金田一少女の事件簿~元祖高校生探偵と小さくなった名探偵~ 作:ミカヅキ
ご感想ありがとうございます。
テンポアップしたいんですが、伏線も消しそうでなかなか出来ずもどかしい…。
はじめが浴室から出た時、取り乱した宝田が白馬に掴みかかっているところだった。
「じ、
「落ち着いてください、宝田さん…!」
「落ち着いていられるような状況じゃないでしょう!?」
「取り乱しても状況は変わりませんよ…。」
カツン…と、微かな足音と共に現れ、宝田に言い聞かせるはじめに、その場にいた者たちの視線が引き寄せられる。
「き、金田一さん…!」
「
説明してくれ、と言わんばかりの宝田に一瞬視線を向けつつも、容疑者を絞り込む為に、その場にいる全員に告げる。
「“見立て”…?」
「はじめさん、どういう事です?」
誰もが動揺を露わにしている中、冷静だったのははじめと一緒に遺体を確認した白馬と、“スカーレット・ローゼス”のみ。
「
「それは…?!」
「“コントラバスのイワン”!?あの暗号文の…?!」
はじめが掲げたロシア人形に、最も動揺の激しかった宝田と梅田が酷く
「成る程?“コントラバスのイワン”は暗号に使われているロシア人形の中で最も背が低い…。そして、暗号の“楽団は朝礼で前から順に首を刈られた”の通り、コントラバスを担当する
「そうなるかな…。」
この場では酷く不釣り合いな、美しいと言える程の微笑みを浮かべる“スカーレット・ローゼス”に、顔を顰めながらもはじめが頷く。
「で、でも、あの人形は“時計の塔”にある
「行ってみましょう!!」
ハッとしたような
「?!犬飼くん、待ってください!!」
それに反応した者たちがバタバタと部屋を飛び出して行く中、その場に残ったのははじめと“スカーレット・ローゼス”の2人のみ。
「……1つ確かめたいんだけど、この殺人、お前の仕業じゃないだろ?」
「おや?疑われていたとは心外ですね…。」
はじめの唐突な質問に、面白そうな声音で返す“スカーレット・ローゼス”に、はじめもまた失笑で返した。
「疑う?まさか…。むしろ確信してるよ。お前の仕業じゃあり得ないってね…。」
「…意外ですね。どうやらあなたは私の事を警戒していらっしゃるようでしたから。そんなに信頼してくれているとは…。」
「信頼?笑わせないで…。
「……やれやれ。まあ、とっくに見破られているとは思っていましたけどね…。金田一さん!」
そう言って仮面を外す“スカーレット・ローゼス”、否
「…バカにしてんの?そんなお粗末な変装であたしの目を騙し切れるとでも?」
「仕方が無いでしょう?何せ、君と出逢ったのはこの私にとっても予想外でした。現に、君以外の人たちは私の事に気付きもしなかったでしょう?私の素顔と声を知っている
「ふん…。」
鼻を鳴らすはじめに、
「それより、どうして真っ先に私を容疑者から外したんです?一般的に見れば、最も疑わしいのはこの私…。まぁ、
「さっき言った通りだよ。お前が殺したにしては
「水?」
「
「ええ、それ位はかかるでしょうね…。でも、あらかじめ
「時間的に無理があるね。午後10時の鐘が鳴った直後に山之内
「ごもっとも。…フフッ、どうやら思考能力は鈍っていないようで安心しました。先程は少々ぼんやりされていたようですし…。これでも少々心配していたのですよ。私が唯一の“平行線”と認めた君が、万が一腑抜けていたらどうしよう、とね…。」
