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side:yakumo yukari
「うっ・・・うううっ」
目を覚ます。何か悪い夢を見ていたような気がするが、気のせいだろう。
起きて早々、私の目に飛び込んだのは茶色くなっている布の天井。
「ここ・・・は?」
上半身を起こし、周りを見渡してみる。
見渡してみたけど何もわかるはずがない。
「よいっ・・・しょっ」
仮設ベットから降り、布の外側に出てみる。
周りには野営陣地と思わしきものが大量に張られており、また防壁の上では大量の死神さんたちが何かを迎撃していた。
「!!・・・八雲紫さん!!」
「??」
私の名前が呼ばれたのでその方向に向く。
そこには、傷だらけでボロボロの閻魔様がいた。
きれいでスタイリッシュな服はボロボロ、被っていた帽子もどこかに行ってしまったようだ。
「ここは危険です、早く逃げて・・・ああ、でもどこに逃げればっ」
「おっ、落ち着いてくださいよっ」
慌てた様子で、私に近寄り逃げるように言う。
しかし、どこにも逃げ場がないらしく慌てている。
私は、そんな映姫さんをなだめて状況を聞き出す。
「すみません、私としたことが・・・状況は依然とよくなりません。何とか目覚めた、星熊勇儀さんと伊吹萃香さん、風見幽香さんたちによって何とかもっている状況です」
どうやら確認に行った直後、私は何らかの手段によって暴走し、いろいろあってこの状況になっているらしい。
そして映姫さまは相手・・・アダムたちの目的を私に教えてくれた。
おそらく敵の目的は、ユグドラシル・・・西行妖の制圧と西行寺幽々子の確保。
幽々子ちゃんは現在行方不明。西行妖は現在一時的な暴走を終えてまた元の封印状態でおとなしくしている。
しかし、死神さんたちが築いた防衛線が破られれば間違いなくそれは再び暴走する。
「あのっ」
「八雲紫さん、あなたはできるだけ遠くに・・・アダムの力が及ばないような場所へ逃げてください。」
「映姫さんッ!!」
「これぐらいしか方法がないんですよ!!」
「私は、あきらめたくなんてありません!!」
そう、師匠と出会う前はあきらめてばかりいた。
食べ物を集められなくて諦めて、平穏がないことを嘆いて諦めて・・・
ついには生きる事すら諦めていた私・・・だけど、だけれども。
私の初めては好きな人がいいという実に私らしい我儘で諦めることをやめて逃げ出した。
その結果が、時雨師匠との出会いだ。それからというもの、私は諦めるということをやめた。
「私は、もう逃げたくないんです。逃げて何も得られなかったから、逃げても何もなかったから。」
「何もないなら私は立ち向かう、その先に何があろうとも、絶望だろうが希望だろうが私は進みます。」
「諦めが肝心な時もあるでしょう・・・ですが、私は諦めることを知らない女です!!」
「・・・わかりました。貴女の覚悟を、尊重しましょう。」
私の覚悟を心を込めて叫ぶと、観念したかのように映姫さまがそういう。
そして、私自身の覚悟にこたえるかのように力があふれてくる。
「行きなさい、八雲紫。今の貴女は疑いようのない白です。」
「・・・はいっ!!」
映姫さまの後押しを受け私は、その場所から飛び出す。
ふわりと体を浮かさせ、死神さんたちが大急ぎで築いた防壁モドキを飛び越える。
そして目の前に広がるのは大量の使徒と天使の群れ。
その群れに向かい私は・・・
「我こそは、八雲紫!!私を倒したければかかってきなさい!!」
そう叫んで空いている場所に高速で降り立った。
ああでも・・・師匠がいないと、やっぱり怖いな・・・
怖がりな私を隠すように、叫び声をあげて私に向かってくる使徒と天使に弾幕を放つのであった。
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side:Rumia blackmoon
何度目か分からない斬りあい・・・それでも奴に私の剣は届かない。
「ははは、ずいぶんな挨拶。ご苦労様、私の愛しいルーミア」
「ふざけるなっ・・・貴様にその名前を許した覚えはないっ!!」
「あの時は、あんなに甘い声を聴かせてくれたのにかい?」
「黙れっ!!」
