今回は説明&伏線張っていく回です。
*後、評価一つで色が付くぞ………!!(チラチラ)
◇◇◇
合宿、二日目。午後の部。
「今日はソウによる特別授業があるぞ!」
今日の午後の予定。
彼による特別授業である。
午前ではポケモン達との触れ合い。午後は彼が直々にバトルの勝つ秘訣を教えると随分張り切っていた。
午前中は博士の用意したポケモン達が大いに登場した。ニャビーやモクローみたいな比較的危険性が低いポケモンが選抜された。
小さい子達を基準にしたのは生徒達が触れやすいようにと配慮した結果だ。そのお陰もあってか、全員が怖がる事無く、色んなポケモンとの触れ合いに乗じ、貴重な経験の糧となったはず。
私と彼もアシマリをボールから出し、生徒にここを撫でてあげると喜ぶよ等の助言をしつつ、微笑ましく見守っていた。
「さて、お昼ご飯は皆食べたかな?」
昼食は定番のカレー。
おかわり戦争が勃発した、すぐに完食する人が続出あちこちするマオの手料理に舌を打ちつつ、現在はもう午後の部。
「俺が今日、皆に覚えて欲しいことは"ポケモンバトル"について、だ。だけど、その前に、そもそもポケモンバトルってのは何の為に行うか誰か知ってるか?」
「はい!!強くなるためです!!」
生徒の一人がそう主張する。
彼はふむ、と頷くとボールを一つ腰から取り出す。
「確かに強くなる………正解の一つだ。ポケモンだけじゃなく、トレーナー自身もバトルをこなせば自然と強くなっていける。でも、今回のテーマとはちょっと違うな~。他に正解が思い付く人は居るかな?」
「ポケモンと仲良くなるため………ですか?」
「おっ、大正解。今回のテーマは"絆"。まず皆に見て欲しいのが、昨日のバトルに出てくれたこのクチートってポケモンなんだけど………出ておいで"クーちゃん"」
「クチー!!」
登場したのは先日のバトルで活躍したクチート。
彼にその頭部を撫でられ、嬉しそうにその頬を緩ましている。
「信じられないかもしれないけど、この子も初めは相当弱かった過去を持ってるんだ。それはもうほんと酷い。全戦全敗は当たり前、たった一度の勝利に半年はかかったぐらいには、ね」
生徒達は彼の演説に没頭する。
一言一句逃さないその姿勢は普段の授業態度とは比べ物にならない真剣ぶり。
「だから俺がまず始めたのはこの子、クーちゃんと仲良くなること。そして、徐々に時間をかけてさえでも、クーちんは何が得意で何が苦手かを知ろうとした。
バトルはクーちゃんを知る大切な要素の一つ。勿論、トレーナーの指示もあるけど戦う張本人はどういう判断を下し、どう対処するのか、俺はこれを重点的に理解しようとした。
その集大成が今から見せるこれだ」
今、気付いた。
クチートの首飾りが青の玉から模様が刻まれた玉へと入れ換えられていた。
察した私は彼の左手首を見る。やはり、リングがあった。
「クーちゃん………
「チャー!!」
淡い光がクチートの全身を包む。
いきなり現れたその光景に生徒達からも歓声が漏れた。
暫くして、光が収まり、その姿が見える。
まず、体が一回り大きくなった。大顎が二つに増え、ツインテール状へと。下半身と手首部分にピンク模様が入り、袴っぽい服装に拍車がかかっていた。
「クッチー!!」
―――『メガクチート』の爆誕だ。
「トレーナーとポケモンが信頼を築き上げた可能性。それがやがてはこんな風にメガ進化となり具現化した。バトルはポケモンを傷つけ合うだけなんて言われることもあるが、実際のところ、バトルの本質はトレーナーとポケモンが絆を再確認するもの………って皆にはずっと覚えて欲しいな」
「はい!質問!!」
「どうぞ、ホウちゃん」
挙手したのは妹のホウだった。
「お兄さんはどうして其処までポケモンと仲良くなれるんですか?」
