金田一少女の事件簿~元祖高校生探偵と小さくなった名探偵~   作:ミカヅキ

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連載ネタに詰まったので、以前書いていた短編を手直ししました。

意味深な終わり方してますが、一発ネタです。
年代とかの様々な矛盾点をスルー出来る人向け。


もう1人の高校生探偵

「はい、閻魔(えんま)大王ラーメン大盛、お待ちどう様。」

「きたきた…!」

 コトッと置かれたラーメンに、読んでいたマンガ本を隣の席に置いたリュックにしまう。

「ごゆっくりどうぞー。」

 顔馴染(なじ)みのバイト店員に礼を言って割り箸を取る。

「いっただっきまーす!」

 手を合わせて、まずはスープを1口。

「あ‶―――――………。あったまる――――――――――……!!!」

「おいおい、(わけ)ェ娘さんが何て声出してんだよ。」

 はじめのおっさん臭い声に、店長が呆れたように笑う。

「そんな事言ったってさ――――。も――――、外が寒くて寒くて……。やっぱりこんな日はラーメンだよね――――――。」

 行きつけのラーメン屋。いつも頼んでいるラーメン。いつもと違ったのはその後。

 ガラッ…!

「ヘイらっしゃい!!」

 入ってきたのは親子連れと思われる2人組。

(…このオッサンの顔どっかで………。)

 30代後半から40代前後のチョビヒゲの男と、小学校低学年と思われる眼鏡の少年。男の方に見覚えがある気がしたが、どうも思い出せない。

 ラーメンを(すす)りながら内心首を(ひね)る。

 はて、どこで見たのだろう、と釈然(しゃくぜん)としない思いを抱えつつも、まぁ今は空腹を満たすのが先、と疑問を頭の隅に追いやってラーメンに集中する事にした。

「店長――――。メンマの追加ってあり?」

「またかよ、はじめちゃん。あんたも好きだねぇ、メンマ。」

「だってここのメンマ、マジでウマいじゃん。いくらでもいけるよ。」

「ハッハッハッ…!お得意様にそこまで言われちゃあ、断れねぇな。サービスするよ。」

「やりぃっ!」

 その言葉と同時に、中身が半分程減りメンマが無くなっていたどんぶりに、特製メンマがカウンター越しに追加された。

「ねぇ、お姉さんってこのお店の常連さんなの?」

「ん?」

 はじめが座っていたのは店の入口側。奥側、はじめから見て右側から声がかけられた。

 目をやると、先程入ってきた親子連れの少年の方である。

「そうよ。そのお姉さんはウチの大事なお得意様。頼むのはいつも閻魔(えんま)大王ラーメンの大盛!そんな細身にどこに入ってるんだか、(うらや)ましいったら…。」

彩代(さよ)さんだって充分細身でしょーよー。」

 親子連れに水を出しながら少年の質問に答えたアルバイト店員‐彩代(さよ)の言葉に、はじめが苦笑し、少年の方に向き直った。

「少年たち、この店初めてでしょ?」

「分かるの?」

「そりゃーね。この店、味はピカ一なのに外観が残念な感じに小汚いせいでお客さん少ないから。ちょっとリフォームすれば行列店になるのは間違い無いだろーに…。おかげで常連のほとんどが顔見知り。」

「おいおい、、“残念な感じに小汚い”は余計だよ。」

「ちゃんと“味はピカ一”って()めたっしょ―――?」

 苦笑する店長に笑みで返す。

「そんなにウマいのか?」

 味はピカ一、という言葉が興味を()いたのか、少年の奥に座っていた父親らしきチョビヒゲの男も会話に入ってくる。

「もちろん。特にこのメンマが最高で、ついいつも追加しちゃう位ですよ。」

「へぇ…。じゃあ、ボクそれにしようかな。」

「んじゃ、オレも…。」

 自信満々に言い切るはじめの言葉に、親子連れが彩代(さよ)に注文を告げる。

「はい、閻魔(えんま)大王ラーメンね。大盛?普通盛り?」

「オレは大盛。」

「ボク普通盛!」

「ボウヤ全部食べ切れる?量少なくしようか?」

 小柄な少年の体格を見て彩代(さや)が気を回す。

「大丈夫!お腹ペコペコだもん。」

「そう、それじゃ大盛1丁と普通盛1丁ね。少々お待ちください。」

 そんなやり取りの後、ほんの2~3分後の事である。

 この店にとって疫病神(やくびょうがみ)とも言える男が来たのは。

「帰ってくれ!!あんたに食わせるラーメンはねぇ!!」

「おいおい…。客に向かって何て言い草だよ?せっかく閑古鳥(かんこどり)が鳴いてるこの(さび)れた店を…、少しでも(うるお)してやろうと来てやったっていうのに…。」

