金田一少女の事件簿~元祖高校生探偵と小さくなった名探偵~ 作:ミカヅキ
前回更新から1ヵ月もお待たせするとは…(汗)
お気に入り登録、ご感想、評価、どうもありがとうございます。
無事パソコンが復帰しました!しかし、年度末までちょっと仕事がバタつく予定でして、更新速度はさして変わらないかもしれません……(涙)
何はともあれ、露西亜人形殺人事件File11、お楽しみください…!!
追伸、まだ終わりません……(汗)
「まぁ、気持ちは分からなくも無い…。共感は出来ないけどね…。山之内が築いた財産は、本来は
「!?あんた……?!」
はじめの意味深な
「!?はじめさん…?それは一体どういう……?」
「山之内先生の財産が、本当は
白馬と犬飼が驚愕も露わに声を上げるが、はじめはそれに構う事無く続ける。
「あんたが殺人という禁忌を犯しても尚、遺産を手に入れようと固執したのには訳がある。山之内が手に入れた財産は全て、本来ならば彼自身が手に入れるべきものではなかったものだからだ。より正確に言えば、本来手に入れるべき人物は他にいた。その人物の名前は白井雄一郎!!
「な?!」
「白井雄一郎だって……?!」
「
「い、一体どういう事ですか!?だ、旦那様の財産は本来は
驚愕の声が上がる中、はじめが自身の足元に置いていた紙袋から
「これを見てください。…これは、山之内
そう言って周囲が見やすいように掲げられた
その表紙に書かれていたタイトルに、その場にいた者たちは皆目を疑った。
「“
「で、でも作者の名前は山之内先生じゃないわ…!!」
「そう。これは山之内
「父が、小説を書いていた……?!」
はじめの断言に、
「嘘でしょ…?って事はまさか先生……!」
その表紙と作者名に、頭に浮かんだ疑惑を振り払おうと否定する者たちの期待を裏切るように、はじめが告げる。
「そう、この小説は正真正銘
「な、なんですって……!?」
「まさか、そんな事が……!」
「嘘……!」
特に、日頃山之内と交流していた3人の候補者たちが言葉を失う。
「白馬!」
「は、はい!!」
一瞬呆けていた白馬だったが、はじめの呼びかけに反応して彼女に目を向ける。
「お前、確か山之内の本を読んでいたよな?」
「は、はい。勿論……。」
「その時、疑問に思わなかったか?発想豊かな奇想天外なトリックと、伏線もまるでなっていない凡人そのものの何の捻りも無い文章に。」
「え、ええ…。確かに…。最初はトリックは別の人間が考えているのではないかと思った位です。…でも、まさか…。」
「盗作とは思わなかった?」
「はい…。恥ずかしながら……。」
「別に恥じる必要は無いよ。これまで誰も、出版社の人間や読者は勿論、側で山之内に仕えていた田代さんでさえ誰も気付かなかったんだから。」
白馬に軽い
「この原稿と一緒に、もう1つ見付けた物がある。…白井雄一郎の日記だよ。」
「?!父の日記ですって……!?」
そう言ってはじめが先程の紙袋から取り出したのは、1冊の日記帳。
「恐らく、山之内
そう、チラリと目線を送ったはじめに、それまで静かに
はじめのその言葉と、“スカーレット・ローゼス”の様子にはじめの他に唯一その
「…悪いとは思ったけど、その日記を読ませてもらいました。お陰で、あたしの疑惑を確信へと変える事が出来た…。」
「疑惑、ですか?」
衝撃から冷めやらない一同に代わり、白馬が代表で口を開く。
「元々、あたしはここに来る以前から山之内の“人格者”という評判について、疑問を感じていた…。その想いはこの屋敷に来て益々強くなったよ。
「?!それはどういう…?」
「本当は譲る気が無かったとしたら…?」
「「「「「?!!!」」」」」
はじめの言葉に、その場の者たちに少なくない動揺が走る。
「これを説明するには、最初から、山之内
「全ての始まりは、山之内
はじめの口から語られる、知られざるエピソードにその場の者たちは
「しかし、卒業後2人がそれぞれ進んだ道はまるで異なるものだった。小説家を志し、アルバイトでその日暮らしを送っていた山之内に対し、父親の後を継いで貿易商として成功した白井雄一郎はかなり裕福な生活を送っていたらしい。そして、そのうちに白井は結婚し、1人の女の子をもうけた。―――――
「―――――ええ、そうよ……。」
「残念ながら、妻となった女性は若くして亡くなってしまったが、貿易商としての成功と裕福な暮らしと可愛い子ども、白井は一見順風満帆な生活を送っていた…。しかし、彼は学生時代から抱いていた小説家になるという夢を捨て切れず、思い付いたトリックやストーリーを1冊のノートに纏めていたらしい。この
「や、山之内先生が…?」
思わず口を挟んだ田代に頷きつつも、はじめは構わず続ける。
「山之内は、成功した昔の友人に金の
