はい、正邪が時雨の魂を救う少し前まで戻ってきました!
というわけで、鬼人正邪(下)の10年間何があったのか、
これでわかるはずです。
ちなみに、今回だした設定は”がばがば”で”幼稚な発想”ですが、快く受け入れてくれることを切に願います。
ドサッ…
精神集中し、雨月時雨に触れた正邪が倒れる。
おそらくは、私たち死神でさえ知らない次元の地獄に赴いたのだろう。
うまくいけば生還、下手を打てば本来は消滅もあり得る危険な行為だ。しかし、今回は龍神様の許可を得ているので消滅はないのだろうか・・・
いや、しかし魂の回廊は龍神様の力も及ばない場所・・・下手すれば
「正邪、無事に帰って来いよ」
そう思い、私は空を見上げた。
そこには相変わらず、空に向かって伸び続ける西行妖がある。
あの桜の木からは死の気配が大量に流れだしており、弱い天使や使徒はただふらふらと西行妖に近づいていく。
ヤクモユカリが纏っていた黒いオーラと言うのもあの桜の死の気配だ。
「それにしても、ひどいねぇ。これじゃあ来年からの宴会は別の場所・・・三途の川かねぇ」
頭を片手でポリポリと掻きながらぽつりと弱音を吐きだす。
ここ”桜吹雪の宴会場”はすでに大規模な医療所になっている。
「おい、しっかりしろ!!お前はまだ死ねないはずだろ!!」
「いてぇ・・・いてぇよ、母ちゃん!助けてくれぇっ!!」
「馬鹿野郎・・・生きて帰ったら結婚するんだろ?頼むから目を開けろよ・・・」
周りにいるのは大怪我や致命傷を負い息も絶え絶えな死神たち。
回復に特化した程度の能力を持つ死神たちが奔走しているが、どうしても間に合わない者たちも出てくる。
むしろ、ここまで耐えたのが不思議なぐらいだ。天使と使徒の軍勢は、こっちの死神たちの軍勢のおおよそ3倍。
全滅せずにいまだ戦闘継続可能、と言うのがなんとも憎たらしくて仕方がない。
「貴方はあの方の治療を!貴方はこの方を!その方はもう亡くなりました、次の方へ・・・」
そんな中映姫さまが、死神たちの指揮をとる。
おそらく、この中で一番つらいのは映姫さまだろう。今まで映姫さまはこんな生き死になんて関わりなくただ亡者たちを裁けばよかったのだから。
腕を斬られて死んだあいつは映姫さまの部署で一番長く勤めていた奴、あそこにいる首のない死体は映姫さまの作業を手伝った奴、そっちにいるのは映姫さまが疲れたときに変わりに書類をまとめたやつ。
こっちにいるのは、映姫さまの護衛として優秀だった極卒。私の知り合いも、何人も死んでる。行きつけの居酒屋の飲み仲間や宴会仲間、酒の摘まみで気の合った極卒に何かと絡んできた後輩の死神。
私はその知り合いの一人一人の遺体へ近づき、言葉を駆けてゆく。
「死んじまったか・・・あんたの酒、楽しみにしてたのに。お前は、次の宴会で一発芸する担当だったろ?」
「いい摘みが入ったから一緒に飲もうって約束したじゃないか。あたしより先に死ぬんじゃないよ、このバカ後輩。」
私は死ぬのが嫌で強くなった。もちろん、普通の努力じゃない血反吐を吐いき女としての尊厳を捨ててまで手に入れた強さだ。
だが、この異常な強さでも今回は苦戦させられた。天使や使徒にてこずったわけではない、ヤクモユカリに膝をつかされたのだ。
屈辱的だった、一瞬我を忘れてヤクモユカリを殺そうとした。しかしそうする前に映姫さまを護ることを優先させた。
映姫さまは、閻魔としては確かにトップクラスだ。しかしそれは、身体能力という面だけだ。
(よくよく考えたら、映姫さまを護っていなかったら殺してしまっていた)
私は昔から感情で動くことが多かった。だから、今回のことは自分でも成長したと思ってるしよくやったとも思っている。
そして、その結果があれ。見事、正邪との作戦は成功し八雲紫の奪還に成功。雨月時雨も復活しようとしている。
しかし、それでもこの戦局は大いに不利であった。いまだこちらの戦力の3倍を誇る敵。敵味方関係なく滅ぼす西行妖。
私でも、おそらく時雨でも介入ができないルーミア・ブラックムーンとアダム・ファースト。
考えながら、壊れた結界を見上げた次の瞬間。すべてが止まった。
「っ!?何者だ!?」
≪うふふ、ご安心くださいませ。私は、今あなた方を滅ぼそうとはしてませんわ」
目の前にあの八雲紫とよく似た女性が現れる。
しかし、そいつは黒い。いや、黒いなんて話じゃない。まるで底の見えない大穴のようにどす黒い・・・
私は特注の鎌を構えてそいつに意識を集中させる。