「んー。難しい質問だな………ポケモンを好きだから、かな?………うん、それ以外に浮かんでこないわ。自分がこの子達、ポケモンを愛するとまたポケモンもちゃんとそれに答えてくれる。そういう所があるからこそ、俺もポケモンも正々堂々ぶつかり合える………ってのが俺のポケモンと仲良くなれる真髄かな」
「ありがとうございます!!」
「さて、他に質問はない?無かったら次の説明に移るよ」
彼のポケモン講座はまだまだ続く。
◇◇◇
バトル講座。
「さて、次はバトルにおいて重要な"技"についてだ。因みに皆は技にはどんな種類があるか分かるかな?」
「攻撃!!」
「うん、攻撃あってこそバトルが成り立つからね」
「特殊攻撃もあるよ!!」
「そうだね。特殊技が得意なポケモンも勿論この世界には沢山いるね」
「防御とか強くしたりも出来る!!」
「相手の攻撃下げたりするのも?」
「"巻き付く"はスピード遅くするよ!!」
「それらは全部、変化技って類いに入るね。自己強化したり相手の能力を下げたりする技だね」
大まかに区切れば、技は話題に上がった物だけで構成される。
ここまではまだシンプル。
「細かい技の効果とはこの際、置いておくとして………残念ながら、バトルにおいて技は4つまでしか使えないルールがある。ポケモンバトル協会が正式に定めたルールだから、絶対に順守すること。じゃないと、即反則負けになるからね」
ポケモンバトル協会とはポケモンバトルにおいて、ルールを定めた団体を指す。そのルールは全世界共通であり、一つでも破れば即座に反則負けと判断が下される。
プライベートな対戦で大まかなルール変更は可能だ。
只し、公式試合では必ず、このポケモンバトル協会のルールが適応される。
「4つまでと制約がある以上、自分のポケモンに技を覚えさせるのは4つで良いだろう………なんて考えはあんまりお薦めしない」
「なんでですか?5つ目からはバトルでは使えないですよね?」
「良い質問だ。そうだよ。使えない。でも!例えば、そうだね………自分のポケモンの技が全て相手に知られていたら、その時点でもう此方が不利になってしまう。所が、技を沢山持つとその分、戦略性に幅が広がり、余計に相手も対策をしにくくなる。
実際にクーちゃんで見せようか。まずは皆が見たことある技から」
彼はクチートに技の発動を指示。
―――"アイアンヘッド"。
―――"じゃれつく"。
二つの技をクチートは披露した。
メガ進化した影響でとてつもないパワーを秘めているのが、傍目からでも感じ取れる。
「この二つは攻撃の主力。相手ポケモンのタイプを考えて、二つ以上のメインウェポンを用意するのは定番だね」
次にまたクチートが動く。
―――"不意打ち"。
「これは使い所が難しい反面、トレーナーの隙を突ける技でもある。でも、最初の内は判断力が必要でなかなか慣れないから無理はしないでおいて欲しいな」
―――"剣の舞"。
「言わずと知れた、攻撃力強化の技。特に、クーちゃんは物理攻撃が得意だからこうやって鬼に金棒って感じでバトルを有利にしていく意図があるよ」
以上がクチートの現在判明しうる技。
ここからは彼以外、未知となるクチートの異様な世界へと突入。
彼はクチートは怒濤の技一覧を公開する。
まずは攻撃技から。
―――"ストーンエッジ"。
―――"雷パンチ"。
―――"炎のキバ"。
「ストーンエッジは弱点の炎タイプ対策。雷パンチは水ポケモン用に。炎のキバも一緒でクーちゃんと同じ鋼タイプとかに用意してある。あくまで、念の為だけどね」
次はその他の技。
―――"身代わり"。
―――"はたき落とす"。
―――"挑発"。
「身代わりは防御が苦手なクーちゃんが安心して攻撃に集中できるように。はたき落とすは一応攻撃にも使えるけど、普段は相手の持ち物を警戒した時に使うかな。挑発は確実に次に不意打ちが発動できるように。姑息だろ?
