師匠たちと一緒にあの門をくぐって、またしばらく歩くと、
上級貴族のお屋敷が見えてくる。
広い庭園、立派な屋敷、樹齢何百年を超えていそうな大きな枯れ樹。
私が、そこを見渡していると小町さんが私に近づいてきた。
「こういうところに入るのは初めてかい?嬢ちゃん」
「えっ、ええ。まあ」
小町さんは、私の隣に立つとあっちを見るように促す。
すると、そこには沢山の桜が植わっており、そこだけ冥界とは違う雰囲気を醸し出していた。
まるでそこだけ、春のように温かさを感じ生命力があふれていそうなのだ。
私は、その光景を見てこれが、師匠が求めている世界に似ているのかもしれないと思う。
「こいつは、冥界桜っつてな、この時期になると咲き誇るんだ。ほれ、あそこに・・・・・・ゲッ!?」
とある少女がこちらに向けて歩いてくる。
その少女を見ると、小町さんは焦ったように顔を青白くさせ無理があるのに私を陰に隠れた。
こちらに歩いてくる少女を私はよく観察すると、明らかに私以上・・・下手したら諏訪子様よりも強力な力を持つことが分かった。
そして、私の方向に殺気はむけられているが、本当に向けられているのは私に隠れている小町さんのようだ。
「小町・・・貴女は、”また”時間より数分遅れてましたね。」
「ちょっ、そりゃないっすよ!大変だったんですよ!?アダムの手下の・・・使徒でしたっけ!?あいつらから逃げつつ、ランダムで来る彼らを探し」
「言い訳無用!私直轄の死神なら、白黒はっきり特定させてから迎えに行きなさい!」
「ヒエーッ!?そんな殺生なー!?というか、知ってますよね!?私、アダムの手下と殺りあえるほどの力は」
「それは貴女がたるんでいるからです!大体ですね・・・」
小町さんは、その少女に私の影から引きづり出され、正座させられる。
まるで私が、空気かのように目の前で説教が始まったのであった・・・
3時間後・・・
「いいですね!これからは、しっかりと、さぼらず、働くこと!」
「へっ、へーい」
「なんですその返事は!?」
「サーイェッサー!!」
「ここは日本ですよ!」
「了解いたしましたぁッ!!」
「はぁ・・・全く。あら・・・」
説教をしてた少女が、私に気付いたようだ。
どうやら、本来の目的を忘れていたらしく顔を赤くしていた。
小町さんは、そこをとやかく言う気力は残っていないようでフラフラとどこかへ歩いて行った。
「初めまして、わたくし、十王の一角を務めさせていただいております、四季映姫。というものです。」
「こ、これはどうもご丁寧に。私は、境界の妖怪で時雨師匠に同行してます、八雲紫っていいます」
「ええ、存じております。ここまでの長旅、お疲れさまでした。」
「いえ、私は望んでついて行ったので・・・」
社交辞令のような挨拶だが、映姫さんを見るとそれは社交辞令というよりかは普通に話しているかのようで
顔は、まじめそのものだけど、目はとても喜んでいた。
この人は、十王の一角ではあるけど、まだ年相応の少女なのだろうか・・・
「さて、本題と行きましょう」
映姫さんの風格が、その一言で代わり。
十王の一人として申し分ない風格を私に向けてくる。
私には、そのプレッシャーがのしかかるが、正直アイリスさんに比べると、アイリスさんの方が怖いので(私に向けられてなくとも)
正直慣れてしまった。
「貴女が、あのひとについていった結果。あの人の目的は、達成され彼はもう未練がないそうです。」
「っ・・・」
そう、多分時雨師匠に未練はない。
日本を旅し、旧友のアイリスさんともであり、故郷にも行った。
妖怪の山で、萃香さんたちと会い、旅の途中でルーミア様と正邪さんに会って・・・
師匠はこの夏の間、ずっと笑顔でいた。
それは、私がよくわかっている。多分、私と師匠が過ごした年月なんて他の人と比べるととても短いものだろうけど。
