仮面ライダーは改人である   作:ふくつのこころ

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アギトトリニティ、ジオウトリニティ。
初代てんこ盛りと平成最後のてんこ盛り夢の共演でしたね。

そして、来週は響鬼編。
細川茂樹さんはどうするんだろう、と思っていたら、京介とは。
確かに鬼は師匠から弟子に受け継がれるもの、と言う意味ではいいかもしれません。
轟鬼さんも一緒に出てくるようで。

ウォズの祝福の鬼!というテンションに朝から笑いました。


“ヴィラン殺し”

「ふー、買った買った!ありがとな、タケヤマ!ハジメ!」

 

「よかったな、美音。ほら、先輩にお礼を言おうな?」

 

「ありがと、タケヤマー!」

 

 ヴェルマーのヒーローグッズが溢れんばかりの紙袋を手にほくほく顔の美音、店の前でぺこりと小さな頭を優に下げる。

 穂波に美音の欲しがっていたヒーローグッズを買わされてはいるものの、こうして素直に感謝されるのは目立ちたがりやな気質があってもヒーロー、岳山優は悪い気がしなかった。

 それに普段は無愛想で自分への扱いが悪い後輩の意外な一面が見れただけでも、ラッキーだったと思う。

 

 事務所で仕事をしているときの穂波は大抵、自分に呼ばれると露骨に嫌そうな顔を隠そうとしないまま、やってくる顔しか見たことがなかったから。

 

「ホッパーも立派なお兄ちゃんねえ?やっぱり、年の近いイイ女よりこの子みたいなのがイイってワケ?あんた、昔からナードっぽい雰囲気あるもんね」

 

「年の近いイイ女?どこにいるんです、そんな人。先輩の知り合いにいるなら是非紹介して下さい。俺、そういう出会いがないんで」

 

「ちょっと可愛げがあるとおもったらこれだから。ほんと、可愛くないわね。この後輩」

 

 わざと穂波の目の前に立って胸を寄せたり、上目遣いを試してみるものの、わざとらしい反応の後に周りを見渡すような素振りをする後輩の男。

 なんとなく予想通りではあったけど、もう少しかわいい反応を見せてくれてもいいじゃないかと先輩としては思う。

 魅力が実はないんじゃないか、と思うもファンや自分の活躍に声援を飛ばす男性、エゴサーチをしてみてもMt.レディの人気は確かにあるのだと思うも、穂波(こいつ)の扱いは心底雑で遺憾である。

 

「この子みたいってなんだ、タケヤマっ!私にシツレーだぞっ!取り消せよ、今の言葉!」

 

「あーら、取り消してやんないわ?取り消すなら、そのグッズのお金全部返してよ?」

 

 ぶるぶる、と身を震わせて憤る美音。

 年甲斐もなく、美音に人差し指を突きつけて挑発する優。

 

 二人とも顔立ちが端正なだけに人が集まりやすく、一応の火種である穂波(ほんにん)は素知らぬ顔で溜息をつく。

 

「人が集まってきたし、そろそろやめとけよ。先輩も、美音も」

 

「「誰のせいだと思ってんの(思ってるんだっ)!?」」

 

 喧嘩するほど仲が良いとは良く言ったもので、ほとんど同タイミングの美音と優の言葉に少しだけ穂波は気圧されたことをここに描写しておく。

 

「平和な休日だ」

 

 なんて珍しく肩を竦めて言ってみるのなら、美音に腕を組まれ、反対側の優にも腕を組まれて仕返しを受けるのだ。

 

「「お腹が空いたわ(空いたぞ)、ダーリン♪(ハジメ)!」」

 

 今度はバラバラだった。

 

「……」

 

 そんな三人を見る影が一つあった。

 

 

※※

 

 

「死神、とはお前か?」

 

 ヴィランを仕留めたハジメの背中に掛けられる、その声には狂気と疑念が込められていた。

 異形の姿のままでハジメが振り返ると、痛々しさを覚えるナイフを構えた包帯状のマスク、プロテクター、バンダナを身に付けた男が声の主であるようだ。

 

 面倒なことになった。

 

 ハジメは後頭部を異形と化した人差し指で掻くと、静かに向き直る。

 自分のヴィランからの悪名高さは連日連夜、身を以って知っているので、この男もまたその手合いではないかと思ったのだ。

 

