白玉楼に近づけば近づくほど、私の勘は警告を強くし。
本能的な恐怖を感じる。なんなら、あそこに近づけば近づくほど天使と使徒、死神たちが棒立ちで固まって動かなくなっている。
「くそ、一体何なんだ・・・っ、ここが・・・桜吹雪の宴会場?!」
ついに見つけた桜吹雪の宴会場。
しかし、その場所はお世辞にも桜吹雪の宴会場とは言えないぐらい凄惨な風景だった。
天使と使徒、死神たちが大いに争った形跡、その三者の血で濡れた地面や桜の木。
その桜の木に至っても、どす黒く枯れてしまって炭になってしまっている。
いや、おかしい。
(なんだ・・・なんなんだ、この恐怖は)
そう、恐ろしい。ただ、恐ろしい。
何処からか感じる死の気配。鉄と肉の焼けるにおい。
ああ、これはまさしくあの地獄だ。
(龍神様が危惧していたことが・・・本当に)
いやな予感がして、その地獄の中を進んだ。
使徒と天使の一部は何かに抉られたかのように体の一部や頭がなくなっていて
とある使徒と天使は、まるで酸素を得られない必死な形相で息絶えており
またある使徒と天使は、焼き尽くされ黒く焦げ。
また別の使徒と天使は、串刺しにされて死んでいた。
(なんだ!?これは!?)
そして、私の目に飛び込んできた信じられないもの。
あの最強と名高い剣士の妹、”風見幽香”が桜の木にもたれかかり、体中が曲がってはいけない方向に曲がり
かの剛腕の星熊童子として恐れられている、”星熊勇儀”は、両手両足を失い、顔に一文字の傷ができており
あの鬼の中でも知識に優れている”伊吹萃香”がどす黒い結界の中でズタボロにされており
死神たちの中ではトップクラスの強さの”小野塚小町”がボロボロになって必死に主を護り
閻魔の一角である”四季映姫・ヤマザナドゥ”は、左腕を必死にかばいながらにらみ続け
”八雲紫は、どす黒い雰囲気を纏いながら狂ったように笑って暴れている”
そして、その傍らには大切そうに雨月時雨が浮かんでおりご丁寧に結界まで張られていた。
(っ!?まさか、いや・・・)
時雨がピクリとも動かないところを見て間違いなく時雨は死んでいる。
だが、それは私の能力を使えば簡単に生き返る。ただし、それには触れる必要もあるしなおかつ3日という時間が必要だ。
流石に、龍神様の元で修業したとはいえ、そうそう簡単に死者蘇生ができるわけではない、何ならすごく難しい部類だ。
なんて、冷静に分析してる場合じゃなかった・・・
「あははははははっ!!」
「ぐっ・・・映姫さま、早く引いてください!」
「ですが・・・小町を置いて逃げるわけには!!」
「いいから早く!死にたいんですか!?」
「っ・・・小町、あとは頼みました」
小野塚小町の一喝により、四季映姫・ヤマザナドゥは全速力で逃げて行った。
その代わり小野塚小町は、死神鎌を構えて、”ヤクモユカリ”をにらみつけていた。
私は、懐から封魔針と封魔札を取り出し、”ヤクモユカリ”に向けて投げつける。
しかし、その投げつけた二つは隙間の中に消えてゆき、逆に私の方に飛んできた。
「っ!?【二重結界】っ!」
当たる寸前で、防御用の結界を展開し、カウンターで飛んできた攻撃を防ぐ。
明らかに高威力でカウンターされた封魔針と封魔札は二重結界に阻まれ、ぽとぽとと地面に落ちた。
しかし・・・不意打ちを突いて投げたはずのこの二つを防ぐとは・・・
頭の後ろにでも目玉がついてるのか?畜生め・・・
「あはっ・・・時雨ししょぉ、起きてくださいよぉ。私、時雨ししょぉの為に邪魔な存在、ぜぇんぶ消しちゃいますからぁ」
「いい加減に、目を覚ましてくれないかね!!もう、そいつは死んでる!!」
小野塚小町が、攻撃を避けたり防御しながらそう叫ぶが、”ヤクモユカリ”は無視して攻撃を続けている。
そのすきに私は、背後から”ヤクモユカリ”に接近し、睡眠薬をかがせようとする。
しかし、それは気付かれていたのかつかもうとした瞬間に傘でぶっ叩かれる。
「いっだぃ!?」
「・・・・・・」
”ヤクモユカリ”が冷たい目で私を見ると、即座にけりを入れようとする。
私はそれをぎりぎりで避けて、封魔針を投げつける。しかし、すぐに隙間のまれて消えてしまう。
すぐに脇を抜けて、小野塚小町の隣に落ちる。
