冗談………じゃないです♪
個人的に書きたかったシーンが書けて、もう勝手に満足しちゃってます。一日に二話投稿も初めてです。
◇◇◇
洞窟、入り口。
「何が起こったの………?」
落雷が今、目の前で。
滅多にない経験に私はただ戸惑うのみであった。
当事者のラグラージ。
地面タイプなので、怪我はない。むしろピンピンした様子で私の元に戻ってきた。
そして、地べたに座る。その姿は姫を守る騎士を連想させた。
もしかして雷を予言。私を危機から守ってくれたのだろうか。凄いぞ、この子。
大雨は酷くなる一方だ。でも今は独りではないので少し安心する。
「―――………スイレン!!」
その時だった。
「………ソウさん!!」
雨音の中、微かに聞こえた声。
すぐに立ち上がった私は洞窟の雨すれすれまで行くと辺りを何度も見渡す。
―――居た。
レインコートに身を包んだ彼が雨と風に打たれながらも懸命に歩いてきていた。
「やっと見つけた………!!」
「ソウさん………どうしてここに?」
「分からんよ。体が勝手に」
彼だ。彼がいる。
「恐かったです………土砂崩れに巻き込まれそうになって、独りでずっと待って………」
「ごめんな。もう少し俺が早く来たら」
「いえ………私の自業自得ですから」
我慢の限界だった。
災難に遭い、そこから孤独になった時間は永遠に終わらない悪夢のごとく。私の恐怖心を刺激していった。
希望の光が差し込み、私は目を覚ました。
彼のお陰で。
「スイレン!?」
「ごめんなさい………しばらくの間だけ」
ぎゅっと彼の体を抱き締める。
濡れた彼の体は冷たい。でも、ぬくもりは何倍にも暖かい。
独りに怯えた私。嘘のように不安は消えていた。
彼は黙って腕を回してくれる。
「………帰ろうか。皆、待ってる」
「はい………」
ゆっくりと離れる。
この瞬間なら永遠の夢に溺れても良い。そんな甘い欲望からも一緒に。
「それから"ラーグ"、スイレン見つけてくれてありがとうな。後はゆっくり休んでおいてくれ」
「ラグ」
待機していたラグラージをボールに戻す。
彼の手持ちポケモンを知ったのはこのラグラージで四体目。
「雨、止めそうにないな」
「どうしましょうか………」
「このまま居るのも結局、体壊しそうだし………強行突破だな」
彼が呟く。物騒な感じに思えたけど。
彼が雨の中へ歩き出そうとした。慌てて、私が制止しようとする。
その私の頭を彼は優しく撫でた。
「大丈夫。後、ちょっとの我慢だから」
「どういう………!?」
そして、彼はこう空へ呼び掛けた。
「"ティア"!!」
名前だろうか。
返事は帰ってこない。当たり前だ。こんな大雨に人の声など通らない。
―――筈だった。
「えっ!?」
甲高い、透き通る綺麗な音。
返事の合図はそれだけ。
でもそれは私の知る限りポケモンの鳴き声のようにも聞こえてしまって。
まさか、今の彼の呼び掛けだけで反応を示したと言うのだろうか。少なくとも私が見える範囲で確認できる存在はいない。
そして、彼の前に出現したポケモンに私はまた目を丸くした。
「あー引っ付くなー!!お前もか!!」
赤と白の戦闘機みたいな姿。
つぶらな瞳にすりすりと彼に擦り付ける膨らな頬。
むげんポケモン『ラティアス』。
希少性の高い伝説ポケモンに分類され、人生賭けても出会えないとされるポケモン。人の気配や感情に敏感で、誰かの気配を察するとすぐに自らの姿を消すからだ。
基本的に争いを求めない、遊び好きな性格の持ち主だとククイ博士が過去に教えてくれた。一度だけでも会えたら良いなと願った、可愛いポケモン。
そのラティアスが彼に無邪気にじゃれついていた。なんだかデジャブを感じた。
「さっきまでいた"ラーグ"、ラグラージね。ラーグがスイレンを発見した合図をこの子、"ティア"に送るように事前に指示を出しておいた。ラティアスは耳が良いから仲介役を担当してもらうのに適役。まぁ恐らく、本人の気分次第だから返事代わりに雷かなんかをこいつ、落としたと思うんだけど………」
