔しがっていると、商人は情けをかけるかのような事を言った。
「……ま、直ぐに払えとは言わねぇよ。支払いは後払いでもいいんだぜ?」
「けどどっちにしろ金はないんだけど」
商人は、まるで「わかってねぇな」と言うように、ニヤリとしながら首を振った。
レッコは理解出来ず首を傾げ僕を見るが、僕にも商人が考えてる事はわからない。
「褒美、とやらを貰えるんだろ?それを回してくれれば支払えるんじゃないのか?」
「あっ……」
商人はお金のことになると頭がよく回るのだろうか。
悪知恵なのか商人の脳なのかわからないが、その方法ならできるかもしれない。
「そろそろ、国にべったりの商売も潮時かなと思っててな。まあ、考えておいてくれ」
言う事だけ言って、商人は手をヒラヒラと振りながら酒場の奥の方に消えていった。
「一応、あのジジイに言っとく?」
「フランクさんね。一応言っておこうか……何となく結果は見えてるけど……」
どうせ行ったところで、武器が取り返せなかったから罰するとか言うのだろう。
「アイツは私達を犯人にしたいだけ。理由もあるはずだからつけ回すだけつけ回して尻尾掴めば……あとは勝てる」
だからほら、行くよ!と彼女は僕の手を掴んで酒場から出ようとする。
あまり気が乗らず、僕の足は動かなかったが、彼女の根気に負けてそのまま僕達は外に出た。
外に出るとすぐ、あまり見たくなかった人が立っていた。