真夏に咲いた一輪の恋花   作:ソウソウ

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 たったの数日で急にこの小説のお気に入り数や評価数が跳ね上がりましたけど………なんかありました?



-13-『天災×役目』

 ◇◇◇

 

 海の砂浜。

 

「マナフィ。スイレンなら分かると思うけど………海ポケモンの頂点に立つポケモンと言われてる」

 

 彼は優しくマナフィを抱っこする。

 マナフィに抵抗する様子ない。むしろ、喜ぶぐらいにその腕を伸ばした。

 

「俺みたいな一般人と一緒に居る………今のこの光景ですら未だに本人の俺が信じられないぐらい、本来であればここに居ては駄目なポケモンだ」

 

 幻のポケモン。

 彼はおろか人類がもってしても解明できない生態を多く持つポケモンが大半。

 マナフィもまたどういうポケモンなのか、その殆どは謎に包まれたまま。

 

「でも、ちょっとした事情があってね。俺が暫くの間だけ預かることになった」

「預かる………ですか」

「スイレンは知ってるか?先祖の中に、"水の民"と呼ばれる人達が居たらしいって。なんでもポケモンと心を通わせる特技を持つとか」

「い、いえ………」

 

 とても羨ましい、その特技。

 

「その一族の末裔となる人と俺は昔、旅の途中で奇遇にも会える機会があった。その人は水の民の末裔のみ、つまり今の家族だけで劇団を結成していたようで、あちこち移動してはサーカスショーを開催。それで収入を稼ぐ生活をしていた」

 

 彼はマナフィの頭を撫でる。

 

「向こうの優しさもあったりして、俺も数日間だけ同行させてもらった。リーグ戦が終わった後だったから時間も余裕があったし、何より楽しそうにあの人達は毎日を過ごしていたからその恩恵に預かろうと思ってね」

 

 彼の出会い話は続いた。

 話題に上がった水の民の末裔で結成されたのは"マリーナ一座"。その当時では珍しく大規模なポケモンのサーカスを題材に活動していたそうだ。

 さらにショー自体は水中ポケモンによる演技構成で占められる。同じ水ポケモン使いとして興味がとてもそそられる。

 彼も一度、体験としてラグラージと共に出演したらしい。何それ、とっても観たい。

 

「私も観てみたかったです」

「今は何処で何してるのか、全然分からないからな~。難しい相談になるね」

「はい………でも、それとこの子はどんな関係が?」

「それはこれから。あれは俺が同行して三日目だったかな。その日、ある事件が起きたんだ」

 

 彼が語る事件の顛末は以下。

 日が沈んだ深夜。移動の主役、キャンピングカーに寝泊まりしていた彼は外から聞こえる物音に目を覚ました。

 音の正体を確かめようとした際、偶然にも鉢合わせしたらしい。

 

 ―――襲撃者と。

 

 其処から状況は一変する。

 襲撃者サイドは彼に発見されたのを機に数の暴力でポケモンを利用し、攻撃を仕掛けてきた。彼を含めたマリーナ一座も決死の抵抗を試みる。

 

「奴等が襲ってきた理由は俺には分からない。あの時はホントに焦った。だけど、向こうもポケモントレーナーの俺が居るとは思わなかったらしくて、ある程度返り討ちにしてやるとすぐに撤退していった」

 

 やがて、徐々に全容が判明する。

 ポケモンハンターと呼ばれる密猟者の中でもトップレベルに厄介な癖者が襲撃の件を率いていたとのこと。

 ただ、実際に襲ったのはその手下達。彼の手持ちポケモン達が守護する前に為すすべなく泣く泣く帰るしか道は残されて居なかった。

 

「襲撃された次の日、俺はマリーナ一座の一人"マリア"さんって人に呼ばれた。彼女から話された内容は家族を守ってくれたお礼と俺に個人的なお願いがあったの二つ。お礼されたのはまぁ………あれだけど、特に問題だったのは彼女の頼み事の中身」