「だとすれば、どうする?」

 

 カブトムシ型サポートアイテムを同行させる、という形で支援するという形になっている美音だが、今日は昼間にはしゃぎ疲れたせいで部屋で眠っている。

 二人で一人の仮面ライダー、と言ってくれているが、それでも妹分の彼女を危険に巻き込みたくないという気持ちは変わらない。

 どうせ一人で夜の街に繰り出してはならない、というルールは設けていないのだ。

 

 “あの夜”を繰り返さない為、一人でも多くのヴィランを減らすこと。

 

 それが今の自分がやるべきことだとハジメは信じていた。

 

「ハァ……。信念なき暴力を振るう、お前を誅する」

 

「!」

 

 咄嗟にハジメは防御の構えを取った。

 美音がアインと呼ぶ、その異形の姿は変身することによって現れる表皮は非常に頑丈だ。

 それこそ、今の変身したハジメ以上のパワーを誇る増強型とか異形型でない限り、押されることはないという自負がハジメの中にもあるほど。

 だけど、その自負はハジメの交差させた腕を男のナイフが切りつけることによって揺らぐのを感じる。

 

「……!」

 

「元から異形型なのか?それとも変身するタイプなのか?気になることは多いが、今はそんな事はどうでもいい。今夜はツイてる。死神、よりによって“仮面ライダー”なんて名前を掲げる贋作(ニセモノ)に会えるとは」

 

「仮面ライダーなんて名乗っちゃあいるが、お前のしていることは力を誇示するヴィランのそれに過ぎない」

 

 交差させたうち、ナイフの刃を受けている左腕の腕力で止め、右腕をそっと引き抜いて刃を掴み取る。

 

―――やめろ、それ以上、―――

 

「お前は英雄(ヒーロー)でも、ましてや自警団(ヴィジランテ)でもない。世間がお前をなんと呼んでいるか、聞いたことがあるか?」

 

 ハジメはこの襲撃者の名前を知らないが、先日の夜に出会った蛇のように近づいてきた男、スタークと印象が被る。

 言葉を巧みに操り、怒りを煽るその様はハジメのような人間がどうすれば仮面の下の素顔を曝け出す術を知っているかのようで。

 

 嫌な男だと思った。

 

 自分の岳山、蛇島、美音に隠している本音や本性を全て見透かされているような。

 狂っているようにも見えるのに、その瞳には何か信念のようなモノさえ感じさせる。

 

 今更、自分を世間がどう呼ぶのかなんてどうだっていい。

 

 だって、自分には―――。

 

―――仮面ライダーは、ヒーローだろ?

 

犯罪者(ヴィラン)を殺す犯罪者(ヴィラン)。ヴィラン殺しと」

 

 男のその言葉が、ハジメの中の引き金(トリガー)を引いた。

 

「誰が、誰が犯罪者(ヴィラン)だッ!」

 

 ハジメは怒りに任せ、男の身体を無造作に掴み、アスファルトに叩きつける。

 静寂に包まれた夜に響く、鈍い音。

 

 赤い瞳に黒いボディ、ところどころに入った金色のライン。

 仮面ライダーアインの主装備であった大鎌のライダーサイズを持っていないだけで印象は柔らかくなったものの、ナイフを持っている武装した男が相手とは言え、怒りに任せて力を振るう様はハジメが嫌う犯罪者(ヴィラン)そのものだった。

 

「そういうところだ。ハァ……、かの仮面ライダーを名乗った自警団(ヴィジランテ)と聞いて調べては見たが、実物はこんなに餓鬼(、、)とは。昼間は贋作ヒーローの事務所で事務仕事、夜は自警団活動。対価を貰って活動しているわけではないと見ちゃあいたが、犯罪者(おれ)の煽りにこうも安く乗ってくるとは思わなかった」

 

 その腕力によって地面に叩きつけられたことで、血を垂れ流しているものの、男の余裕は崩れない。

 するり、と高い腕力を持つハジメの腕を冷静に掴み、今度は男のほうがハジメを壁の方へと叩きつける。

 自分の位置と相手の位置を入れ替えるような、その一連の動作はハジメが余裕を失っているからこそできる芸当であり、男自身もヴィランを仕留めるに当たって地面にハジメが作り出した大きな盛り上がりやヒビを見れば、その力の強大さを認めないわけにはいかなかった。

