転生した少年~俺だけ勇者システムなしとか、ハードモードじゃね?~   作:GRAENA

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五話

最近訓練詰めだったので、安芸先生から休暇をもらった。俺には念を押して、休むように言ってきた。どれだけ信用ないんだよ。

 

はい!と元気よく言ったのに疑いの目をやめなかった先生はひどいと思う。

 

というわけで、何をしようか悩みながら、ぶらぶらと外を歩いていた。

 

人の行き来が盛んな大通り。

 

歩いていれば知り合いに会えるかも。

 

そんなことを考えてると、いかにも高そうな車が脇に止まった。窓が開いてそこから顔を覗かせたのはパリピなファッションの園子だった。奥には須美も乗っている。

 

「へいへ~い。そこの男の子~。一緒に遊ばない~?」

 

「人違いです。すいません」

 

通行人が俺と園子を奇異の眼で見てくる。

 

さっきは確かに会えればいいと思っていたが、こんな出会いなぞいらない。

 

俺は頭を下げてから足早にその場から走り去る。車の通れない路地裏に入り、上に跳んで、家の屋根に飛び乗る。

 

黒服でも追ってくるんじゃないかと気配を探っていると、ポケットに入れていたスマホが震えた。

 

園子:ごめんなさ~い

園子:謝るから一緒に遊ぼ~よ~

恭介:…………

須美:そのっちが本当に悲しそうだから許して上げて?

恭介:分かった分かった。それでどこか行くのか?

園子:私の家だよ~

恭介:分かった。銀も誘うんだろ?

園子:うん

 

 

 

 

 

 

乃木家は大変立派でした。権力の格差を痛感する。乃木家に楯突いた瞬間に四国追放されるんじゃないかってレベルだ。

 

園子に案内されたのは衣装が飾ってある一室。家は和風なのにここは洋風だ。部屋の様子とあったデザインのタンスが並べられていて、開け放たれている。

 

普通の服から、高そうな装飾が施されたドレス、他にも着物やスーツ等々。無粋な話だが、この一室でいくらの価値があるのか気になってしまう。

 

俺は、銀が着替えるというので、部屋から出ていく。銀の様子からして着替えを渋るかと思ったのだが、存外早く終わった。

 

園子から入っていいとのお言葉を貰って入ってみると、丁度須美が漫画みたいに鼻血を吹き出していたところだった。

 

それでもカメラで銀を撮影してるんだから、執念が凄い。

 

「須美って意外とギャグキャラだよな」

 

前のキャラ像がボロボロに崩れ去った瞬間だった。

 

「わっしーはおもしろいね~」

 

「それにしても、似合ってるな」

 

今の銀の姿は上はベージュ、下は黒のゴシックドレスに身を包んでいる。髪には赤い花のコサージュ。

 

普段は男らしい銀もさすがに恥ずかしいのか、しおらしい。

 

俺の言葉にさらに顔を赤くする。なんというか、嗜虐心が芽生えそう。とりあえず俺も一枚。

 

「そうでしょ~?」

 

「文句なしの美少女だな」

 

「おぉ。きょーくん大胆~。それじゃ次の服行ってみよ~」

 

このあと、銀はとっかえひっかえ色々な服を着せられていた。そのお陰ですっかり拗ねてしまった銀。部屋の隅で膝を抱えて頬を膨らましている。

 

「じゃあ、次はきょーくんとわっしーだね~」

 

タンスの中から取り出したのはドレスとタキシード。

 

満足げに地面に寝転んでいた須美が驚き、えっ!と声をあげる。俺はなんとなく予想していたので別にいい。

 

「これとか似合うと思うよ~」

 

「駄目よ!そんな非国民な格好!」

 

全力で拒否してる須美だが、ここで園子に味方が現れる。

 

「いやあ、似合うと思うなあ!」

 

今の今まで拗ねていた銀が急に元気を取り戻した。その顔は、仕返しのチャンス!と如実に語っていた。

 

「んじゃ、俺は隣で着替えてくるから、鷲尾もごゆっくり」

 

