真夏に咲いた一輪の恋花   作:ソウソウ

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 お久しぶりです。ちゃんと生きてます。
 ここからどういう展開になるか、書いている自分も楽しみにしてるぐらいなのでまだまだ余裕です。



-16-『交代×窮地』

 ◇◇◇

 

 ???。

 

「ぬ、抜けた………!!」

 

 あの後、森林を突破した。

 さらにツタージャの先導に促されつつ移動していく。

 砂利道が目立ってくる。潮風もより鮮明に。

 

 ―――ここを越えれば………彼が!!

 

 ものの数分。たかが数分。

 何度も通った道がやけに長いように感じた。

 と、次の瞬間。

 

「タジャ」

「えっ!?」

 

 ツタージャが急停止。

 咄嗟に反応した私を褒めて欲しいぐらい、何の前触れもなくそれは起こった。

 その原因はすぐに現れる。

 大量の泡が猛烈な速度で前方から迫ってきていたのだ。

 

 ―――"バブル光線"。

 

 どのポケモンによる仕業かは不明。

 少なくとも、明らかに私達とツタージャに仕向けた攻撃なのは間違いがない。

 新たな敵の登場だろうか。

 ツタージャが両肩から蔓を出し、ペシペシと一個も見逃さない繊細な操作で泡を撃ち落としていく。

 ここまで器用に"蔓のムチ"を操れるなんて。

 

「………ありがとね、ツタージャ」

 

 返答は簡潔に、タジャ。

 再び移動を開始。今度は敵の襲撃を警戒して、走りから歩きへ変更しつつ着実に距離を詰める。

 だが、敵の攻撃は来ない。

 音沙汰も気配すらも感じられない。

 

「あれは………?」

 

 やがて見えた光景に私は目を疑う。

 二体のポケモンが対峙していた。一体は私の知る彼の手持ちポケモンでもある『クチート』。

 しかもメガ進化姿。

 そして、クチートの相手は―――

 

「ジガァ!!」

 

 頭にある大きな星。巨大な対の鋏。

 口周辺に走る青いラインがまた独特な雰囲気を醸し出していた。

 ならずものポケモン『シザリガー』。

 シザリガーの背後には一人の男。

 先程の襲撃者と同じ服装から、男もまた奴等の一員と判断がつく。

 男がクチートを指差し、声を上げる。

 

「"クラブハンマー"!!」

 

 体格に合わない鋏が猛威を振るう。

 クチートもまた応戦。こちらも得意の顎で正面から対峙した。

 苛烈な衝撃が響き渡る。

 だが、ここでシザリガーはもう片方の鋏を攻撃へ使用する。対して、クチートは顎一つのみしかない。

 どうにかクチートは後退して難を逃れる。

 間一髪の回避。メガ進化した恩恵による能力上昇が役立った。

 

「どどどどうすれば………!?」

 

 ―――クチートの援護?

 駄目。あんな高度な近接戦闘にアシマリが入る余地はない。

 観戦するだけしかないのだろうか。

 

「クッチ!?」

 

 追い討ちの如く、シザリガーは攻撃。

 数の暴力にクチートは防戦一方。手数は同じ筈なのにどうして。

 よく見てみれば、クチート自身も既に疲労の色が隠しきれていない。

 きっと、クチートも連戦続きなのだ。

 特にメガ進化は体力の消費も早いと聞く。このままではクチートの防御が破られてしまうのも時間の問題。

 

「よし!!シザリガー!!やれ!!」

 

 次の瞬間。

 渾身の"クラブハンマー"がクチートの顎を大きく弾け飛ばした。

 さらけ出された大きな隙。

 シザリガーの左鋏が大きく横振りされ―――

 

「タージャ!!」

 

 横から現れた蔓が高速で鋏を絡めとった。

 はっと気付く。確認すれば、ツタージャの姿はもう私の側から消失していた。

 器用に鋏の根本を狙い、自身の蔓を巻き付けたツタージャはゴルバット戦で見せたようにまたしても大きく投げ飛ばす。

 男の方へ投げ飛ばした合間にクチートの元へ駆け寄る。

 

「クッチ………」

「タジャ!!」

「チ?」

「タージャ。タジャタジャ」

「チー………」

 