「その旅の間、貴女とあの人は、結ばれた。伴侶としてではないですが」
「え・・・えへへ・・・」
「|はぁ、いいなぁ・・・あんなかっこいい人が彼氏だなんて《(でも、貴女にはつらい決断をしてもらわなければならない)》」
「あの~、映姫様・・・大変恐縮なんですが、本音と話題がすり替わってませんか?」
「・・・・・・小町、あとで説教5時間です」
「何でぇ!?」
映姫さんの本音が漏れていることを、復活した小町さんが指摘すると、映姫さんは頬を赤らめて小町さんに八つ当たりのようにそう言った。
小町さんは、わかっててやったのだろうか「そりゃないっすよ~」と言いながらも、どこか楽しそうであった。
「こほん、貴女にはつらい決断をしてもらわなければなりません」
「わかっています・・・師匠は、これから永遠に私に会えることはない・・・その前に、師匠と別れ師匠との思い出を忘れる。そうですね?」
「・・・・・・ええ。」
映姫さんは、少しだけ物悲しそうに目をつむる。
小町さんも、その雰囲気を汲み取ったのかおちゃらけた雰囲気をやめて、黙りこくっていた。
分かり切っていたことだった。
師匠は、これから天国か地獄か・・・私ではわからないけど、どっちかに行ってしまう。
それは、死んでいるから確定であって・・・私が変えることなどできないのである。
それでも師匠とは恋仲でありたい反面、どこかそれをしょうがないことだと理解しあきらめている自分もいる。
あの日・・・師匠に一目惚れしていた時・・・師匠にこの夏しか一緒にいられないことを話された時からずっと考えていたことだ。
でも、私としては、師匠とは離れたくないし、恋仲であることをやめたくない。
「私は」
side:sigure
僕の旅は終わりをつげ、残りの日数はここ白玉楼で過ごすようだ。
本当なら、あのひまわり畑に行きたかったのだが、どうやらアダムがかかわってきたことで変わってしまった。
ひまわり畑には、あの子がいた。そして、紫ちゃんをあの子と合わせて紫ちゃんと友達になってもらうはずだったのだが・・・
どうにも、世界は僕の願いをかなえたいようだ。
「どうして、ここにいるんだ?幽香ちゃん。」
「私っ・・・師匠に会いたくて。」
緑の髪の毛の内気な女の子、紫ちゃんとは僕の予想だけど同い年の女の子・・・正直に言えば僕の妹だ。名前を風見幽香と言い、とあるひまわり畑を育てている自然発生型の妖怪だ。でも、彼女は人を襲うことはなく、自然を荒らすものだけを威嚇だけで追い返している。そんな彼女は、僕の一番弟子で僕の我流剣術”時雨一刀流”の正式な後継者だ。
「でも、冥界は簡単に来れるはずが」
「えっえっと・・・修行してたら、空間を切れるようになって・・・それで」
「・・・なるほど。」
前言撤回、多分この子。僕より時雨一刀流を使いこなしてる。
僕でも空間を斬ることなんてできないし・・・(そもそも、彼女は傘でやってのけたみたいだし・・・)
あれ?時雨一刀流って、僕の我流剣術だよね?
「そっそれで、なんか、嫌な予感がしたので・・・」
「僕のところに来たの?」
「・・・」コクコク
幽香ちゃんが、縦に首を振る。
この子は、自然発生型でも珍しい突然変異型の妖怪・・・いや、正確には妖怪と妖精のハーフだ。
まあだからと言って、ルーミアさんのような強大な力は持っていない、そもそもその力を幽香ちゃんは抑えている。
そしてこの子は、危機感がとても高い妖精の勘が働いたようで、僕に何か起きることを感じ取ったらしい。
それで、僕と紫ちゃんが様々なところを歩いている間。僅かに残った僕の気配を頼りにあちこちを探し回ったらしい。
なんかごめん・・・
「あ、あの・・・お願いです。私に、師匠を護らせてください」
「ん・・・いいけど。幽香ちゃんの気のせいだよ。多分ね」
「だと・・・いいんですけど・・・」