「それは何だったんですか?」

 

 マリアは彼にこう言ったらしい。

 

()()()のマナフィを俺の手持ちにして、守って欲しいと言われた」

「色違いですか!?」

「あぁ。マナフィってだけでも結構驚いたのにまさかの色違いだもんな」

「初めて見たので………私には分かりませんが………」

 

 "色違い"はポケモンが誕生する瞬間に特異変質を持って産まれるポケモンを指す。

 ステータスに変化はないが見た目はポケモンの種類によっては大きく変化する。

 それがマナフィにも適応されるとは。

 マナフィってだけでも既に稀少性は計り知れない。そこに色違いの要素が足されるとなると私では想像のつかない何かが起こる。

 

「どうやら襲撃してきた奴等はその情報を知っていたらしい。情報源は未だに分からず。だとすれば、再び襲ってくるとも限らない。それにあたって、マリアはマリーナ一座の代表として俺にマナフィの保護を依頼してきた」

 

 マナフィの希少性の価値は不明。

 ポケモンハンターにとっては絶好の標的とされるはず。しかも、先日に狙ってきたのはポケモン警察でも手を焼くプロ並みのハンターの仕業と分かった。

 マリアは自分達の力だけでは保守しきれないと気付いた。ならトレーナーとして実力もあり協力的な彼に託すしか道がない、と苦渋の決断を迫られたのだろう。

 

「あくまでマリーナ一座はサーカスの一団であって、個人でのバトルの実力はいまいちだって事は自分達でも嫌という程、痛感してる………依頼を聞いたと一緒にそうマリアから言われたよ」

「………辛いですね」

「あぁ。俺を騒動を巻き込まないようにマリアもギリギリまで粘ってくれた。でも、マナフィの安全を確実にするには俺の元にいる方が良いそうだ」

 

 彼に頼む時のマリアは涙を流していた。

 マナフィと離れるからではない。他人の彼に全ての責任を押し付けてしまう自分に嫌気が差したから。

 それでも彼は頼みを引き受けた。

 全ての覚悟を犠牲にしてまで。

 

「それ以降、俺は徹底的に対策を仕込ませてもらった。マナフィを預かったその日に一座から離れたり、知り合いにネットに強い奴が居たから、俺の個人情報は軽く隠蔽してもらったりとか」

「あ………だから、マーマネが………」

「ん?誰かが俺の身元を調べたりしたの?」

「………ごめんなさい」

「責めるつもりはないよ。それが普通だし」

 

 私の謝罪に彼は気にしないで、と言う。

 それでも相手のプライベートを不許可で覗こうとしていた真似は変わらない。

 

「相手の身元が不明だと逆に怖いからね。正直、やり過ぎ感があったことは認める。あんまり効果は無さそうだし、近いうちにまた友人に頼んで戻してもらうか。

 ………話を戻そう。

 マナフィを引き取る際に説明されたけど、このマナフィは特別な能力があるそうだ」

「マーナ?」

「特別な能力。人と話せる能力とか………ですか?」

「マナー!!」

 

 ―――ちがうもん!!

 

「うん?違うって?………え!?今のは!?」

「本人直々にお達しが来たようだね」

 

 脳内に言葉が流れ込む。

 そんな信じがたい現象なのだが、私はまさに今、それを目の当たりにした。

 犯人はこの色違いマナフィ。

 私と彼の会話をこの子はしっかり理解し、そして彼の言葉に返した私の答えにちゃんと不正解と印を押したのだ。

 

「この子………今更だけど、ニックネームを言うの忘れてた。"マナ"って名前」

「あっ、はい。マナちゃん?」

「マナ!!」

 

 元気よくマナフィが腕を上げる。

 

「あれ?普段だとマナはあんまり人にはなつかない性格なんだけどな………スイレンだと平気みたい」

「どうしてでしょうか?」

 