………これで技は以上だな。こんな感じで俺の手持ちのポケモンには少なからず4つ以上の技は覚えさせている。全員に必ずしも、俺みたいにそうしろと強制はしないけど、上を行くトレーナーの殆どはこれを当たり前にやってるよ」
多種多様性に含んだ技構成。
当然、素人にここまで複雑に配慮を巡らせるのは困難である。
彼が只者では無い証明でもあった。
「流石だな………」
「ククイ博士。彼は一体何者なのでしょうか?ポケモンに狙った技を覚えさせるのは至難の技。それをこうもあっさりと………」
「それは僕も同意見かな、カキ。最悪、技構成を見ただけで分かるけど、あのクチート一体だけで全滅させられる可能性だってあるわけだし」
「マーマネ、居たんだ。いつから?」
「ふぇ!?いつになく当たりが強いけど、何かした!?」
"マーマネ"。スクールの同級生。
また、私達と同じキャプテンでもある。専門は電気タイプ。
小柄に太った体格は昔から変化なし。
そんなマーマネがとても慌てるが、純粋にその存在に今の今まで気付かなかっただけてであって、別に私が不機嫌などではない。
「ソウはな、ホウエンリーグ………ホウエン地方の最強を決めるトーナメントで自己最高記録ベスト
「ベスト4………そりゃ、強いはずだよ!!」
「マオさん、落ち着いてください」
彼の強さはきっと此処だ。
ポケモンと繋がる信頼が必然と産んだ、得意分野に力を置き、その分野において右に出る者がいないぐらいに育成する彼だけの方法。
生半可な覚悟で挑んでしまえば、例え相性が有利でも簡単に覆される。
そんな彼でもリーグでは優勝経験無し。
私の住む世界がいかにも狭いか、思い知らされている感覚に陥る。
「カキ、ちょっと来てくれ!!」
彼がカキを指名した。
どうやら最後に手本バトルの演習相手として、カキを選んだらしい。リベンジに燃えるカキに嫌な予感しかしないが。
彼による本日の講座はこれで終わり。
―――やっぱりというか。
そのバトルは互いのプライドから熱が入り、生徒達の応援がより一層盛り上がる試合になったのはまた別の話だ。
◇◇◇
砂浜。
「………どこ、行ったんだろう………」
二日目の夜。マオ自慢の晩御飯を満喫し、生徒達は消灯までの自由時間を楽しそうに過ごしている。
この時間、大人組は特に仕事がない。
故に自由な過ごし方を各自実行している。
その中、私は彼の行方を追っていた。試練の相談をしたいのだが、あくまでそれは建前。本音はもう少し彼のことを知りたいと思ったから探している。
ほんの好奇心。うん、好奇心。
「アシマリ、いた?」
「オゥ~」
「ダメ………」
残念ながら、宿に彼は居なかった。
唯一得られたマーマネから彼が玄関から外に出る姿を見たという証言だけが手掛かり。
一歩、歩けば自然が覆い尽くすアローラにおいて夜道の光源は月光のみだ。
「あ………足跡………」
偶然、発見したのは砂浜に沈むサンダル模様。
間違いなく、これは彼のものだと感じた。
導かれるかのように進む私とアシマリ。辿り着いた先は昼間もいた砂浜。
彼の姿は未だ見えない。暗いだけでなく、まだ彼は実際に遠くに居るようだ。
―――そして。
岩盤が目立つようになり、自然と彼の足跡は残っていない。だけど、もう既に彼の姿はうっすらと見えていたから平気。
海へと伸びた崖の先。そこに座る影がきっとそうだ。
私も海岸線から近づこうと―――
「えっ………?」
視線を横へ。夜の海面が広がる。
月明かりに照らされ、キラキラと輝くその海面上に小さな影が跳び跳ねたのだ。
あまりにも一瞬の光景。なのに、私は幻想的に儚く綺麗に思ってしまった。
「ラ」
「ひゃっ!?び、びっくりした………」
背後から唐突に声が。
びっくりして思わず悲鳴を出してしまった。
声をかけて来たのは、彼のブラッキー。真夜中なので、その瞳が綺麗に光っている。
元々、ブラッキーは月の光と繋がりが深いポケモン。きっと暗闇でも平気に動けるのだろう。
と、ブラッキーは数歩進み、その尻尾を揺らした。
「付いてこい?」
そんな感じがした。
アシマリを胸に抱え、大人しくブラッキーの後を付いていくことにする。
再び、海面を眺めるがさっきの出来事がないかのように元の無限に広がる海がそこにあるだけだった。
「あっ………ソウさん」
「その声はスイレン?」
「はい、私です」
「オゥ!!」
「おっ、アシマリも一緒か」
