スキマを抜けると、少しだけ懐かしい景色が目に入る。
私と師匠が出会った雑木林、すでにぬらりひょんたちの死体は無くなっていた。
たぶん、野生動物たちに食べられてしまったのだろうか、あいつらを思い出すことはないだろうから。記憶の片隅にポイっと捨てておく。
血の匂いはしない代わりに、どうやら残りらしい骨の一部が転がっている。
それを見ても、なんとも思わない私は、やっぱり妖怪なのだな。と実感できる。
師匠もここの森を見つめ、思いふけっているようだ。
師匠が思いふけるときは、頭のアホ毛がゆったりと左右に揺れるのでよくわかるのである。
ルーミア様は、あらあらと言って笑っている。
「やあ、ルーマニアの旅はどうだったかい?」
私はその声を聴いて、その声の方向に素早くむく。
そこには、五日の死神さん・・・小野塚小町さんが、仰向けに寝転んでいた。
ついさっきまでいなかったはずなのだが・・・どうやら能力か何かで移動してきたのであろう。
・・・・・・何がとは言わないけど、大きい・・・
「まあ。懐かしい友人に会えたよ」
「そうかいそうかい、そりゃよかった。」
「それを言うために来たんじゃないだろ?」
お茶らける小町さんに師匠が少しだけ冷静に言う。
そう、おそらく小町さんは師匠が言っていたアダムの件についてきたのであろう。
小町さんも、気づいていたのかい。と、へらへらしていた顔を真顔へと豹変させた。
「まあ、そうだねぇ。あのアダムのやろぅがしゃしゃり出てきて、いまじゃイザナギ様とアダムがにらみ合ってらぁ」
「それ、妖怪は巻き込まれてないわよね?」
「安心しな、妖怪たちは巻き込まれていねぇぜ。宵闇さま」
「よく言うわ、元死神長。」
「何のことだか、あたしには見当もつかねぇや。ま、それで十王様たちの採決で申し訳ないんだけど残りは、”白玉楼”で過ごしてもらうよ?」
小町さんが、またへらへらとしだし、ぐにゃぐにゃの鎌を構えて振ると、いつの間にか私たちは、不思議なところに出ていた。
賽の河原のようだけど、その割には、大きな川はないし橋も見当たらない。
ここが、白玉楼なのだろうか。
「嬢ちゃん、ここは冥界だぜ?」
「めい・・・かい?」
「そう、冥界。裁定待ちの幽霊たちが最低まで暮らす幽霊の楽園・・・なのかねぇ?」
私が周りをきょろきょろとしていると、小町さんがそう教えてくれる。
優しい・・・胸も大きいけど!
そして、小町さんが戦闘で歩き出し、それをルーミア様、師匠、私の順番でついて行く。
「この冥界はね、死神たちの花見スポットでもあんだよ。」
「花見?冥界なのに花見があるんですか?」
私がそう聞くと、小町さんはああ、あるぞ。と言った。
なんでも、ここ冥界の春は、現界の終冬から初夏の間でその間に死神たちは有休をとりパーッと宴会をするらしい。でも、実際は地獄看守の鬼とか、冥界の幽霊とか、死神たちが好き勝手に集まって楽しむだけらしい。
そう聞いて、妄想してみると、冥界とは思えないような楽しさがありそうである。
「ま、あたしは有休ないんだけどね~。」
「え?ないんですか?」
「紫ちゃん、この人は昔大切な偉人の魂の回収の際に寝坊して間違えて悪霊化させて反省しながら仕事してるんだ」
「そうそう、確か名前は・・・」
「わーーっ!!わーーーっ!!!!その話はやめてくれぇ!」
小町さんが、大声を出してルーミア様の口をふさぐ。
たぶん、私に知られたくない秘密なのだろう。お姉さんぶりたいのかな?
「あたしの失敗談なんて誰が頼んだ!?」
「
「頼んだ覚えないよ!?あたし!?」
「
「そーなのだー・・・じゃないよ!まったくもう!!」
小町さんが、恥ずかしがりながらルーミア様にからかわれる
もしかして、二人には面識があったんだろうか・・・多分あったんだね。
私にはよくわからないけど、二人は楽しそうにしている。
しばらく歩くと、立派な門がみえてくる。
昔の・・・平安あたりにありそうな門構えで、とっても強固そうだった。
その門の前に、緑の服を着た老人が刀を二本帯刀しており目を瞑っていた。
瞑想しているのだろうか、未熟な私でもわかるほど隙が無い。
「よ、妖忌の旦那。相変わらずだね」
小町さんが声をかけると妖忌・・・多分このお爺さんの名前を呼ぶと。
お爺さんが、目を少し開けて私たちを確認する。小町さん、師匠、ルーミア様、そして私。
そして、何事もないかのように、入れとジェスチャーをして門を開ける。
小町さんは、ありゃりゃ。と小さく言った後黙ってその門を通った。
ルーミア様も通り、私と師匠がゆっくりとその門をくぐったのであった。
いよいよ、最後が近づいてきましたね・・・