俺は園子からタキシードを受け取ると、そそくさと退散する。

 

 

 

 

 

「二人とも似合ってるよ~」

 

「そ、そうかしら?」

 

案外、満更でもなさそうな須美。

 

「今更ながら、何でこの組み合わせなんだ?タキシードとドレスって結婚式かよ………あ」

 

思わず出た言葉に、失言だった気付いたときには遅かった。

 

「けけけ、結婚………!」

 

横の須美は顔を赤くして、頭から煙が出てる。須美には男女のそういうのに過剰な反応を示す。失敗したな。

 

「ほれほれお二人さん。腕組んで」

 

「銀。須美に仕返ししたいからって俺を使うなよ。それに横の須美なんか既に頭ショートしてるだろ」

 

「二人ともいいよいいよ~。創作意欲が湧いてくるよ~」

 

園子は両手の親指と人差し指で長方形を作って、その枠の中に俺と須美を捕らえながら、にこにこしている。要するに高みの見物だ。だが残念。一人だけなにもしないのは不公平だろ?

 

「それじゃ、次は園子だな」

 

「へ?」

 

珍しく呆ける園子。レアなのでカメラで撮っておく。あとで銀と須美にも送っておこう。

 

「そうだな。あたしと須美と恭介は着替えたんだから次は園子の番だな」

 

「銀、須美。園子を押さえとけ」

 

「「了解!」」

 

「え~!」

 

がっしり拘束された園子が情けない声を上げるが、聞こえない。俺はタンスを漁りながら、園子の着なさそうな服を選ぶ。

 

ということで、園子には黒のゴスロリ服を着てもらった。オプションとして眼帯と日傘を持ってもらい、黒一色にしてみた。中二病でも恋をしている少女みたいな格好だ。

 

「似合ってるぞ。園子」

 

とりあえず一枚。

 

「嬉しくないよ~」

 

園子の泣き言は大変珍しかった。

 

そのあとも色々な服を着ました。

 

園子に付き合って、若干中二病の格好をして、二人で並んで写真を撮った。

 

ハロウィーンをイメージして、俺は吸血鬼、銀が悪魔、園子は化け猫、須美は魔女の格好をしてからそれぞれのポーズで集合写真を撮った。

 

次はお正月イメージで着物。須美はさすがとしか言えないほど着こなしていた。園子も銀も似合っていました。もちろん集合写ry……

 

楽しい休日でした。

 

 

 

 

 

学校の昼休み。

 

今現在、小学生らしく皆はお絵かき中だ。

 

「何かリクエストあるか?」

 

「んー。なら、あたしたちを書いてよ」

 

「了解」

 

鼻唄混じりに線を足していく。いつも見ている三人なので、いちいち比べなくても描けてしまう。それが、一緒にいた期間の長さを感じさせる。

 

横で須美が戦艦を描き終えたのと同じくらいで俺も終わった。

 

俺が描いたのは、須美と園子と肩を組んでる銀の絵だ。時間も足りなかったが出来映えとしては上々だ。

 

「きょーくんは器用だね~」

 

「時間がなかったからな。今度描くときはちゃんとしたキャンバスにでも描いてやるよ」

 

「お~、それは楽しみだね~」

 

「そういう園子は………何というか、独創性豊かだな。須美も須美らしいな」

 

園子の絵は、本当によく分からない。人みたいな二足歩行型のサンチョと犬みたいな四足歩行のサンチョ。

 

須美は須美で、超リアルな戦艦を描いている。

 

「えへへ~」

 

「翔鶴型航空母艦、瑞鶴よ」

 

「リアルだな」

 

「須美ってそういうのやたら詳しいよな。合宿のときもそうだったし」

 

「夢は歴史学者さんだから」

 

「やっぱり真面目さんだ」

 

「わっしーっぽい夢だよね」

 

「そのっちは?何か夢はあるの?」

 

「私は小説家とかいいなって思って、時々サイトに投稿したりしてるんだよ」

 

