【ラブライブ μ's物語 Vol.3】 雪の中の闇 作:スターダイヤモンド
公園から走って帰って…家に着いて…ベッドの上で泣いていたらLINEのメッセージが届いた。
「先輩から?」
読むのが怖かった。
だけど、放置もできない。
私は意を決して、スマホに表示されたウィンドウをタップした。
〉雪穂ちゃん
〉まず今日はごちそうさまでした
〉とても美味しかった&楽しかったです
〉お母さまによろしくお伝えください
〉それと…
〉私のことを好きだと言ってくれてありがとう
〉とても嬉しかったです
〉でも、まさか…
〉雪穂ちゃんにそこまで想ってもらっていたとは気付かなくて…
〉戸惑ってしまったのも事実です
〉ごめんなさい
〉何をどうしてあげたらいいのか…
〉今すぐにお返事ができません
〉少しお時間をください
〉でも雪穂ちゃんに心配されないように、体調には気を付けます!
〉では、また…明後日の残念会で
〉おやすみなさい
〉花陽
私は、何を望んで先輩に告白したんだろう…。
こうなることはわかっていたハズだ。
それでも…
積年の想いを伝えたこと。
そのことによって、先輩に余計な心配を掛けたこと。
自分のバカさ加減に嫌気がさしたこと。
様々な気持ちが入り雑じって、涙が止まらなくなる。
「雪穂~?どうかしたぁ?」
ドアの向こうから、お姉ちゃんの呼ぶ声がした。
…ヤバイ…
…気付かれた…
知らず知らず、泣き声が大きくなっていたようだ。
…お姉ちゃんだけには、絶対にバレたくない…
「う、うん…大丈夫だよ…」
「でも、泣いてるでしょ?」
「えっと…迂闊にもスマホで『ちょっと良い話』みたいなの見たら、これが本当に感動しちゃって…」
「へぇ…珍しいねぇ」
「どういう意味よ」
「ほら、雪穂ってそんなに喜怒哀楽、現さないじゃん」
「そ、そんなことないでしょ!…っていうか…そういうことだから、余計な心配しないで!!」
「わかったよ…何でもないならいいけどさ…虐められてるとか…何か悩んでるなら言いなよ」
「あ…うん…まぁ、そんなんじゃないから…」
まったく…。
こんな時だけお姉ちゃんヅラするんだから。
でも、まぁ…今の会話で涙は引っ込んだ。
少し冷静になれたというか…興醒めしたというか…。
さて…LINEの返信をしなくちゃいけないんだけど、言葉が思い付かない。
…既読スルーする?…
「雪穂、アンタ、最低だよ…」
そう呟いて、それは思い留まる…。
〉色々すみませんでした。
〉おやすみなさい。
悩みに悩んだ挙げ句、日付が変わって3時間くらいしてからメッセージを送った。
すぐに既読になった。
この時間まで起きてたのか、寝ていたところを起こしてしまったのか…どちらにしても、申し訳ない気持ちになり、私はまたも深く落ち込んだ…。
それから2日後…。
残念会当日の夕刻となり、家を出た。
途中、亜里沙と合流して指定された場所へと向かう。
「海未先輩と久々に会えるから、楽しみで楽しみで仕方ないよ!」
と亜里沙は言ったけど…ステージは観に来てくれてたし、顔を合わせなかったのは、確か1週間くらいだ。
亜里沙は『海未推し』を、みんなに公言している。
普段の真面目な様子とステージでのギャップが魅力らしい。
海未ちゃん本人は少し…いや、かなり困惑しているみたいだけど…彼女が純粋な分、無碍にもできず、苦笑しながら『付きまとわれて』いる。
「あはは…大袈裟だなぁ」
なんて茶化したけど、気持ちはわかる。
私だって、1日、花陽先輩の姿が見られないだけで、めっちゃブルーな気分になるのだから。
…だけど、今日はどんな顔をして、先輩に会えばいいのだろう…
私の気持ちは定まっていない。
だけど、1対1で会うわけじゃない。
みんなと…それとなく過ごしていれば、なんとかなるハズだ。
自分にそう言い聞かせた。
会場は凛先輩行きつけの中華料理店の2階だ。
この日の為に、貸切りにしてもらったらしい。
私たちの会費は千円。
足りない部分はOGが負担してくれるとのことだった。
