黒龍伝説 ~The Legend of Fatalis〜 作:ゼロん
というコメントもあったので、今更ながら書いてみました。
モンハンライダーズシリーズでミラボレアスをライドしたい……そんな切望。
ワールドのミラボレアスの最高の演出を記念して。
フィギュア絶対買うぞぉぉ!
ざぁ、ざぁと草が風に吹かれて緑の波がざわめく。
風に揺られ、あいも変わらず美しい赤い毛も共に波打つ。
『ブモー……』
「よしよし、ふふふ……あなたは今日も元気ね」
そこにかつての王家の姿はない。
あるのはただ一人の赤毛の女。
「セシリアお姉ちゃん!」
「おねーちゃん!」
「はいはい、お姉ちゃんですよー! じゃ、今日もアプトノスちゃんにご飯をあげましょっか!」
災害の爪痕。両親を失った子供達。
けれど多くを失った赤毛の女ともに明日に希望をもって今日の喜びを唄う。
「────セシリア」
彼の声を聞いて太陽の笑みはさらに輝きを増す。足を失い、義足となったものの、本当に大事なものを守れた彼の顔は穏やかで。
「あっ、グリムお兄ちゃん!」
「お兄ちゃん!」
「マルク、ビスチェ。いい子にしてたか?」
『うん!』
二人の少年少女は満面の笑みを同時に浮かべる。
「他の子達は? 悪戯とかしてないかしら、グリム」
「みんな留守番してるよ。大丈夫。怪我人の身で出てきてる俺よりかはいい子だからな」
「あっ!! そうだグリム! あなたなんで出てきてるのよ! 武器まで持ち出して!」
思い出したようにセシリアはグリムの背中の剣を指差す。
「……やべ。い、いやお前のことが心配で……最近はランポスが大量発生してるって聞いて」
「言い訳無用! 私なら大丈夫だから。ほら、煙玉も回復薬も。念のため投げナイフも持ってるから!」
「よ、用意周到だな……」
「それに、ランポスの親玉なら、ルイスが討伐してくれたって言ってたじゃない」
「そういえばそうだったな……」
ルイスは現在、ハンターとしてギルドで働いている。最近ではグループを組んでリオレウスを討伐したらしい。
以前、飛龍の卵をお土産に持って帰ってきたときはリオレイアが飛んでこないかとヒヤヒヤしたものだ。
寺院で預かっている子供達と美味しく頂かせてもらったが。
「────そうだ。昨日あなたにお客さんが……」
「客?」
「ハンターギルドの人って言ってたけど……」
*****
「────外見の特徴について聞かせてもらえるかね?」
巨大な銅鑼を背景に竜人の男性が問いかける。
「長い尾に四本角。忘れもしない黄色の眼。全身は闇一色。翼は一対」
「ふむふむ……君が見た古龍種……モンスターの中で似通った特徴を持つものはいたかね?」
「……いいえ。もはやあれは種というものでは区切れぬものです。強いて言うなら、一部ラオシャンロンに似ていたかと」
「……そうか。……すまない」
「なぜ謝るのですか」
「……。忌々しいモンスター。その話をするだけでも腑が煮え繰り返る思いだろうに……本当にすまない……だが」
今まで誰も見たことのない完全な新種のモンスターの出現。それも文明を一つ滅ぼすほどの。
第三王女というのもあり、すでに死亡扱いともされているのか。セシリアはシュレイド王家ではなくなった。
今のシュレイドは見る影もなく、主城を失い都市を焼かれ。ミラボレアスが鎮座する王城の王家の金銀財宝は永遠に戻ることはない。
財政難となり、多くの資源を失って残った支城も。いずれは時の流れと共にシュレイドという国は滅ぶだろう。
「分かっています。……おそらくこれが、シュレイドの……騎士団団長の果たすべき最後の使命となるでしょう」
亡国の騎士団長グリム。彼が最後に果たすべき務め。それは口を出すのも憚れる禁忌の龍。
ミラボレアスの存在とその脅威を伝えること。