突き出た崖に座るのは彼。
ブラッキーに其処まで案内をしてくれたお礼にその頭を優しく撫でてみる。
目を瞑り、嬉しそうに擦り付けてくる仕草が可愛い。私もゲットしたい欲がちょっとだけ出てしまった。
「こんな所まで来て………どうしたんだ?」
「と、特には………ただソウさんとお話がしたくて………」
「そっか………ここ、座る?綺麗だよ」
「で、では、失礼して………」
彼の隣に腰を下ろす。
宙に出された両足に恐怖心が芽生えたのはごくわずかで、眼前に広がる夜の水平線に私の心は瞬時に奪われた。
「凄く綺麗です………」
「あぁ、アローラは自然豊かでとても過ごしやすい。こういう絶景も近くにあったりしてね。少し滞在しただけでもう俺、気に入っちゃったよ」
「ありがとうございます?」
「何で聞き返してくるんだ?」
「分かりません………この場所は私も初めて知りましたから」
「なら、ここは二人だけの秘密の場所………だな」
「………ですね」
波の安らぎだけが聞こえる。
昼間は騒がしくいた海辺も夜になるとこうして静けさに気を落ち着かせる場所になる。
と、腰にペチペチと何かで叩きつかれる。
「はいはい、アシマリもね」
アシマリを膝に乗せる。
普段とは変わらないアローラの海なのに、神秘的と感受性が変わってしまうのは隣にいる彼のせいだろうか。
ふと気になった事を尋ねる。
「ソウさんのアシマリはどうされました?」
「ん?あー、"マリー"ね。あいつ、喧嘩っ早い癖に弱いからボールの中で大人しくさせてあるよ」
「まりー?」
「マリー。スイレンのアシマリと被るから、アダ名を付けてみた」
「私のアシマリとソウさんのアシマリ………お揃いですね」
「だね」
「………」
会話はそれ以上ない。
でも、彼と一緒に眺める景色に不思議と気まずさは感じなかった。
「スイレンは………」
彼がふと言葉を溢す。
「はい?」
「人に言えない秘密なんてあったり………いや、やっぱり良いや」
「ソウさん?」
最後まで聞き取れなかった。
彼は誤魔化すように立ち上がった。軽く服から塵を払うと、私へ顔を向ける。
「俺、宿に戻るけど、スイレンはどうする?」
「なら、私も戻ります」
「一緒に行こうか。夜道を女の子一人で歩くのは危険だ」
さっき、何を言おうとしてたんだろう。
また掘り返すのも彼を困らせるだけに思えて、私の口はゆっくりと閉じていく。
「ソウさん………」
「ん?」
「例え、ソウさんに何か言えない秘密があっても、私はソウさんを信じます」
「スイレン?」
「ソウさんはソウさんのままでいてください。ううん、ずっといてください。ソウにはやってもらう事が沢山あります。私の試練のこともそうだし、合宿の間では皆の憧れる先生でもありますから。しかも、ホウやスイも今ではきっと貴方が大好きになっちゃってます。だから、―――」
いきなりベタな台詞を吐く私に驚く彼の表情が月明かりに照らされる。
きっと彼は何かを抱えている。それだけは根拠は無いけど、何故か感じ取れる。
なら、彼が私に求めてるのは何か。
今出来るのは、こうして彼を奮い立たせる言葉をかけてあげるだけ。
だけど、いずれきっと私は彼に―――
足と手を大の字に大きく広げて、私は精一杯の思いを託す。
「大丈夫。きっと、大丈夫。キャプテンの私が保障します。私の知ってるソウさんはぜぇーーたいに!!大丈夫です!!」
「ふふっ。スイレンこそ大丈夫って言ってばっかだな。急にどうしたんだよ?」
「………」
「ホントにどうした?」
「………なんだか恥ずかしくなりました」
「そっか。帰ろう?」
「うん………」
-8- へ続く
◇◇◇〔おまけ・クーちゃんまた暴走〕
「クチー!!」
「今はダメやってー!!」
「うわぁ………メガ進化したから、狂暴性増してるよ………」
「大きな口が二つになってますからより器用に追い掛けてますね」
「何で二人ともそんなに冷静なの………?」
「スイレンはどうなの?」
「どうって?」
「クチートに先を越されるけど良いの?」
「………何の話?」
「あれ?もしや………自覚無しとみた」
「マオ?大丈夫?」
「大丈夫!!むしろ、ありがと!!頑張ってね、スイレン!!」
「………?」
「スイレンさん、安心してください。私もマオさんの言いたい事、分かりません!!」
「………女子はほんと怖いよ」
「マーマネ?今、何か言った?」
「何も無いです………はい」