Alchemiastory 【故郷を忘れた2人の秘密の冒険記】 作:rekko
「おいおっさん!!」
ラトの手を掴みながら勢いよくフランクにぶつかる。
「お、気をつけろ!」
威厳のある、いかにも兵士長というような表情と声でフランクはこちらを向いたが、私達とわかった時、表情が一気に緩み声も頼りなさそうな声になった。
「……なんだお前らか……。どうだ、武器は取り返せたか?」
「莫大な金を要求された。今の私たちには無理だ」
フランクはさっきとは違い、「へぇ、そうだったのか」というような表情だった。
つまり……とフランクが口を開いた。
「無理だったみたいだな。ならば、覚悟を決めることだな」
「ていうか真犯人のトッポは倒した、別にいいことじゃないの?」
国が買うとまずいのか知らないが、フランクは険しい顔で「いいことではないな」と言った。
やはり、怪しい。だが、なんの根拠も無しにそういうのは私が不利になってしまう。
「まぁ…お尋ね者になりたくなければ、王宮を訪ね、自ら処罰を受けに行くがいい」
勝利を確信したような様子で、フランクは酒場へと行ってしまった。
どしどしと歩くその後ろ姿はまるで王様のようだった。
「あれは絶対なんか企んでる。酒場行くぞ」
「えぇ……やっぱり?……て、あれ?」
ラトが俯いたとき、何かを見つけた。
ラトはそれを拾うと驚いたような声を出し、瞬時に顔を上げた。
「レッコ!これフランクさんの財布かも……。凄く重い。持ってみてよ」
少し興奮気味にラトは財布を差し出す。
仕方なしに持ってみると、それは私の予想を上回る物だった。
「確かに重い……。ていうかこれ使って武器買おうよ」
私の突然の提案に、ラトは一瞬「確かに」と納得したが 、すぐ首をぶんぶんとふり、「ダメだ」と否定した。
「それを取ったら本当に罰受けちゃうよ!?フランクさんに届けなきゃ!」
「でも返すためにはフランクさんに会わなきゃ行けないよねぇ。確かフランクさんは酒場に行ってたような気がするなぁ」
多分自分は、ここ一番ウザく、ドヤ顔をしてニコニコしているだろう。
ラトは、私への呆れ、酒場に行きたくない気持ち、不安、色んな感情がごちゃ混ぜになったのか、頭を抱えた。
その数秒後、「あっ」と何かを閃いたらしい。
「教会に届けようよ!」
「あんなのが教会に用事があると思う?。しかもそんな大金、教会において大丈夫?」
が、私が思った事をそのまま言うと、もう諦めたのか下を向き、ため息をついた。
「こういうのって論破って言うんだっけ?なんか違うか。ま、とりあえず酒場には行くからな」
諦めたラトは右手を私に差し出すだけで、後は何もしなかった。
引っ張れと申すか。
「ったく……ほら行くよ!」
ラトを引っ張り酒場に入る。また来たのか?という驚きの表情をするチップさんは気にせず、あたりを見渡す。
すると、奥の方に先程見たフランクがいた。
酒樽や荷物なんかで隠れて見えにくいが、もう1人居た。
赤いバンダナがチラリと姿を見せた。
「まさか……ラト、下向いてる場合じゃない、こっち来い!」
私の右手が掴んでいる彼の左腕は、力が抜けており、彼自身も脱力感が見てわかる状態だった。
そんな彼を無理矢理引っ張り、近くの酒樽の影に隠れる。
何かを喋っているようなので、注意して耳を済ませるとだんだん声が聞こえてきた。
「マルクよ。お主も悪よの」
「『ワル』か、悪くねぇ響きだ。だが、旦那程じゃねがな」
やはりあの二人はグルだったか。
こんな予想が当たって嬉しいとは到底思えない。
考えていたことが、テストが終わり暗記したものが全てなくなっていくかのように、頭から吐き出された。
「お前の買った武器を国が買う。それをまた盗ませて……」
「旦那……!声が大きい!」
体の力を抜いてたせいで、重要な情報を逃すところだった。
やはりコイツら、グルだった。
「おっと……少し酒が入るとな……」
「チッ……!」
仲間の危機感の無さに呆れ、怒りするマルクに、フランクは、にやけ顔こそ抜けていないが申し訳なさそうな顔でマルクに謝った。
「怒るな怒るな。これからもよろしく頼むぞ」
「旦那も尻尾掴まれないように気をつけな」
2人が不気味な笑みを浮かべながら約束を交わしその場を去ろうとした。
「あ、行っちゃうよ、そろそろ出れば?」
その時、ラトがやっとやる気を起こした。
「復活が遅い。これではっきりしたろ?アイツらが真犯人だ」
少し大袈裟にガタガタと音を立て、私達が樽の影から2人の前に姿を現すと、案の定、幽霊でも見たかのような反応をされた。
「お前ら……まさか、今の話……どこから聞いていた……?」
先程まで酒が入り真っ赤だったフランクが、みるみるうちに青ざめていく。
「残念ながら結構始めの方から聞いてたよばーか!」
「兵士長ともあろう人が何してんですか!」
「ダメだ旦那!こいつら捕まえて沈めようぜ」
いつもは私を止めてなだめるラトも、役職的な意味で怒っている。
そこそこ大きな声で色々言っているのに誰も気づいていないのは奇跡だろう。
これ以上続けるのもマズいと感じたのか、意外にもその流れを止めたのはフランクだった。
「まぁ、待て。街の中だ。事を荒立てて兵士を呼びたくない。どうするつもりだ。私たちを。この国の王、ドレイク大公に告発するか?」
「まあ普通ならそうしますよね」
「それも結構」
今の彼は、さっきまでの青ざめた顔ではなく、余裕のある顔をしていた。
酒のせいかはわからないが完全に調子に乗っている。
「だが、私はこの国で要職を務める身。小さな正義を振りかざして訴えても私の言うこととお前らの言うことと、どちらを大公陛下が信用してくれると思う?」
「旦那はムダに上っ面はいいからな。陛下からの信頼も厚いときた」
「上っ面がいいは余計だ」
冗談を交え、愉快そうに笑う2人だが、そこには自分の役職を存分に利用し、まさに勝ちを確信しているような態度も見えた。
自分の仕事は責任を持って全てこなすような性格を持つラトは、この二人を見てどう思ってるのだろうか。
横を見ると、予想通り嫌そうな顔をしていた。
その表情を見て、どういった考えを出したのかはわからないが、フランクは割に合わないような事を言った
「しかし、私は優しいんだ」
「はい?」
「私とこいつの話は忘れろ。そして立ち去れ。お前が生きる道はそれだけだ」
フランクは、マルクと私達を交互に見ながら言った。
この話をここで王が聞いていれば、なんと言っていただろうか。
厚く信頼していた者が、まさかこんなことをしていたと知れば、疑いながらも軽い刑を下すかもしれない。
いくら考えてもあまりいい答えが出てこない。
これ以上考えても無駄だ。
「殴るのは流石にやめてね」
「いやしねぇわ」
実際こいつを殴ったらまた罪が重なるだけだ。
仕方なしに、私達は酒場を立ち去った。