 

「お前、あれだけ職業ヒーローを憎んでいながら、どうして一緒にいる?プライベートまで一緒にいる必要はない。守りたい者のために力を振るうのならば、その姿勢を認めてもいい。だが中途半端は駄目だ、それを嫌悪する」

 

「誰だか分からない奴に答える必要は……ない」

 

「ハァ……、俺はステイン。この腐った社会を変える者。答えろ」

 

 わざわざ名乗りまでするステインに殊勝な奴だ、とハジメは笑ってしまいそうになる。

 だが、ナイフによって切りつけられた箇所から流れる緑色の血(、、、、)をステインは一瞥し、ビキビキと腕に血管が浮かび上がるほど力をこめるハジメを見る。

 

「なんでかは分からない。目立ちたがり屋だし、承認欲求でヒーローを目指すようなどうしようもない女だ。だけど、振り払っても振り払っても先輩は俺に寄ってくる。もう諦めたんだよ、あの女を振り払うのは」

 

 ナイフをステインの手から叩き落し、拳の連打(ラッシュ)と蹴りを連続で入れる。

 吐露した先輩への感情、良し悪しをつけられないものではあっても、少なくとも彼女は自分の“知り合い”だ。

 だから、多少のわがままは叶えるつもりだし、我儘を言う。

 

「今の時代のヒーローらしいって意味では、あの女は嫌いだ。俺は、俺と同じモノを二度と作り出さないために力を振るう」

 

「そんな身体になってもか?」

 

 ステインはナイフに付着したハジメの人間のそれではない、緑色の血。

 ハジメは見慣れたそれを目にすると、異形の姿―――アインからハジメの姿に戻る。

 

「そうだ。俺は戦う。俺をヴィランではないと言ってくれる奴がひとりでもいる限り。俺はそいつのために立ち上がるんだ」

 

 力を振るえば、こんな相手(ステイン)を殺すことなど簡単だ。

 そう思った自分は確かにステインの言うように犯罪者(ヴィラン)を殺す犯罪者(ヴィラン)でしかないのだろう。

 この身体があの男(・・・)に改造されたことを知っているかのような口振り。

 今度は憤ることも、問いただすこともしなかったのはJacarandaで大好きなヒーローのグッズに囲まれて眠っている少女の存在。

 

 黒いパーカー、黒いスクエアタイプのフレームの眼鏡と一見すると地味で目立たなさそうな青年の姿にステインは拍子抜けする。

 こんなインテリが仮面ライダーの正体であったのか、と。

 

犯罪者(ヴィラン)の前に正体を晒す。ハァ……、それがどういう意味か分かっているのか?死神」

 

「分かっている。俺の大切な者に危害が及ぶかもしれない。だが、それ以上にお前の言わんとしていること、殊勝な態度を気に入ってしまっただけだ」

 

 憤って殴りかかってしまったけど、今は不思議と落ち着いている。

 暴力に身を任せてしまった行為は褒められたものではないし、自分の悪名はより広がってしまうこととなるだろう。

 だけど、それ以上に自分をこんな身体にした黒幕に自分の存在を知らしめることが出来るのなら、多少の危険も冒す。

 

 ナイフによって傷つけられた、その腕から流れていた緑色の血も、ナイフの刃を握り締めたことで切れた掌の傷も、いつの間にか塞がっていた。

 これも、改造された身体による恩恵だろう。

 

「お前が誰の愛好家(フォロワー)かは知らないけど、俺は仮面を被り続ける」

 

「……ハァ。怒ったり、冷静になったり。本当に、コロコロ変わりやすい奴だ。興が醒めた」

 

 ステインは心底つまらなさそうに背を向けて歩き出す。

 憤っているときの異形の姿ならいざ知らず、こんな馬鹿には不意打ちや奇襲をしてくるとは全く思わず。

 

 数歩進んだ後、何かを思いついたように足を止めた。

 

「どうしようもない偽者だな。ヴィラン殺し」

 

 ステインが吐き捨てた後、ハジメは答えることもせず、反対方向にヴィランの身体を黒い手袋をした手で引き摺りながら、フードを深く被って歩き出した。  




ヒーロー殺しとヴィラン殺しの邂逅。
結構カッとなりやすい、ホッパーは結構、死柄木を意識しているところがあります。
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