はじめの推理に安心したような笑みを浮かべる
“平行線”。
それは、
曰く、“常に隣りにありながらも、決して交わる事の無い”関係だと。
その言葉通り、お互いがお互いの思考を良く理解している。――――――もっとも、
はじめは時々思う事がある。
もし、祖父が自身の解決した事件の事をはじめに全く伝えず、犯罪の恐ろしさもそれが生み出す悲劇も悲哀も全く教えず、ただその“血の宿命”から遠ざけるだけだったなら。
もし、はじめの両親が彼女の“才能”を受け止める事が出来ず、はじめが親の愛情を受ける事が出来なかったなら。
もし、はじめの全てを受け止め、寄り添ってくれる美雪という親友が傍にいなかったなら。
もし、両親や美雪が卑劣な人間の手にかかって殺され、そいつらが法の裁きも受けずにのうのうと生きていたなら。
そして、それは
もし、彼が幼少期に親の愛情を受ける事が出来ていたら。
もし、彼の傍にもはじめにとっての美雪のような存在がいたなら。
もし、彼を復讐に駆り立てた近宮玲子が殺されずに生きていたなら。
―――――――2人の立場は、全くの逆だったかもしれない。
だからこそ、
だからこそ、はじめは
2人の間に漂う緊張感は、強制的に壊された。
その理由は、直後にはじめも悟る。
「先輩、たいへんです!暗号のロシア人形が……!!!」
「はじめちゃん!人形が1つも無いわ!!」
バタバタと部屋に駆け込んで来た、佐木と美雪の声に。
扉側に立っていた
「全部?イワンだけじゃなくて?」
「全部です…!“時計の塔”には1つも…。」
佐木の肯定に、はじめもまた“時計の塔”へと走った。
「あ、待ってはじめちゃん!」
「置いてかないでくださいよ~…!」
バンッ!
はじめが“時計の塔”の、人形が置かれていた部屋に辿り着いた時、他の4人の候補者たちは
「金田一さん…!」
飛び込んできたはじめに、まだ青い顔をしている宝田が立ち上がる。
「先輩、置いてくなんて酷いっスよ~…!」
追いかけてきた佐木たちが、はじめが開けっ放しにしていた扉から入ってきたのを確認しつつも、宝田に視線を戻した。
「人形が消えたと聞きましたが…。」
「は、はい。金田一さんの持っているイワン以外全部……!」
宝田の視線の先、5体のロシア人形が置いてあった筈の暖炉の上には、人形と一緒に置いてあった一対の電灯のみが置かれていた。
(あれ……?)
先程DVDを見た時とは、明らかに何かが違う。その違和感が、この事件を解く鍵を握っている。
はじめは、そう確信した。
「に、人形が無くなって、
「ちょ、ちょっと待ってよ…!まさか、そんな小説みたいな事……?!」
取り乱す宝田に、梅園も怯えたような声を上げる。
「まさか。そんな事がある筈ないわよ。金田一さんも人が悪いわ。
場所が変わったからか、温かいロシアンティーを飲んで人心地付いたのか、落ち着きを取り戻した
しかし、それを否定したのは犬飼だった。
「…果たしてそうでしょうか?思い出しませんか?山之内先生の初期の代表作“
「“
山之内の小説を読んだ事の無いはじめを除き、残った3人の候補者たちがハッとする。
「“
「ふぅん…。」
白馬の説明に、はじめが相槌を打つ。
「…まぁ、今は小説よりも、目の前で起きた事件が大事だ。田代さん、警察に連絡はしましたか?」
「あ、いやそれが…。」
田代に目を向けるはじめだったが、田代は額の汗を拭きながら言い淀む。
「それは出来ません。」
「……どういう事ですか?