「そう警戒しないでください、私はこの子にちょっと細工をしに来ただけですから」
「っ!!その子に何をするつもりだ!!」
私は能力を使い一瞬にして八雲紫の隣に立ったそいつの後ろに回り込んだ。
そして、鎌を振り下ろすが・・・
「っ!?」
「おとなしくしててくださいませんこと?」
薄気味悪い裂け目から飛び出してきた鎖に縛られてしまう。
無理やり引きちぎろうとも、能力を使ってもこの鎖が外れることはなくただ私は無様に捕らわれたのであった。
それが八雲紫の胸に手を伸ばしてゆく
「やめろ!その子に手を出すな!」
私は必死に叫ぶ、今ここで八雲紫ではなくヤクモユカリを起してしまえば、間違いなくここら一帯は血の海と化すだろう。
「そんなこと、させてたまるかぁッ!!」
私は鎖を無理やりに引きちぎり、鎌を思いっきりそいつに振り下ろす。
途端、そいつはバッと離れ、私から距離を取った。
そして、どこからか扇子を取り出し口元を隠した。
「ふふ、さすが。”元”死神総大将ですね。いえ、この場合はイザ」
「違う!私は、小野塚小町だ!!」
「!!」
「そして私は、ただの船頭だ!!」
そう叫びながら、そいつの後ろを能力を使い取る。
私が振るえる全力でそいつを斬りつけようとする。けれども、そいつはかわす。
でも、かわされるなら当たるまで振るだけ!!
「うおらぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
「っ!!」
そいつは、扇子を閉じて私の鎌に叩きつける。
叩きつけられた衝撃だけで私は、後ろに吹き飛ばされた。
あいつなんて言うバカげた力だ。ちょっと叩かれただけで50mとは吹き飛ばされたぞ。
「ずいぶん、力が強いな!」
「くっ・・・おどきなさい」
私の周りに大量の闇が現れ私に向かいレーザーを発射した。
それを私は、能力だけで回避しそいつ頭上に移動する。
「くっ・・・どこに」
「上だよ!!」
落下の力を加えて鎌を思いっきり振り下ろす。
そいつは、またしても扇子だけで防ぐが片膝だけはつかせることに成功した。
でも、高々片膝だ。そいつが、扇子を強く降り私はまた飛ばされるが
今度は鎌をうまく使い姿勢を直し構えなおした。
「・・・さすが。小野塚小町。ではわたくしも」
「っ!!」
目の前からそいつが消える。
周りをも渡してもどこにもいない。薄気味悪い笑い声だけが聞こえる。
ふと、背後から危険を感じ頭を下げる。すると、さっきまで頭があった位置に真っ黒い槍のようなものが突き出し
確実に私の頭を突き刺そうとしてた。
(あっぶ・・・あっ)
冷静になり周りを見渡すとさっきの槍と同様の槍が大量に私に向いていた。
これはだめだ、避けられない。
「・・・参ったねぇ。私もここまでか」
「いえ、アナタは殺しません」
「・・・なぜだい?」
「それは、私にとってはとっても非効率的でそれほど価値があるからです。」
「そうかい。」
私は、おとなしく鎌を下す。
だめだ、こいつにはいまの”私”ではどうしても勝てない。
だけど、本当の”私”なら勝てるだろう。
中途半端だが、確かに強い力を持つこいつはどうしても親近感の沸く小娘であった。
「・・・で、あの子をどうするつもりだい?」
「・・・あの子の・・・ヤクモユカリである部分を封印します」
「だが、それは」
「ええ、あの子本来の能力を半分に抑制する。ということです。」
そうなれば、あの子は半分だけ死んでいるということだ。
半分死んでいて半分生きている。まるで、半人半霊・・・いやこの場合は、半妖半霊、か。
そんな状態にするということは、彼女は下手すれば永久を生き永久を見ることになる。
「そんなことは許されることなのか?」
「私ならば」
するとそいつはさっと触れると、苦しそうにしてた紫の顔が少し柔らかなものになった。
どうやら彼女を蝕んでいたヤクモユカリの分が封印されたようだ。
しかし
「目的は済んだ・・・さっさと消えろ」
「・・・ふふ、ええそうしますわ。ではまた≫
「・・・二度と会いたくないね。」
そう言って、奴は消えていった。
だが、どうしても周りに何かがいるようでソワソワする。いつの間にか周りも動き出しているし・・・
「・・・まったく、やりきれないねぇ。」
私は、映姫さまに呼ばれたので声のした方向に移動する。
ああ、畜生。
「まずい酒でもいいから、飲みたいねぇ。」
不気味に咲き乱れる西行妖が、何しでかすか・・・