 嫌味(いやみ)ったらしい口調と根性の悪そうな顔で入ってきた男。

「げ…。ヤーな奴が来た………。」

 西津(さいず)徳盛(とくもり)。この辺りの土地を管理する不動産屋、と言っては聞こえが良いがヤクザまがいの手口でこの店の土地を狙う地上げ屋の社長である。自分の社員を使って店で暴れさせ、客足を遠退(とおの)かせて店を潰し、安く買い叩くのが常套(じょうとう)手段。

 時に社長自ら難癖(なんくせ)を付けに来るそのフットワークの軽さにはある意味感心するが、その熱意を慈善事業にでも生かしゃ良いのに、と常々呆れる。

 さっさと食べて帰ろ、とラーメンに集中する事にした。

 

「ふぅ…。ごちそうさま。彩代(さよ)さん、お会計よろしく。」

 両手を合わせ、ティッシュで口を拭きながら財布を取り出す。

「はいはい、閻魔(えんま)大王ラーメン大盛で700円ね。」

「はい、ちょうどね。」

 ぴったり700円を渡し、立ち上がってダウンジャケットとリュックを手に取った。

「じゃ、店長また食べに()んね。ごちそうさま―――――。」

「オウッ!また来てくんな!!」

 ダウンジャケットを着こみ、リュックを背負って店の外に出ようと、引き戸に手をかけた瞬間だった。

「ぐあぁぁぁ………!」

「え?」

 (うめ)くような声の後に、ドサッと何かが倒れ込むような音が聞こえ、思わず振り返る。

「きゅ…、救急車だ…。早く救急車を呼べ!!」

 床に倒れ伏した男‐西津(さいず)の姿と、チョビヒゲの男の切羽(せっぱ)詰まった声に、反射的に西津(さいず)に駆け寄った。

「ちょっと、触っちゃ……!!」

 はじめの行動を制止しようとした少年に構わず、西津(さいず)の様子を確認する。

 開いた瞳孔(どうこう)と止まった呼吸、首筋に触れても、脈は触れなかった。

「救急車は必要無い…。……もう、死んでる。」

「お姉さん………?」

 ―――――――これが、江戸川コナンと、金田一(はじめ)との最初の邂逅(かいこう)だった。

 

 

 所轄(しょかつ)の警官から遅れる事数分。

 駆け付けた警視庁の目暮警部と高木刑事の立ち合いの(もと)、被害者である西津(さいず)の身元確認がなされ、死因は青酸(せいさん)系毒物による毒殺と断定された。

 そして、被害者が倒れた前後に店内にいた人間のうち、はじめを含む4人が容疑者として挙げられた。

「いや、この状況下なら容疑者になるのは仕方無いんだろうけど、そこのオジサンが容疑者から外れてるのは何でなんですか?」

 容疑者として挙げられたのは、はじめの他に店長の小倉(おぐら)功雅(かつまさ)とアルバイトの大橋彩代(さよ)、そしてはじめ同様に客として訪れた理髪店店長の谷中(あつし)のみ。

