出来ることを頑張ったらこうなった   作:SINSOU

3 / 10
お前、誰ルアンの農女

もしも突然、あなたは聖女ですと言われたらどう思う?「私が聖女!?きゃあ嬉しい!」と思う?それとも「え、私が聖女なんですか!?」と驚いたり戸惑うかしら?

 

あたしからすれば、すこぶるどうでもいい、としか思わないし思えないのは確か。

 

そもそもあたしのような田舎娘に対して、『あなたは聖女です』というのがまずおかしい。そしてその言葉を信じて「はいそうです!」って答えられる方もおかしいって思う。傍から見れば、どうあっても異常者でしかないわよ。まあそれを言ったのが、由緒正しき教会の神父様からじゃなければ、私は「はい、どうも」とテキトーに聞き流していただろう。もう一度言うけれど、田舎で暮らしている農家の娘に向ける言葉じゃないでしょ。

 

ある日、毎週お祈りのために訪れていた教会で、私は町の人の目の前でそう言われた。それも不意打ち気味だ。一方で、いつもとは違った違和感はあったのだけれど、それに気づかなかっただけだろ。いつも顔を合わせている神父様の表情が妙に硬かった。恰幅のいい体形のように柔和の顔がやけに青ざめていたのだ。そしてお祈りを捧げて終わると、急に私の名前を呼ばれた。そして顔を上げれば、神父様の隣にもう一人。そっちはやけに豪華そうな出で立ちの神父様だった。正直、隣にいた村の神父様がかわいそうなほどに。

 

そしていきなりの聖女宣言である。豪華な出で立ちの神父様はなんと『教会』からやってきたらしく、私を見に来たという。何でも、私が聖女かどうか見定めに、そして聖人認定だ。

正直言って、なんてことをしてくれたのよ!っと、怒りと気恥ずかしさで顔が真っ赤だった。それほどまでに、私にとってはいい迷惑だったのだ。

 

別段冷めているわけじゃない。斜に構えているわけでもない。そりゃ、あたしだって年頃の女の子よ。色々とちやほやされたいって思う。年頃の男の子に注目されたいって思うわ。でもそれは女の子としてちやほやされたいのであって、聖人のような扱いなんてまっぴらごめんよ。それにいまいち実感なんてわかないもの。自分が聖女の生まれ変わりだなんて。

 

あたしが?聖女様の生まれ変わり?冗談はよしてよ、って話。何度も言うが、田舎で暮らしている農家の娘が聖女様の生まれ変わりなんておかしいでしょ?あたしは由緒正しき農家の娘だ。お父さんやお母さん、おじいちゃんやおばあちゃん、ひいおじいちゃんやひいおばあちゃんも、ずっとこの村で農家をやっていたのだ。そしてその血を受け継ぐのがあたし。ほら、どこに聖人の血が入る余地があるっていうのよ。

 

それに考えてみてよ。

 

聖人というのはそれこそ奇跡のようなことを行ったお方たちのことを言うの。

それこそ聖人なんて言うのは、海を開いたり、死から蘇ったり、竜を倒したり、石をパンに、水をぶどう酒に変えたりできる方々だ。人々のためにその力を振るった人たちだ。

 

一方で、あたしが出来ることは力を籠めたら手のひらがピカー!と光ったり、なんか空間や手のひらから光る剣が出る程度のものだ。単に手のひらから光る剣を出すだけで、手が光るだけで聖人扱いを受けるなんてのは、はっきり言って身に余り過ぎる。それこそ聖人を、聖女様を舐めているとしか思えない。人々をお救いになられた方々に比べたら、私のは単なるマジックのようなものだ。

 

そんなのと比べて、単に光る剣を出せるだけのあたしの力は地味だ。それこそ人のために使えるなんてことはない。まあ、なんかあたしが力を込めたものはペカー!と光るらしく、それで夜道を照らす光源代わりになる程度なもの。あとは雑巾に力をこめてピカーと光る雑巾して掃除に使うくらいだ。光る雑巾で油汚れをこすると綺麗に汚れが落ちる程度なもの。ほら、地味でしょ?

 

最近は光る剣を有効活用しようと必死に思考錯誤をしたら、光る枝切ばさみになったり、鉈に斧に包丁やナイフに変わるようになったかな。料理や薪割りにすっごい便利になったわ。切れ味が良いから、仕事も早く終わって大助かりだもの。

 

そんなこんなで、あたしは聖女なんてもんじゃないってお断りをしたわけ。教会から来た神父様には悪いけど、あたしは聖女として教会に行く気はないの。それに教会の神父様の印象が、あたしからすれば最悪だった。

 

何て言ったかって?

