金田一少女の事件簿~元祖高校生探偵と小さくなった名探偵~   作:ミカヅキ

18 / 20
たいへんお待たせいたしました…!
金田一少女の事件簿、更新です……!!
前作までのご感想、評価、お気に入り登録どうもありがとうございます。

今回から、コナンsideの事件に戻ります。お付き合いくださいませ。


吸血鬼の館

 プシュ――――――…!

 ブロロロロロ……!!

「さて、と……。」

 バスから降り立ったはじめは、住所を確認してスマホのマップを起動させた。

「げ…。こっから徒歩で1時間半……?!」

 目的地である寅倉(とらくら)家までの距離に、一瞬眩暈(めまい)を感じる。

 これからこの山道を延々登って行くのか、と思わずうんざりしたはじめだったが、もたもたしている場合ではないと意識を切り替えた。

「行くっきゃないか…。」

 溜息を1つ()き、バックパックを担ぎ直し、山道へと足を踏み入れた。

 

 何故、はじめが1人こんな山道を登る事になったのか。それは3日前に(さかのぼ)る。

 

 

 

 ――――――――3日前。

 ガララ…

「ただいま。」

「あら、おかえり。あんたに手紙が届いてたわよ。」

「手紙…?」

 玄関の戸を開け、学校から帰宅したはじめに、台所からひょいっと顔を覗かせた母が下駄箱の上を指差す。

 見れば、下駄箱の上に置かれたシンプルな白い長封筒の宛名には、確かに“金田一一様”の文字があった。

 見覚えのある筆跡に、ドクリ、と心臓が嫌な音を立てるのが分かる。

 バッ…!

 急いで封筒を手に取り、裏返して送り主を確認した。

 “都津根(とつね)毬夫(まりお)”。

「っ!!」

 見知った筆跡で記された、見覚えのあり過ぎる名前に、ギリッと唇を噛み締める。

(高遠(たかとお)…!)

 “都津根(とつね)毬夫(まりお)”は、はじめと高遠(たかとお)遙一(よういち)が初めて邂逅(かいこう)した事件で高遠(たかとお)が使っていた偽名。

 そして、以前にも()はこの名を使ってはじめに手紙を送り付けてきた事があった。

「はじめ?誰からだったの?」

 険しい顔をしている(はじめ)を疑問に思ったのか、不思議そうな声で問いかけてくる母にハッと顔を上げる。

「あ、ああ…。前に事件で一緒になった人。急に何だろうと思って。」

 嘘は言っていない。

 まして、“事件に関係した人”と聞けば、母はそれ以上は突っ込んでは来ない。事件に巻き込まれる度に、はじめが大なり小なり()を負って来る事を誰よりも良く知っている為である。

「そう…。これから買い物行って来るけど、今日何が食べたい?何でも良いって言うのはダメよ。」

 案の定、母はそれ以上追及する事無く、話題を変えた。

「じゃあ、寒いからキムチ鍋。シメにうどんと卵入れてね。」

「キムチ鍋か…。最近食べて無いし、白菜と豆腐、卵もあるし良いわよ。じゃ、ニラと豚肉とうどん買い足せば良いわね。」

「シメジか椎茸も入れてよ。」

「そうね。確か干し椎茸もあった(はず)だから良いわ。その代わり、あんたも手伝うのよ。」

「分かってるよ。それまで宿題してるから、帰ってきたら呼んで。」

 パタパタと冷蔵庫の中身を確認し、エコバックの準備をする母に言い置いて階段を上って自室に向かう。

 

 ガチャ…

 ―――パタン

 自室に入るなり、手紙の封を切って中身を確認する。

 シンプルな便箋(びんせん)に書かれていたのは、()()()()を示した住所と、指定された日時。そして、珍しくも記された一言。

 “誰にも知らせず、1人で足を運ぶ事。破られた場合、マリオネットの命は保証しかねます。”

「…今度は、何を企んでる高遠(たかとお)………!」

 はじめ1人を指名するのは、高遠(たかとお)にしては珍しいとも言える。これまでは、明智警視にも自ら挑戦状を送り付けたり、はじめが剣持(けんもち)や明智を頼るのを黙認していたのだから。

 おまけに、これまでに高遠(たかとお)がはじめに送り付けてきた“犯罪ガイドマップ”とは異なり、記されている住所は1つだけ。しかも、日時すら指定してきている。

 嫌な予感が止まらないが、今回ばかりは明智は勿論、剣持(けんもち)にも頼れない。基本的に高遠(たかとお)は有言実行。誰かに知らせた時点でマリオネット、つまりは犯罪コーディネーターである高遠(たかとお)の依頼人の命は消えるだろう。