 ポケモン会話が開始。

 内容を理解するのは当に放棄した。大人しく見守る。

 

「タージャ!!」

「えっ!?何!?」

 

 蔓の鞭でバチバチ地面を叩くツタージャ。

 その視線は明らかにこっち。此処まで来いと言いたいのだろうか。

 慌てて小走りで近寄る。到着するなり、ツタージャの謎の説明が始まった。

 

「あっ………交代ってこと?」

「タジャ~」

「良かった………合ってた」

 

 要するに案内はクチートへ託す。ツタージャはシザリガーを相手してから後を追うとのこと。

 確かにタイプの相性、武器の手数を鑑みてもツタージャが有利に戦闘を進められる。

 

「クーちゃん、よろしくね」

「チー!!」

 

 可愛らしい返事が来た。

 でも、物騒な顎も同時に動くから何とも言えない微妙な気持ちに。

 

「ガァ!!」

 

 ―――シザリガー!?いつの間に!?

 

「タージャ!!」

 

 油断していた。

 ツタージャが咄嗟に攻撃を防ぎつつも、私達へ早く行けとばかりに指図する。

 

 ―――ありがとう………!!

 

 ツタージャに感謝を伝えつつ。

 私とアシマリはクチートの誘導に導かれ、先へ進むのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 砂浜。

 

「ソウさん!!」

 

 一目散に駆け寄る。

 遠くからの声に振り向いた彼。私の存在を認識するなり驚いた表情へ変わる。

 クチートと共に彼の側へ向かおうとした。

 

「クーちゃん!!"アイアンヘッド"!!」

 

 突如、彼から指示が飛ぶ。

 同時に私の目では、またしても敵と思われるポケモンが接近していたのを目撃する。

 クチートが素早く前へ出る。"アイアンヘッド"で応戦。 

 相手は―――

 キバへびポケモン『ハブネーク』。

 自慢の毒も鋼タイプを所持するクチートには無意味。放たれた"ポイズンテール"も難なくクチートは処理する。

 

「くっ!!駄目か………!!」

 

 ハブネークのトレーナーを確認出来た。

 草も入り交じる砂浜に立っていた。彼は波際に居る。

 クチートに指示を早急に出せたのも、向こうからだと私達と男の姿を視認出来るお陰だ。

 

「スイレン!?何故来た!?」

「だ、だって!!ソウさんが心配で………っ!!」

「それは後で謝る!!今はこっちに!!」

「は、はい!!」

 

 クチートがハブネークを牽制。

 安全が確保されているこの間に私は砂浜の上を走った。ずしりと砂に埋まり、何度も転びそうになった。

 ようやく。ようやく会えた。

 無事な彼の姿を見ただけでホッとする安心感に包まれる。

 

「そ、それでソウさん………この状況はどういうことですか!?」

「前に話した通り、俺目当てのハンターが勢揃いで来たんだ。無駄に早朝から」

「そんな………」

 

 彼は雲隠れのようにアローラを訪ねた。マナフィを狙うハンターから遠ざける為に。

 だが、それは無意味と成す。

 ハンター達はこうして目の前にいる。私達を襲っている。無実なポケモンを悪事に平気に利用するなんて到底許されない。

 

「私、手伝います!!」

「スイレン、言ったはずだ。これは俺が個人的に対処すべき問題。アローラの人達には恩があるし、迷惑は掛けられない」

「先に言っておきます、ソウさん」

「は?」

「アローラにそんな言い訳は通じません。困った人には手を差し伸べる。それがアローラ魂です」

 

 無理も承知の反論。言い訳をしているのはむしろ私の方。

 でも、彼を見捨てる方が無理。仕方ない。

 迷いを捨てた私の視線を前に彼は先に折れた。

 

「はぁ………此処まで来ちゃったら、今更関わるなって言う方が野暮か」

「ですね」

「分かった、俺の負け。でも、スイレン、俺の側を片時も離れない事だけは必ず守る事。俺の手が届かないとなれば、君の身が安全である保障が出来ない」

「………ありがとうございます」

 

