side:sigure
伐る、伐る・・・
俺に伸びてくる西行妖の根を伐る。
伐りながら進む、
西行妖の麓に行くために。
「止まれ!!貴様何者だっ!!」
目の前におそらく敵が現れる。
恰好的には天使だろうか・・・そいつが瞬きした瞬間に斬り捨てただ西行妖の元へと向かう。
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しばらく歩いて、ようやく白玉楼の石畳の階段までこれた。
”ソコ”はまるで死その物のように存在し、そこにあるすべてを腐らせ操っていた。
「・・・動く屍・・・か。」
天使も使徒も死神も関係なく、樹の根に操られている哀れな亡者たち。
「「ッらぁっ!!」」
だけどそれは、一掃されてしまった。
隣には見覚えのある金色の髪を持つ女性と、特徴的な角を持つ少女がこぶしを突き出していた。
勇儀さんと萃香さんだ・・・どうやら無事らしい。
「へっ、死んだと思ったらいい面構えじゃねぇか。時雨」
「勇儀さん・・・いいや、俺はまだまだ甘ちゃんですよ」
「お、わかってるじゃん時雨!」
「萃香さん、それ嫌味?」
「嫌味じゃないさ、わかってるなら十分。ここは私たちに任せていきな」
萃香さんと勇儀さんが拳を構えつつ俺にそういう。
・・・ああ、ここは任せることにしよう、俺はやらないといけないことがある。
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side:suika
私たちが作った道を時雨は駆け抜ける。
私たちは時雨が少しでも通れるようにと屍たちを相手に大立ち回りをする。
殴る、砕く、潰す・・・やってもやっても増えるばかり。
それでも私たちは、引き受けちまった以上やるしかない。
もしやられたり、逃げたりしたら鬼の恥だ。
「勇儀!!」
「なんだ!!」
「終わったら宴会開こう!!」
「いいね!!つまみはどうする!?」
「そんなの、酒で十分さ!!」
「そうさな!!」
だから、私たちは死ぬわけにはいかない。
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side:sigure
白玉楼の正門にたどり着いた。
そこにはすでにボロボロの妖忌さんが刀を構えて立っていた。
「・・・妖忌さん」
「この先は、立ち入り禁止だ。引き返せ」
「それでも、俺はいかなくちゃならないんです」
「すでに貴様の弟子が向かった。それで十分だ」
「・・・・・・」
紫ちゃんが?
確かに紫ちゃんの能力なら何とかなるだろう・・・でもそれだけではだめだ。
それだけだと、悲しい結末しかならない。
「行かせてください。」
妖忌さんの目を見て、そういう。
妖忌さんはそれを受けて、目をつむった。
そして、持っていた二つの刀を地面に突き刺した。
「いいだろう。だが、儂は二度と戻らん。貴様の覚悟が本物ならまた戻るじゃろうて」
「・・・はい」
そう言って妖忌さんは静かに消えていった。
おそらく、妖忌さんはあの場にいるだけでも限界だったのだ。
・・・だけど、分からない。
なぜ、妖忌さんは俺を止めようとしたのか・・・彼は、わかっていたのだろうか。
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「ふはははっ!!あははははっ!!」
たどり着いた途端、そんな笑い声が聞こえてくる。
そこに居るのは、俺の知らない男・・・そしてその男の隣で縛られている紫ちゃんだった。
「まさか・・・まさかこんなところにいるとはな!!」
その男はまるでなくしものを見つけたかのように笑い狂う。
紫ちゃんの服はボロボロで顔も恐怖で染まっている。
まるで、初めて会った時のようにおびえている。
「待て」
「っ!!」
「あはは・・・ははっ・・・・・・なんだ貴様は」
その男に声をかけると、その男はそう返してくる。
俺を見つけた紫ちゃんがまるで逃げてと言わんばかりに暴れて俺に何かを伝えようとしている。
その男はとても不機嫌そうに俺を見る。
「貴様、名は?」
「・・・雨月 時雨。」
「ふぅむ、そうか。貴様が予言で殺すべきと分かったあの雨月時雨・・・か。」
その男はとても愉快そうに、そしてとてもイライラするように紫ちゃんに触れる。
「紫ちゃんから手を離せ!!」