「で、では先生はその時に“
犬飼の言葉にはじめが頷く。
「日記によれば、その時山之内はそのトリックノートを酷評したらしい。『奇想天外なトリックだが、小説には使えない』ってね。その時点で、山之内は恐らくそれらのトリックを盗用する事を思い付いていたんだろう。だからこそ、白井雄一郎がそのトリックを使用した小説を書き上げる前に思い留まらせようとしたんだ。…実際には、その時既に白井は彼自身の処女作“
「………何もかも、お見通しって訳ね…。ええ、その通りよ……!!山之内が書き上げた小説のその全てが、あたしの父が書いたトリックをそっくりそのまま使った盗作だった!!!!あのトリックノートは父の夢そのものだった…!学生時代から少しずつ書き溜めていたトリック、それをいつか自分の手で小説にして発表したい―――――、そんな父の夢をあたしは膝の上で何度も聞いてきたわ!それをあの男は……!!!山之内は父の夢を踏み
はじめでさえ一瞬気圧される中、唯一“スカーレット・ローゼス”だけはいっそ不気味な程静かに彼女の姿を見詰めていた。
「父が仕事先のヨーロッパで事故に遭い急死した後、父の会社は色々な人の裏切りに遭い、あっという間に傾いてしまった…。何年かしてこの館も
はははは…!と
「今思い出すと、あの頃はそういう自分に対して疑問も抱いてなかった。生きてくだけで精一杯だったし…。小さい頃から1人きりで、その前の短い幸せだった頃の事なんか思い出してる余裕も無かったもの。……そうね…。いっそ、思い出さないままだったら良かったのかもね…。ちょっとした運命の
「“運命の
「ねぇ、金田一さん?とうの昔に落としてしまった、大金の詰まった財布を――――――。思いもよらない場所で偶然見つけたとしたら、あなたならどうする?拾うでしょ?当然!他に手を伸ばそうとしている連中を―――――、押し退けてでも……ね!」
「っ…!」
はじめだけでなく、その場にいた者たちが思わず息を呑んだが、
「―――――そう、あれは…確か2年前。あたしが16になったばかりの時だった……。その頃、あたしは北海道のとある田舎町で場末の安酒場にホステスとして年を偽り、名前もユカリと名乗って勤めていた―――――。毎日毎日、安い時給と品の無い酔っ払い親父たちの相手に疲れて、そろそろこの店も潮時かなって思い始めた頃だったわ……。忘れもしないあの夜―――…、外は狂おしく吹雪が舞っていたっけ……。夕方から降り出した大雪のせいで客も来なくて、そろそろ店を閉めようとしていた時だった。ある3人の男が客として来たのは…。」
「3人の男たちはいずれも高そうな服を着て、言葉使いからしても東京から来たとすぐに分かる様子だった。あたしは辞める前に小金が欲しいと思っていたし、上手く取り入れば上京して少しはマシな生活にありつけるかもしれない、という下心もあっていつもの何倍も愛想良く振舞ったわ…。その時よ、その3人の男の中の1人、“先生”とか呼ばれてちやほやされている男が、昔父に良く金を借りに来ていた男だと気付いたのは…!あの、食うにも困っていた男が“先生”と呼ばれるような人間になっていた事に疑問に思ったあたしは、取り巻きの1人として一緒に店に来ていた男‐宝田に尋ねたの。『“先生”ってお医者様とかなんですか?』ってね…。ミステリー作家と聞いて驚いたわ。でも、その後の衝撃に比べれば大した事じゃなかった…。有名なミステリー作家と聞いて、当時同僚として働いていたホステスがここぞとばかりに
「この本は、山之内が父の書き溜めていたノートを見てネタを盗んだに違いない、父の受けるべきだった栄誉や称賛を横取りして我が物としているに違い無い。そう確信したあたしは、名字も
語るうちに込み上げた激情が、
「………許せなかった!!だって、山之内が受けた名誉も称賛も財産も!!!その全ては、本来ならばあたしの父が得る
皆、
――――――だからこそ、初動が遅れてしまった。
「?!
はじめが叫ぶが、その手は届かない。
否、はじめだけでなく、白馬や犬飼の手も届かなかった。
「だ、ダメだ
「いけません…!!!」
――――見ている事しか出来なかった。
「近寄らないで!もう終わりにしてやるんだから!」
その喉元に、ナイフの切っ先が突き付けられるのを。
「あたしの最悪の人生なんか…、不運続きの辛いだけの人生なんか……!!」
微かに震える
「もう、いらないっ!!!」
震えが、止まった。
――――覚悟を決めたように。
「ダメだ!止めるんだ、
はじめが駆け出すよりも、速く。
「バイバイ、名探偵さん…!」
「
ザクッ………!!
鈍い音を立てて、そのナイフが
バッ…
そして、はじめの視界が深紅に染め上げられた―――――――。
因みに、想子さんの名字についてはねつ造です(汗)