「ああ、なんか納得」

 

「独特の感性だものね」

 

「だから、この前創作意欲とか言ってたのか」

 

「三人も小説の中の登場人物として出演してほしいな~。優しくて頼れるミノさんに真面目で時々面白いわっしー。そして、ノリが良いけど意外としっかりしてるきょーくん」

 

「意外は余計だ」

 

「と、時々……おもしろい………」

 

「つまらないよりいいじゃん」

 

「そうなんだけど、私も頼ってほしいわ」

 

「あたし、そうやっていじける須美の顔好きだな」

 

「えっ!そんな風にほめられても」

 

「おお!何かいいよ!今の二人の空気。とってもいいよ~」

 

「そ、そういう銀の夢は?」

 

「幼稚園の頃は皆や家族を守る美少女戦士になりたかったな」

 

「分かる!お国を守る正義の味方。それは少女の憧れよ!」

 

「今は~?」

 

「……家族っていいもんだから、家庭を持つのもいいなぁって。でもそうなると、将来の夢が………お、お嫁さん」

 

「………なんか、ほっこりするな」

 

「そ、そういう恭介の夢は何なんだよ」

 

「今はこれといってないな。こん中だと俺だけ決まってないのか………」

 

今時の小学生はしっかりしてるな。高校生の時でさえ、進路決まってる奴なんか少なかったのに。

 

「大丈夫だよ~。きょーくんなら」

 

「そうね。恭介くんなら大丈夫でしょう」

 

「そうだな。どうせ何とかするだろう」

 

「まあ、何とかなるか」

 

「「「なるなる」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ラブレター騒動?

 

 

「もうすぐ一年生とのオリエンテーションです。六年生としての自覚を持って、しっかりと後輩の面倒を見ること」

 

 

 

 

 

 

「オリエンテーションって何するんだっけ~?」

 

「一年生と一緒に楽しく遊びましょうってことさ」

 

「相手は真っ白な一年生。私たち勇者の役目はこの国を守ること。つまり!」

 

「つまり?」

 

「将来を見越して愛国者精神の強い子供たちを育成することも任務の一環と言えるわ」

 

「言えるか?」

 

「いや言えないだろ」

 

「なんだか楽しそうだね~。なら計画を立てよ~よ………あれあれ~中にお手紙が入ってたよ~?」

 

「おっ、久々に見たな」

 

園子にも春が。これは銀と須美も囃し立て──

 

「果たし状か?!」

 

「不幸の手紙かも?!」

 

───なんで、そんな発想に至るのかお兄さんよく分からないよ。

 

「きょーくんは貰ったことあるの?」

 

「何回かあるな。全部下駄箱だったけど」

 

机から離れないから入れようにも入れられないからな。

 

「一回開けてみるね~。えっと~、最近気が付けばあなたを目で追っています。私はあなたと仲良くなりたいと思います。お役目で大変だと思いますが、だからこそ支えになりたいと思います、だって~」

 

真ん中あたりの文でようやく銀が気付いたようで顔を赤くしてる。

 

「ももも、もしかしてそれって、あれじゃないか?最初にラのつく」

 

ここまでヒントがあれば、さすがに須美も───

 

「羅漢像!?」

 

───須美はやはりポンコツでした。

 

「違う!ラブレターだ!」

 

「ああ、そう……………ラララララブラブラブ」

 

一旦呑み込んだ須美だが、少しの間を開けてから、呑み込んだ言葉を反芻して動揺する。

 

「壊れたラジオかよ。でもそれって……」

 

「うん、多分女の子からだね~」

 

「なんだ女の子かあ」

 

こうしてラブレター騒動は幕を閉じた。終始、騒動していたのは銀と須美だが。

 

余談だが、この日の夜、須美が庭で火の前に立って物凄い形相で何かを唱えてるのを見てしまった。明日、どんな顔して会えばいいのか分からない。

 

 

 

 

 

 

今日も訓練はお休みだ。今回の休暇はみんなでプールで過ごすことに決めた。例に漏れず、俺だけ念押しで休むように言われた。

 