 子連れで来店していたチョビヒゲの男を指差すはじめに、高木が驚いたような声を上げる。

「え?!ご存知ないんですか?“眠りの小五郎”を?」

「“眠りの小五郎”………?……ああ、最近ニュースに良く出てる探偵の…?」

「オホン!名!探偵の毛利小五郎だ!!」

 “眠りの小五郎”というキーワードによって記憶を掘り起こしたはじめに、探偵ではなく“名探偵”だと小五郎が訂正する。

 しかし、はじめが更に続けた。

「いや、有名な探偵だっていうのと、容疑者から外すっていうのは違くないですか?」

 素朴な疑問に、目暮も思わず「そ、そう言われると確かに…。」と頷く。

「それにあの男が倒れる前に、そのオジサンあの男と揉めてませんでした?」

 店長の小倉(おぐら)を振り返るはじめに、小倉(おぐら)も「そういや、そうだな…。」と頷いた。

「そ、それは本当かね?!」

「あたしはちょうど帰ろうとして入口の方向いてたんで直接見てはいないですけど、声は聞こえてましたよ。表に出ろってでっかい声でそこのオジサンが叫んでました。」

「そ、そういえば西津(さいづ)さんが倒れる前に毛利さんが西津(さいづ)さんの胸倉を(つか)んでました…!」

 はじめの後に谷中が続け、その言葉に「毛利君、どうなんだ?!」と目暮が小五郎を問い詰める。

「え、ええまぁ…。ふざけた事を抜かしたんでちょっと()らしめてやろうかと…。」

「じゃあ、君も身体検査を受けて店の外に出てろ!!」

「は、はい~~~~!!」

 目暮の一喝に、小五郎が這々(ほうほう)(てい)で店外に転がり出た。

 

 そして、警察が店内から毒物が検出されるかどうかを調べている間、はじめ達は店の外で待機していた。

「ねぇ、お姉さん!」

「ん?」

 何かさっきも同じようなやり取りがあったな、と思いながらはじめが声をかけてきた少年‐江戸川コナンに目を向ける。

「何?少年。」

 軽く(かが)んで目線を合わせながらコナンに尋ねる。

「お姉さん、このお店の常連さんって言ってたけど、あの西津(さいず)さんって人の事も良く知ってた?」

「良く、っていうのがどの程度の事を指すのかは分からないけど、たまに店でかち合ったよ。向こうも、名前までは知らないだろうけどあたしの顔位は覚えてたんじゃないかな?あの男の妨害のせいで結構逃げちゃったお客さんいるけど、それでも通ってたのってあたしと後4~5人位だから。」

「じゃあ、お姉さんは嫌がらせとかされなかったの?」

「いや、あるよ。」

「あるのか?」

 そこで、コナンとはじめのやり取りに気付いた小五郎が改めてはじめに尋ねる。

「はい。直接あの男にではないですけど、あの男の部下に1度…。その時はあたしだけじゃなくて、その時店にいた女性客全員被害に遭ったんですけど。」

 一旦立ち上がりながら小五郎に目を向ける。

「具体的にはどんな…?」

「男子中学生みたいな低次元の猥談(わいだん)を吹っ掛けられました。その時はたまたま一緒にラーメン食べに来てた知り合いが追っ払ってくれたんで、すぐにいなくなったんですけど…。」

「わ、猥談(わいだん)…?」

「はい。子どもの前ではちょっと口に出すのが(はばか)られるような事、と言えばある程度分かりますか?具体的にお教えしても良いんですけど、さすがに子どもの前ではちょっと…。」

「あ、ああいや!そこまでは!!!」

 流石(さすが)に自分の娘とさして年齢が変わらない若い娘から、そうした話を聞くのが(はばか)られたらしい小五郎が、慌てて話を切り上げた。

「もう1つ聞いても良――い?」

 コナンの言葉に、再度(かが)んで顔をそちらに向ける。

「何?」

「お姉さん、さっきすっごく冷静に西津(さいず)さんの生死確認してたけど、お姉さんって何者?高校生くらいに見えるけど、もしかしてお医者さんとか?」

 言葉と口調は無邪気だが、その眼光は鋭い。

 最近の小学生ってどうなってんの?と思いつつも、別にやましい事は一切無いので正直に答える。

「いや、本当にただの高校生。ちょっと場慣れしてる事は否定しないけどね。」

「場慣れって?」

「昔っから運が無いのか、間が悪いのかこういう事件に巻き込まれる事が多くてね。少年もそうじゃないの?」

「えっ?!」

 急に返ってきたブーメランに、コナンがあからさまに動揺する。

「さっきから気になってたけど、少年って見たとこ小学校低学年ってとこでしょ?死体に慣れすぎじゃない?普通の小学生だったら、大号泣してパニック起こしてもおかしくないくらいのトラウマ案件だよ、これ。」

「あ、あはははは…。ボク、小五郎のおじさんに着いて行く事が多いから……。」

「へえ。事件現場にも、自分から着いてくの?」

「う、うん…。ボクも将来、小五郎のおじさんみたいな名探偵になりたいんだ!!」

「ふ―――ん…。」

 コイツ中身は普通の小学生じゃないな、と確信しつつも、自分も他人(ひと)の事は言えない為、所謂(いわゆる)“ギフテッド”かと深い追及(ついきゅう)はしないでおく。

 コナンが小倉(おぐら)や谷中達からも話を聞いているのを、何とは無しに眺めていたはじめだったが、他の3人の様子を見て誰の犯行かを確信した。

(さて、後はどうやって毒を盛ったかだけど…。)

 考えられる限りの毒の摂取ルートを高速でシミュレートしていく。

 ガラッ!