 

「農家の娘ではなく、聖女となる方が貴女にとって幸せのはずです。こんな田舎でただの農民としてではなく、教会で神の徒として生きるべきです」って。

 

ああこの人、農家を舐めてるわって思った。その一言も相まって、あたしはお断りをしたってわけ。農家を、あたしの村を馬鹿にする人に誰がついていくかっての。

それにあたしには聖女様になるよりももっと大きな夢があるもの。

 

それはこの村を豊かにすること。悔しいけれど、口の悪い神父が言ったように、あたしの村は田舎で、それこそ町に行くまでに時間がかかるほど遠い。それに田舎ゆえに、町のような賑やかさもないし、ショッピングに行けるようなお店もない。だからいつも貧しさに苦しんでる。だからあたしは、自分が育った村に恩返しがしたいの。

少しでも豊かになれば、みんな少しは楽になれると思ったから。

 

だからあたしは、農家として村に貢献しようと必死なのだ。あたしが力を入れているのは、やっぱり野菜だ。農家の娘だからってのもあるけれど、こうして何かお金になるものを作ることで、村の利益になると思ったから。

毎日雑草を抜いたり、水やりも大変。でも村のみんなも手伝ってくれるから平気なんだ。

ほら、あそこで元気に鍬を振り上げてるおじいさん、御年110歳なんだけど、日課の朝の散歩は欠かしたことがないくらい元気なのよ?それに隣のおばあさんなんか、100歳になんだけど、肌はぴちぴちで見た目も若々しいの。流石、村のマドンナって言われるくらいの美人。他にも、色々といるんだけど、そこはまあいいわ。

 

っと、トマトの出来をみるとあたしは笑顔になる。だって、まるでルビィのように輝くトマトがなっているんだから。うん、今年もみんな出来が良くてあたしは嬉しくなる。見た目もそうだけど、味も自信作なの。チーズと一緒に食べるなんて最高だし、トマトジュースにしても甘くておいしいの。

こうした野菜を出荷して、あたしは村に貢献しているの。最初は心配だったけれど、それもすぐに杞憂に終わったの。信じられないけど、有名なお店の人が直接村に出向いて契約してくれたの。もう嬉しかったわ。こうして今じゃ、出荷の時はいつも大忙し。

 

ああ、ようやくこの村に恩返しができると思うと、あたしは嬉しくてたまらないわ。

あたしは舞い上がるような気持ちで野菜を箱に詰めていると、お店の方から声がした。お父さんがあたしを呼んでいた。なんでも女性があたしを尋ねに町に来たらしい。

 

いったい誰かしら?もしかして新しいお客様かな?そんなことを考えながら、あたしはお店の扉を開けた。そこにいたのは、まるで黒曜石のように澄んだ黒髪をした女性がいた。何故か紺色の下着姿で。良く見ると、足もとには衣服らしく布切れが散っていた。そして女性のそばにあるテーブルの上には、トマトジュースが入っていただろうガラス製のグラスと、トマトを丸ごと使ったシロップ漬けの器。

 

あたしは内心でやってしまったと手で顔を覆った。

 

不思議なことに、あたしの野菜で作った料理を食べると、なぜかこんな現象が起こる。それが不思議でならない。時には若々しくなったり、健康になったりと色々と起きる。どうしてだろう?ただピカー!と光るだけの野菜なのに。

 

「おや、あなたがこのお店のオーナーですか?」

 

まるで人形のようにきれいな顔で、鈴のように澄んだ声に問われ、あたしは肯く。

 

「私、神の子を見張るもの(グリゴリ)から参りました、レイナーレと申します。本来であれば、先に神器についてお伺いしたいところだったのですが、このトマト料理にとても感動しました。聞けば他にも野菜を作っていらっしゃるとか。そこでですが、こちらにも野菜を送っていただけるよう、契約をお願いできませんか?」

 

新しい顧客が出来ました。




浄化と加護
『あたし』が力を込めるとペカーと光る。その光は邪なるものを払う『ただの光』である。光源にもなるので、暗い夜道も安心。汚れを綺麗に浄化し、殺菌効果も見込める。
また力を込められたものは『加護を受けた~』となり、物が普段よりも長持ちするようになる。光が消えても長持ちの効果がある。
時に村の大掃除の際には、『あたし』はこの力を使って掃除を行うので、町は綺麗で清潔らしい。

野菜
『あたし』が手間暇かけて育てた野菜。なぜかピカー!と光っている。数は少ないが、個人経営のお店と直接取引されている。これを使った料理を食べると、衣服がはじけ飛ぶ、ビクンビクンする、口からビームが出ると言ったうわさが流れている。
若返った、病気がたちどころに直った、長寿になるなど、デマも流れている。

あと悪魔に当てるとえらいことになる。
下級:即消滅、中級:致命傷、上級:8割大ダメージ、魔王:5割のダメージ
※たとえ生きていても、しばらくはあらゆるデバフ効果が付く(例:某八相のデータドレイン)


『あたし』が住んでいる村。何か長寿の村として取材を受けたらしい。あと、村を出ると心が爽やかになるとか。

光る剣
なんか念じたら出てくるペカー!と光る剣。初めは剣だけだったが、今では鋏にも鉈に包丁にもなるので便利。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。