そう、初めは『ラブライブ予選の打ち上げ』…という名目で催されるハズだった残念会だが…絵里さんが「私もお邪魔していいかしら?」と言い出して…なんだかんだでOGの3人も、急遽参加することになったのだ。
その通達があってから、まだ…『織音』『那美』『つばめ』…の1年生3人とは話していないが、きっと彼女たちは大喜びしているに違いない。
レジェンドメンバーとのイベントは、少し遅くなったクリスマスプレゼントか…それとも、少し早いお年玉か。
それはともかく、OGの参加で『残念会』はμ's色の濃くなった『忘年会』に変わったのである。
中華料理店に近づくと、先に家を出たお姉ちゃんたち3人の姿が見えた。
「お~い!雪穂、亜里沙ちゃ~ん、こっちこっち!」
お姉ちゃんが叫ぶ。
…わかってる!っつうの…
…公道で人の名前を大きな声で呼ぶな!…
「遅いよ、遅い」
「でも、まだ15分前だよ。逆にお姉ちゃんが早すぎるんだよ!」
「まったくです。こんな時だけ、張り切って時間前に来るのですから」
と海未ちゃん。
その言葉からお姉ちゃんに巻き込まれて、付き合わされたことがわかる。
いつまで経っても子供なんだから…と海未ちゃんに同調する。
「中、入らないの?」
「まだ、準備中なんだって」
「そりゃそうだ」
程なくして、1年生の3人と…凛先輩と真姫先輩がやって来た。
「あれ、花陽ちゃんは?」
お姉ちゃんの問いに
「ちょっと、用があって遅れてくるわ」
と真姫先輩が答えた。
「にこちゃんも少し遅れて来る…って連絡あったにゃ」
「絵里と希は、もうすぐ来ると思うけど…」
…なんだろう…
…嫌な予感がする…
「おぉ、みんな揃ってるやん」
「お待たせしちゃったかしら?」
「やっほ~!希ちゃん、絵里ちゃん、久しぶり!」
「お久しぶりです」
「ご無沙汰ちゅん!」
「こ、こんばんわ」
「お、お疲れさまです」
「きょ、今日は宜しくお願いします…」
「もう、みんな緊張しすぎだよ!」と言いそうになったけど、グッと堪えた。
…お姉ちゃんも卒業したら、伝説のメンバーとして、こんな風に崇められるのかしら…
「そんな改まらないで。楽しくやりましょう」
「そうや。今日の主役は1年生なんやから」
絵里さんと希さんが、私の気持ちを代弁してくれた。
「は、はい!」
「すみません!」
「頑張ります!」
「だから、頑張るって何よ?もう少しリラックスしなさい…」
と真姫先輩。
「大丈夫にゃ!絵里ちゃんも希ちゃんも、思っている以上にポンコツだから」
「あら、凛…そんなこと言っていいのかしら?」
「これは久々にワシワシのお仕置きが必要なようやね?」
「にゃ?にゃ?…あ、準備できたみたいにゃ!凛、先に入るね!」
ピュッと凛先輩の姿が消えて、μ'sメンバーからドッと笑いが起きた。
やっぱりμ'sメンバーが揃うと、まったく雰囲気が変わる。
すると織音が
「あの…ワシワシってなんですか?」
とメンバーに真顔で訊いた。
「あれ、織音ちゃんは知らないんだっけ?」
「穂乃果先輩、私も知らないです」
「はい、私も…」
「…だって…」
お姉ちゃんから、1年生3人の疑問をパスされた希さんは、その瞬間ニヤリと笑った。
「ほな、あとで3人に…」
「希!」
海未ちゃん、絵里さん、真姫先輩が同時に名前を呼ぶ。
「冗談やって!冗談…みんなでそんな顔して睨まんでも…」
と笑う希さん。
「本当に、パワハラとかセクハラで訴えられても知りませんから」
「海未ちゃん、それはないわぁ…」
「あるわよ!」
と真姫先輩が速攻でツッコむ。
「ウチのそれは、身体測定と乳ガンの検診も兼ねてるやん?あ、そうや、あとで真姫ちゃんの成長ぶりを確認せんと」
「しなくていいから!」
「…世知辛い世の中になったわぁ…」
「そういうことじゃないでしょ!」
「ほいほい…怒らない、怒らない!ほな、中に入ろうかぁ」
と希さんは悪びれる様子もなく、店内に入っていった。
「まったく希は…」
と海未ちゃん、絵里さん、真姫先輩の3人は呆れて嘆いたのだった…。
~つづく~
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