それのせいで、やけ酒がしたいもんだ・・・
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映姫さまの頼みで地獄にある巨大な本倉庫に移動する。
映姫さまは、すぐさま数名の配下に世界樹の本を探すように指示。
私はその間に仮眠を取れということであった。
「いいんですかい?いつもならしかりつけるのに」
「ええ、今回はあなたの力が必要なんです。小町・・・いえ”********”様」
「・・・参ったねぇ。うまく隠してたと思ってたんだが」
「ふふ、バレバレですよ。小町」
「そりゃ、残念で。ま、休めるなら休ませてもらいますよ、映姫さま」
私は、近くの壁に寄りかかり少しだけ意識を手放したのだ。
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side:siki eiki・yamazanadu
小町から、静かな寝息が聞こえてくる。
普段なら叱りつけなくてはいけないが、今は少しでも彼女を休ませたかった。
(小町は死神たちの中では最高戦力。倒れられてしまったらこちらの負けだ)
ただでさえ、相手は個でも精鋭に等しい天使と使徒らだ。
小町という個を失えば、数が少ない群である我々はいても簡単に蹂躙されるだろう。
男の死神たちは殺され、女の死神たちは慰め者に・・・私もどうなるのかは検討がつく。
(だけど、そうならないように各地の死神たちも頑張ってる)
「だから、私も頑張らないと」
数名の死神たちが世界樹について書かれた本を大量に持ってくる。
私は、彼らにも休むように伝えてその本を一つ一つ流し読みだが読むことにする。
流れるように書類を処理してきたらからか、最初のページから最後のページを素早く流してもしっかりと内容が頭に入って来た。しかし、この本たちに書かれている世界樹は宗教的なものばかりだ。
だが、それがどこか引っかかる。
(西行妖・・・枯れた桜の木・・・死をもたらす木・・・・・・生命を操る・・・・・・ユグドラシル)
「違う・・・でも、何か関係が?」
西行妖は、樹齢300年ぐらいの妖怪桜だ。
ただ美しく咲いていた西行妖は、西行法師の娘、西行寺幽々子が誕生したと同時に能力を変容させ”死を誘う”危険な桜の妖怪となり果てた。
しかし、ユグドラシルは違う。
ユグドラシルは、世界を支える大木。死を誘ったり操ったりなどはするはずがない。
だが、そこで何か妙な引っ掛かりを覚える。喉に魚の小骨が刺さったかのような不快感・・・
でもなぜだが、知っているはずなのに思い出せない。
「違う、忘れさせられている?」
例えば、今回の首謀者”アダム”もしくはその妻”イブ”によってだろうか。
いや待て・・・では”イブ”は、なぜ姿を見せていないのであろう。最初からいない?いや、まず”アダム”と同じではない?アダムは、何千何万何億というバカげた時代を生きている存在だ。しかし、その”イブ”が仮に”ユグドラシルを目覚めさせる鍵だったら”、”イブ”が”アダム”とは違い神ではなかったら。”
”イブ”がなぜ古今東西の神々の間で一度も顔を見せたことがないのか。
もし”イブ”の子孫が西行寺家であったら・・・・・・
「っ!!そういうことか、思い出したっ!!」
間違いない、西行妖は”変質してしまったユグドラシル”。幼いころそれを封印するために幽霊となった”西行寺幽々子”は”イブの先祖返り。”イブ”が”死を誘う程度の能力”だとしたらそれがすべてつながる。
つまり”アダム”達の目的は、人類の救済などではない
「人類の抹消・・・再構築っ・・・」
なんと愚かでバカバカしいことだ。
人類を抹消し、再び再構築しようとも、うまくいくはずがない。
そんなことをすれば、”幻の大陸”に眠る古の神々が怒り狂うに決まっている。
「つまり、アダムたちの最終目標は”西行妖”の制圧および覚醒。”イブ”である”西行寺幽々子”の確保。」
こうしてはいられない。
「小町たち!起きなさい!敵の目的が判明しました!支給防衛線を張ります!」
「ふあっ・・・・・と、了解いたしました!おい、お前ら起きな!!」
私の号令で死神たちが動き出す。
小町に捕まり元の場所に戻ればあの凄惨な医療拠点だ。
私の目の前にいるのはすっかり回復した”伊吹萃香”と”星熊勇儀”、”風見幽香”達であった。
「貴女方も協力願えませんか。」
もし、これが失敗してしまえば。
世界は確実に終わってしまう。