出来ることを頑張ったらこうなった   作:SINSOU

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お前、誰オナルド

自分には変な力がある。そう思ったのはいつの頃だろうか。

たぶん、僕がまだ家族と一緒にいた頃の、一人でお留守番をしていた時のことだったかもしれない。まだ幼かった僕はとても怖い思いをしていた。

考えてみてほしい、真っ暗な部屋の中で一人取り残される気分を。だからだろう、僕はとても悲しくて泣いてしまった。それこそ声が枯れるまで泣き喚いた。お母さん、お父さん、早く帰ってきて!怖いよ!寂しいよ!助けて!そんな思いで泣いていた。

でも『普通』ならそんなことをしたところで、両親がすっ飛んでくることもない。壁を隔てれば音なんて聞こえないものだ。当然、誰かが慰めてくれることなんてない。

 

でも僕の場合は違った。誰かの手が僕の頭にそっと触れた。まるで「大丈夫よ、私がいるからね」と安心させてくれるように、ゆっくりと僕の頭を撫でてくれた。その時の僕は、お母さんが帰ってきてくれたと思い、安心して眠ってしまった。それからと言うもの、そんな奇妙な出来事がずっと起こった。

両親がいない間、暗い部屋の中に一人取り残されても、僕は誰かに抱きしめられることを感じた。時にはおなかが減ったら、なぜか焼きたてのパンケーキの乗ったお皿がテーブルに置かれていたこともあった。

 

それからは月日が流れ、僕が物事について考えられるようになれば、矛盾に気が付くのは道理だろう。僕は両親がいない間、『知らない誰か』に色々とお世話をしてもらったということに。僕の両親について言うのであれば、『普通』の人たちだった。別に変な力があるわけでも、有名な経歴を持っているわけでもない。本当に『普通』だった。

 

そんな中、『普通ではない僕』という存在がいればどうなるかなど、簡単に予想がつくと。

 

両親は僕に対して余所余所しくなった。

まあ、そうだろう。家から帰ったら、作ってもいないパンケーキを食べる僕がいたり、小汚かった部屋がきれいになっているなど、どうあってもおかしい。その時の僕の年からすれば、そんなことは出来る訳がない。でも実際にはそれが起きている。どう考えても『普通』ではない。そしてそれが原因不明とあっても、人は何かに原因を見出そうとする。結果、両親は僕をこの奇妙な出来事の原因と見做したのだ。まあ、それはあっていたのだが。

 

でも僕は両親を尊敬しているし、今も愛している。どう見ても怪しい存在の僕を、どうにか家族として育ってようとしてくれたのだから。その心に恐怖を抱いていたかもしれないのに、それを顔に出さなかった。

両親からすればいつものように接していたのだろう。でも子供と言うのは、そういったものに実は敏感なのだ。いくら誤魔化そうとしても、その違和感を見抜く力がある。そして残念なことに僕にもそれが当てはまった。両親からの違和感を感じていた僕だが、別段気にもせず両親に接した。それが更に両親を苦しめていたと知らずに。

 

結果、限界にきてしまった両親の姿を知ってしまった僕は、両親の下から飛び出した。

 

 

しきりに「ごめんなさい」と僕を抱きしめて泣いていた母親と、ただ悲痛な顔で僕を見下ろしていた父親の姿。それが最後の両親の顔だ。二人が寝静まった後、僕はこっそりと家から抜け出した。最後に家へと振り返り「ありがとう」と感謝の言葉を残して、僕は両親の下から去った。自分勝手に一人になった僕だったが不思議と不安ではなかった。何ともおかしなことだ。普通なら心細くて泣いてしまうだろうに、僕には涙が流れなかった。そう思うと、傍から見れば僕は子供らしくない子供だったのかもしれない。僕は一人で山の中に入っていった。僕のような人は、ひっそりと『普通』から距離を取ればいいと思ったからだ。

 

そして森の奥深くへと僕は進み、開けた場所に出た。木々が生い茂る中、そこはあまり暗くなく、月明かりに照らされて明るかった。僕はそこに腰を下ろした。

 

そしてしばらく休んだ後、僕はそっと手を前に翳す。

 

すると、目の前の地面に大きな黒い穴が生まれ、そこから何かが這い出てきた。まずは右手が這い出てて、次に左手が這い出た。そして頭が、胴体が、最後には両脚が現れた。それは人の形をしていた。それは女性の形をしていた。透き通った黒髪を腰まで伸ばし、空を映したように澄んだ青い瞳。無表情のようで、どこか優しげな印象を抱かせる顔。そして全身が灰色に染まった衣服を着ていた。

女性がすっと右手を挙げる。そこにはちゃんとした意思が宿っていることに驚くと同時に、頭を撫でられて確信した。ああ、この人が僕を見ていてくれたんだと。そして僕はその人の手を繋いだ。

