その後、無事に八雲紫は目を覚ました。
「んっ・・・んうっ?」
「紫さま!!」
「ら・・・ん?」
「はい、私は此処です!!」
目覚めるまで3日。
紫は再びの平穏を取り戻した白玉楼で眠り続けていた。
しかし、目覚めた紫を迎え入れたのはつらい現実だった。
「あら~?貴女はどちら様~?」
暴走した西行妖に取り込まれた反動で幽々子の記憶はすべてなくなってしまい、救い出されたころには生霊となっていた。
紫は打ちひしがれたが負けずに笑顔を作り
「私は、八雲紫。貴女の親友よ。」
そう告げた。それだけではなかった。
自分のせいで魂魄妖忌は行方不明となり、さらに至っては膨大な量の妖怪やモンスターが死に、世界中に混乱を巻き起こしていた。
そして、何より紫をどん底に突き落としたのは、西行妖の根に突き刺さった雨簾であった。
「師匠・・・うっ・・・うわあぁぁぁぁんっ!!」
帰ってこないかもしれない、その考えが紫の頭を過り、紫の心はもろく崩れ去ってしまった。
紫が、それを見てからというもの白玉楼であてがわれた自分の部屋に閉じこもってしまった。紫を任されたルーミアとアイリスは必死にお世話を続けていたのだがそれでも彼女は
立ち直ることはなく、部屋の隅でただ泣き続けていた。
藍は必死に励ますも、自分の非力さに涙を流し少しでも元気になるように彼女の式として動き始めていた。
そんな紫を立ち直らせたのは、魂魄妖忌の孫娘、魂魄妖夢であった。
妖忌がいなくなり魂魄家から妖夢が送られてきたのである。
妖夢はそっと正門前に突き刺さっていた楼観剣と白楼剣を抜き取り祖父の形見として大切に扱い始め、いなくなった祖父と同じように幽々子のお世話を始めたのである。
最初はぎこちなかった妖夢だが、段々と慣れ始め妖忌には届かないものの幽々子を満足させられるようにはなり始めた。
そんな努力を重ね、ついには幽々子が笑顔になるようになってから紫は少しづづ妖夢の姿を見て、ああ自分はこの子たちの未来を護ったんだな。そう思い始め立ち直り始めた。
そして、紫は時雨の夢であった妖怪と人が共存する楽園を作り始めようとした。
師匠が作れないなら私が作る。そうすれば少しでも師匠の為になるから。
それは紫の自己満足でもあったが誰も彼女を止めなかった。
まず、紫が始めたことは土地決めだった。
手始めに龍神様の元へ赴き、土下座までして龍神様に土地の一部でも譲ってもらえないか頼み込んだ。龍神様はその意気や良しと言い快くとある土地を彼女に譲ったのである。
そして、次に始めたのはそこに住む住人達を集める事だった。
日ノ本の各地にある村に頭を下げつつ説明し移住しないか説得したものの
どこの村でも門前払い、果てには殴られたこともあった。それでも紫は諦めずに回り続けた。そしてついに、一つの貧しい村の人々がそれを快く引き受けたのであった。
これで、紫が作る”幻想郷”に住む人は決まった。
しかし、妖怪はそうもいかなかった。
唯一、彼女の作る幻想郷に加盟すると名乗ったのは妖怪の山のみ・・・
だが、それ以外の妖怪たちにはすべて拒絶されてしまった。
それからもたくさんの問題はあった・・・しかし、紫は誠心誠意に頑張り
やがて認められ、ようやく幻想郷の雛形が出来上がった。
しかし、その時になるとすでに妖怪と人間では差が生まれ始め妖怪たちは段々と姿を消していたのである。
そのために、紫は助けを求めた。かつて一人で抱え込んで失敗した故の成長でもあった。
それに答えた者たちによって、博麗大結界が作り上げられ、幻想郷は完成した。
しかし、できてからも問題はあった。
勝手に住みつき、我が物顔で暴れる妖怪や高慢で好き勝手に自然をまさぐる神々・・・
人間は怯え、ただ静かに滅びゆくかと思われたが・・・ここで待ったをかけたのが紫の友人たちだった。
それからも、いろいろなことがあり・・・そして・・・
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「こうして、平和な幻想郷が生まれましたわ。」
ここまで、長い昔話を話し終えた紫がそっとお墓を見る。
雨月 時雨と彫られたその墓は、静かに佇むだけだがもの悲しげに存在していた。
そう、幻想郷創設から早一世紀近く。
いまだに雨月時雨は帰ってこずに、紫は一人寂しく幻想郷にて待ち続けていた。
「師匠・・・貴方はいつまで私を待たせれば気が済むのでしょうか。」
紫はそっと何も入っていない墓に触れそうつぶやく。
何人もの博麗の巫女の代替わりを見てきた、
紅霧異変や春雪異変、様々な異変が起きては13代博麗の巫女・・・博麗 霊夢によって解決された。
何回も季節が廻った。
それでも
それでも雨月 時雨はいまだに帰る気配はなかった。
「・・・紫。」
後ろから、女の子の声がする。
今代の博麗の巫女、霊夢の声だ。
「あら、霊夢。三日ぶりね」
「ええ、ここで何をしているのかしら?お墓参り?」
「・・・ええ。」
「・・・・・・訳アリみたいね。今回は見逃すけど、ここは人里に近いんだからね」
「わかっているわ。今度は見つからないようにする」
それだけ言うと、霊夢はあっそ。と言ってそそくさと帰って行った。
「・・・師匠、今年は今日だけしか来れませんが・・・また来年にでも」
「その必要は、もうないよ」
懐かしい声が聞こえた。
紫は、震えながらも振り返る。
「帰って来たから。」
「っ!!」
紫は、泣きながらもその声の主に抱き着いた。
「ひっぐ・・・うっぐ・・・遅かったですね。」
「ごめんね、これでも急いで戻って来たんだけど。」
紫がそういうと、その主は困ったように頭をかいた。
「お帰りなさい!!時雨!!」
「うん、ただいま。」
幻想物語=八雲紫の物語=これにて完結。