 渋々、納得を彼に押し付けた。

 こうして私はどうにか彼のサポートという役割を担えた。後は全力で全うするのみ。

 私の胸に抱えたアシマリを彼は一撫で。そして、額の汗を拭った。

 

「途中で俺の手持ちとは会ったか?」

「あっ、はい。ラーグちゃんとクーちゃん、それにツタージャもですけど、ソウさんのポケモンで合ってますか………?」

「そうか。タッちゃんとも会ったのか」

 

 やはり、あのツタージャは彼の手持ち。

 

「ハンター達は人数が多い分、バラバラに動く。となれば、一人では流石に対処しきれない。故にあいつらには各自で判断をして動いてもらっている」

「メガ進化もしてましたけど………」

「ラーグとクーちゃんには最初から本気でやってもらってる。距離が離れすぎるとメガ進化が強制解除されてしまうのが難点だけど………我が儘は言ってられないか」

 

 然り気無い説明。

 でも、本来のメガ進化はトレーナーとポケモンが一人ずつ行う。彼は一人に対して、複数のポケモンと絆を結んでいた。

 私にどれだけ凄いのかは正直、分からない。

 

「さて、スイレン。気付いてるか?」

「はい………何となくですけど」

「囲まれているな」

 

 休む時間は与えてくれないらしい。

 クチートは既にハブネークを戦闘不能にしていたが、私達の方に一時撤退している。警戒体制を維持したまま。

 それもそのはず。ハンターが増えている。

 海を背にした私と彼を包囲するように配置されたハンターは少なくとも七、八人。

 ポケモンの数ともなれば、倍以上の差が出来上がってしまう。

 

「さぁ!仕上げだ、お前ら!」

 

 指揮を一人の男が始まる。

 あの男が一番の階級を所持するらしい。ハンター全員が揃って己のボールを掴んだ。

 

「"ロウ"、ようやく出番だ。頼むぞ」

 

 彼はブラッキーをボールから出現させた。

 戦闘において、ブラッキーは攻撃面においてどうしてもパワー不足が目立つ。耐久戦が得意な種族ゆえ、これまでに活躍シーンはあまりなかった。

 緊張が走る臨戦態勢。彼は私を背に隠した。

 隣に立ちたいと抵抗を見せる。が、彼はそれを許してくれない。

 代わりにハンター達の死角、彼の背中と私との間で左手に持つ一つのボールを持つようにと指示された。

 バレないようにそれを隠す。これは彼のアシマリである"マリー"のボールだ。

 

「我が相棒よ、来い!」

「もう諦めるんだな!」

「我らは無敵なり!」

 

 各々がポケモンを構える。

 まるで銃で狙われたかの如く、窮地に陥る私と彼。

 流石のブラッキーも攻撃全てから防御可能かどうか怪しいライン。

 指揮担当の男が片手を天に向けた。合図の代わり。

 

「―――っ!!」

 

 ゆっくりと振り落とされ―――

 

「待ちなさい」

 

 第三者からの声。

 それに機敏に反応したのは私でも彼でもない。

 

「リーダー!?いらっしゃったのですか!?」

 

 周りの雰囲気が一変した。

 私達を取り囲むハンターの態度が急変したのだ。まるで神が到来したかのようへと。

 

「スイレン………来たぞ」

 

 そして、彼は言う。

 

「奴がこいつらを率いる陰の首謀者。俺達が絶対に負けてはいけない相手」

 

 ゆっくりとした足取り。

 徐々にその姿を見せる。真っ黒な白衣姿に眼鏡を掛けた如何にも勤勉そうな男。

 私は彼から聞いた情報を思い出す。

 

 ―――"イカロス"。

 

 それがあの男の名前だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 -17- へ続く。




*ボス登場の回。

 ◇◇◇[敵一覧](-16-まで)

・No.1 イカロス
<手持ち>
 不明

・No.2~9
 本文、未登場。もしくは説明なし。

・No.10
<手持ち>
 アリアドス
 バクーダ

・No.11
<手持ち>
 リングマ

・No.13
<手持ち>
 アリアドス
 ヘルガー

・No.14
<手持ち>
 ハブネーク

・No.15
<手持ち>
 シザリガー

・以下、未登場なので略
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