 

 

 

 

 

 

 

さてこうして僕は自分で呼び出した?この人と一緒に生活をすることになった。そして自分の力がいったいどういうものかを理解した。僕の力は『自分が望むものを生み出せる力』のようだ。ただしこの力は万能ではなく色々と制限があった。僕が生み出せるのは生物に限るものだった。何度か(電気が入ってないのに)テレビや冷蔵庫などを作ろうとしたが、出てきたのは電気や冷気を生み出す獣が出てきたのだ。別に問題なく、今では有効に活用しております。

次にその造形は色々と問題があった。ようはこれどう見ても怪物だよね?である。身体をすりすりとこすり付ける、顔をぺろぺろと舐めてくる、アマガミで牙を突き刺すなど、僕には可愛い物なのだが。まあでも、こんなところに足を踏み入れる人なんていないから別に問題はないよね?

 

僕はそう思い、取りあえず色々と出来ることを考え、そして実行していった。初めに生み出した女性(のような怪物?)は、アナイアさんと名付けた。名前がないとかわいそうと思ったからだ。本人も嬉しかったらしく、無表情ながらも顔を赤らめて、僕の手を持ってグルングルンジャイアントスイングをしてくれた。吐いた僕にオロオロしていた。

 

 

 

 

 

 

 

・・・増やしすぎた。

色々と掻い摘んで言うと、どこまでできるのかの興味と好奇心に勝てなかった。結果、森は動物園と化した。そしてそれが迷子で迷い込んだ人たちに見つかった。いや別に食糧にして襲うとかするわけでもなく(しないように命令もしたし)、魔獣さんらは丁寧に外まで案内した。だがやはり見た目がまずかったらしく、迷子の人たちを外へと置いて帰ろうとした際に探索隊に見つかり、熊だ獣が森にいると大騒ぎになってしまったのだ。

 

なぜ解ったって?レーダーさん(呼称)と望遠(呼称)さんを通して、森の外にたくさんの人がいるのを知っているからだ。

 

どうしよう?自分の蒔いた種とはいえ、僕は困惑している。このままでは僕たちが見つかってしまう。生み出した獣さんたちが、害獣として処分されてしまうだろうし、僕が見つかったら両親に迷惑が掛かってしまう。

 

と言うわけで、引っ越しをしようか。

 

そんなことを考えて、その夜に準備をしていると、レーダーさんが僕に吠えた。どうやら何かがこの森に侵入したらしい。仮に迷子だったらまた外へ案内すればいい。興味本位のお馬鹿さんなら、適当に脅かして帰そう。そう思い、護衛の門番さん等に指示を出す。さて、引っ越し準備の続きをしなきゃ・・・え、侵入者さんがまっすぐこっちに来てる?しかも門番さんらが追いつかない速度で?

 

僕はレーダーさんの言葉に驚く。そもそも僕らのいる場所は森の奥深くであり、大抵は入ってこれない場所だ。入ってくるのは迷子さんしかいなかった。だが侵入者さんはまっすぐにこっちに来ているという。ということは、その人は僕の位置を把握しているということ。僕の身体に寒気が走った。不安を感じたのか、周りの獣さん等が僕のそばに寄り、身体を擦り付けてくる。

 

どうしよう、今すぐに逃げなきゃ。そう思い、僕はみんなに指示を出そうとして、金属がこすれ合う音が聞こえた。その音に耳を塞ぎ、何が起きたのと周りを見れば、周辺がガラスのような壁に囲まれていた。混乱する僕に追い打ちをかけるように、目の前の草むらからがさがさと音がし、そこから人影が現れた。僕を守るように、アナイアさんや獣のみんなが僕の前に立つ。

 

「ああ良かった。神器の反応を頼りに走ってきたことで、迷子になりかけるわ、獣に襲われるわと大変でしたが、なんとか無事に着いたようですね」

 

その声は鈴のように澄んでいた。

 

「申し訳ありません。ここであなたを逃がすわけにも行かず、結界を張ってしまった無礼を先に謝罪します」

 

その言葉を発した人影を見て、僕は目が点になった。

 

「私、堕天使として神器を宿している人の保護を担当しております、レイナーレと申します。以後お見知りおきを」

 

紺色を基調としたスーツを着こなし、その顔に眼鏡をかけ、黒のハイヒールを履いた女性が、その背に大きなリュックを背負って現れたのだから。




アナイアさん(裏設定)
『僕』の創造力と想像力がベストマッチし、『僕』の寂しさへの想いを、レッツ・ラ・まぜまぜ!した結果のヤベーイ奴。
『僕』が知識を蓄えれば蓄えるほど、(勝手に)自動更新をするヤベーイ奴。
全ては『僕』を守るために行動をする、グラビティヤベーイ奴。

結論ヤベーイ奴
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