真夏に咲いた一輪の恋花   作:ソウソウ

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 初めましての方は初めまして。ソウソウです。
 数年前に展開だけ作っておいて放置しておいたこの作品ですが、折角なので投稿しておくことになりました。

 反応が良ければ、続きます。
 


-1-『運命×運命』

 ◇◇◇

 

 あれは真夏の日だった。

 雲ひとつとない快晴な天気。陽射しが容赦なく照りつけていた真夏日。

 そんな日に私は彼と出逢った。

 

「おーい………!!」

 

 彼が呼んでいる。

 私は彼の声に導かれ―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 気まぐれで近所の砂浜へと足を運んだ。

 特に目的なんて大層なものはなく、ほんの気の赴くままに。いつものことだ。

 ここ、アローラの砂浜から見える景色は相変わらず産まれた時から変わらない。水平線に沈みかけの夕陽がより淡麗な絶景を産み出している。

 足元に一つの影が近寄る。

 

「ん?アシマリ?どうしたの?」

 

 アシカのような特徴をもつポケモンの『アシマリ』がそのヒレをペチペチと叩いている。

 そして、ある一点を指差した。

 そこは海岸の北側。岩が多く、足場は悪い。が、人気はなくアシマリが見せたいと思わしき物はどれか分からない。

 アシマリはピシッ、と指差し直した。

 

「あっ………」

 

 そして、ようやく見つけた。

 数メートル岩場から離れた水面。ぷかぷかと『ラプラス』らしきポケモンが浮かんでいたのだ。

 さらによく見てみると―――

 

「………人?」

 

 ラプラスは甲羅がついた首長竜の姿をしている。あのラプラスの甲羅にはライドギア出来る為の装置が付いていた。

 ライドギア、とは簡単に言えばポケモンに乗れるように補助する装置だと思えば良い。

 となると、あのラプラスは野生ではなく何者かによって誘導され、あそこにいるわけであり、当の人物はと言うとラプラスの甲羅の上で釣りをしていた。

 こちらに背を向けているので顔は見えない。が、体格的に男の人。それも若い。

 

「あのラプラス………私のとこの」

 

 アシマリはきっとあれを伝えたかったのだろう。視線を下に向ければ、アシマリもあっちを見ていた。

 ラプラスのライドギア体験をこの近くで出来る場所がある。なんと言ってもそこは自分の家でもあるので、そこにいるラプラス達とは昔からの友達だ。

 向こうの水面にいるラプラスも友達の内の一体。と言うことは、あの人もきっと家へと寄ったはずとなる。

 

「………あれ?午後はお客さん来なかったはずじゃあ………」

 

 午後は両親の代わりに店番してた。が、最近はこの地域一体に賑やかさはなく、観光客もちらほらうろつく程度。

 暇潰しに苦労したのは鮮明に覚えている。お客さんが来れば、はっきり記憶にあるはずだ。

 だけど、彼には覚えがない。

 となると、あくまで予想だが、彼は午前中にラプラスを母親辺りから手続きして借りて、そのままずっと海の上で釣りをしていることになるのではないのだろうか。

 

「アシマリ、あの人がどうしたの?」

 

 あの人はきっと相当の釣り好きだ。そう結論付けた。ちょっとそれに興味があるが今はそれよりも先程のアシマリの行動が優先である。

 アシマリはと言うと、何言ってるの?とばかりに首を傾けた。

 

「あれ?違うの?」

 

 反応を見るに不正解のようだ。

 視線を向こうへ戻す。ラプラスの甲羅には先程見た彼と―――

 

「あっ………ポケモンがいる………あのポケモンは………ブラッキー?」

 

 彼の隣にポケモンが座っていた。

 真っ暗な全身黒に額の三日月模様が特徴のポケモン『ブラッキー』もラプラスの甲羅に乗って寛いでいる様子。

 さっきは彼の膝元に居たせいでちょうど姿が隠れて見えなかったようだ。

 そのブラッキーが動き出した理由は至極単純。彼がその場を立ったからだ。

 

「オォウ!」

 

 アシマリがパチパチと拍手?をしている。

 彼の釣竿に当たりがあり、それ故、立ち上がった。彼は今、海中に潜むポケモンと釣竿を通して格闘中であるのだ。

 アシマリはきっと彼を応援しているのである。

 

「そう!…………あっ………そこ!………」

 

 つい声が出てしまう。

 彼は苦戦している様子。大物だとすれば、一体何のポケモンなのか同じ釣り魂を持つ同士としてみれば興味心をくすぐられる。

 この時点で既に勝負の結末を見届けようと心に決めていた。

 

「オォウ!?」

 

 しばらく彼は竿を左右に動かして相手の体力を減らす持久戦に持ち込もうとしていたが、それでもなかなか戦況は優位に進まない。

 だが、しばらくしたその瞬間にアシマリが悲鳴のような鳴き声を上げた。

 それもそのはず。

 向こうにいる彼は一瞬とは言え油断して、釣竿を掴む力を緩めてしまったのだ。

 そこを突かれてしまい、釣竿を持つ彼は完全に体ごと持っていかれてしまう。

 状況を整理する。

 彼の現在位置はラプラスの甲羅の上であって、だいぶ狭い。数歩周りへと歩けば海へとまっ逆さまにドボン。そこでポケモンと格闘していたわけであり…………。

 

 ―――見事に海へ落ちた。

 

「アシマリ!!!」

 

