Alchemiastory 【故郷を忘れた2人の秘密の冒険記】 作:rekko
外にでると、どこからか陽気な鼻歌が聞こえた。
それは私達のように悩みを抱えているような者ではなく、今をとても楽しんでいるような者が歌っているようだった。
鼻歌はどんどん近づいてきて、私達の真ん前にまで来た。
「あれ?……あれあれぇ?」
おどけたような声の金髪の女の子。両サイドに三つ編みをしており、頭の上の大きなリボンとちょこんと見えるアホ毛は、彼女の性格を表しているようだ。
顔を見ると、どこか見覚えがあった。
「あなた達、前に国境沿いでシンシアちゃんを助けてくれた人達ですよねぇ。その節はお世話になったですぅ」
思い出した。メイドのミーナだ。シュリンガー公国に向かう途中、腹を痛めていたメイドを助けた。この子はその時に付き添っていた子だ。確か薬のレシピもくれたはずだ。
「おやおやぁ?何やらあまり気の晴れない顔つきですねぇ。困ったことがあるなら相談に乗りますよぅ」
ミーナは私とラトの顔をチラチラと不思議そうに見た後、言った。
「どうする?」
「まああっちが良いって言ってくれてるし……」
財布を持ったラトが不安そうな顔をする。
正直、会った時からどこか抜けているようで、脳天気なところがあると思っていて、あまり相談や難しい話が出来そうな子ではないとばかり思っていたが、彼女も国のメイド。
それにあっちから相談に乗ってくれると言っているのだ。国のメイドなら兵士長とも繋がりがありそうなので何か情報が聞けるかもしれない。
「実は……フランクさんの財布を拾って……」
「え?お財布ですかぁ!?フランク兵士長の!?」
「そうそう。でも今お城に行っても武器を盗んだ疑いで罰を食らうから……」
「届けると王様に罰を受けちゃうんです??……どういうことですかねぇ?それは尋常じゃない自体ですねぇ」
ミーナは驚きながらも私達の話を聞いてくれた。
彼女も彼女なりに考えてくれているらしく、少し悩むポーズをとったあと、閃いたように口を開いた。
「シンシアちゃんならどうにかしてくれるかもしれませんよぅ。後でお城に来てください!」
「ん?シンシアちゃんが?……て、ちょっと! 」
なぜシンシアちゃんなのかがよくわからないまま、ミーナはお城まで駆けて行ってしまった。
「追いかけよう。どうせお城に行くんだし損は無いよ」
「ん~……だな」
私達もミーナを追って城の近くまで走ったが、綺麗な大きな桜の木が2つ聳え立つ城の前には何故かマルクがいた。
「げ、マルク」
「げ、ってなんだ、げ、って」
マルクを見て思わず心の声が漏れてしまったが、マルクは特別嫌そうな顔をしているわけでもなかった。
むしろ、私が持っているフランクの財布を見て、「おっ!?」と目を輝かせた。
「お前ら随分と持ってるな?」
「あ、これはむぐっ」
「ん~??そうかな~??」
ここでフランクとバラしたらマルクはフランクチクるに決まってる。ここは知らない振りをするため、急いで事情を説明しようとしたラトの口を塞ぐ。
マルクは財布をまじまじと見た後、明るい顔で話し始めた。
「ふーん。こりゃ、いっちょ稼げるかもしれないな!さっきは随分とふっかけちまってすまなかったな。その金で、武器を売ってやってもいいぜ」
私は心の中でガッツポーズした。これでなんとかなる。
だが、ラトは機嫌の悪そうな顔をして、私とマルクを交互に見つめていた。
「なに躊躇してるんだよ。お前らが助かるためには俺にその金を渡して武器を受け取る。そしてお前らは武器を受け取って、城に行って褒美をもらう。それでいいじゃねぇか」
「ラト。今はこの話に乗っといた方がいいぞ。まあラトの性格上、納得はできないかもしれないけど褒美を受け取らないって選択肢もある。そこはラトが決めていいから」
「いや、いいよ。これで僕達の疑いは晴れるしフランクさんにも一泡吹かせれるかもしれないし」
ラトはこういう、人を騙したり何かを盗んだりする事が苦手だ。
だからこの話もあまり乗り気では無い。だが今回はフランクへの怒りが強いため、案外すんなりとOkされた。
私達の話を聞き、フランクの財布を受け取るとマルクは力強く頷いた。
「話は決まりだ。この財布は頂いておくぜ。城に着くくらいのタイミングで武器は届けに行ってやる」
「おっしゃ。んじゃよろしくお願いしま~す」
「よろしくお願いします」
マルクが急いで武器を取りに行ったと同時に、私達はさっきよりも落ち着いた、余裕がある状態で王の間へ向かった。