異世界転移ソードテール! 作:バーティカルダンス
少女が走っている。金色の髪を持つ、わりと活発そうな女の子だ。緑のローブに三角帽子、そして魔法の杖。なにかの物語の話だろうか。
視点は空中。私の視点というわけでもなさそうだけど。どうやら遺跡の中らしく、壁につき当たっては走る方向を変える。
なるほど、これは夢だ。
「なんで追いかけてくるんですか!」
少女が私――は見えていないはずだからその背後へ向けて声を発する。
後ろへ視線を向けてみると黄土色のブロックで構成された大きな
「この! 壊れてください!」
少女が杖を振ると風が杖の先に集まり、弾丸となって発射される。私がそこに居るわけじゃないけど、身体の中を突風が通り抜けていった感じでぞわぞわする。
風の弾丸はゴーレムにぶつかると甲高い音を立てる。しかし、それだけだ。ゴーレムは体勢を崩すことも足を止めることもなく、少女を追う。ゴーレムのボディーには傷一つ付いていなかった。
少女はゴーレムに眼もくれず逃走する。しかし遺跡の中は迷いやすく、少女は袋小路に入り込んでしまった。
「そんな……行き止まり?」
背後からはゴーレムが歩くように、それでいてかなりの速度を持って迫ってくる。少女はまさに絶体絶命といった様子だ。
私にはどうすることもできない。思わず目を覆いそうになる。
「まだ……まだです!」
少女の声は強く響いた。
少女はゴーレムに杖を向ける。
杖が一瞬光を放ったかと思うと、通路全体を震えさせるほどの風が少女の元へ集まる。一秒弱で空気が可視化できるほど集まると、それはゴーレムへ向けて発射された。
空気の爆弾だ。
ゴーレムに衝突したところから轟音と衝撃が広がり、少し遅れて通路の中に土埃が舞う。
私が少女の方を見ると、少女は箒のようなものを持って衝撃に耐えていた。何で箒? 疑問はすぐに晴れた。少女は箒に飛び乗って狭い通路を飛び上がると、土埃に包まれたゴーレムの横を飛行して通り抜けた。飛べるなら最初から飛べ。
「よし、抜けた! これで――きゃあ!」
女の子の言葉は最後まで続かなかった。背後から来る巨大な手が、彼女の身体を殴り飛ばしたのだ。ここでは彼女とゴーレムしか見ていない。当然、ゴーレムの腕である。
「なん、で……腕……だけ……」
女の子は壁に叩きつけられ、とても無事とは言えない。私も驚いた。まさかロケットパンチするとは。
女の子を追ってゴーレムが姿を現す。
「誰か……助けて……」
女の子は意識が朦朧としているようだ。私は、彼女を助けたいと思った。
◇
気がつくと、また床だけの真っ白な場所にいた。
今度は大きな鏡がいくつも浮かんでいる。
違和感から寝間着のポケットを探ると、あった。あのスペードのエースのカードだ。
ふと視線を感じて顔を上げると、鏡の中に“白い私”が立っていた。私と向かいあって鏡に映っているだけなのだが、鏡がたくさんあるのでちょっと気味が悪い。
白い私はある一点を指差す。そちらを見やると一本の赤い線……傷? とにかく空間に切れ目があった。
握っていたカードが刀になる。またか。
私が刀で空間の切れ目をなぞると、切れ目が大きく開く。
私は切れ目の中へ飛び込んだ。
◇
夢か?
目の前にゴーレムの拳が迫ってくる。
現実か?
咄嗟に少女を抱きかかえて飛び退く。腕の中に少女の息遣いを感じる。
ならこれは――
「夢の続きだ」
突然ゴーレムの前に立っていた。戦えというの?
そしていつのまにか私は白いツインテールの髪になり、タキシードとドレスを足して二で割ったような恰好をしていた。表情はある。
まあいい。剣を持って戦う限り、私は負けるわけにはいかない。
両手で抱きかかえた少女が「誰、ですか」と尋ねる。刀は一時的に消している。
誰か、か。私は誰だろう。この白い私は普段の私なのだろうか。私が名乗ってもいいのだろうか。まあ今は、
「君の味方だ」
安心したのか少女は意識を失った。私は少女を通路の壁に寄りかからせる。ゴーレムの目がそちらに向かないことを祈るばかりだ。
「大丈夫。少しだけじっとしていて」
聞こえているのかいないのか分からない声をかけると、ゴーレムに相対する。腕をブンと振るうと刀が握られていた。不思議。
水心流もゴーレムとの戦闘は想定していないと思うが、この速度なら対応できる。
まずは腕。攻撃をいなすようにして浅く斬りつける。思った以上に固い。金属同士がぶつかるような音がして刀が弾かれる。赤い呪詛のような文字が刀身から撒き散らされるが、刃こぼれ自体はないようだ。
背中。大振りの攻撃をすり抜けてゴーレムの背後に回り、袈裟斬りにする。“白い私”だからなのか、身体能力が上昇している。とは言え背中の装甲が薄いと言うことはないようで、返ってくる手ごたえは硬質なものだった。
頭。見る限りどこも同じ素材に見えるけれど、大抵のものは頭を斬られたら死ぬ。斬れない、次。
脚を斬りつけ、首を刀でなぞる。ゴーレムを構成するブロックの隙間を狙って刀を振るう。どれも効果がない。刀が押し負けることもないが、同じくらいの強度があるのだろう。目ぐらいは刃が通ってもいいとおもうけど。
らちが明かないので一旦距離をとると、ロケットパンチが飛んで来る。付け根から炎が出ているわけでもないし、どうやって飛んでいるのだろう。魔法か。
一発目のロケットパンチを躱すと死角から二発目が飛んで来た。時間差攻撃だ。そういえば、腕の付け根はどうなっているんだ?
“水心流・墨流し”
巨大な腕を刀で受け、それに合わせて自分の身体を押し出す。腕の後ろは、宝石のようなものがむき出しになっていた。
あ、これならいけるかも。というかここしかない。
「
この言葉は刀に対する合図だ。目の前の相手は、呪っていい。
刀身を覆う赤い文字たちがその闇を広げる。これにより刀は鋭さ、重さ、速さを増す。
弱点は腕の付け根の部分。
“水心流・
むき出しの部分に刀を突き刺し、そこから横一文字に胸を斬り裂く。
腕を振りぬいてから距離をとると、ゴーレムは爆発して炎上した。
本体が壊れれば、腕も動きを止めるだろう。
「――ソードテール。これは私の名前か」
爆発したゴーレムから赤い文字列が浮かびあがり、黒い刀身に吸い込まれていく。柄に刻まれた“SWORDTAIL”の文字はキラキラと輝いていて、勝利を喜んでいるようにも見えた。
さて、相手を倒したのはいいんだけどこの女の子はどうしよう。持ち帰る?
余計なことを考えていると複数の人間の足音が聞こえてきた。
「レモナ~! どこ~?」
彼らは誰かを探しているようだ。遺跡の中で大声を出すな。
「レモナ! ……誰?」
この女の子がレモナというのか。向かってきた女の子の3人組、この子も同じチームなら4人組か。その女の子たちにすごく警戒されてる。まあ不審者だもんね。
「彼女は怪我をしている。見てやってくれ」
これだけ言って去った方がいいだろう。私は刀を振って空間に扉を開くと、その場から離脱した。
くろむって打ち込んでも主人公の名前が出てこない。
仕方がないのでくろゆめちゃんと打ち込みます。
※8/29 修正しました。