【ラブライブ μ's物語 Vol.3】 雪の中の闇   作:スターダイヤモンド

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ポンコツ発動

 

 

 

 

 

「絵里さんが…花陽先輩のことを?」

 

 

 

私には7人の敵がいる。

 

 

 

花陽先輩と…

 

幼馴染みコンビの…凛先輩。

高校からの友人コンビの…真姫先輩。

衣装製作姉妹コンビの…ことりちゃん。

人見知り緊張コンビの…海未ちゃん。

ダイエットコンビの…お姉ちゃん。

焼肉ご飯コンビの…希さん。

アイドルオタク師弟コンビの…にこさん。

 

私が慕う花陽先輩がモテるのは仕方ないけど…それはつまり『誰と付き合っても不思議じゃない』ということ。

μ'sの先輩は…だから私にとって敵でしかない。

 

 

 

…その7人に、今、また絵里さんが加わろうとしている?…

 

 

 

彼女の発言に、私の警戒心が高まった。

 

 

 

「だって、亜里沙のいる部活の部長だもの。気にしてないわけがないじゃない」

 

「あ、そういうことですか…」

と私は胸を撫で下ろした。

 

 

 

でも、その直後

「私ね…花陽の前で泣いたことがあるの…」

という言葉に、心を掻き乱される。

 

 

 

「えっ?…」

と驚く私。

 

 

 

…絵里さんが泣いた?…

 

…花陽先輩の前で?…

 

 

 

まったく話の脈略が掴めないまま、しかし、絵里さんは話を続けた。

 

 

 

「去年、海外公演から帰ってきたら、物凄く人気が出ちゃって…」

 

「…覚えてます。『解散ライブをやる』って決めたとき、私も一緒にいましたから…」

 

「そうだったわね…」

 

 

 

9人は…絵里さんたちが卒業したら『μ'sとしての活動を終わらせる』はずだった。

だけど、想定していなかった海外公演を行った結果…μ'sは一夜にしてスターになる。

 

「次回のライブはいつ?」

 

本人たちの期待とは裏腹に、その人気は急速に過熱していく。

 

 

 

「解散する」と言えなくなった9人は…私の隣の部屋…で緊急会議を開いた。

そこに私も『オブザーバー』として参加していたのだった。

 

 

 

「その時に…『解散ライブをしよう!』って決めたんですよね…」

 

「そうね…。でも、決めたあとも、理事長…ことりのお母さん…から、なんとか活動は継続できないか…って打診があって…」

 

「…はい…」

 

「みんな相当悩んだのよ」

 

「わかります。お姉ちゃんもそうでしたから…」

 

「私は…雪穂はもう知ってると思うけど、膝を悪くしてて…」

 

「…確か…激しい運動はしちゃいけない…って、ドクターストップが掛かってたんですよね…」

 

「その時は…まだ、みんなに言ってなかったの。もうスクールアイドルとしての活動は終わらせるつもりだったから、言う必要はない…って思ってたし」

 

「…」

 

「でもμ'sを本当に解散するか、存続させるか…ってもう一回決断を迫られたときに、初めて、にこと希にはそのことを打ち明けたわ…」

 

「膝が原因で続けることはできない…と?」

 

「その通りよ。やりたい気持ちはあった。みんなともっと一緒に居たい!ずっとμ'sを続けたい!って気持ちは120%あった。…でも…それと同じくらい、こんな膝じゃステージに立てない、みんなの足を引っ張りたくない!って気持ちもあったの…。今でも思うわ。私が『やる!』って言えば、まだμ'sは解散してなかったんじゃないか…って」

 

 

 

「…」

 

 

 

「そのことで自暴自棄になっていた心を…花陽に見透かされてね…」

 

 

 

「えっ?」

 

 

 

「あの娘…ほら…そういうことに関して、すごく敏感でしょ?自分のことは二の次で、常に周りのことを気に懸けているというか…」

 

「はい!」

 

