………嘘です♪
◇◇◇
砂浜。
「竿は全員持ったか~?」
一日目の昼。
メインイベントは釣り大会。島ならではのイベントだ。
ククイ博士の元、生徒達に竿が配布。
「スイレン、説明頼むぞ!!」
「はい」
今大会の主旨と注意事項を話す。
優勝はより大きい体格の海ポケモンを釣った人。優勝者には大人組に何でも一つお願い出来る権利が授与される。
そして、遠くまでは絶対に行かないこと。どうしても行きたいのであれば、大人一人以上に付き添いを絶対に頼むのが条件。また、危ないと感じたらすぐに誰かを呼ぶこと。
他にも細かい部分は簡潔に噛み砕いて、生徒達に分かりやすいように伝えた。
「以上です。それでは、皆さん、より良い釣りライフを楽しみましょうね」
はーい、と一斉に返事が返ってくる。
ククイ博士が解散と言った途端、あっという間に生徒達はあちらこちらへ駆け出していく。
待ちきれなかったのかな、と気楽に眺める。
「スイレン達も何か問題が起きたら、各自で対処するように頼むぞ」
「はい」
「分かりました」
「了解です!!」
所謂、監視員が今回の仕事。
海難事故は特に早期発見をしないと大事故に繋がる場合が多い。人の目が多ければ多い程、未然に防げる可能性も増える。
この場合はポケモンもまた手助けとなる。
私はアシマリを。マオはアマージョ。リーリエはアローラキュウコン。カキはリザードンを側に控えさせている。準備を万全にしておいて損はない。
彼はブラッキーを手持ちから出していた。
本人いわく、あのクチートでは癖が強すぎて、向いていないそうだ。
「では、あそこでは無闇に攻撃するべきではなかったと?」
「あぁ。トレーナーの指示には作戦があると考えても良い。何の策も見当たらないのであれば、自分が罠に誘き寄せられていると思っても良いぐらいだ」
「奥が深い………」
男二人は離れて会話中。
カキの表情が一喜一憂したり、落ち込んだりと変化自在に変わるのが気になる。
私の視線に気付いたマオがそっと耳打ち。
「反省会だって、あれ」
「反省会?」
「みたいですね………正直、私には理解し難い内容ですけど、カキさんに向上の意思があるみたいで安心しました」
「カキ、ボロボロだったもんね」
「マオさん」
「はーい。私、あっちに行くね~」
この場を兎のごとく逃げるマオ。
一方的な展開で敗北したカキの精神面に不安があったみたいのリーリエだが、二人のなす姿を見て、大丈夫だと判断した様子。
と言う私もちょっとは心配してた。
「では、スイレンさん、私もそろそろ行きますね」
リーリエもこの場を離れていく。
彼とカキは反省会に夢中で全く視線を周りに向けない。もう監視員は持ち場へ散開しないといけないのに、必然的に取り残された自分が催促をやらざるを得なくなる。
「ソウさん、カキ」
「スイレンか。どうした?」
「皆さん、もう行っちゃいましたよ」
「あれ?いつのまに。カキ、続きは今晩にでもやろうか」
「はい!分かりました!リザードン、行くぞ!!」
ようやく動いた。
カキはリザードンに飛び乗り、空へと。彼は呑気に砂を服から払っている。
「んじゃ、どこ行こっと」
「ソウさんに持ち場の指定はありませんが、ちゃんとお仕事はしてくださいね」
「あのラプラスいるかな?」
「………聞いてます?」
この人、釣りしか考えていなかった。
「なら、スイレンも一緒に来る?」
「へ?………で、では」
反射的に答えた。
言葉の意味をゆっくり飲み込んでから、ようやく自分の出した返事に後悔を感じた。
「あ、借りれる所あった。行こう、スイレン…………ん?スイレン?」
「大丈夫です!!行きましょう!!」
「お、おう。ロウとアシマリも行くぞ~」
「ラ」
「オゥ!!」
釣り大会、開始である。
◇◇◇
海上。
「釣れないな………」
ラプラスの甲羅でのんびりと。
今、彼と二人きり。
正確にはラプラスの甲羅上のみの話。
生徒達の何人かは私達と同じようにラプラスをライドポケモンとして借りているようなので、私達はその子達の様子を確認しておくのが仕事。
ただ常に気を張り巡らすのも疲れる。
適度に緩めながら、呑気に釣りを満喫する彼に釣られてしまった。
結局、私もこうして釣り針を垂らしている。
「そう言えば、前の時は何か釣れました?」
「コイキング」
「あれ?コイキングは確かアローラではあまり見かけないはずじゃあ………」
「そうなんだ。俺の運が悪いのか、良いのか。きっと前者だろうな」
自虐に彼は笑う。
ここで私はある一つの思いを打ち明けてみようと思う。
