「あの、レイナーレ様はいったいどちらに行かれるのですか?」
ゴシックロリータ姿の少女が私に尋ねる。金色の髪をツインテールにまとめ、いつものように顔を赤らめている。やはり、私は彼女に何か良くないことをしているのではないだろうか?毎回彼女の姿を見る度に申し訳ない気持ちになってしまう。私は彼女に声をかけようとして、
「おや、ミッテルトは知らなかったのか?」
ミッテルトとは別の声がした。声の方へと目を向ければ、シルクハットを手に持った男が立っている。黒いコートを纏った姿は、男を紳士のような印象を抱かせる。仮にステッキを持たせれば、イギリス中世時代から抜け出た美男となるだろうか。男はミッテルトに少し小ばかにした視線を送っている。
「なんすか、ドーナシーク」
その視線に気づいたのか、ミッテルトは丁寧な口調を崩し、ドーナシークを睨み付ける。そんな視線を受けながらも、ドーナシークは気にも留めない。彼からすれば、子供がプンすかと怒っている程度なのだろう。
「いやいや、いつも『私はレイナーレ様の一番の部下ですから!』と言っていた君にも、知らないことがあったとはね」
「はぁ?なに笑ってるんすか?ぶっとばされたいっすか?」
彼女の崩れた口調に少し驚く。おそらく、今の口調が彼女本来の姿なのだろうか。なにぶん彼女からはなんとなく無理をしている印象を受けてはいたが、なるほど、意外ではあった。
一方、取り繕ったのをやめたことに気づいていないのか、ミッテルトは崩れた口調でドーナシークに突っかかる。その一方で、既に化けの皮が剥がれているミッテルトの姿にただ苦笑するドーナシーク。そんなおかしな空間が出来つつある中で、第三者が手を一拍叩いた。
「二人とも止めろ。見ている私が恥ずかしい」
やれやれと呆れたような顔をして入ってきたのは、青色の長い髪をした女性だった。こちらはやや吊り上った目で二人を見据えている。こちらは黒色のスーツだ。彼女の視線と言葉にミッテルトは露骨に嫌な顔を、ドーナシークはやれやれと苦笑する。
「カワラーナもなんすか?こっちは売られた喧嘩を買っただけっすよ。邪魔をするならカワラーナもぶっ飛ばすっす」
「やれやれ、君も相変わらずだな。なに、少しからかっただけだよ」
「ならば私の視界外でやれ。毎度毎度それを見せられる私の身にもなれ。それにだ、いい加減に気づいたらどうだ、特にミッテルト」
カワラーナの言葉に、ミッテルトは「なんなんすか」と後ろを振り返り、私を見る。そして顔を青ざめた。
「れ、レれれレイナーレ様!ちち、違うんです!今のは何と言いますか・・・そう!方言!これは私が住んでいる所の方言です!決して今のが私の本性ではなくてですね・・・!」
青ざめた顔で何を言っているのか解っていないように捲し立てる部下の姿に、私は口元を抑えて笑いを堪える。後ろでそれを見ているドーナシークとカワラーナは苦笑と呆れ顔だ。そして顔色が青から赤へと変わっていくミッテルト。その瞳はぐるぐると渦を巻き始めている。取りあえず、そっちの口調でも構わない、と一言。その瞬間「ち、違うんですー!!」と言いながら部屋から出ていってしまった。嵐のように飛び出したミッテルトに呆然としつつ、私はチラリと部屋に残った二人に視線を移す。ドーナシークは両手を広げてやれやれと言った姿を見せ、カワラーナは何をやっているんですか、という視線である。取りあえず、後でミッテルトに謝るようにとドーナシークに苦言を言っておいた。こういった不和を放っておくと、必ず後で大きな問題となることを知っているからだ。こちらも後で彼女の部屋に行くことにしよう。まったく、色々と大変だ。
さて少し時間を使ってしまったが、当初の予定通り、私はとある場所に顔を出すため、空へと翼を広げるのだった。
「起きてください」
ゆさゆさと揺られるのを感じ、私は微睡んでいた目を開く。
「おはようございます」
私の視界に入ったのは私の大切な人。彼女自身の髪と同じ灰色の瞳が私を写す。おはよう、と私は彼女と言葉を交わす。窓から入る光を受け、彼女の姿はより美しく見える。と、互いに生まれたままの姿であることを思い出し、私たちは顔を赤らめた。昨日もまた、私たちは深く愛し合った。互いが互いを求め、その心のままに私たちは愛を確かめ合った。そのことを私は思い出してしまい、彼女の顔を見ることが出来なかった。チラリと彼女の方を見れば、シーツを纏う彼女の方も、顔をトマトのように赤らめている。纏っているシーツは彼女の身体をしっかりと表しているためか、仄かな色香を漂わせている。