「それで…花陽に呼び出されてね…『力になれないも知れないけど、悩みがあるなら話してください!』…なんて言われちゃって…」

 

「花陽先輩にですか?」

 

「花陽にそう言われた瞬間、私の中の何かが壊れちゃって…『どうしたらいいのか、自分でもわからないの!』って泣き叫んじゃったの」

 

「絵里さんが?」

 

「…お店の中だったけど…恥ずかしいくらいにね…」

 

「まったく想像がつきませんけど…」

 

「μ'sに入って、だいぶ性格は丸くなったとは思ってるんだけど…それでも長女だし、生徒会長だったし…先輩後輩禁止とか言い出したのは私だけど…それでも年上だからちゃんとしなきゃ…って思ってたし…やっぱり、どこか肩肘張ってたのよね…」

 

「そんな絵里さんを、みんな『格好いい』…って憧れてるんだと思うんですけど」

 

「そう?ありがとう…だけど、本当は私だって甘えたい時があるのよ」

 

「えっ?」

 

「…出会った当初は、全然懐いてくれなくて…『花陽に嫌われてるのかしら…』って思ってたんだけど…最初は何をするにも自信がなくてオドオドしてて、こっちが一番心配する存在だったのに……いつの間にかすごく成長してて…逆に『私が心配されてる?』…なんて思った瞬間、嬉しかったり、情けなかったりで…いろんな感情がごちゃまぜになって…わぁ~って…」

 

絵里さんは、そこまで一気に喋った。

でも、その独白はまだ止まらない。

 

「その後、花陽は公園で私が落ち着くまで、ずっと傍にいてくれたの。何を言うでもなかったけど…それがどうしてか、すごく暖かくて、優しくて…変よね、2こも年下なのに、隣にいてくれるだけで安心感があるというか…甘えられるというか…素直になれる?…バカなことを言うかも知れないけど、私にお姉さんがいたら、こんな感じなのかな…なんて思ったりして…」

 

「花陽先輩が絵里さんのお姉さん?」

 

「笑わないでね…」

 

 

 

…笑わないけど…

 

…驚きはした…

 

 

 

「気持ちはわかります。私も先輩がお姉ちゃんだったら…って、いつも思ってますから」

 

「雪穂なら、わかってくれると思ったわ」

 

「はい」

 

「だから…あなただけに教えるわ」

 

「私…だけ…に?…」

 

 

 

「私はもっと花陽に甘えたいのよ!」

 

 

 

「えっ?…えぇ?…」

 

 

 

「あのプクプクのほっぺをツンツンしてみたり、プニプニのおなかをモニョモニョしてみたり…ぎゅうっとして、ぽわ~んとしてみたいのよ!」

 

 

 

「ええっ!」

 

 

 

…私の予想とは遥か斜め上を行く発言が飛び出した…

 

…これが噂の…

 

 

 

…ポンコツーチカ!?…

 

 

 

「雪穂だってそうでしょ?」

 

「は、はい…それは…」

 

「でも、私は出遅れたの」

 

「出遅れた?」

 

 

 

「『花陽をシェアする会』のメンバーに入れなかったの」

 

 

 

「花陽先輩を…シェアする会?」

 

 

 

…なんのこと?…

 

…シェアってモノじゃないんだから…

 

 

 

私は先輩が人間扱いされてないようで、少しムッとした。

 

 

 

それを知ってか知らずか絵里さんは

「花陽はμ'sの宝なの。ひとりが独占することは許されない!誰が言い出したかは忘れたけど、私たちの中では、いつの間にかそんな不文律が出来ていたわ」

と真顔で話を続けた。

 

「はぁ…」

 

「一家に1人、花陽が常備されていれば、世の中から争いはなくなるハズなの。でも悲しいことに、あの娘はひとりしかいない。これでは逆に花陽を巡る争奪戦が起きてしまうわ」

 

 

 

…急に何を言い出すんだろう…

 

…いや、確かにそうなれば、世の中から争いはなくなるかもだけど…

 

 

 