 指示を承ったアシマリが海へとダイブ。

 地上では動きが遅い方のアシマリだが、水中では高速で移動が出来る。加えて、アシマリの鼻からは浮游効果を持つ人サイズ以上のバルーンを作れる。

 要するに海中の人命救助にはもってこいのポケモンだ。

 

「大丈夫かな………あの人………」

 

 とは言え、海岸から向こうまでは距離がある。彼がもしも泳げないとすれば、間に合うかどうかは分からない。

 

 ―――数分後。

 

 全身びしょ濡れになった彼。そんな彼がラプラスの甲羅にぐったりとなったままアシマリの誘導を元にアシマリの主のいる砂浜へと運ばれていた。

 因みに彼の手持ちのブラッキーは横たわる彼の背中に乗って真っ直ぐ前を見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 砂浜。

 

「………どうしよう」

 

 ひとまず、男性を一人で運ぶのは体格的にキツいと判断したのでラプラスに協力してもらい砂浜へと彼を仰向けにして置いてもらった。

 顔色は悪くない。それで次は?

 こういう緊急事態の対処方法は知っているものの、実際に行動に移すのは初めて。

 考えた結果。取り合えず、優しく彼のお腹を押してみようとして―――

 

「ぐへぇ!?」

「あ」

 

 刹那、ブラッキーがのし掛かった。

 続けざまに彼の悲鳴が。

 

「………え?…………ええっ!?」

 

 ―――慌てるしかないだろう。

 この場合の最善の対象は何をすべき。目の前に展開された場合は知らない。

 というか、普通は有り得ない。

 アシマリに助けを求めるも、アシマリ自体も困惑している様子。

 駄目だ、これ。

 

「ラッ!」

 

 ブラッキーは続けて、足踏みを始めた。

 もはや、主の容態は考えていない様子なのか、その行為に一切の容赦がない。

 

「痛い!痛い!」

 

 と、ここで彼が起きた。

 忘れていたが、ようやく彼の顔をはっきりと見ることになる。 

 青みがかかった黒髪。全身濡れているのであれだけど、マオが見たらきっと喜ぶ程度にはイケメンだと思う。

 

「ん………?」

 

 彼は辺りを見回し、状況を確認しているようだ。勿論、彼の視界には自身も入る訳であって………。

 自然と彼と目があった。

 どさっ、と音がなった。

 

「………ご迷惑お掛け致しました」

 

 土下座。あの一瞬で見事な土下座を彼はしていた。ブラッキーも強制的に彼の右手によって頭を地面へ押されている。

 ぐぬぬ、と少しだけ抵抗している感じがなんとも愛らしい。

 ―――この人、結構頭回る人なのかな?と思いながらもこんな公共の場でされてしまうとされた方も羞恥心があるのですぐに止めにかかった。

 

「いやっ………そんなことは………」

「あなたは命の恩人です」

「それほどでも………ない。頭あげて?」

 

 ちょっと照れる。

 

「それよりも、体の方は大丈夫?」

「ん?………大丈夫かな」

 

 彼は上半身をあげて、確認する。

 こちらから見ても、異常はなさそうだ。ひとまず、一安心。

 

「ただ………服がびしょ濡れだ」

「あ………」

 

 そうだ、彼は海に落ちたのだ。

 彼の着ている服の端からは滴が垂れている。と、彼が服を握って絞りだした。

 

「着替えはある?」

「ない」

 

 きっぱり答えた彼。

 その後小さく「今日はキャンプファイアだなぁ………炎出すやついたっけ………」と呟いた。

 

「………あの」

 

 聞き逃す訳がない。彼は今、困っているのだ。助けの手を差し伸べてあげるのがアローラの教え。

 

「うん?」

「ウチに来ますか?」

「それは悪い。ただでさえ既にお世話になってるわけだし」

「でも、服が濡れたままだと風邪引きます」

「そこはあれだ………よくあることだし慣れてるから平気、平気」

 

 彼は頑固に首を縦にふらない。

 事態は一刻を争う。無理矢理にでも彼を家へ連行する必要がある。少なくとも彼にこのままでは居てもらいたくない。

 普段の自分では珍しい行動だと思う。

 同じ釣り好きだから今の彼を放っておけないのだ、きっと。恥ずかしがりやの自分がここまで彼に対して気持ちが駆り立てるのも勝手に感情移入しちゃってるからに違いない。

 ふと視線を逸らすと先程のラプラスがまた視界に入り―――

 

「あのラプラス、どうするの?」

「え?そりゃあ………あいつは朝に店の人に貸してもらったから、返すけど」

「なら、私と一緒にきてくれますね」

「………何で?」

「私のとこのラプラスだから」

「………」

 

 彼は驚いたのか言葉が詰まる。

 

「私の家に来てくれる………よね?」

 

 もう頷くしかない。

 彼の選択肢は知らずの内に皆無であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 -2- へ続く。




 ◇◇◇〔おまけ〕

「ところでそのポケモンは?」
「アシマリのこと?」
「オゥ!」(パチパチ)
「………なかなかの元気っぷりだね」
「因みにこんなことも出来るんだよ。アシマリ、バルーン」
「うわぁ。すげぇーな」
「凄いでしょ」 
「あれ?なんか荷物が軽くなったような………俺の釣り竿どこ行った?」
「ラ?」
「おい、釣り竿をどうしようとしてるんですか!?バルーンの中に!?………入っちゃった」
「………どんどん空へと浮いていっちゃう」
「………あの、いつ割れるんですか……」
「オゥ~~」

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