「朝ごはんに・・・しませんか?」
彼女のぽつりとつぶやく声に、そうだな、という言葉しか返せなかった。
「そういえば、今日はあの人が来る日ですね」
終始無言であった朝食の中、彼女が言葉を切り出した。そうか、もうそんな時期なのか、と私は言葉を返す。
『では私たちの下に来ませんか?私としては、お二人のことを詮索するつもりはありませんし、別にお二人の元の居場所のようにタブーなんてありません。私の上司はあなた方のように敵同士の関係で夫婦をやってますし。それこそ総督なんて、女の尻を追っかけてかつての居場所から転げ落ちましたから』
無表情のままそのようなことを言った彼女に、私たちは呆然としたことは確かだ。そうして私たちは彼女の手を握り、こうしてひっそりとではあるが、とある辺境の地で暮らしている。周りを自然に囲まれた小さな家に住んでいるが、一室で過ごしていた私にはこれと言った不便はない。彼女も元実家のお屋敷と比べれば雲泥の差ではあるというが、不満もないという。むしろ彼女にとって実家は広すぎだったという。少し離れた麓のは小さな町があり、日用品を買うこともできた。私たちのような余所者であっても受け入れてくれる町に、私たちは深く感謝している。と想いに耽っていると、ディンドンと呼び鈴がなった。どうやら彼女が来たらしい。
「私が出ますね」
そう言って彼女は席を立ち、玄関の扉を開けた。
「おはようございます」
そう言って玄関に立っていたのは、キラリと眼鏡を光らせ、紺色のスーツを纏った女性であった。
「もうよせ紫藤!お前まで罪を犯す必要はない!」
襲いくる魔力の塊をきり伏せ、私は声を荒げる。
「何を言っている八重垣。これは未来にとって、お前にとって大切なことだろう?ならば私がこうする価値はある。それにどうやら私は、友を殺してまで教義を守るほど信心深くなかったようだ。はは、これではエクソシスト失格だな!」
所々を赤く染めながら隣に立つ友は笑う。降りしきる雨の中、私は彼女を背に剣を構える。目の前に立つのは、忌むべきたち
だが私たちは徐々に押されている。敵とはいえ、同輩に手をかけることを躊躇う私や紫藤や同じ悪魔と戦うことや、戦い事態を嫌う彼女は違い、彼らは私たちを殺すため攻撃する。それこそ周りの被害など構いもしないように。また余りに数の差が大きかった。開いた傷口から流れる血や降りしきる冷たい雨は、私たちの体力を奪うのには十分だった。
「同志紫藤、これ以上の反逆は私たちでも庇うことが出来ません。優秀なエクソシストである貴方さえも失うことは、教会にとっても心苦しいのです。今ならまだ間に合います。悪魔に唆された愚かな裏切り者を粛清するのです」
感情のない平坦な声が、
「エクソシスト共と手を組むのは癪だがこっちも命令でね。クレーリア・ベリアル、あんたは取りあえず死んでくれよ。ま、そっちのエクソシストの目の前で可愛がってやるから、あんたは気持ちよく昇天したまま死ぬだろうがな」
下卑た台詞で、悪魔たちの欲望に塗れた言葉が響く。
「逃げてくれ・・・八重垣」
目の前で友が倒れる。バシャリと音を立て、友は地面に横たわった。
ああ、もはやここまでなのだろう。私は己の無力さを嘆き、愛する彼女に顔を向ける。
「すまないクレーリア。私のせいでこんなことに・・・」
「いいのです、私も同じです。私のせいで貴方を巻き込んでしまいました。たとえエクソシストであろうと、私は貴方を愛しています。それに後悔はありません」
血に塗れた彼女が私に微笑む。
「ああ、私もだよ」
そして光の一線と魔力弾が私たちに私たちに向かい、私たちは互いを抱きしめて目を瞑った。
ガキィンと、まるで鋼鉄がぶつかった様な音が響いた。そして襲ってくるはずの痛みがいつまで経っても来ない。そのことに違和感を感じ、私はゆっくりと目を開ける。するとそこに映っていたのは、
「アナイアさんの頼みごとと一緒に、こちらの領主様に顔を窺いに来ましたら、何とも不思議な光景でしょうか」
ローブの女性が喋る。
「互いに憎しみ合っているはずの2勢力が、まるでお友達のように一緒にいるとは。しばらく様子を見ていましたが、どうやら後ろにいる二人が目的のご様子。これは私としても見過ごせなくなりました」
目の前でキンキンと魔力弾を弾いているが、彼女は気にも留めずに無表情で話す。