結構な規模のプールを大赦が貸しきってくれたので、今日は思う存分遊べるとはしゃぐ三人。

 

「あー。涼しい」

 

かく言う俺もなかなか楽しんでいる。この猛暑日にプールは素直に嬉しい。

 

「そうだね~。気持ちいいよ~」

 

「恭介も園子も緩んでんなあ」

 

「緩んでないのなんて、あそこで準備体操してる須美ぐらいだよ」

 

「水の事故は怖いのよ?」

 

この面子なら心配ない気がする。

 

すると、銀が須美に不躾な視線を送っていた。

 

「それにしても須美って本当にボインだよな。実は高校生じゃね?」

 

「もっといってると思うね~。大学生くらいかも」

 

園子も乗るのかよ………

 

「お前ら高校生男子かよ」

 

「恭介は気にならないのか?」

 

「特にならないな」

 

「これが本音なのが、きょーくんのすごいところなんだよね~」

 

「友達としては付き合いやすくていいけど。恭介が男なのか、時々怪しくなるよな」

 

「はいはい、二人ともそこまで。ねぇ、銀。競争しない?」

 

「面白い。その挑戦受けてたつ」

 

「二人とも、このあとオリエンテーションの作業があるから飛ばしすぎな、キャッ!………あはは、聞いてないか~」

 

「絶対銀はバテるな」

 

すごい速度で水飛沫が遠ざかっていく。

 

「須美の性格も軟化したよな」

 

「そうだね~。クラスのみんなも言ってるよ~」

 

「前の須美を知ってる俺達からしたら、別人にしか見えないよな」

 

「そうだね~」

 

「園子は変わらないな」

 

「そういうきょーくんだって、人のこと言えないでしょ?」

 

「俺も園子も一生変わらなさそうだな………」

 

須美と銀の水を掻き分ける音がなくなった。遠くからするセミの声がはっきり聞こえる。

 

浮き輪に乗り、水に揺られていた園子が燦々と輝く太陽に手を掲げ、穏やかな表情で言った。

 

「………平和だよね~。こんな日がずっと続けばいいのに~」

 

「…………そのためにも頑張らないとな」

 

「うん、頑張ろ~!」

 

そのあと、俺は別の出し物なのだが、何故かオリエンテーションの準備を手伝わされました。

 

 

 

 

 

 

 

 

オリエンテーション当日。俺は勇者組とは別行動だ。勇者組は少し遅れてからやるようだ。

 

「よ、よ、よ」

 

『……………』

 

キラキラした目で一年生がこちらを見てくる。

 

俺の出し物は大道芸だ。歯を潰してあるナイフを作り出して、ジャグリングする。

 

三本、四本、五本。いつの間にか増えていくナイフ。上がる回転率にハラハラしつつも、楽しんでくれているようだ。

 

ある程度、客が集まった───というか、集まりすぎた。六年生までもが客となっていた。

 

ジャグリングを終え、傘でボールを回したり、椅子をいくつも重ね、その上で倒立したり、大盛り上がりだった。

 

オリエンテーリングの制限時間の半分になったので、俺の演舞はここでお開きだ。

 

もっとやってー、という声が多かったのだが、次にもう一つ面白いことが起きるといったら、納得してくれた。

 

俺がやめたのと同時に銀が入ってきて、勇者組の出し物が始まった。

 

俺もそれを後ろから眺めていた。

 

勇者組の出し物は、国防体操。もう、ネーミングだけで分かる圧倒的須美感。

 

それでも受けは良かった。新入生たちも満足そうだ。

 

互いに労いながら廊下に出ると、安芸先生にまとめて捕まって、廊下に正座だ。

 

「過激すぎます!特に木川くん!」

 

「受けるかなぁと思って」

 

「一歩間違えたら大怪我に繋がるんですよ!」

 

「ごめんなさい」

 

安芸先生には敵いませんでした。このあと、足が痺れて歩きづらかった。クラスに戻るのも一苦労だった。

 

 

 

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