 誰かが死ぬと分かっていながら、出来る訳が無い。

 高遠(たかとお)の掌の上で踊らされている事に歯噛みしながら、はじめには条件を呑むしか道が残されていなかった。

 

 

 

 

 ――――――――そして、それから3日後。はじめは手紙に記されていた群馬と埼玉の県境に位置する寅倉(とらくら)家の邸へと足を運んだ。

 舗装(ほそう)はされているものの、コンビニ1つ無い山奥を延々と歩く事約1時間40分。

「…やっと着いた……。」

 着く頃には既に夕方になろうとしていた。

(に、してもデカい家……。)

 こんな山奥に家を建てた、というよりはむしろこの山全てが持ち物という事なのだろう。まるでヨーロッパの貴族が住んでいたような豪奢(ごうしゃ)な邸である。

 ガンガンガン……!

 インターフォンが見当たらず、取り敢えず扉に取り付けられたノッカーを鳴らす。

 ガチャリ…

「どちら様でしょう?」

 しばらくして顔を覗かせたのは、執事服を纏った老人。

 細面(ほそおもて)ながら品の良さそうな顔が、はじめを見た途端に喜色を露わにした。

「おお…!もしや、金田一様でしょうか?」

「え?はい、そうですが…。」

「お待ちしておりました。さ、遠路はるばるお疲れでしょう?どうぞお入りくださいませ。」

 予想外のリアクションに戸惑うはじめを余所(よそ)に、執事が邸内へとはじめを(いざな)う。

「申し遅れました。(わたくし)、この寅倉(とらくら)家の執事‐古賀と申します。」

「金田一(はじめ)です。あの、何故私がここに来る事を……?」

 これまでに無かったパターンに、いまいち理解が追い付かない。これまで、高遠(たかとお)によって送り付けられた“犯罪ガイドマップ”によって導かれた際は、高遠(たかとお)が直接関わってるか否かに関係無く、はじめの存在は犯人(或いは、これから犯罪を犯そうとしている者)にとってはイレギュラーである事が常だった。その為、スムーズに介入出来た事は少なく、状況によっては容疑者になった事も少なくない。

 しかし、今回ははじめが今日この邸に来る事が(あらかじ)め周知されていた様子である。

 高遠(たかとお)が手を回していたという事なのか…。

「それは当然、旦那様からお伺いしていたからでございます。半年前の奇怪(きっかい)な事件を解決すべく、()の昭和を代表する名探偵‐金田一耕助(こうすけ)のお孫さんをお呼びする、と…。」

「……旦那さんが…?」

 その“旦那様”が高遠(たかとお)の依頼人なのか、それとも…。

「その旦那さんとお会いしたいんですが…。」

「はい。間も無くお目覚めになると思いますので、夕食の席で皆さまにご紹介させていただきたいと思います。それまで、どうぞ客間でお(くつろ)ぎくださいませ。」

「お目覚めって、お体の調子でも…?」

 日中寝るような生活なのか。

「ああ、いえ…。実は……。」

 どこか言い辛そうに古賀が口を開こうとした時だった。

 ――――――――ブロロロロロ………!ブロロ…!

「ああ、もうお一方いらっしゃったようですね…。金田一様、お話は後程でもよろしいでしょうか?」

「はい、大丈夫です。」

「それでは、ただいまいらっしゃったお客様とご一緒に客間にご案内致しますので、少々お待ちくださいませ。」

 そう言い置いた古賀を見送ろうとしたはじめの耳に、どこか聞き覚えのある声が届いた。

(?…何か、どっかで聞いた事のある声が……。)

 扉が締められている為、内容までは聞き取れないものの、どこかで聞き覚えのある声が外から聞こえてくる。

 古賀が扉を開けたタイミングで何気無く外を覗いたはじめが、声の主を見付けるより先に、その声は響いた。

「あれ?!はじめ姉ちゃん??!!」

「え?!コナン……?!!」

 そこにいたのは、何かと縁のある眼鏡の小学生。

「あ、あんた……!」

「あっ……。」

 そして、一緒にいたのは前回気まずい出逢いとなってしまった、浪速(なにわ)の高校生探偵だった。

 

 

 

 ――――――――3度目の邂逅(かいこう)は、偶然か、それとも必然か。

 “傀儡師(くぐつし)”の視えない糸に操られ、3人の探偵が“舞台”へと導かれた。

 

 その“舞台”の行く末を知る者は、まだ、いない。

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。