幻想物語=八雲紫の物語=   作:ライドウ

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第三十一話 ”破滅の前の静けさ”

side:siki eiki・yamazanadu

 

「私たちは今、世界の命運を前に死地に立っています」

 

いま、動けるうえに戦える死神たちを前に私は言葉を発する。

おそらく、彼らはもうすでに戦意を喪失しているのだろう。

当然だ、相手はこちらの倍近くの戦力を有する大軍団。

偵察してきた死神によると、増援が到着し先ほどの10倍の数はいるという。

しかし、こちらの死神の数は間違いなく最初の3分の1まで落ち込んでいる。

仕方のないことだ、相手も命がけで突撃してくるのだから。

 

「命を落として、未来を閉ざされた者たちは・・・あまりにも多い。」

 

私の知り合いの死神たちや極卒たちも・・・皆、命を落とした。

それだけではない、中には幸せを掴もうとした死神たちもいた。

それを見ずに終わってしまったのだ。

 

「死んでいった彼らを・・・このまま犬死になどさせてはなりません!!敵は強大、このまま立ち向かえば生き残った私たちも全員死ぬでしょう。」

 

敵は、ユグドラシル・・・つまりは西行妖と西行寺幽々子を全力で手に入れようとする。

彼らも、所詮はアダムにいいように使われているだけなのだろうが・・・。

しかし、そんな彼らも偽りのアダムの理想に惹かれて全力で攻撃してくる。

 

「ですが、私たちは立ち向かわなければなりません!!このまま見過ごせば、世界は滅びアダムの思惑通りになってしまう!!死んでいった彼らの死は無駄となり我々も悔しさの中で死ぬでしょう!!ですが、世界では抵抗を続ける者たちがいる!!そんな中、我々があきらめていいのでしょうか!!」

 

私の言葉を聞き入れた死神たちは段々と力が入ってゆく。

 

「我々があきらめてしまっては、彼らの努力も無駄となる。それどころか、人類は滅び、この世界そのものがなかったこととなるでしょう!!そんな暴挙を許しますか!?」

 

「いや!ゆるさねぇっ!!」「そうだ!!この世界はあいつなんかの為に滅びていいものじゃねぇっ!!」「くそ野郎”アダム”を許すな!!」

 

「生き残ったあなたたちは、精鋭だ!!先の大戦で生き残った英雄だ!!故郷を・・・世界を護るために立ち上がった英霊だ!!そんなあなた達が負けを味わったままでいいのか!!」

 

「「「「「否!!」」」」」

 

死神たちの声が全員揃う。そして、叫び声をあげそれぞれの覚悟を示す。

 

「ならば、我々は勝たなければなりません!!敵が強大??知ったことじゃない!!我々は戦い!!そして勝つ!!我々は何だ!!」

 

「「「「「「死神だ!!」」」」」」

 

「では、死神とは何だ!!!!」

 

「「「「「「「「死を与える存在だ!!」」」」」」

 

「我々の敵に与えるのは媚び諂う精神か!?」

 

「「「「「「「「否!!それは唯、死である!!」」」」」」」」

 

死神たちが叫び声をあげ、再びの戦意を燃え上がらせる。

彼らが声を合わせると、この冥界が大きく揺れ地響きまで聞こえてくるようだ。

 

「我々の全力を示せ!!防衛線を展開せよ!!」

 

「「「「「「「「了解!!!」」」」」」」」」」

 

死神たちが大急ぎで移動し始め山間に囲まれた白玉楼を護るように硬く厚く展開する。

唯一の入り口である谷に戦力を集中させ、後方の死神隊には飛んできた使徒や天使たちを落すように指示する。

大急ぎで防衛陣が展開される中、運がいいのか本当の地獄に努める死神隊の本隊が到着した。

私が管理している地獄の死神と極卒たちも中々の精鋭だが、この本隊はそれすら超えてしまう。

これでなら、もうしばらくは耐えきれるだろう・・・敵の総大将がこなければの話だが・・・

 

「映姫さま、第1防衛線展開完了しました!!続く第2第3防御線も順当に展開しつつあります!!」

「よろしい・・・」

 

