転生した少年~俺だけ勇者システムなしとか、ハードモードじゃね?~   作:GRAENA

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六話

「手のマメがちくちく痛いよ~。今日の訓練大変だな~」

 

園子が涙目になりながら手のひらを見せてくる。両手の指の付け根にマメができていて、確かに痛そうだ。

 

「槍の握りかた変えてみるとか?」

 

「変えてもどうにもならないって~」

 

「いっそ素手で戦ってみるか?」

 

拳を突き出すと、銀にため息つかれ、アホを見る目で見られた。銀にその目をされるのは、本当に納得がいかない。

 

「それを出来るのはお前だけだ。ほれほれー。痛いの痛いの飛んでけー」

 

銀が園子の頭を撫でる。園子も気持ち良さそうに頬を緩ませてる。

 

「えへへー」

 

「お前らもなかなか姉妹みたいだよな。そうなると銀が姉だな」

 

「園子が妹か。手がかかりそうだ」

 

「絶対かかるな。構わないと拗ねてそう」

 

「むぅ~」

 

「ちょうどこんな風に」

 

頬を膨らませて、わたし不満です!みたいにこちらを見てくる。典型的な拗ね方だった。予想と寸分違わない。

 

「悪い悪い」

 

「ふわぁ~。ミノさんのナデナデもいいけど、きょーくんのナデナデも気持ちいいよ~」

 

ドスン!

 

園子の机に揺れが走った。震源は一冊が分厚い本×3。

 

「三人にはこれを渡しておくわ」

 

「須美さん?何すか、コレは?」

 

「おいおい見れば分かるだろ?鈍器に使うんだよな?」

 

「違います!遠足のしおりです!」

 

「これが?嘘だろ?何でこんな分厚くなるんだよ。広辞苑の二倍ぐらいあるぞ」

 

手に持ってみれば案の定重たい。パラパラ捲ってみると、びっしりと文字の羅列が並んでいた。図も載ってはいるが割合で言うと8:2。

 

そこらの哲学書よりも濃そうな内容だ。

 

どうやったら、たった八、九時間の遠足のしおりが、哲学書の文字数に勝てるんだよ。

 

「データ版は三人の端末に送っておいたから」

 

「あー、だから昨日急に重くなったのか」

 

とんだサイバーテロだな。

 

「わっしーはのめり込むタイプなんだね~」

 

「将来、須美の旦那様になる人は幸せだけど大変そうだな」

 

「なんでそんな話になるのよ」

 

「この三ノ輪銀のような男がいればなあ」

 

銀の一言に須美が赤面する。男より男らしい銀と、おしとやかな須美。確かに釣り合いが取れそう。

 

「「お似合いの二人だな(ね~)」」

 

園子も似た考えか。

 

「とりあえず、このしおりを活用して遠足の準備を済ませておきましょう」

 

「…………持って帰りたくねぇ。めんどくせぇ」

 

「家まで送るよ~。ミノさんもね」

 

「おっ、サンキュー園子」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遠足の場所はアスレチック。それも結構な規模の所だ。勇者たちの目標はアスレチック全面制覇らしい。

 

「そんじゃ、頑張れよ」

 

「お前もこっちだ」

 

さりげなく、休めそうな木陰に移動しようとしたのだが、銀に襟首捕まれて連行された。

 

黙ってついていこう。なので、引き摺るのはやめてもらえます?皆からの視線が痛いので。

 

最初はタイヤくぐり。

 

サクサクと終わらせました。

 

「さすが勇者、早い早い」

 

「恭介の方が早かったよな?」

 

「素の性能が違うんだよ。それにパルクールとかたまにやるからな」

 

「二人とも早いわね」

 

「あとは園子だけだが、大丈夫か、あれ?」

 

「わわわ、揺れる~」

 

「慌てるなあ」

 

「落ちたら奈落の底って考えると結構なスリルがあるんだよ~」

 

想像力豊かなことで。

 

「五番目のタイヤは触ってはいけない。触ったら最後、落武者の霊が、田んぼを返せ~、と」

 

出た。須美の無駄に上手い怪談話。しかも顔もなんか迫力があって、怖さが倍増。園子がガタガタ震え出した。タイヤも一緒にガタガタと揺れる。

 

「やめい」

 

コツンと額をチョップする。

 

「折角だからスリルを提供しようと」

 

「ほらもうちょい、勇者は気合いと根性!」

 

「勇者は、気合いと、根性~!」

 

銀が園子の勇者スイッチを押したようだ。園子が今までの震えがどこへやら、すいすいタイヤをくぐり抜け──普通に降りれば良いものを──跳んだ。俺と銀の間めがけて。

 

「「よっと」」

 

