黒龍伝説 ~The Legend of Fatalis〜 作:ゼロん
一回これを間違えて投稿してしまった。テヘペロ。
ほんの一瞬だけど見た人いるかな……?
やべぇ。不安。
最終話前編です。
シュレイド城陥落の報せは大陸全土に広まった。
それが黒龍一頭によるものと知った人々は恐れおののいた。薄らぎつつあった自然の脅威を目の当たりにしたのだ。
一方、避難を完了したセシリアたち、最後の避難民は多くの犠牲を出しつつも遠い辺境の地で生き延びていた。
一旦は逃げようとする獲物を追いかけんとしたミラボレアスだが、シュレイドの騎士達が縄張りに入ったことを感知するや否や、すぐに城に戻った。
ミラボレアスの縄張り意識は他の古龍よりも強かった。
グリム達の進撃は無駄ではなかったのだ。
だが、王国を無くした王族に先は無い。
セシリアとその従者は、親を亡くし孤児となった子供たちのために小屋を立て、そこでグリム達の帰りを待った。
しかし、そこにシュレイドの騎士達の全滅の報が届く。
セシリアは人知れず泣いた。
それから彼女は生きているのか、死んでいるのかわからない毎日が続いた。
*****
シュレイドの滅び、これは皆知る歴史の表舞台。
だがここからは誰も知ることがない歴史の裏。
「────う! ────────団────! 団長!」
「……う」
「しっかりしてくれよ……ったく」
鉄くず同然の鎧を剥がされ、身体を持ち上げられる。
「……ルイス」
「あちこち痛くてしょうがねぇ」
俺は死んだのか。マルコムや他の奴らもみんないるのか?
「いねぇよボケ。まだ現世だ。残念だったな」
「そう、か……だが姫様はもう」
「死んだなんて確証がどこにある? 目の前で喰われるのを見たわけでもないんだろ」
……。俺だって信じたい。信じたいんだ。
「姫さんとの約束が守れそうにないなら、オレに約束を守らせろ。ここでアンタを見殺しにしたら、オレがあの世でマルコムにどやされる」
ルイスは俺の燃えて無くなった足を見る。
「とりあえずは義足だなぁ。ここを出るぞ。やっこさん、傷を癒すために寝やがったから、逃げるなら今しかねぇ」
俺はため息を吐いてルイスに身体を任せる。
これから……どこに帰ればいいんだろうな。セシリア。
*****
そろそろ……朝の日が昇る頃だ。
「かわいそうに……」
「セシリア様……あんなにやつれて……病気でもないのに死んでしまいそう」
死体のよう。
従者たちは私をそう呼ぶ。
半年前に落としてしまった腕輪をはめていた腕を見る。
「シュレイド陥落の報から半年……十年経ったように感じるわ……」
子供達もこの小屋での生活に慣れてきた。
心の傷はまだ癒えてはいないが。
「…………グリム」
私の心の傷もまた。
あの時から、シュレイド陥落の報から私の時間は止まった。
喉を通る食事の味も感じない。
せっかくついてきてくれたみんなが作ってくれたのに。
子供達の精一杯の笑顔も色あせて見える。
自分たちも辛いのに私を励まそうとしてくれるのに、私はそれに心からの笑顔を返せない。
何に対してもかつてのように喜びを感じることはない。
好きな花を見ても心が癒されることはない。好きな紅茶を飲んでいても、私の隣にはあの人がいない。一緒に笑ってくれるあの人は、もういない。
かの龍のことなど、もうどうでもいい。
「……大切な人に帰ってきてほしいだけなのに」
どうして私たちだけが生き残ってしまったのか。
勇敢に恐怖に立ち向かった者たちこそ、生き残るべきではないのか。
いつかは彼が帰ってくるかもしれない。
その時は一番に出迎えるために。
そんな淡い思いを抱いてこうして朝の日が昇るまで待つことは無駄なのだろうか。
「生きていたとしても、この場所がわかるはずもないわよね……」
いや、そもそも死んでいるのだろう。戻って来られるはずもない。
自嘲とも、諦めとも言える笑みをこぼしてカーテンを下ろそうとした直後。
「──────────あ、ぁぁ…………!!」
地平線に見えた人影に、私は言葉を忘れた。
寝間着であることもいとわず、無我夢中で外に走った。
素足でみっともなく子供のように。
「……おかえりなさい」
そして彼は、一瞬だけ驚いた顔をしたが。
割れた腕輪を差し出して、こう言った。
「ただいま」
腕輪を落としたこと……謝らなきゃ。
*****
これからシュレイドはどうなるのか。
ミラボレアスに人間はどう立ち向かえばいいのか。
銀色の騎士は問う。
今日は勝てなくても明日なら。
明日勝てなくても未来なら。
赤毛の姫はそう答えた。
*****
「……美味しいですね。紅茶。セシリアと……ここから見る景色と一緒に飲むお茶は」
「……えぇ。今まで飲んだ中で、きっと一番美味しいお茶ね。グリム」
二人は静かに、今日も笑っている。
いくら時を隔てようと、ずっと……ずっと。