幻想物語=八雲紫の物語=   作:ライドウ

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夏の終わりまで、26日。

他者の記憶に存在することで、”永遠に”その存在を保てる自然発生型。
ならば、その誰かが鮮明に覚えている状態で、死んだら?


第六話 化け物たちの戦い

日が、昇る。

この国と山に朝を伝えるためにゆっくりと登り、私と伊吹萃香と倒れ伏す”死んでしまった私(八雲紫)”と鬼たちを照らす。

油断せずに伊吹萃香をにらむが、首を折られてそのまま死ぬ。

 

そして、いつもの存在自体を再生する能力が発動する。

 

「っ!!ぜぇ・・・ぜぇ・・・お前さん、本当の化け物だな・・・」

「それは、お互い様ね。」

 

なぜ、こうなっているのか、時間は数時間前へとさかのぼる。

 

 

=====

 

四時間前

 

鬼の闘技場

 

「ここでなら、どれだけ暴れようと問題はないだろう。」

「ええ、そうですわね。」

 

伊吹萃香に先導されてたどり着いたのは山の頂上にある鬼が立てた闘技場だ。

鬼独自の技術のせいで、絶対破壊不能の程度の能力が付与されているのは気のせいだろう。

鬼たちが、狙っていたかのように私を囲う。

逃げないように囲ったのだろうが・・・私には、この能力があるから簡単に逃げられる。

 

「さて、できれば手荒な真似はしたくない・・・だから、その能力をよこせ」

「・・・私の境界を操る程度の能力を・・・ですか?」

「ああ、話が分かるはずだろ?だから、よこせ」

 

よこせ。と、言った途端に萃香さんが殺気を開放する。

私は、その殺気ごときでは動じないが、一応、動じたふりをしておく。

萃香さんが、にやりと笑うと一歩私に近づいた。

 

「この能力は・・・渡せません」

「ほぉ、私の殺気に立ち向かえるなんて・・・まだ生まれたばかりだと言えど、さすがだな・・・

「わたしだって・・・私だって300年生きた妖怪だ!」

 

私がそう叫ぶと、萃香さんの殺気がさらに膨れ上がる。

どうやら彼女の逆鱗に触れてしまったようだ。

瞬きした次の瞬間には、視界から萃香さんが消えてしまう。

周りを警戒するけど、見つからなく、私は上から飛び込んできた萃香さんに市毛句を食らわされた。

 

「たかだか、300年生きた小娘が調子に乗るな。いいからさっさとよこせ・・・」

「この・・・能力は・・・・・・絶対に・・・渡せない」

 

言葉がとぎれとぎれでもそういうと、拳が振り下ろされた。

私は、そのすきを逃さずに・・・

 

自分から致死になるようにした。

 

生々しい音が私の体から発生し、萃香さんは目を見開き、周りの鬼たちは恐怖した。

 

「あっ!姉貴!殺すのはまずいですよ!」

「ちっ、ちがっ・・・私・・・私はっ!」

 

どうやら、私を殺した罪悪感で精神を少し壊したようだ。

むしろ、想定内・・・

 

≪さっきまで、私に死ねといっていたのに・・・殺したら、精神崩壊しかける・・・鬼って、嘘つきなんですね」

 

私の特質が発動し、私は生き返る。

ただし、さっきまで生きていた私の死体はしっかりと転がっている。

 

「なっ!おっ、お前・・・なんで・・」

「私は、自然発生型の中でも最も希少価値の高い存在ですよ?」

「まっ・・・まさか」

「ええ、私は他者の記憶に八雲紫()がいるだけで、こうして無限に生き返ることが可能。」

「ばっ、化け物め!」

 

鬼の一隊が、私に殴りかかってきたので、私は隙間を開き、その隙間から妖力で編み出したレーザーを打ち出す。

妖力で作ったと言えど、気絶する程度の威力しかないけどね・・・

その鬼にレーザーが殺到し、全部が命中・・・その鬼は、白目をむいて地面に倒れる。

 

「あっ、兄貴っ!このやろぉっ!!」

「うっ、うおぉぉぉぉっ!!」

 

鬼たちが一人、また一人と襲い掛かってくるので、

ある鬼は、殴って気絶させ。ある鬼は、蹴って吹き飛ばし。ある鬼は、隙間送りにして精神崩壊を起こさせた。

まあ、相手は鬼だから、私も何回も死んだ。

私が、死んでも他者の記憶さえあれば、私は存在できるからまだいい・・・

でも、なぜ萃香さんはあきらめてくれないのであろう。

私が、この能力・・・”境界を操る程度の能力”は、いわば私という存在自体だ。

私が、スキマ妖怪ならば・・・私のこの能力は私の存在ということになる。

本当に面倒くさく、また便利な能力である。

それでも萃香さんは立ち上がり、息を切らしつつも私に敵意を向ける。

 

しばらくして、日が昇る。

この国と山に朝を伝えるためにゆっくりと登り、私と伊吹萃香と倒れ伏す”死んでしまった私(八雲紫)”と鬼たちを照らす。

油断せずに伊吹萃香をにらむが、首を折られてそのまま死ぬ。

 

そして、いつもの存在自体を再生する能力が発動する。

 

「っ!!ぜぇ・・・ぜぇ・・・お前さん、本当の化け物だな・・・」

「それは、お互い様ね。」

 

何度も何度も私を殺す化け物(伊吹萃香)

何度も何度も生き返る化け物()

この状態ではなぜ、戦っているのか私がわからない。

おそらく、萃香さんはもう私の能力を奪うことをあきらめている。

そうでもしなければ何度も何度も私を殺さない。

私とて、こんな戦いは本当はしたくない。でも、戦うしかない

 

「ねえ、ここらでやめにしませんか?」

「いや、私は・・・あきらめないぞ・・・お前の、能力を奪うまでは」

「あきらめてるくせに?」

「あきらめてるくせに、だ。」

 

「私は、あきらめない性分なんでね・・・私の恋のためにも、絶対にあきらめねぇ!」

 

「そう・・・ですか」

 

勇儀さん、あなたの言ったことは確かなようだ。

萃香さんは、たしかに師匠に対する想いが私よりはるかに強い。

この人なら、本当に師匠と幸せに暮らしていけそうなぐらい・・・

だから、貴女は、あれだけ言うのをためらっていたのですね・・・

 

「わかりました・・・時間も惜しいことですし、次の一撃で決めましょう」

「そいつは・・・賛成だな」

 

私は、扇子を閉じて傘を刀のように持ち直す。

師匠との修行で手に入れたこの一撃、どうにか届かせるようにしないと。

萃香さんは、特異な格闘術の構えをし、私を細い目でにらむ・・・

 

しばらく、沈黙が流れ・・・

 

黒い風がなった瞬間、私と萃香さんの姿がぶれる。

 

「三歩必殺っ!」

「時雨流・・・桜花剣雷!」

 

 

 

 

 

 

 

 




今回はここまでなり!
さて、最後の勝負の行方は・・・

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