銀と一瞬目を合わせて、二人で園子の体を地面に着く前に支える。

 

「ありがとう、ミノさん、きょーくん」

 

「ほれほれ、よくやったよくやった」

 

「えらいぞー園子」

 

「えへへ。次はもっとスムーズに行けるよ」

 

俺と銀が園子の頭をうりうりしてると、須美がぐりぐりと銀と園子の間から顔を出した。

 

「どした?」

 

「仲良くしてるから私もと思って」

 

「犬かよ」

 

「本当にさみしがりだよな」

 

「わっしーも撫でてほしいのかも~」

 

 

 

 

 

 

最後は、アスレチックでよくある足場と縄を使って登る砦のようなものだ。

 

「これで終わりか。いやー簡単すぎるな。片手で上れるよ、こんなの」

 

「銀ふざけないの」

 

「平気平気……っ、マメが」

 

痛みにあえぐような声を漏らしてから、綱を離した。ゆっくりと銀が落下していく。

 

空から女の子が!なんて思いながら、銀の落下地点に先回りする。

 

「なんとなく、こうなる気がしてたよ」

 

お姫様だっこで銀を受け止める。もうすでに恥ずかしさもないのか、赤面もなく、地面に足をつける。

 

「いやー、悪い悪い」

 

後頭部を掻きながら笑って言う銀。

 

「お仕置きだ」

 

そんな銀の頭に手刀を落とす。

 

「イタッ。反省するよ。口数を減らします!」

 

びしっと敬礼をするが、説得力皆無。絶対に無理だ、と口をついて出そうになった言葉はギリギリのところで止めれた。

 

 

 

 

お昼ご飯は班ごとに分かれて焼きそば作りだ。銀はものすごい手際がいい。須美もできている。園子は、やったことがないのだろう。

 

ここは一つ、銀にお褒めの言葉でも。

 

「流石将来はお嫁さん志望の銀だ。手際がいいな」

 

「な?!恭介!」

 

素直に褒めたのに怒られた。何でだろうなー。ただどれだけ威嚇しようとも、手は放せない。

 

「あはは、ほれ、手を動かせー」

 

「ぐっ、あとで覚えてろよ」

 

「捕まるとでも思ってるのか?」

 

「話しながらも凄い手際だわ」

 

「ね~」

 

わいわい騒ぎながら作っていると、安芸先生が来た。

 

「二人とも上手ね」

 

「時々手伝ってますから」

 

「何事も極めたい性格なので」

 

「極められたのか?」

 

「フランス料理までなら作れる」

 

「十分すぎるわよ………」

 

「でもすぐ飽きるからな。何でもできる自分が恨めしい」

 

「ああ。恭介ならなんか納得」

 

「そのっちと同じ天才肌だものね」

 

「えへへー。誉められた~」

 

「おっと。そろそろ出来るな」

 

「園子、須美、お皿の準備頼む」

 

「「はい」」

 

 

 

 

 

三人はベンチに座り、俺は一人草の上。いじめられてるとかではなく、人数の都合だからな。

 

「うまい!最高!」

 

「美味しいよ~」

 

「園子はもっと良い肉食べてるんじゃないのか?」

 

「こっちの方が美味しいよ~?」

 

「きっとみんなで食べてるからよ」

 

「園子、口、口」

 

銀が園子の口についてるソースをハンカチで拭う。これから銀と園子が姉妹説が流れるやもしれない。

 

「ありがとう~。はぁ~~」

 

笑顔になったかと思えば、園子のテンションが急降下。ため息を吐きながら、涙眼で項垂れる。悲しそうなのに、ちょっとコミカルなのはさすが園子だ。

 

「忙しいテンションだな」

 

「ミノさんもきょーくんもわっしーも料理できるのに私だけできないから、ふと自分が恥ずかしくなったんだよ~」

 

「焼きそばぐらい園子もすぐ作れるようになるよ」

 

「じゃあ次の日曜日みんなで教えて!」

 

「「いいけど」」

 

「おっ!ハモった」

 

「ふふふ、そうね。ところで恭介くんの返事は?」

 

「俺はい───」

 

いいや、と残り二文字を口に出そうとしたところで、銀が邪魔する。

 

「恭介は強制参加だな」

 

「最近、俺の扱いが雑になってるんだけど」

 

「あら、それだけ皆が恭介くんを頼ってるってことじゃない?」

 

「銀の方が便りになりそうだけどな」

 

「それは………否定できないわね」

 

「ミノさんもきょーくんも頼りになるよ~」

 

「嬉しいこと言ってくれるな。ところで先生。ピーマン残そうなんて、子供みたいなこと考えてませんよね?」

 