ああ、どうしてだろう。安い挑発にどうしても乗ってしまう。
こいつが言葉を発するたびに虫唾が走る。ああ、早く殺してしまいたい。
さっさとこのバカげた復讐を終わらせ、あの人とあの子のお墓参りをしたい。
「怒ってる君も愛らしい・・・しかし、おいたが過ぎるよ?ルーミア・”ファースト”」
「黙れって言ってるでしょ!!それに、私は黒月 ルーミア・・・ルーミア・ブラックムーンだ!!」
私の好きな人の・・・八十禍津日神の・・・唯一のキズナ。
あの人は、優しくて私を一生懸命愛してくれて・・・とっても人間よりも人間らしかった。
あの人が結婚するときに名乗った”黒月”の苗字は、私の大切なものだ・・・
それすら奪われることは・・・絶対に許されない。
「このっ!!」
アダムの周辺に闇を発生させその闇から、闇を硬質化させた槍を突き出す。
ひらりと交わされるが、容赦なく追い詰めようと迫撃を繰り返す。
しかしそれはすべてのらりくらりとかわされてしまう。
どうしても、私だけの力じゃ・・・・届かないというの??」
「しかし、君がいるなら。アイリスもいると思ったんだけど・・・どこにいるの?」
「さあ、知らないわっ!!それよりも、早く死ねっ!!」
「ひどいなぁ・・・久々に、アイリス・”ファースト”にも会いたかったのに」
「・・・ふざけるなっ!!」
怒りの感情とアイリスの怒りの分も合わせて、私が出せる最高速度で斬りかかる。
でも、その攻撃はアダム専用の”始まりの剣”によって防がれてしまう。
そして、へらへらとした笑顔から一転真顔になって
「ふざけてるのはお前らだ。」
「っ!!」
「いつまでも居もしない男にすり寄って、何様のつもりだ!!私の妻ならば私だけを愛せ、そして私の子を産め!!」
「あんたみたいなくそ野郎は死ねばいいのよ!!」
そう言って、アダムの腹を思いっきり強く蹴り飛ばす。
大したダメージはないようだが、今は少しでもダメージを入れられたことに安堵する。
そして、油断をしないように常にアダムに集中するのであった。
「っ・・・蹴ったな、夫であるこの私を!!」
「蹴って何が悪いの?!このクズ男!!あんたなんか腐り落ちて死ねばいいのよ!!」
全力の力を振り絞り、アダムに剣を振り下ろす。
アダムが激昂したことでできた一瞬の隙を突いたので、アダムは驚き防御も回避もできなそうだ。
勝った・・・これで私はっ!!
「甘い!!」
アダムが何かを発動させ、私の体が硬直する。
「っ!?はぁっ、はぁっ・・・」
そして、反比例するように体の疼きが大きくなり始める。
この男、まさかっ
「ふふふ、私が何もしないとでも思ったか?」
「はぁっ、はぁっ・・・」
強制的に私の欲を操った・・・畜生、こんな時にっ
「ふふふ、心配はない・・・またあの時のように優しく可愛がってやろう」
「っ・・・」
こんな奴に触れられるぐらいなら、自殺して
≪我こそは、八雲紫!!私を倒したければかかってきなさい!!≫
遠くから、あの子の叫び声が聞こえる。
あの子が自分自身を激昂するように、そして死神たちを勇気づけるように
私を・・・正気に戻すように。その掛け声で、私の体の疼きが収まる。
不思議だ、あの子の声を聴いただけで私は興奮を抑えてしまうのだから。
あの子には特別な何かが備わっているのだろう、私はそれに後押しされたんだ。
そうだ、あの子だってあんなに頑張ってるんだ。
あの声の裏側は雨月時雨に会えないから不安で怖くて仕方ないのだろう。
あの子が頑張って戦ってるんだ・・・私だって
「なんだ?うるさい羽虫め・・・まあいい、さあるーみ、がっ!?」
手を払いのけて全力でアダムのあごにこぶしをめり込ませる。
完全に油断しきっていたアダムはそのアッパーだけで軽く300mは吹き飛ぶ。
アダムの口からは、はっきりと血が流れており有効打につながったようだ。
「なぜだっ・・・なぜ自力で己の欲に打ち勝った!?」
「ふふ、それは私だってそこまでして手に入れたい物があるからよ」
「っ・・・馬鹿な!!あのハゲジジイのような真似ができるものか!!」
「うふふ・・・今の私は、とぉぉぉっても気分がいいの。だから、」
「惨めたらしく、そして無残で残酷に、食い散らかしてあげる。」
その一言を言った途端、一回も崩れたことのないアダムの顔が恐怖に歪んだ。