「ほぉ・・・これから、私がやることに気づいたのか?」
「・・・いいから離せ!!」
「滑稽だな・・・だが、これからとても面白いショーが始まるんだ。邪魔しないでもらおう。」
その男が、紫ちゃんにどす黒い何かを送り始めた。
その同時に紫ちゃんは苦しむように暴れ始め、目が段々と黒く染まってゆく。
「やめろっ!!」
俺は雨簾を抜刀しその男に向かい振り下ろす。
しかし、その男は身動きもせずただ俺を見つめた。
その途端、俺は何かに吹き飛ばされる。
「っ!?」
「・・・・・・」
それは傘を振り切った紫ちゃんだった。
だけど、普段の優しい雰囲気の紫ちゃんではなく、ただ俺に向けて冷たい殺気を放つ紫ちゃんだった。
着ている服も段々と変化し紫色のドレスから段々と淫らで黒く、禍々しい服へと変化してゆく。
「ふふふ、ふはははっ!!!どうだ!!愛しい者を奪われた気分は!!」
「貴様っ、紫ちゃんに何をした!!」
紫ちゃんの傘が凶暴な剣へと変わり、俺に向ける。
その眼はとても黒くそして赤い・・・まるで深淵そのもののようだった。
「何をしたかだと。ふはは・・・ふははははははっ!!それすら気付けぬ愚か者とは笑わせる!!」
「っ!?」
その男は紫ちゃんに優しく抱き着く。
紫ちゃんは俺に殺気を向けてただそれを受け入れていた。
「簡単なことだ、このものは私に惚れた。それだけのことだ」
「っ!?」
それを聞かされただけで、目の前が暗くなる。
うそ・・・だ。だって紫ちゃんは・・・
「それが、貴方の能力。よね、アダム。」
いつの間にか隣にルーミアさんが現れる。
もちろん、いつものおっとりとした雰囲気ではなく、仇的に向けるように憎悪の様子だった。
アダム、そう呼ばれた男は大笑いしつつ肯定する。
「ああそうだ!!これが私の能力!!女を操る程度の能力だ!!」
「・・・」
「それで・・・それで紫ちゃんを・・・」
「ああ、そうだ!!たとえ、最強であろうとも恋人がいようとも夫が居ようとも!!この能力さえ使えば全員私しか愛せなくなる!!」
ああ、段々と・・・あいつを殺したくなってきた。
「私が全ての神なのだ。よって、すべての女は私に愛されることを望み、私を愛することが決まっている」
「だ・・・」
「あぁ?なんだぁ?聞こえぬなぁ」
「だ・・・ま・・・」
「聞こえぬと言っておろう。」
「黙れ!!」
ああ、何が神だ。こいつは神様なんかじゃない。
こいつは自分が第一の変態だ。だったら・・・
「コロス。」
「落ち着きなさい、時雨君!!」
アダムに高速で接近し、雨簾を殺す勢いで突き出す。
だけど、そこに紫ちゃんが割り込んでくる。
俺は、そのせいでピタッと止まってしまう・・・だめだ、紫ちゃんを攻撃することはできない。
「どいてくれ!!」
「・・・・・・」
紫ちゃんが、禍々しい剣を俺に振りかざす。
俺はそれを後ろに飛ぶことでかわし、雨簾を構える。
どうにかして、アダムだけを殺したい・・・だけど、紫ちゃんがそれを阻む。
どうすればいい・・・アダムを殺すには・・・
「馬鹿!!」
考え事をしているとその声と同時に殴られる。
殴った人はルーミアさんだ、でも、どうして・・・
「冷静になりなさい、紫ちゃんは操られているだけよ?」
「それで冷静でいる方が、おかしいじゃないですか!?」
「・・・わかってないわね。」
「?」
つい、その言葉がわからなくてルーミアさんの顔を見上げる。
そこにあったのは冷遇な瞳ではなく今にも泣きだしそうな顔があった。
「紫ちゃんが好きなら、死んでも構わないでしょ?だったら、死ぬ気で受け止めなさい!!」
「っ」
そうだ、自分はなぜ殺すことを優先していた。
俺は紫ちゃんを護り、あれを封印して幽々子さんを西行妖から助け出さなければならない。
そうだ、何を血迷っていた。
「・・・そうだ。俺はっ」
雨簾を納刀し紫ちゃんに一歩、また一歩と近づく。
「ふっ、武器も持たずに近寄るとは、気でも狂ったか・・・殺せ!!」
「・・・・・・」
操られた紫ちゃんが禍々しい剣を俺に突き刺そうとする。
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side:ru-mia
ザシュッ・・・
時雨君の背中から禍々しい剣が飛び出してくる。
だけど時雨君は、優しく操られている紫ちゃんを抱きしめた。
「大丈夫、俺はここにいるよ」