「山之内先生のご指示で、遺産相続レース終了の5日後の山之内先生の誕生日の午前0時まで、外部との連絡は一切取る事が出来ないのです…。」
「人が殺されたんですよ?遺産どころじゃない。」
「しかし、遺言状に“何があっても続行する”という指示がされている以上、この指示が守られなければ5人の候補者の相続権は消失し、先生のご遺産は全て国に寄付される事になっているんです。その為、この相続レースに合わせて屋敷内の電話は撤去し、5日後の朝になるまで迎えも来ない事になっています…。」
はじめの若干責めるような言い方に、
「候補者以外の人間が携帯で連絡を取る事も出来ないんですか?」
「…申し訳ありませんが、候補者の助っ人としていらした以上、白馬さんも、金田一さんたちも、“スカーレット・ローゼス”さんもその指示に従っていただきます。それだけでなく、田代さんや
白馬が問いかけるが、その為に携帯電話をお預かりしたのだ、と言われてしまえばはじめたちよりも先に、梅園が声を上げた。
「冗談じゃないわ!私はお金が必要なのよ?!国に寄付だなんて、それじゃ何のためにこんな所まで来たのか……!!あなたたちだってそうでしょう?!」
「そうですね…。今更取り繕っても仕方が無い。僕も、遺産が必要なんです。それが無いと、僕の犬たちが…。」
梅園の悲鳴のような抗議に、愛犬たちを借金の担保にされている犬飼が同意した。
「そうね…。あたしも一緒よ。どうしてもお金がいるの。弟の治療費がね…。」
そして、弟が植物状態で入院している
「わ、私は……。」
顔を青くさせた宝田が口を開こうとした時、0時を告げる時計の鐘が鳴り響く。
リーンゴーン…!
リーンゴーン…!
リーンゴーン…!
「0時の鐘が…。もう遅いですし、話は明日に持ち越してそろそろ部屋に戻りませんか?まずは皆さん落ち着かれた方が良いかと…。金田一さん、すみません…。」
「はい?」
「イワンを貸していただけませんか?この人形も暗号の一部ですから、出来るだけ元の通りにしておくべきかと…。」
「ちょ、ちょっと弁護士さん!その人形、死体と一緒に浮かんでたんでしょ!?そんな所に置いといて良いんですか?!」
それに待ったをかけたのが宝田だった。
「しかし、遺言状にはどんな事があってもこの相続レースは期限が来るまで実行するように、との指示がされています…。続けるか続けないかは明日皆さんで良く話し合ってもらう事にして、それまでは出来るだけ元の通りにしておかないと…。」
「そうよ!こんな事で諦めてたまるもんですか!!」
「では、私は先に休ませてもらいますか…。明日からの推理合戦に備えてね。GoodNight!“
真っ先に、余裕すら滲ませて部屋を出て行った“スカーレット・ローゼス”を見送った後、後を続くように立ち上がる4人の候補者たちにはじめが釘を刺す。
「部屋に戻ったら、必ずドアと窓の施錠を確認してください。それと、誰かが訪ねていっても、絶対に不用意に開けたりしないように…!」
「ちょっと?!それってどういう意味よ!?」
「分かってるでしょう?梅園さん。この屋敷は湖によって外界と切り離された言わば天然の密室!外から殺人者が侵入した可能性は極めて低い―――…。つまり、
「そ、そんな…。」
「用心するに越した事はありませんよ。犬飼くん、はじめさんの言う通りに…。」
はじめの断言に、ショックを受けた様子の犬飼を白馬が宥めるように肩に手を置く。
「宝田さんも。良いですね?」
「は、はい…。」
宝田に念を押し、念の為と田代に確かめる。
「田代さん!この屋敷内の鍵は、あたしたちそれぞれが持つものの他は、マスターキーしか無いんですよね?」
「はい、その通りでございます。普段マスターキーは鍵付きのキーストッカーに保管しておりますし、ストッカーの鍵はこの通り…。私が常に肌身離さず持っています。」
「それなら安心ね…。誰かが訪ねてきても、鍵を開けさえしなければ安全だわ。」
田代の断言に、
「それでは、皆さま…。明日の朝食は8時からとなっておりますので、どうかそれまではごゆっくりとお休みください…。」
田代の言葉を最後に、それぞれが割り当てられた部屋へと戻る。
―――――――不穏な気配を察しつつも、それぞれが部屋で1人の夜を過ごした。
自身がいつ眠ったのかすら気付かずに…。
その翌日、本当に新たな犠牲者が出るとは知らぬまま、それぞれが
感想でも指摘されましたが、はじめちゃんが女の子だと、高遠のヤバみが増し増しですね…(汗)