安芸先生の意外な弱点。ピーマンが苦手。

 

いつも母さんを引き合いに出されるんだからこれくらいの反撃は許してもらいたい。

 

「うっ!ちゃんと食べるわよ?!ただちょっと苦手なだけ」

 

「前世で何かあったのかなあ?」

 

「そんな時はピーマンの精がお腹に会いに来ると思えば良いんですよ~」

 

「そ、それはユニークね。あ、ありがとう」

 

先生の顔が何故か青ざめている。一体何を想像したのか。

 

「先生に褒められた~」

 

「ご褒美にベルは園子が鳴らしなよ」

 

「ベル?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アスレチック全面クリア~!」

 

「成し遂げたわね」

 

アスレチックにベルの音が鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

 

展望台からの見張らしはなかなか良いものだ。ボケーッと大通りを流れる車の群れを見ていると、隣の銀と須美と園子の会話が聞こえる。

 

「あたしたちの町はあっちかな?」

 

「ええ、あっちで合ってるわ」

 

「大橋やイネスはさすがに見えないな………」

 

「ミノさんはほんとにイネス好きだね~」

 

「イネスはいいぞ!なんたって───」

 

「『中に公民館まであるんだから』」

 

「わたしも分かったよ~」

 

「あんだけ言われたら誰でも分かるよな」

 

少しでも付き合いがあれば、銀の行動の三手ぐらい先なら見えそうだ。

 

「もうパターン読まれてきたか」

 

「わたしも読まれてる?」

 

園子は期待したような眼差しで俺たち三人を見てくる。が、ご期待に沿えないで悪いが。

 

「そのっちは…………読めない」

 

「きっといつまでも読めない」

 

「未来視でもないと読めない」

 

本当に。園子は読めない。ここまで行動を悟らせない人はそうはいないと思う。

 

「それはそれで悲しいよ~」

 

「大丈夫。今の反応ぐらいまでは分かるから」

 

「やったぜ!ふぅーーー!」

 

園子は無駄に高い身体能力で、辺りを跳び跳ねてはしゃぎ回る。

 

「こっからの跳ね具合が予測不可能だ」

 

「銀に同意」

 

「さすがね、そのっち」

 

「ついでに言うと、恭介も読めない」

 

「恭介くんは行動が突飛なところがあるから、ある意味そのっち以上に読めないわね」

 

酷い言われようだ。園子よりは読みやすいと思うぞ…………多分。

 

「ちなみに須美に関しては取り扱い説明書が書けるくらいに詳しくなったぞ?」

 

「あら、最初のページには何て書いてあるのかしら?」

 

「結構大変な品物なのでくれぐれもご注意ください」

 

「う゛、めんどくさい人みたいな言われ方ね………。でも納得してしまう」

 

「いいじゃん、奥行きがあって。あたしのなんて新聞紙のちらし並みにぺらいぞ、きっと」

 

「最初のページは、元気すぎて手がかかりますので注意してください、ってところか」

 

「あたしは犬か!」

 

「確かに分かりやすくはあるけど書くことはい~っぱいあるわ!」

 

「そ、そうか?」

 

「これからも色々な一面を暴いていこうと思うわ」

 

「お手柔らかに頼むよ………」

 

「実はわたし、初めミノさんが苦手だったんだ~」

 

「おぉい、いきなり何だよ」

 

「私も同じよ」

 

「おい」

 

「俺は特に何も思ってなかったな」

 

「それが一番傷つく………」

 

「スポーツができて明るくて………なんだか種族が違う気がして、でも話してみたらこんなにいい人なんだもん。わっしーも良いキャラだし」

 

「私はキャラなの?!」

 

「確かに話してみないと分からないよな、こういうのは。気に入ってもらえたなら良かった。これからもダチ公としてよろしくな」

 

『こちらこそ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学校でバスから降りて、帰路が同じところまで四人で歩く。

 

「は~~楽しかった。毎日が遠足だったらいいのにな」

 

「それ賛成~」

 

「いやだよ。銀に振り回されそうだし」

 

「何をー!」

 

思わずこぼれた言葉に銀が噛みつき、飛び付いてくる。それをひらりと避ける。

 

「もう!転ぶわよ!」

 

須美の制止も聞かず、銀が追いかける。その顔は笑顔で怒りなど微塵もなさそうだ。須美も分かっていて、仕方ないと苦笑い。園子は呑気に仲良しだね~と呟く。

 

そんな楽しい空気は破壊される。ピタリと風に乗っていた木の葉が止まった。

 

「これって………」

 

「ああ、敵だ」

 

「も~~折角楽しい遠足だったのに」

 

「遠足終わったあとに出てきただけマシじゃん?」

 

 

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