 マナー!とマナフィは私の胸元へ飛び込もうと抱っこする彼から懸命にもがき始めた。

 あまりの可愛さに親近感が湧いた。

 

「で、何を話してた?」

「マナちゃんの特別な能力です」

「あっ、それそれ。マナフィはさっきみたいに人とコミュニケーションが取れるポケモンだけど、マナはさらに海のポケモンをどんなに距離があろうと呼んでしまう能力があるらしい。

 発動条件はマナ自身が身の危険を感じた時。マナは無意識にするから一度でもそれが発動してしまうと………」

 

 ―――なーに?

 

「下手をすれば、あの()()()()()すらも召喚してしまうかもしれない」

「カイオーガ………!!」

 

 伝説のポケモン『カイオーガ』。

 海を創造した伝説として神話に登場する。過去に干ばつに苦しむ人々を救った逸話も存在している。

 大波や大雨で海を広げたとされている。

 つまり、カイオーガがアローラに現れるとメレメレ島なんて一瞬で海に沈む未来が完成してしまう。

 そんな未来なんて絶望の他、言葉が出ない。可愛い姿に秘められた災厄の力。

 

 まさに―――"天災"の子。

 

「それに………まだマナを狙うハンターが警察に確保されという情報がない。何処かで俺を探しているかもしれない。向こうの出方がまったく不明な今、俺には出来る限り場所を転々と変えて過ごすしか方法がない」

「だから………あんなことを………」

 

 同じ場所に留まると、マナフィを狙うハンターは捜索しやすくなる。

 彼は行方をあえてあちこちに眩ます事で難を逃れようとしている。

 

「………もしハンター達と戦闘が起きてしまえば、俺はあの子達を守る余裕はない」

「で、でも!博士やカキにマオだっています!きっと大丈夫ですよ!」

「前回と違って、敵どもは確実にバトルに腕のある人員で構成されているはず。一対一ならまだしも、一対多に慣れてないカキ達では正直キツイ部分が目立つ」

「私だって………一緒に守ります!」

「ありがと。その気持ちだけで十分だよ」

「ソウさん………」

 

 分かってはいた。

 彼にとって今の私の実力では足手まといにしかならない事なんて。

 でも、彼から言葉を濁してるものの、はっきりとその事実に直面してしまえば、心は苦しい。

 

「マナ?」

 

 ―――だいじょーぶ?

 

「………うん」

「おっ、マナ?どうしたんだ?」

「マーナ!」

 

 彼に抱かれたままのマナフィが私の方へ腕を伸ばす。

 心と通い会えるポケモン。

 この子はこの子なりに私を励まそうとしてくれるのだろうか。

 

「あっ………」

 

 私の手はマナフィの手にそっと触れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 その日の夜。私は不思議な夢を見た。

 目を開けると、私は海中に浮かんでいたのだ。まるで自分も海の一員となったかのように。

 すぐにこれは夢だと分かった。

 辺りを見渡せば、様々な種類の水ポケモン達が平和に過ごしている。

 

 そして―――見つけてしまった。

 

 海底に聳え立つ神殿。

 あまりの神々しさに心底怯える私。だが、夢だと分かりきってるので冷静に考えて神殿へ近づくことに。

 水中なのに呼吸するのが全然辛くない。

 夢の世界なら何でもあり。

 神殿の内部は幾何学的模様の壁や天井で構成されていた。何故か自然と心が惹かれる。

 それと、位置は海中なのに地上と同じく空気があった。お陰でゆっくり歩くことも出来る。

 眺めながら神殿奥へと踏み入れる。

 鎮座する台座があった。私はもっと近くで見ようと進んで其処で―――

 

 ―――意識が途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 -14- へ続く。




*役者は出揃いましたね。名前はまだですけど。
 それとマナフィに、んな力ねぇよと思わないでください。色違いなのでそういう能力も追加されたとでも思っておいてください。
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