ククイ博士からキャプテンとしての成長を促してくれる存在が彼だと説明され、素直に信じてみようと思ったから。
彼なら何とかしてくれる。そんな気がしたから。
「ソウさん」
「ん?」
「今日の夜にお話があります」
「それはあれか?ククイ博士から大まかな事情は聞いてるけどさ」
「多分、それで合ってると思い―――」
次の瞬間だ。
「おっ!来た!」
彼の竿の浮きが沈む。
当たりだ。ようやく待って到来したチャンスに私の話は遮られる。
「こんにゃろ!」
今度は冷静に対処する彼。
また、海へドボンする可能性もあった。アシマリをちゃんと待機させていたぐらいに。
余計な世話になれば良いが、果たして結果は。
「釣れた!!………って、え?」
「え?」
パクりと竿の餌を咥えていたポケモン。
二つの大きなヒレに顔の先端にある鼻が印象的。尻尾も海の生物、アシカ特有の形を模しており、何より私に見慣れたポケモンでもあった。
あしかポケモン『アシマリ』。
はっ、としてつい足元の方を見てしまう。
ちゃんとアシマリはいた。
彼も同じ事を思ったのか、私のアシマリを一目見て、釣れたアシマリを見る。
「………野生か?こいつ」
「多分………」
宙ぶらりんのアシマリ。
空中でばたつくが特に意味はない。逃げたいのなら、固く結んだ口を開けさえすれば良いのだから。
「お前、アホだな」
「オゥ!?」
「あっ、落ちた………」
馬鹿にされたのは分かるらしい。
でも、反論しようとして竿と繋がっていた口を離してしまった。
勿論、空中なので水ポケモンは非力。重力には逆らえない。
「オゥ!!オゥ!!」
「凄く怒ってる………」
海面に派手な水飛沫を出したアシマリ。
そのまま逃げれば良いものを、アシマリは海面からひょっこり顔を出しては彼に向けてガンを飛ばす。
対して、相手にする気配無しの彼。
「オゥ!!」
無視されていると分かるなり、アシマリは狙いを変更するらしい。
目をつけたのは彼の側にいる
問答無用とばかりに海面からジャンプして"体当たり"を発動していく。
「ラ」
「オゥ!?」
ブラッキーの口から黒い玉が噴射。
技名"シャドーボール"なのだが、手加減しているのか玉自体がとっても小さい。
が、その威力は野生のアシマリには痛手らしく、吹き飛ばされていった。
「何したいんだ、あいつ………」
彼も呆れたようだ。
一件落着、のように思われたが展開は意外な方へ進む。
「オゥ!!」
「戻ってきやがったよ、こいつ」
「オゥ!!」
「何か言いたげな感じですが………」
海面からひょっこりのアシマリが懸命に訴える。
「アシマリ?」
私のアシマリが動き出した。
どうやらあのアシマリの言い分を通訳したいらしい。
私のアシマリは彼の足元へ行くと腰に付けていたポケモンボールを指差す。
「え?捕まえて欲しいってこと?」
「オゥ~!!」
「………ムカつくな、こいつ」
パチパチパチパチ。
よく分かったな、的なドヤ顔に彼の表情が曇っていく。本人は気付いてるのだろうか。
自分を弟子として彼に認めて欲しい。そんな感じが漂う。
「まぁ………偶然、手持ちの枠は一個空いてる。アローラのポケモンも欲しいと思ってた所やったし………」
「ラ~」
ブラッキーは好きにしろ、とのこと。
渋々。それはもう仕方なしに空きのモンスターボールを取り出した彼。
「ほら」
「オゥ!!」
彼がボールを掴む。
その腕を伸ばして、アシマリに提示する。
スイッチ目掛けて、ここ一番の大ジャンプを見せたアシマリがぴったりとボールへタッチ。
やがて、その体はボールへ吸い込まれる。カチカチと数回鳴らした後、辺りは先程の静けさへと戻った。
「………おめでとう?ございます」
アシマリ、無事にゲットしました。
◇◇◇
ゲストハウス。
「ん?スイレン?」
彼の部屋を訪ねる。
扉を開け、訪問者を確認した彼がそう問い掛けてきた。
「あの………相談について………」
「昼に言ってた件か。忘れそうになってた。中へどうぞ」
相談があるのは既に彼も承知。
途中の出来事のインパクトが強すぎて、薄れてしまいがちであったものの、すんなりと彼は部屋へ入れてくれた。
中ではブラッキーが寛いでいる。
ブラシが置いてあったので、ブラッシングの最中だったのだろうか。悪いことをしてしまった。
「それで?相談って?」
「あっ、うん………」
訪問者の存在にちらりと重たそうに顔を向けたブラッキー。
私だと判明するなり、興味が失せたのか静かにうつ伏せになった。
「ソウさんはアローラにおいて、"キャプテン"という名称はご存知でしょうか?」