「うん、びっくりした」
「やっぱり………まぁそれを目印にした俺もあれだけどさ。でも、ティア?俺、捜索する前にちゃんと言ったよね?ラーグの合図が来たらまずは俺の所に来いって」
しゅんとするラティアス。可愛い。
「スイレンが無事だったから良かったけどさ。次に約束破ったら、そうだな………お前の大好物、オボンの実、しばらくお預けの刑」
ガーン!、と落ち込むラティアス。
表情が豊かな女の子だ。無性に頭をポンポンして励ましたくなる。
「さぁ帰るぞ」
「えっ?どうやって?」
彼からは一切、説明がない。
「勿論、ティアに乗って」
「あっ!?えっ!?待って!?」
彼に体を担がれた。しかもお姫様抱っこ。
恥ずかし過ぎる展開に小さな抵抗を試みる。でも、彼にあっさり無効化されてしまい私はラティアスの背中に乗せられた。
彼がラティアスに跨がり、私の背中にぴったりとつく。
急接近とはまさにこのこと。
追い討ちの如く、私のお腹に手を回してくる始末だ。
「あの………!!ソウさん………!!ち、近い………です!!」
「振り落とされるよりマシと思ってくれ」
「え………一気に不安になりましたけど………」
刹那、体が浮上。
ふんわり感を堪能する間もなく、一気に私と彼は急上昇した。
「きゃあああああ!!!!」
―――体感速度、ヤバイ。
危機を脱出。聞こえは良さげ。
でも現実ではそれどころではない。マッハ越えてる疑惑のスピードなのだ。
彼と私との体の密着と別の意味での命の恐怖が迫る私に一言だけ添えておく。
………ファイト。
◇◇◇
ゲストハウス。
「スイレーーーン!!!」
ぐへぇ、と潰される体。
おいおいと泣く声に私は目を覚ました。
「あれ………?ここは………?」
「宿。スイレン、途中で気絶しちゃったからここまで俺が運んできた」
最後の記憶はラティアスの背中。
バッサリと削除されように記憶はそこで途切れていた。
目覚めれば、宿の玄関。設置された椅子に私は座らされていた。
「うわぁぁぁあああんん!!」
「マオ………うるさい………」
友人の泣き顔に若干引き気味。
ぐいぐい私の服にへばりついてくる。引き剥がそうにもやたら力が強い。
すぐに諦めた。
「スイレン、怪我はない?」
「うん………大丈夫です」
「そっか。今日はもう休んだらいい。後処理は俺とマオとかでやっておくから」
「うん!!スイレンはもう良いよ!!」
「分かったから。マオ、離して?」
片時も離してくれない。
心配をかけてしまった詫びがあるので無闇に抵抗しずらい。
「オゥ!!」
「あ、アシマリ!!」
アシマリが廊下から顔を出す。
私の声に気付いたアシマリ、一目散に私の胸元へと飛び込んできた。
ぎゅっと愛しく抱き締める。
「ごめんね、心配かけちゃった」
「オゥ~」
アシマリの温もりをずっと。
扱いの差にマオが頬を膨らましていた。
「じゃあ、ソウさん。私………」
「あぁ。博士達には全員無事が確認出来た旨を報告しておくから」
彼が行動に移そうと場を離れる。
「ソウさん!!」
足を止めた彼。
無意識の行動だった。私は渾身誠意のお辞儀を見せた。
「ありがとうございました」
「………どういたしまして」
振り返ることなく答えた彼。
でも、いつにも増して彼の言葉は喜んでいるように思えた。
「スイレン?どうしたの?」
「ううん………何にもないよ」
きっと気付いたのは私だけ。
そう思うと不思議と私の心の中は充実感で満たされるのであった。
-11- へ続く
◇◇◇〔おまけ・クーちゃんvsティア〕
「クチーーー!!」
「ーーーーッ!!」
ペシペシペシ。
「二人ともどうしたんだ?」
「クッチ~♪」
「~~~~♪」
「仲良いのな、お前ら。あ、忘れ物した。部屋に戻るからもうちょっと待っててくれ」
――――コツ………コツ………コツ。
「クチーーー!!」
「ーーーーッ!!」
ペシペシペシペシペシペシペシ。