時雨君が紫ちゃんにそう声をかけると、紫ちゃんの方がぶるぶると震えだす。
「っ!?どうした!?早くその男を黙らせろ!!」
アダムが、能力を使い紫ちゃんにそう命令する。
だけど紫ちゃんは剣を手放しそっと時雨君の胸に泣きついた。
「ご・・・めん、な・・・・・・さい。」
「大丈夫、大丈夫だよ」
「・・・だから、ゆっくりと休んで。」
時雨君が、紫ちゃんに優しくそう声をかける。するりと、紫ちゃんは力なく崩れ落ちた。
黒い破廉恥な服も元に戻り刺さっていた剣も元の傘に戻ってゆく。
「なぜだ・・・なぜだ!?」
アダムは、それがなぜだかわからず混乱し始める。
「簡単なことよ、アダム」
私はそんなアダムの真後ろに移動し。
「貴方が、バカだっただけよ」
グランで、首を斬り落とした。
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アダムが倒れた今、西行妖も静かになり始める。
しかし、まだこれで終わりではなかった。
時雨が、ゆっくりと雨簾を抜刀する。
「・・・どうするの?」
そんな時雨にルーミアがそっと声をかける。
ルーミアは眠ってしまっている紫をそっと膝枕しているが心配そうに時雨を見つめている。
「終わらせます、この悲劇を」
「・・・のぉ、時雨」
いつの間にか、ルーミアの隣にアイリスが現れる。
しかし、アイリスだけではなかった
石畳の階段のところで死者たちと戦っていた勇儀と萃香。
見えないところで奮戦していた幽香と文。
最後まで死神の士気をしていた映姫と小町。
時雨と出会ったほぼすべての人がそこに集まっていた。
「・・・それで、サヨナラなのか?」
アイリスがそう問いかける。
「いいえ、サヨナラじゃないです」
時雨は、振り返らずに首を横に振る。
「なあ時雨。」
「なんですか?萃香さん」
「・・・帰って来いよ。あたしらは嘘は嫌いなんだ」
その言葉に勇儀も黙ってうなづく。
時雨は、うん。と返し萃香と勇儀はそっと白玉楼から去る。
「お兄ちゃん・・・」
「・・・ごめんね、幽香」
「ううん。謝らないでよ母さんには私から伝えとく・・・お兄ちゃんはお父さんと同じく好きな人を護り切ったって」
「・・・ありがと」
幽香はそれだけを言い残すと、ただ黙って去ってゆく。
ここにいても、何もないからだ。
アダムが倒れた今、使徒と天使たちはもはや反抗の猶予はなくもうすでに撤退を済ませていた。
「時雨さん」
幽香の次は、四季映姫が声をかける。
「貴方は黒です。許されません」
「はい、わかっています」
「・・・だから、早く帰ってきなさい。さもないと、地獄に突き落としますからね」
「あはは・・・はい」
映姫はそれだけを言うと背を向ける。
「小町、行きますよ」
「はーい」
「・・・今だけは不問にします」
小町は特にいうこともなく去っていく映姫についていった。
「師匠・・・」
「文ちゃん。ごめんね」
「いいえ、師匠はいっつも無理してましたからね」
「あーう・・・言い返せない。」
「ですが、紫ちゃんだけは幸せにしてあげてください」
「・・・わかった」
「じゃあ、私から言うことはありません!!じゃあ、師匠!またどこかで!!」
そう言って文も去ってゆく。
残されたのは、時雨とアイリス、ルーミアと眠っている紫だけだ。
「・・・二人に、頼みたいことがあります」
「なんじゃ?」「なに?」
「二人に、紫ちゃんを任せたいと思います。」
「「・・・・・・」」
「もちろん、ずっとなんて言いません。ちゃんと帰ってきますから」
「当然じゃ、帰ってこなかったらぶっ飛ばしてやるからな」
「ふふ、ええ分かったわ・・・。」
「じゃあ・・・行ってきます」
「「いってらっしゃい」」
時雨が、ゆっくりと西行妖に向かい雨簾を振り下ろす。
それだけで西行妖から、取り込まれた西行寺幽々子が出てきた。
それをアイリスが急いで受け止めバッと西行妖から離れる。
「時雨流・・・秘奥義。【枝垂桜】」
時雨が渾身の秘奥義を西行妖に向かい放つ。
それを受けた西行妖は、絶叫を上げてあたりに死を振りまく。
しかし、それはすべて時雨が防ぎゆっくりと西行妖を弱らせてゆく。
その様子をアイリスとルーミアは静かに見届けている。
やがて、時雨の姿は消えてなくなり。
枯れ果てて封印された西行妖が残された。
その根に。雨簾をつけながら。