その際に背中を打つが、さっきの傘でぶっ叩かれるよりは痛くないので耐える。
「いたたっ・・・全く、遠慮なしにぶっ叩きやがって・・・」
「それだけ、近寄って欲しくないんでしょうに」
私がそういうと、隣にいる小野塚小町がそう返す。
まあ確かにわかる、何せ大切な人なんだ、守らないとだな。
しかし、その大切な人が死んでるんじゃぁ・・・意味ないけどな。
「なあ、私に策がある」
「へぇ、命を捨てろとかなら嫌だぞ。」
私を何だと思ってんだ、この死神は。
まあいい、近くによって耳打ちするそれを聞いた途端、小野塚小町も口角を上げた。
そして、鎌を構えて私の前に立つ。
私は、その背をしっかりと目に収めつつ、特注の封魔針を何本も構える。
「こうして組むのは、何年振りかねぇ」
「私がまだまだ幼い地獄の餓鬼で、小町が死神の新兵だったころだっけ?」
そう、こうして組むのは本当に何年も昔だ。
私は龍神様の補佐官となり、小町は死神隊の総大将に。
二人して出世して。二人して偉くなった。
「時間が無くなって、飲むこともなくなって」
「二人して偉くなって、軽口もたたけなくなったけど」
「「いまだ、この戦い方は覚えてるんだから。笑えるよ」わらえるな」
小町は能力を使い、一瞬にして”ヤクモユカリ”の真後ろに瞬間移動しその首を断とうと鎌を振る。
私は、真正面から飛び掛かり、封魔針を投げつける。
後ろと前の同時攻撃で、さすがの”ヤクモユカリ”も対応できないようだ。
私か小町を迎撃しようとわたわたとしている。
だけど、さすがの”ヤクモユカリ”だ。隙間を硬化させて小町の攻撃を防ぎ、私の攻撃は傘で防がれる。
「ちっ・・・」
「さすがに・・・」
「私の邪魔を、するなぁっ!!」
その言葉と同時に私と小町は吹き飛ばされる。
小町は、うまいことに空中で受け身し何とか地面との激突を防ぐ。
私は、吹き飛ばされこそはしたがしっかりとヤクモユカリをロックオンしていた。
「もらった!」
私たちを吹き飛ばした反動で動けなくなったヤクモユカリに大量の封魔札を投げつける。
反動ゆえに、ヤクモユカリは反撃できず、封魔札は大量にヤクモユカリの体に張り付いた。
そして、封魔札の効果で段々と力が消えてゆくようで嫌がり、ヤクモユカリは札をとろうともがいている。
「ふぅ・・・さすが、投げるのだけは相変わらずうまいね、正邪は」
「そういう小町だって、移動するのが早くなったんじゃない?」
「そりゃ、鍛えたからな」
「なるほどね・・・」
ヤクモユカリがぱたりと倒れる。
ヤクモユカリに投げつけた札は、特別な大妖怪や呪いそのものが生物になったものなど・・・
つまりは、対怨念特化であり、相手が強い憎悪などの感情を持てば持つほど強力になる代物だ。
もちろん、私がこれを使うということは相手は世界を滅ぼすのも簡単な相手で普段は非常時以外投げつけてはいけない。しかし、今回はその非常時に当てはまるのでヤクモユカリに投げつけたのだ。
「で、あんたがここに来たってことは・・・蘇生?」
「・・・ほんとは、ちゃんとした許可が必要だけど。」
「私が許可します」
後ろから、あの女の声がする。
「映姫さま!?どうして・・・」
「小町、今はそういう状況ではありません。彼女たちと死神たちを治療しましょう。相手はまだ来ます」
「りょ、了解いたしました!」
四季映姫・ヤマザナドゥ指示で小町は生き残りの死神をかき集めて救助活動を始めた。
風見幽香や星熊勇儀、伊吹萃香・・・命にかかわるようなダメージの死神たちを最優先で救助し、
比較的軽いものは、四季映姫・ヤマザナドゥが応急処置を施していた。
やがて、回復に特化した能力を持つ死神が増援としてきて、次々と死神たちや幽香たちを治療した。
戦力は3分の一ほど回復し、私も雨月時雨を復活させるために精神集中を始めた。
「さて、小町」
「なんだい、正邪」
時雨に触れながら、時雨の魂を探し出す。
これは、死者蘇生の中では簡単な方何で私は、その間に小町に話しかける。
「これ終わったら、酒。飲みに行くぞ」
「お、いいねぇ。割り勘かい?」
「ああ、あたしと小町。二人でパーッと飲み明かそうぜ」
私と小町はそう軽口を言いつつそれぞれのことに集中するのであった。