真夏に咲いた一輪の恋花   作:ソウソウ

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 初のスイレン以外の視点が出ます。一瞬ですが。
 また、彼の手持ちから新たなポケモンが新登場。是非、お楽しみに。




-9-『遭難×大雨』

 ◇◇◇

 

 とある洞窟。

 

「やった!!ここで取り敢えず………!!」

 

 命の危機を逃れ、安全な場所へ。

 大雨の降る中で目にしたのはぽっかりと崖下に空いた大穴。

 運に恵まれている。

 体が濡れるのを防ぐ為にそこで雨宿りしようと避難した。

 

「っくしゅん………!!」

 

 ―――くしゃみを一つ。

 状況は右肩下がり。完全に体の芯から冷えてしまっている。

 このままでは体調を崩すのも時間の問題。

 私は何をすべきか考える。

 生徒達はきっと大丈夫だ。アシマリも側に付いてあるし、土砂崩れの発生現場とは結構な距離はあったはず。

 解決すべきは自身の安全確保。

 連絡手段も無し。体は冷える一方で、一歩外に出れば大雨に遭う。

 大穴の奥へ進むのはさらに危険。

 下手をすれば、内部崩壊する可能性だってあるのだ。

 この場で待機するのが最善策だろうか。

 大雨が止むのが先か。私が皆と合流出来るのが先か。

 もしくは………。

 

 ―――雨は無惨にも降り続けている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 ゴール地点。

 

「オゥ!!」

 

 懸命に鳴くその声に私は気付く。

 

「あっ!!やっと来た!!」

 

 現在、スコールが到来中。

 年に一度あるかないかの記録的スコール。既に例年以上の降水量を叩き出していた。

 そんな最中に生徒達の無事を全員確認できたのは良かった。

 

「班員、全員いるね!?」

「うん!!でも、マオ姉ちゃん!!スイレン姉ちゃんが!!」

「えっ!?スイレン!?どこ行ったの!?」

「途中で僕達に先に行けって………!!」

「もしかして………様子を見に行った!?あのバカ!!」

 

 この子達が最後に出発した班。

 既に他の生徒達は全員点呼を取り、ひとまずゲストハウスへと避難して貰っている。

 唯一、スイレンの無事だけが不明。

 だが、大人組もまた別の対処に追われており、彼女の捜索に人員をかけるのは時間を要する。

 緊急を必要とする事態に陥っていた。友達のピンチに私は焦ってしまう。

 

「マオ、どうした?」

 

 レインコートを着た彼が様子を見に来た。

 

「スイレンだけが帰って来ないよ………どうしよう!?」

「そっか………落ち着け、マオ。此処に来てないのはスイレンだけ?」

「えっ!?………う、うん。生徒達は全員確認したし、博士とカキ、リーリエにマーマネも中にいる。スイレンだけが確認、取れてない………」

「了解した。マオはこの子達を案内してやってくれ」

「それは分かったけど………ソウはどうするつもりなの?」

「探しに行く」

「危ないよ!!博士から危険だから行くなって………!!近くで土砂崩れも発生してるみたいだし………」

「スイレン見つけてすぐ帰ってくるから」

「そんな………!!」

 

 彼は外へ歩き出す。

 あまりにも危険かつ無謀な行為だ。

 大雨で視界が遮られ、風も強い。何より、土砂崩れが起きるのは地盤が弛んでいるせいで二次災害も注意しなければいけない。

 止めないと。

 私が彼の腕を掴もうと伸ばすと。

 

「ごめんな、マオ」

「………ソウ?」

「きっとこんなことになったのも俺のせいだ」

「そんなの!!関係ない!!たまたま今日、スコールに遭遇しただけであってソウのせいじゃ………!!」

「ごめん」

「あっ………」

 

 彼は走り去っていった。

 呆然と見送る私に彼の後ろ姿はあっという間に消えてしまう。

 唯一見えたのは、彼の手に握られた二つのボールだけであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 とある洞窟。

 

「ふぅ………」

 

 あれからどれくらい経っただろうか。

 着用していた水着もびっしょり濡れてしまい、徐々に全身から体温を奪われていく。

 悪天候にめぼしい変化はない。

 土砂降り。

 誰かが助けに来るなど無謀と分かってしまう今、ただひたすらに耐えるしか残された道はない。

 ………心が折れそうだ。

 

「ソウさん………」

 

 こんな時に浮かんできたのは彼の顔。

 数日前に偶然出逢って、今日まで時間が合えば隣にいた人。

 どんくさい一面を持ちつつ、ポケモン達と真剣に向き合う面もまた。彼と一緒にいるポケモンはどの子も幸せそう。

 私はどうだろう。

 キャプテンに就任した。でも、試練は上手く行かず彼に助けてもらってばかり。長女として威厳が欲しいのに最後は彼に甘えてばっかり。

 なんか………自信なくした。

 考えるの止めよ。

 

 ザァー………ザァー………。

 

 止まない雨。じっと見つめる。

 叩き付ける雨粒の音と洞窟の天井から滴る雨粒がやけに鮮明に聞こえる。

 木々の隙間から見える景色も暗い。

 そもそも景色など雨に遮られて見えない。あそこに見える変な黒い物体もきっと目の錯覚だ。

 

 ―――え?今、動いた?