「そこで生まれたのが…『花陽をシェアする会』よ。現在の登録メンバーは凛、真姫、ことり、にこ…そして希!彼女たちは花陽が卒業するまでは、不公平のないように接しようと固く誓いあったらしいの」

 

 

 

「えっと…」

 

 

 

「当然、抜け駆けは禁止されてるわ」

 

 

 

「あ、いや…」

 

 

 

「だから、メンバーでない海未や穂乃果が、そういうことをしようものなら、ものすごく痛い目に遭うのよ…もちろん私もね」

 

 

 

「ものすごく痛い目…」

 

 

 

…なんだろう…

 

…それはそれで興味あるけど…

 

 

 

「だから私は、花陽をデートに誘うことも出来ないし『ツンツン』も『ぎゅっ』も出来ないの。そのストレスったらないわ」

 

「そうなんですか…」

 

 

 

「雪穂は花陽と寝たことある?」

 

 

 

「!!」

 

 

 

「あ、違うの…そっちの意味じゃなくて…その…お昼寝とか、そういうの…」

 

 

 

…あぁ、ビックリしたぁ…

 

 

 

「い、いえ…ないですけど…」

 

「経験者たちに言わせれば、花陽と一緒に寝ると…それはもう時間も場所も忘れるくらいグッスリと眠れるらしいの。そんな経験、したことないもの…。あの海未でさえ『会』が出来る前に経験したらしくて、私に自慢げに話していたわ」

 

「海未ちゃんも?」

 

「亜里沙に話すと面倒だから、伝えてないけど…去年、海外に行ったときに…最終日だったかしら?海未は花陽と同室だったのよ…」

 

「はぁ…」

 

「つまり…私だけ、まだ未経験…」

 

「お姉ちゃんは?」

 

「あぁ、穂乃果もいたわね…私の知らないところでそうしてなければ…だけど」

 

「えっと…突然の展開で、何がなにやら…って感じなんですけど…そ、その…絵里さんも『その会』に入ればいいんじゃ…」

 

 

 

「今更、花陽をシェアする会に入れて欲しいなんて、私が言えると思う!?」

 

 

 

…言えないのかな…

 

 

 

「でも、あと1年余りで、その協定は効力を消滅するから…もう少し我慢するつもりだけど」

 

「先輩が卒業したら、どうなるんですか?」

 

「告白をしていいことになってるわ」

 

 

 

「あっ」

 

 

 

…だとすると…

 

…私は完全にフライングだ…

 

 

 

…バレたら、どんな罰を受けるんだろう…

 

 

 

「ちなみに…花陽先輩はそのことを知ってるんですか?」

 

「シェアする会の話?知るはずないじゃない…」

 

「…ですよねぇ…」

 

私は少し安心した。

 

 

 

「ここから真面目な話をするわ」

 

「今まではふざけてたんですか?」

 

「ふざけてはいないわよ。でも、もっと本質的な話なの」

 

「本質的な話?」

 

 

 

「つまり…花陽を好きだと思っているのは、あなただけじゃないということ」

 

 

 

「…それは…知ってます…」

 

 

 

「だから、あの娘があちこちに連れまわされてしまうのは、至極当然のことなの」

 

 

 

「…それも…理解してるつもりです…」

 

 

 

「一方で…花陽もその状況を受け入れているわ…ううん、むしろ積極的に繋がりを持とうとしてる…」

 

 

 

「…」

 

 

 

「こう言ったら失礼だけど…今、あの娘は『自分を必要としてもらってること』に生き甲斐を感じてるんだと思うの。誰を立てようとか、誰に付いていこうとか、そういう打算とか損得抜きに、心の底からみんなと一緒にいられることを楽しんでいるわ」

 

 

 

「はい…」

 

 

 

「本当に羨ましいと思う…」

 

 

 

「はい」

 

 

 

「私もそういう風になりたかった…」

 

 

 

「絵里さん?」

 

ポツリ呟いた彼女の顔は、とても寂しそうだった…。

 

 

 

 

~つづく~

 

この作品の内容について

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