「け、警部殿!どうでした調査の方は?」

 店から出てきた目暮に小五郎が尋ねる。

「問題のラーメンからは毒物は検出されなかったよ!もちろん被害者が飲んだ水や、被害者が座った席に飾ってあった花や、それが()してあったコップや水からもな!」

「じゃあ、(おれ)彩代(さよ)ちゃんの疑いは晴れたって訳か!」

 嬉しそうな顔を見せる小倉(おぐら)彩代(さよ)に、「ただし!」と目暮が続けた。

「被害者の左手の親指と人差し指…、被害者が使った(はし)…。及び、座った席のテーブルの上からは毒物反応が出た!」

「「「えぇっ!?」」」

(そういう事か……。)

 目暮の言葉に、はじめが毒物の摂取ルートに気付く。

 そして、小五郎の様子を窺った。

 真相に気付いた様子は全く無い。

(“名探偵”ってのは誇張だったって事…?むしろこのオッサンよりもこっちの子どもの方が……。)

 言っては何だが、どこにでもいるオジサンにしか見えない。世間一般では“名探偵”と称されている男の姿に、どこか釈然(しゃくぜん)としない思いを抱きながらも、はじめが切り出した。

「警部さん、ちょっと聞いてもらっても良いですか?」

「何かね?」

 不思議そうな顔ではじめに目をやる目暮が、先を(うなが)す。

「あの男に毒を盛った方法がわかりました。」

「何ィ!?」

「え?!」

「ほ、本当かね?!」

 小五郎とコナン、目暮が目を見開く。

「そして、西津(さいづ)を殺した犯人は、この中にいる……!」

 

「お、おいおいおい…。探偵でも無いのに、一体何の真似だよ…!」

 はじめの宣言に一瞬気圧された小五郎だったが、雰囲気に呑まれまいと声を張り上げる。

「確か、金田一さんだったか…?そう言うからには何らかの根拠があっての事だろうね?」

「ん…?金田一……?」

 目暮が軽率な発言を(たしな)めるように名を呼ぶ目暮に、高木が何か引っかかったようにはじめの名を呼んだ。

「金田一…、金田一…。どっかで……。」

「高木刑事、あのお姉さんの事知ってるの?」

 はじめの名を繰り返し、記憶を辿(たど)る高木にコナンが尋ねる。

「いや、どっかで聞いた事が……。確か…、あ、ああ――――――――!!!」

「うを?!」

「何だね急に?!」

 突然はじめを指差し、大声を出した高木にその場にいた全員の目が集まる。

「思い出した…!どっかで聞いた事のある名前だと引っかかってたんです…!!」

「いや、だから一体何だってんだよ?!」

 はじめを指差したまま、どこかキラキラとした目ではじめを見る高木に小五郎が怒鳴り付けた。

「工藤君や服部君、白馬警視総監のお子さんの他にも数々の難事件を解決した高校生がいるって、警視庁内で噂になっていたんです…!同じ捜査一課の剣持(けんもち)警部や明智警視と懇意にしている、あの昭和の名探偵・金田一耕助氏のお孫さん!確か、その名前が“金田一(はじめ)”さんだった(はず)です…!!あなたの事でしょう?!」

「そ、そう言われれば聞いた事がある……!連続殺人事件をいくつも解決している、女子高生がいると…!!」

 高木の言葉に、目暮もまた呟く。

「ほ、本当ですか?!警部殿!!」

「うむ…。本人の希望でマスコミには一切公表されていないが……。警察関係者の間では密かに噂されていた…。」

 そのやり取りに、はじめが気まずそうにそっぽを向くが、コナンは一種の衝撃を受けていた。

(金田一耕助の孫だって……?!)

