幻想物語=八雲紫の物語=   作:ライドウ

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またガバガバな理論がありますが温かい目で見てください


第三十二話 ヤクモ■■

side:???

 

ざっざっ・・・

 

私は薄暗い森の中を歩く。

どことなく私とあの人が出会った森に似ているが、あの森の近くに妖怪の山や紅魔館に似た屋敷などあるはずがなく、ここが現実の世界ではないという個とは一目瞭然だ。

 

ここは、ヤクモユカリと八雲紫をつなぐ泡沫の記憶の一欠けらだ。

じゃあ、ヤクモユカリと八雲紫は何なのかを私が説明しよう。

この私がその点に関しては良く知っている。

 

まず、事の始まりは八雲紫がぬらりひょんに捕まる前に遡る。

もちろん、ぬらりひょんから逃げ出した時が事の始まり・・・世界の命運が始まっていた。

この時から、アダムは八雲紫と西行寺幽々子を観察していた。

アダムがなぜ、八雲紫と西行寺幽々子に執着していたのかは、彼女たちの生まれに関係する。

西行寺幽々子は、イブの子孫。対して八雲紫は、アダムの最初の妻であるリリスの子孫なのだ。

だが、わかっているのは八雲紫がリリスが生んだ一人ということだけだ。西行寺幽々子の方も同様、イブが生んだ子の一人ということはわかるのだが・・・

何処がどうなって彼女たちが生まれたのか、そこがわからない。

西行寺幽々子の方は、人間として生まれ、西行妖を封印した際に、先祖帰りを起こし永久を生きる生霊となり、アダムの確保対象となった。

対して八雲紫は、最初からリリスの先祖がえりを起こしていたわけではなく、またヤクモユカリの力がリリスの力というわけでもない。

だが、リリスの力が覚醒したのが真の八雲紫の力だ。

 

まあ、生まれ云々は置いといて。

実は、ぬらりひょんに捕まる前にもう一体の妖怪に出会っていた。

その妖怪とは、九尾の狐である。もちろん、八雲紫が出会ったのではなく、九尾の狐が一方的に見つけて八雲紫の内側へと隠れたのだ。

それがヤクモユカリの力の源でもあり、八雲紫が不安定化した原因 でもある。

 

「見つけたわよ」

「・・・・・・」

 

しばらく歩けばソイツを見つけた。

美しく神々しく、金色に輝く9つの尻尾。

これがヤクモユカリであり、私の始まりでもある。

 

「さて、どうして」

(この子に入ったのかそれを知りたいのであろう?)

「お話がわかるようで」

 

ソイツはじっと私を見つめ、念話でそう答えた。

言葉を理解しなおかつ伝えることもできる。

間違いなくこの狐は、知性がある。しかも半端な知性ではない。

 

(私が助かるにはこれしか無かった。としか言い様がないな)

「それがこの子を不安定にしてでも?」

(申し訳ないとは思っている。この子にも妖怪生があるのだし、あのぬらりひょん達を呼び寄せたのは私だ。)

 

この狐、腹黒いな・・・

しかも頭も回る・・・なんて厄介な相手なのだろう。

こういうのを相手にするのは本当に苦労する。

 

(あのままだと、主はアダムとか言うやつに連れ去られていただろう、あの時はあのぬらりひょん達に捕まった方が助かるリスクが多かった。)

「だからといって、八雲紫を不安定にするのはどうなの?」

(・・・主が成長するためにはそれしか無かった。)

 

この狐の言っていることも理解している。

雨月時雨に保護されず、アダムに保護されたのが私だったから、そしてその結末がどうなったのかよく知っている。

この狐は、それすら見通しぬらりひょんに八雲紫を捕えさせ、雨月時雨に合わせたのだ。

 

(しかし結果は君の望む通りとなった。違うか?)

「っ・・・違いません。」

 

この狐はどこまで織り込み済みなのだろうか

この子が願う幻想郷までか?それとも、それより先の未来か・・・

 

(それに、君がここに来たということは私も現世へと戻り、八雲紫の式神として活躍せねばならまい)

「ええ、それがいい(そして、貴様をいつか殺す)・・・ふふっ。」

 

ああ、この狐は私の想像以上だ。

私の中には彼女はいない、私が潰したから・・・

でも、彼女と手を組んだ八雲紫はどうだろう。

 

(それまで楽しみにしているといい、常闇)

「ええ、楽しみにさせてもらいますわ。」

 


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