「本当ならあの龍はこの手で葬りたい。だが……」
「意地を張れないくらい、か」
あの龍は。五体満足でない状態の戦士が戦える相手ではない。歴戦の戦士であれ、生身の手足が一本でも欠けているだけで命取りになる。
義足や義手付きの状態で戦える相手ではない。
数多のモンスターを葬ってきたシュレイド騎士団は滅んだ。今、ミラボレアスの真の脅威を知るのは、その場で直に戦って生き延びたオレとルイス以外にいない。
「五体満足で最高の装備をもってしても……ルイスでは勝てないだろうな」
「なぜわかる?」
「────あいつの恐怖を。すでに心身ともに叩きつけられてるからだよ」
一瞬のうちで隣にいたやつが溶けて消えた。
瞬きをした一瞬で笑い合った仲間の一人が爆発した。
攻撃をしても。攻撃をしても。永遠と笑い余裕をもつあのモンスターに。あの悪夢を。
「……!」
「思い出すだけで、身体の震えが止まらない……」
足が震える。時々あの瞳に睨まれる夢を見る。
きっと一人なら発狂している。
「次にあの龍と相対した時。オレは間違いなく死ぬ。あの龍の恐怖を知ってしまっては。もう二度とあいつの前に立つことは許されない」
「……書紀くん」
竜人の男は隣にいた眼鏡の女に目を向ける。
「かの黒龍を、新たに禁忌種と認定。唯一の例外を除き、ハンターはこの龍への手出しを一切禁ずる」
「き、禁忌種……!?」
「名を出すのも憚られる……とてもではないが。今の我々の手には負えぬモンスター……自然災害そのものだ。……もうかの龍は生物の粋にはいない」
禁忌種。
災害のレベルが他の古龍の比較にならない。
そうハンターギルドが定めた瞬間である。
「……ミラボレアス」
「……なに?」
「その炎は万物を焼き、その翼は空を漆黒に染める。あいつの名は────」
────ミラボレアスだ。
*****
俺は未来に可能性を託した。
いつか俺のもつ情報が後世に降りかかるかもしれない災害に役立つことを祈って。
『────────ッッッッ!!!!』
城が焼ける。何もかもが溶けていく。
絶望と悲鳴を凝縮させたような、あの悪夢の鳴き声は消えない。
残響となって時々夢の中で響く。
あの瞳と口に揺らめく炎が。
俺に再び恐怖を思い出させて決して離さない。
あの恐怖は忘れることはない。
決して失せることはない。
だが────
「あっ、グリム! お勤めご苦労様っ!」
「まるで釈放されたみたく言うなよっ。マスターと話をしただけなんだからさ」
けど彼女と。彼女が大切にする人達の前に。
あの黒い龍が彼女の前にまた現れたのなら。
────彼女の笑顔を守るため、戦うだろう。
何度でも。何度でも。
これから先、小さいハンターギルドも徐々に規模を拡大させ人々の役に立つだろう。
狩人の時代がやってくる。
自然と共に生き、時に自然とぶつかる時代が。
おそらく自分ではない誰かがいずれあの龍とも相対する時が来る。
シュレイドの騎士達の戦い。
歴史には残ることのない戦い。
かの龍と相対する者には、かつての自分たちにもあったモノが必要となる。
それは、
「────────未来に。勇気の証あれ」
その者の名は ミラボレアス
その者の名は 宿命の戦い
その者の名は 避けられぬ死
喉あらば叫べ
耳あらば聞け
心あらば祈れ
ミラボレアス
天と地とを覆い尽くす
彼の者の名を
天と地とを覆い尽くす
彼の者の名を
彼の者の名を
彼の者に挑む人よ。
彼の者に相対するならば勇気を持て
自然を滅ぼすのではなく
自然と共に生きる覚悟を胸に
生きて語り継げ
彼は自然
彼は災害
彼は土を焼く者
鉄を溶かす者
水を煮立たす者
風を起こす者
木を薙ぐ者
炎を生み出す者
彼の者の名は
────────ミラボレアス