 東京に、こんなに身近にもう1人探偵がいたとは…。

 しかし、目暮の言葉にはじめへと意識を戻す。

「では、金田一さん。話してくれないかね、君の推理を。」

 はじめも頷き、続ける。

「あの男…、西津(さいづ)は毒を飲まされたんでも食べさせられたんでも無い…。自分で口に運んでしまったんですよ。本人にとってはさほど意識していない、ある癖によってね。」

「く、癖とは何だね?!」

 はじめの語る推理に、彼女が放つ圧倒的な存在感に、その場にいた者達はいつの間にか引き込まれていた。

「それを説明する前に、まずは毒がどこに盛られていたのかを説明する必要があります…。犯人は西津(さいづ)の所持品に毒を塗ったんだ。西津(さいづ)の行動を利用して、あの男が極自然に、自分で毒を口に含むようにね…。」

「こ、行動を利用してってそんな都合の良い方法があるってのか?」

「確実に1つあります。該当する人間なら、この時期ついやってしまう行動が1つね…。」

 小五郎の疑問対する、はじめの言葉に、コナンがハッと気付いた。

「説明するよりも見てもらった方が速いな…。」

 ピンときていない目暮達に、はじめがコナンに歩み寄る。

「少年、ちょっと協力してくれない?」

「うん、ボクが中に入れば良いんだね?」

「あ、気付いた?」

「うん。眼鏡をかけてない目暮警部たちはピンとこなかったみたいだけど…。」

「さすが眼鏡っ子。んじゃ、よろしくね。」

「うん!」

 そう言ってコナンを残して店内に促すはじめに、目暮たちは訳が分からない、といった顔をしている。

「一体何をしようというんだね?」

「ちょっと待っててください。…そろそろ良いかな。少年、よろしく―――!」

 はじめが店の外に声をかけ、ガラッと引き戸を開けてコナンが中に入ってくる。

「少年の眼鏡を見てください。」

 先程までとは異なり、透明だったレンズが完全に真っ白になっている。

「何が不思議なんだね。寒い所から暖かい所に来れば、眼鏡が(くも)るのは当然……?!」

 そこまで言って気付いたのか、目暮警部が()()とした。

「眼鏡をしている人間なら、必ず(くも)ったレンズを拭く。(あらかじ)め眼鏡の(つる)の部分に毒を塗っていれば、後は時間の問題…。特に、あの男は割り箸を使う時に口で割る癖があったみたいですし…。」

「高木くん!被害者(ガイシャ)の眼鏡を鑑識(かんしき)に!!」

「はい!」

 目暮警部の指示に、高木刑事が鑑識(かんしき)(もと)へと走るが、はじめがそれを制止する。

「いや、その眼鏡を調べても何も出ませんよ。」

「え?!し、しかし君がたった今、眼鏡に毒を塗ったと言ったんじゃないか!」

「被害者の所持品なんて、事件後真っ先に調べられるもの…。わざわざそんな捻った毒の盛り方をした犯人が、そのままにしておく(はず)が無い。だからすり替えた(はず)ですよ…。西津(さいづ)の眼鏡と自分の眼鏡をね…。」

