転生した少年~俺だけ勇者システムなしとか、ハードモードじゃね?~   作:GRAENA

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なんとなくの妄想ですので。


プロローグ

俺の記憶は爆走トラックから女の子を庇って轢かれて死んだところで途切れている。

 

体がピクリとも動かずに、視界が明滅する。死ぬ、ということがこれほどまで身近に感じることはないだろう。道路に横たわり、赤い液体が体から出ていく。特にこれといった未練もない。強いていうなら、親と友達に何か一言言いたかったぐらいだ。

 

次に目を覚ましたのは、距離感も何も掴めない、どこまでも続いてそうで、手を伸ばせば壁がありそうな真っ白い空間。

 

死んだのに目を覚ますのはどういうことか自分でもよくわからない。本当は死んでなかった、なんていう可能性も否定できないが、いくらなんでも病人を何もない空間で放置はしないだろう。

 

そこから混乱に更に混乱を上乗せする事態が起きる。上からやけに神々しい、男とも女とも見える中性的な人が降臨。二、三言葉を交わし、その人が神であり、なおかつ俺は死んだことを伝えられた。

 

頭がキャパシティオーバー起こしそうだ。

 

それからなんやかんやあって、神様が転生させてくれるようだ。便利な特典もくれる。

 

転生先は未来の日本。それしか教えてくれなかった。まあ、それもある意味転生の醍醐味だろう。知らないけど。

 

ちなみになんやかんやの部分を具体的に言うなら、運命の輪から外れた、とかなんとかで、本来死ぬ予定じゃなかった俺が死んでしまった、らしい。そして、輪廻転生の環から外れた、らしい。

 

神様に同情されるのは後にも先にもこの一回だけだろう。

 

特典は、RPGの基本として有名。強さの指標として用いられるステータス。小説の影響で前世でなんとなく、あればいいなぁと思っていた能力だ。

 

そして今、俺の前には半透明の板が浮かんでいる。

 

 

level 1

 

筋力100

耐久100

魔力100

敏捷100

知力100

SP100

 

スキル

制御 経験値上昇 能力値上昇 身体強化 直感 空歩

 

 

 

ゲーマー心をくすぐられる。柄にもなく、ウキウキしてしまう自分がいる。

 

スキルはなんとなく便利そうな五つを選んでみた。空を歩けるとか軽く感動。

 

制御はおまけだ。一般人をステータスで表すと、魔力0の他は10。コップなんかを持てば、超サイヤ人成り立ての○飯の如く、握りつぶしてしまう。それを防ぐための制御。ありがたや。

 

そのあと他の説明を受けてから、いよいよ転生。神がぱちんと指を鳴らすと意識が一気に混濁する。部屋の床が抜けたような錯覚に陥るが、不安はない。

 

───頑張りなさい

 

意識がなくなる直前、神がそう言ったのを確かに聞いた。何に対してのエールなのかは分からないが、少しだけ悲壮な顔だった。その顔がなんの顔か知らないが、口元に僅かな笑みを浮かべて、不適に笑って見せた。もしかしたら、口角が少ししか動いてなかったかもしれないが、なんとなく伝わったようで、神の口角も若干ながら吊り上がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

意識が覚醒する。

 

被っている毛布を押し退け、体を起こす。手は小さい。ペタペタと体を触ってみると、何もかもが細い。筋肉がついていない小学生の体つき。生き返ったのだと実感する。

 

これは神様の説明の通りだ。俺が目を覚ますのは今の体が六歳になってからだ。曰く、器と魂を馴染ませるために期間を要するんだとか。

 

その間に体験したことは、丸々引き継がれていく。家族の名前に自分の名前、生年月日、住所。意識を取り戻した瞬間に六年分の記憶が流れ込んできて、酷い頭痛に悩まされたのは記憶に新しい。金属バットで頭をフルスイングされた気分だった。

 

他にも色々な確認作業をした。

 

ためしにステータスを開いてみれば。

 

level 3

 

筋力120

耐久120

魔力100

敏捷120

知力140

SP140

 

スキル

制御 経験値上昇 能力値上昇 身体強化 直感 空歩

 

 

少しだけ上がっている。レベルの上げ方は簡単で普通に過ごしていれば経験値が蓄積されて上がる。ただ、何をしたか、どれくらいしたかで、能力の伸びやレベルアップの期間が変わる。もろRPGだな。

 

他にも親が寝静まった後に、夜空を駆けてみたり(はしゃぎすぎて帰ってくるのに四時間かかった)、身体強化を使って木を殴ったり(木が簡単にへし折れて、次の日ニュースになった)色々過ごして、気付けば、明日から小学六年だ。

 

いやぁ時が経つのは早いなぁ。

 

正直に言って学校に行く意味がない。やることと言えば睡眠だけだ。夜中に特訓をしているのでその分の睡眠時間は確保したいのだ。知力のせいか、眠っていても頭に入ってくるから当てられても全然平気だ。前世でもこの能力は欲しかった。

 

最初の頃は先生に何度か起こされたのだが、先生方もそのうち仕方ないと諦めていった。成績だけみれば、超がつくほどの優等生だからね、俺。

 

そんなこんなで神樹館六年、木川恭介。今日も元気に登校します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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