「………初めて聞いた」
「簡単に説明しますね。アローラ伝統の一つに"島巡り"があります。島巡りするにあたり、挑戦者に各地にある試練を幾つか行って貰うことになっており、その案内役としてキャプテンが居ます」
「ん」
「キャプテンからは課題が出され、見事にクリアをすれば"ぬしポケモン"とバトルする権利を得ることが出来ます」
「ぬしポケモン?」
「一言で例えるなら………とっても強いポケモンです」
「なーる。ホウエンでも似たような施設はあるから、大体は分かったけど………」
「では、本題に入りますね」
詳細に語れば、島巡りの条件はもっと複雑になるが此処では省略しても問題はない。
彼に相談したい内容はもっと別にある。
「実は………私とカキ、それにマオも。アーカラ島のキャプテンになります」
「………マジか」
「はい。これがキャプテンの証となります」
腰にぶら下げていたそれを彼に。
彼は興味深そうに眺めていたが、すぐに返してくれた。
「ですが、キャプテンに就いたのも最近の話でして………私達には全然分からないことだらけなのです」
「へー。スイレンが新米さんか」
「はい………ソウさんにはどうか私の担当する試練の内容を変更するにあたって、協力して欲しいのです」
「変更?」
「先代の試練方法を現時点では採用していますが………どうやら不評のようで」
「ははは………」
彼は苦笑いを浮かべる。
「変えようとは思うのですが、私の力では全くと言って良いほど、別の案が出てきません………そもそもそういう才能自体、私にはないと痛感する羽目に」
「ふむふむ。つまり、俺にスイレンの試練を採点、あらよくば改良して欲しいと」
「その通りです」
「了解した」
「自分で言っておきながら、あれですけど本当に良いのですか?ソウさんには何のメリットも無いのに………」
「そんなのは構わんよ。スイレンが気にする事じゃない。これは内緒だけど、元からククイ博士にスイレン達の力になるように言われてたし、何より俺自身もその試練ってやらに興味があるから」
「………ありがとうございます」
「スイレン!?何で泣くの!?」
「い、いえ!!今まで、誰にも言えなかったのでつい………ホッとしてしまったというか………」
「そっか………大変だったな」
彼が頭をそっと撫でてくれふ。
一瞬、ビクッとしてしまった。でと、そのまま彼の優しさに甘えてしまい、受け入れる。
「はい………」
彼に話をして、良かった。
実際には何の問題の解決にもなっていないのだけど、不思議とそう思えた。
心の何処かで安心する自分がいたのだ。
彼が優しく笑い、私も微笑む。
それだけで私はもう満足してしまったのである。
-6- へ続く
◇◇◇〔おまけ・クーちゃんの強さの秘訣〕
「ソウ、一つ質問、良いかい?」
「ククイ博士?俺に答えられることなら。何でしょうか?」
「さっきのカキとのバトルで君のクチートに持たせていたのはもしかして………」
「え?何々?」
「マオ、邪魔しちゃダメ」
「二人ともちょうど良い。勉強になるから聞いておいた方が良いぞ」
「ホントに何の話?」
「彼のクチートの攻撃の高さの秘訣………と言ったところかな」
「えっ!?やっぱり何かあるんですか?」
「始めに言うけど、不正とかは全くしてないからな?」
「それは知ってます。ソウさんはそんな人ではないです」
「………ありがと。バトルの時、クーちゃんの首に何かぶら下がってのは見えた?」
「少しだけなら。青い玉のような………」
「それで合ってるよ、スイレン。あれは"命の玉"と言う道具だ。ポケモンが技を使う際、自身の体力を削る代わりに攻撃力を上げる効果がある」
「体力を徐々に削る………つまり攻撃する自体が諸刃の剣ってこと?」
「んや、クーちゃんの場合だと体力はそのまま。攻撃だけ上がる仕様」
「………やっぱり、ズル?」
「だから違う」
「分かったぞ!其処にクチートの性格が関与してるんだね、ソウ」
「流石、博士です。クーちゃんの"力ずく"は追加効果のある技の効果を消す代わりに技の威力を底上げする能力とされている。因みにこれは"命の玉"による効果も該当しちゃう。つまり?」
「道具のデメリットを性格のデメリットで打ち消し合い、両方のメリットだけを上手く利用している………」
「理解が早くて助かるよ、スイレン」
「凄く考えられてるね………」
「これはポケモンバトルの世界ではほんの一部の利用例。もっと酷いコンボも世界には平気である。楽しいよ、こういうのを考えるのは」