私は、目の前に広がる光景を見る。

地平線には無数の光がうごめき、本当に使徒や天使が発している光には見えない。

 

「・・・映姫さま」

「小町ですか、休めましたか?」

「・・・ええ、今までの分。しっかりと」

 

そういう小町は気が滅入っているようだ。

戦いが終わったと思ったら、今度は全員が死ぬかもしれない戦いだ。

誰だって、正気なはずがない。

ここにいる防衛陣を作っている死神たちも、私の掛け声でやる気こそ見せているが倒され命尽きることは全員予測済みだろう。

 

「映姫さま、私からお願い事があります」

「却下です。私は逃げません。」

「にげ・・・・・せめて、最後まで言われてくださいよ。」

 

やはり優しい小町は私だけでも逃げるように言ってきた。

小町が危惧することもわかる、もし生きたまま捕まれば辱めを受けることは間違いない。

それにもし捕まらないとしても殺されているでしょう。この山間の谷・・・しかも入り口と言うのは、逃げ場がない。もちろん、防衛に向いてはいるが背水の陣なのだ。

 

「どうしても、ですか?」

「ええ、これ以上言うならあなたのお給料を3ヶ月ほどカットしますよ?」

「ひっ、ちょっ、それは勘弁してくださいっ。」

「・・・ふふ、冗談です」

「笑えないですよ~、映姫さま~・・・」

 

二人で笑いあう。

今はこうしているだけでも気持ちが安らぐ。

私は、つい不安となり小町に抱き着いた。

小町は、不安がってる私を案じてくれたのかそっと抱きしめてくれた。

 

「今だけ、今だけこうさせてください」

「・・・いいですよ、映姫さま」

 

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side:hosiguma yuugi

 

「ああ、どうもイライラする。」

 

あたしは死神たちが作り上げた防衛線・・・その第1防衛線の前に立ってやがて来るであろうあいつらの軍隊をにらみつける。まだヤクモユカリに倒されたのはまだよかった。

八雲紫にはあんな力が秘められているとわかったから、鬼というものはいつだって全力の戦いを望む。

あの時、ヤクモユカリは間違いなく全力であった。

 

「だけど、あれが本能ではなく理性で制御されてたら・・・」

 

間違いなく、私どころか外で暴れているルーミア・ブラックムーンよりも強くなれるだろう。

だが、ヤクモユカリの力はだめだ。あの力は確かに強くなれるが大切な何かを失って初めて使える力だろう。

だから、幸せに包まれている八雲紫には無縁の力だ。

できることなら、もう二度と姿を見せないことを願うばかりだが・・・

 

「そうとも言えないねぇ・・・」

 

もしあれが、何かの拍子でまた暴走したら・・・今度こそ、真の力が解放されて世界は滅びを迎えるだろう。

間違いなく、ヤクモユカリの力はそういう力だ。

それに、もうあれは倒された。なら今は目の前にいる大量の軍に集中しよう。

 

「ざっと数えて10万強。こっちは1万弱・・・大博打にもほどがある。」

「分の悪い賭けは嫌いかい?」

 

隣にあたしの仲間であり親友の萃香が現れる。

どうやら全世界に散らせていた自分を回収したようだ。

 

「いいや、嫌いじゃないね。怪力乱神としての理性が疼くよ」

「へー、なら前哨戦で私とやりあうかい?」

「よせよ、戦う前に消耗する気はないぞ」

 

冗談交じりに萃香が言ってくるが、軽くあしらう。

今は、ちょっとでも力を回復させることが優先であり、消費することは愚者がやることだ。

まあ、あちらさんではそれが行われているらしいのだが・・・

 

「さて、萃香。ひとつ賭け事しないかい?」

「・・・もしかして、どっちが多く敵を倒せるか、とかそういうの?」

「大正解。ルールなし、何でもありの点数戦。負けたら買った奴に最高級の酒をおごる。もちろん、樽ごと」

「ひー、そりゃ、全力でやるしかないねぇ・・・」

「上等、あんたの財布すっからかんにしてやる」

「勇儀が賭け事で私に勝ったことないからって・・・こういうやり方は、まあ鬼らしいか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暗い・・・ここはどこだろう。

 

 

ああ、”――――”・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

助けて。

 

 

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