 

 まだうっすらとだけ確認可能な距離。

 でも確実に謎の正体は動いている。否、私の方へ近づいてきている。

 というか、この大雨の中で普通に居るのだけど。そっちがむしろ大問題。

 空夢と思いたい。

 目をぎゅっとつぶり、ゆっくりと瞼を上げると。

 

「た、助けて………!!」

 

 さっきより接近している。

 お陰様でシルエットがくっきり視認出来るようになった。

 隆々とした両腕。全体的にガッツリ、丸みを帯びた上半身。怖い印象が全面に現れていた。

 でも、尖りがある頬。掌は完全に人間でない。そして、水ポケモン特有の頭部のヒレが目立つ。

 

「ラグ」

「えっ!?()()()()()………!?」

 

 ぬまうおポケモン『ラグラージ』。

 ホウエン御三家の一体、ミズゴロウの最終進化系。水タイプに地面タイプを持ち、水の弱点である電気タイプを無効化してしまった珍しいポケモン。

 そのラグラージは私の手前、洞窟の入り口手前までのっそりと歩いてくる。私の存在をばっちり認識しており、普通なら得体が知れない。

 でも、私は自然と怯えはなかった。

 ラグラージの橙色の目は優しく私を見ていた。敵意よりも安堵の色があった。

 やがて、入り口手前で完全停止。

 恐る恐るそのラグラージに近付き、私は手をそっと伸ばした。

 

「あっ………」

 

 私の手がラグラージのほっぺに触れる。

 そっと撫でてみると、目を瞑ったラグラージの姿がそこに。

 

「でも、なんでここに………?それに私の知ってるラグラージとはちょっと姿が違うような………」

「ラグ!!」

 

 ラグラージが何かを言っている。

 でも、残念ながら、分からないと首を横に振る。

 しゅんとしたラグラージ。

 次の瞬間に私は昔読んでいた図鑑のページのある写真を思い出した。

 

「あっ………まさか、メガ進化?」

「ラグッ!!」

 

 合ってるらしい。

 メガ進化をした『メガラグラージ』は姿にあまり変化はなく全体的に丸くなりマッシブな見た目になるのが特徴的。

 私が大好きな水ポケモンだからこそ、本物は初だけど辿り着けた答えであった。

 でも、同時に芽生えた一つの疑問。

 

「えっ?でも、メガ進化ってことは………」

 

 トレーナーとポケモンの絆の証。

 それがメガ進化であると、彼は言っていた。メガ進化を引き起こせるトレーナーなど私の知る限り一人であって―――

 

「あなた、ソウさんのポケモン?」

「ラグ、ラグ」

 

 頷くラグラージ。

 この子、彼の手持ちポケモンなんだ。

 シンプルに嬉しかった。彼はちゃんと私を探してくれていたのだと知れて。

 何より、独りで待つ私に希望の救いが見えた。

 

「ラグラージ?どうしたの?」

 

 ラグラージが背を向ける。

 数歩、土砂降りの中へ歩くとその巨体を大きく持ち上げた。意図が汲み取れない行動に私は黙って見守る。

 と、次の瞬間―――

 

「ウォォォォオオオオオ!!」

 

 ―――()()()

 

 あまりの声量に耳を塞ぐ。

 けれども、ラグラージの遠吠えは一瞬だけ響き渡るが、すぐに雨音に消されてしまった。

 余計に謎が膨らんだ。

 直接聞いてみようと耳から手を離せば、ラグラージは私の方を見ており。

 

「えっ?駄目?」

 

 手を離すな、らしい。

 反する行動を取ると、悲しい目をする。そのせいで罪悪感に包まれてしまうので、私はラグラージの言う通りに耳を塞いだままにした。

 

 そして―――

 

「きゃっ!?」

 

 いきなり視界が真っ白に。

 間髪なく、次に襲ってきたのは塞いでも尚聞こえてくる腹太鼓のような重低音。私の悲鳴など掻き消される。

 連続した異常事態に脳の整理が全く追い付かない。

 唯一、理解できたのはこれだけ―――

 

 ()()がメガラグラージに直撃した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 -10- に続く




*(゚∀゚)キモクナーイ
 メガ進化していたのはメガラグラージの特性"すいすい"を捜索に利用したい意図があった為ですね。
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