「貴様!我らの邪魔をしたことその意味を分かっていないようだな。見られたからには死んでもらうぞ!」
悪魔の一人が叫ぶが、女性はまるでつまらない物を見るかのように、冷めた身で見据える。
「アナイアさん、どうか手加減をお願いします。一応、敵とはいえ教会の者たちは人間です。レオナルドさんのことを考えますと、貴女が血に濡れることはこちらも心苦しく思いますので。そもそも貴女が本気を出せれると、ここ一帯が鉄臭いトマトジュースになります」
その言葉を受け、灰色の女性はバキリと光の剣を握り潰し、そのまま身体から生えた何本もの手でエクソシストたちを殴り飛ばす。まるでサッカーボールのように、彼らは空へと飛んでいく。ローブの女性は目の前で繰り広げられる蹂躙劇にただため息を吐いた。
「どうやらあちらは問題ないみたいですね。では私も動きますか」
そう言うないなや、彼女は何もない空間に手を入れる。すると、彼女の手はすっぽりと沈み、ごそごそと何かを探すように動く。そして目的の元を見つけたのか、ガチャリと金属の音が響いた。彼女はゆっくりと手を穴から抜き出す。そして彼女の手にあったのは鉄塊であった。鈍色光る塊は、それだけで畏怖を抱かせるものであった。彼女が握っているのは取っ手だろうか?まるでスーツケースの形を成していた。
「では試運転と行きましょう」
その言葉を皮切りに鉄塊はその形を変えた。スーツケースから、まるでボウガンのように形を変えたのだ。そして何かが破裂する音が響く。目を向ければ、そこには壁に食い止められた悪魔たちの姿があった。
「改良型六連式光槍刺突機構、始動に問題ないですね」
そう言うと彼女はこちらを向く。
「お前はいったい・・・」
私の言葉に、彼女は答える。
「失礼しました。私、
『改良型六連式光槍刺突機構』
試作であった『杭打機』の改良型。リボルバー式を採用され、試作品とは違い6発撃てるようになった。ただし、その分威力が下がり一撃必殺はならなくなったが、それでもただ光の槍を突き刺すよりかは威力がある。
また見た目に関しては鉄塊であった試作品から、(ロクデモナイ)総督の案から変形機構を採用。見た目はスーツケースとして持ち運べるようになった。でも重い、すっごい重い。むしろ殴った方が手っ取り早いくらいに重い、そして硬い。
『とある夫婦』
悪魔とエクソシストでロミジュリをやらかした二人。女性の方は貴族の娘であり、男性の方は腕利きの教会の戦士だったもよう。一方は何か重大な事実を知ったが故の口封じ、一方は黒歴史抹消のために、双方のお偉いさんが動いた。
だがロミジュリ夫婦の上司を知っている彼女からすれば、『意見は解りますがだからとて何でもかんでも殺すのはまずいのでは?』むしろ『敵と手を組んでたことが重大案件では?』とのこと。
時系列的に、男性の方からとある怪しい研究所があると教えられた。
『麓の町』
のんびりとした雰囲気に包まれたのどかな町。周辺の町や村の中枢を担っている。近くには野菜が有名が村があり、時折村娘が卸しにくるとか。
『灰色の女性』
可愛い女性だと思った?残念、グラビティヤベーイ奴だよ!(今回の参考:ラウ○ちゃん)
御主人への誕生日プレゼントをこっそり買うため、『彼女』に随伴をお願いしたのが運の尽き。
『エゲレス紳士』
臣下②(臣下①の座は金髪ツインテールゴスロリが絶対に譲らないとか)。
見た目に反しては実はかなり肉弾戦が得意。最近は『気』に注目しており、何とかものに出来ないかと試行錯誤中。ただ、会得するとなにかに目覚め、背中に文字が浮き出そう。
『黒スーツの女』
臣下③。少しきつい目元と男口調により、近寄りがたい印象を抱かせる。本人は『これは性分ゆえに、今更変えるなど出来ん』とのこと。女性らしくでるところは出て、引っ込むところは引っ込んでいる体型。そして腹筋が割れてる。鴉を使役することが出来、主に偵察役を任されている。子供大好き。
『友』
気を失っていた間にことが終わっていた。愚かな裏切り者を始末したとして評価される。その際、裏切り者とはいえ嘗ての友を殺めた罪悪感か、顔色が優れなかったもよう。
なおその後は誰から送られるのか、月に1度届く手紙を楽しみにするようになる。
『お兄ちゃん』
討伐のことを知りブチギレたが、帰還者の方向を受けた後はなぜか大人しくなった。その後、妹の形見を身に着けるようになる。時折『大丈夫であろうか・・・』と呟いて精神不安になる姿をが見かけられる。
『胃』
荒れ始める。