「す、すり替えたって事はつまり…。」

 高木がただ1人それが出来る人間に向き直る。

「そう…。所持品に眼鏡があった谷中さん。あなたが西津(さいづ)を殺した犯人だ…!」

「な?!」

「嘘!?」

 はじめの言葉に、小倉(おぐら)彩代(さよ)が驚愕して谷中に向き直る。

「高木君!谷中さんの眼鏡のチェックを…!」

「は、はい!」

 目暮に指示された高木が谷中に駆け寄り、眼鏡を受け取って鑑識の(もと)へと走る。

「で、でもよはじめちゃん!変じゃねぇか?!この店に入ってから、谷中さんは西津(さいづ)の野郎に1度も近付いて無いんだぜ!?」

「そうよ!谷中さんとあの男の間にはボウヤ達がいて…、あの男に触れるどころか近付く事さえ出来なかったのよ!?なのに、どうやって眼鏡に毒を塗ったって言う訳?!」

「逆を言えば、このトリックが使えるのは谷中さんくらいなんだよ…。」

 詰め寄る彩代(さよ)に、はじめが静かに告げる。

「…確かにここじゃ毒を塗るのは難しいが…、谷中さんの理髪店なら容易に出来るでしょうな…。」

 目暮の言葉にはじめが頷き、続ける。

「あの男は元々は左利きの両利き。だから食事や咄嗟の時に使うのは左手。いつも割り(ばし)を取るのも食べるのもそうだったからね…。だから(はし)を割った時に、いつもの癖で噛んでしまったせいで唇や歯に毒が付着し、そのままラーメンを食べたせいで毒を体内に入れてしまった…。因みに、テーブルにも毒が付いてたって事は、席に座る時にでも左手をテーブルに付いたんじゃないかな。たぶん、容疑者に入ってしまうのを承知の上で谷中さんがこの店に来たのは、眼鏡をすり替える他に、万が一にもあの男が触ったものを他の人間が触らないようにして他の犠牲者を出さない為…。」

「って事は、他の人間を巻き込まないようにする為か…。」

「推測ですけどね…。」

 小五郎の言葉にはじめが頷く。

「警部!谷中さんが所持していた眼鏡から毒物反応が!!」

 検査結果が出たらしく、高木が告げる。

「そうか…。どうやら、決定的な証拠が出てしまったようですな、谷中さん…。」

「おい、待ってくれ!こりゃ何かの間違いだ!!」

「そ、そうよ!谷中さんが人殺しなんて…。」

「もういいよ、2人とも…。」

 目暮の言葉に、小倉(おぐら)彩代(さよ)が食ってかかるが、それは他ならない谷中自身によって制止された。

「私には、君たちに庇われる資格は無いんだ…。」

「「え?」」

 そして語られたのは、“ラーメン小倉(おぐら)”に対する複雑な心境…。商店街から煙たがられている小倉(おぐら)に対する経済観念への怒りと、採算を度外視する心意気への好意。

 この商店街から出て行って欲しい、でもきっとこの店なら他の場所でもやっていける。

 そんな愛憎入り乱れた殺人劇は、1人の高校生によって暴かれた……。

 

 その後、連行される谷中を見送った後、コナンははじめに疑問をぶつけた。

「ねぇ、お姉さん。」

「ん?今度は何?」

 わざわざ屈んで目線を合わせるはじめを見詰めながら、コナンが尋ねる。

「どうしてマスコミに顔出さないの?探偵なら顔と名前が知られてる方が依頼がいっぱい来るんじゃない?」

 はじめは、そんなコナンに“思ってもみない事を言われた”という顔で伝えた。

「あたしは1度も“探偵”と名乗った事は無いし、自分を“探偵”だと思った事も無いよ。これからもなるつもりも無いしね…。」

「え?!何で!?」

 本気で驚くコナンに、逆にはじめが尋ねる。

「じゃあ、逆に聞くけど…。何で少年は探偵になりたいの?有名になりたいから?謎を解くのが好きだから?」

「それは…。」

「あたしはね、出来ればこういう事件には関わりたく無いんだ…。」

「どうして…?」

 苦しそうな顔で笑うはじめに、思わずコナンが息を呑む。

「人の“殺意”とか“悪意”とか、そういうドロドロした感情はもう見たくないんだよね…。」

 そう言って遠くを見詰めるはじめに、コナンが思わず言葉を失う。“この先には踏み込んではいけない”、という本能的なブレーキに従って……。

 

 “名探偵の孫”と“平成のホームズ”はこうして出逢った。

 この出逢いが何を生み出すのか、それはまだ誰も知らない――――――…。

 

 

 




成り代わり主プロフィール
名前:金田一一
年齢:18歳(高校3年生)
容姿:肩よりやや長い位のセミロングの黒髪に、やや凛々しい眉毛。顔立ちは中の上。
身長:157cm
体重:?
BWH:?(たぶんCカップ)
知能:IQ180以上
性格:巻き込まれたた場合にはその限りでないが、基本的に自分から事件に関わる事は無い。真面目か不真面目で言えば不真面目で、遅刻・欠席・早退の常習犯で落第寸前。
※あくまでもやる気が無いだけで、その気になればたぶん国立大にストレートに入れるレベル。
たまに捜査一課の剣持警部に頼まれて捜査協力するが、表には一切でない。

今回ラーメン食べてたのは父親が出張、母親が町内会の集まりで不在だった為。普段は常連とは言え、昼間に行く事が多い。

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