金田一少女の事件簿~元祖高校生探偵と小さくなった名探偵~ 作:ミカヅキ
前作までのお気に入り登録、評価、感想どうもありがとうございます。
令和でもよろしくお願いします。
今回、コナンsideキャラに対して厳しめ表現があります。それが嫌な方はどうかお戻りください。
読んでからの批判等は一切受け付けませんので、何でも良い、という方のみどうぞお進みくださいませ。
「なんでコナンたちがここに……。」
「はじめ姉ちゃんこそ、なんで……?」
予想外の
この前
「なんや、このお嬢ちゃん知り合いですか?」
その様子を見咎め、コナンたちと一緒にいた右眉に傷のある男‐大阪府警の大滝警部が小五郎に尋ねる。
「あ、ああ…。前に事件で知り合ってな…。この嬢ちゃんは金田一
「げっ…!!こ、このお嬢ちゃんがあの?!」
「?」
小五郎が代表ではじめを大滝警部に紹介するが、その名前を聞いた瞬間、大滝警部が思い切り
はじめは知る
前回、はじめと服部平次が
曰く、父親の権力を笠に着て現場を荒らす素人探偵を増長させているのは警察官としてあるまじき
明智警視の電話を取った1刑事(しがない巡査長)が慌てふためいて大滝へと繋ぎ、反論(
事情を聞き付けた、他ならぬ大阪府警本部長にして平次の父‐服部平蔵が大滝の手から受話器を取り上げ代わるまで、徹底的にへこまされる事となったのだ。
あの後、階級が上である服部本部長にも明智警視はその
階級が下でありながら上の人間に対してそこまで追求出来る明智警視の心臓の強さもさる事ながら、完全に理詰めで来られた故に一切反論出来ない本部長の姿もまた衝撃的だったのである。
また、話はそれだけに終わらなかった。明智警視からの電話を皮切りに、これまで平次が関わった地方の警察署から次々と苦情が舞い込む事となったのだ。
警察というのは縦、つまり上司から部下へのやり取りが全てでは無論無い。
当然、仕事柄他の署の人間と連携を取り合う必要がある故に、管理職同士で情報提供を行う事もあれば、人事異動などによって個人的に広い人脈を持っている者もいる。
それは同じ都道府県内だけに留まらない。
例えば、別の都道府県で事件を起こした被疑者が他県で別の事件を引き起こし逮捕された場合、実際に事件の起こった都道府県の警察署同士で、情報提供なり何なりを行う事は決して珍しい事では無い。事件そのものの規模によっては、最初から異なる都道府県の警察同士での合同捜査を行う事もある。
その為、そうした経験から個人的に他県に人脈を持つ者も多いのだ。
今回、本庁の明智警視が遂に重い腰を上げた事により、
それにより、それまでマスコミによって名を上げ、事件現場に堂々と入り込むようになっていった“探偵”たちへの苦情が余波として寄せられる事となったのである。
大阪府警には服部平次への、そして警視庁へは毛利小五郎と工藤新一への苦情が。
この3人が槍玉に挙げられてしまったのは、その知名度による影響力がそれだけ大きかった事が挙げられる(より正確に言えば、毛利小五郎は江戸川コナン(つまりは工藤新一)のスケープゴートにされているだけである為、実は被害者でもあるのだが、それを知るのは極1部の人間しかいない為、仕方が無い)。
上記の3人(しつこいようだが、実は2人)は、時にマスコミの前で推理を披露する事もあり、前々から被害者家族や友人、または被疑者の家族や恋人から個人情報保護についての苦情が度々寄せられていたのである。だが、その功績と
しかし今回、彼らを庇い続けていた
因みに今回、明智警視は大阪府警に苦情を入れる前に自身の部下でもある目暮警部を始めとする“目暮班”の者たちに直々に厳重注意(に伴う嫌味付き)を行っていたが、事件捜査を民間人に頼りっきり、という事態が表面化した事を重く見た上層部により、“目暮班”の面々は3か月の減俸処分を喰らう事となった。
そして、大滝警部がはじめの名を聞いて
無論、明智警視ははじめの名を引き合いに出す事は一切しなかったものの、大阪府警に舞い込んだ地方の警察署からの苦情の中に“金田一
曰く、同じ“高校生探偵”でも“金田一
実際にははじめの事もそこまで高評価している訳では無く、単に平次をこき下ろしたかったが為に都合良くはじめの名前を出しただけであるのだが、それと同時に流れてきた“噂”があった。
『“金田一
『“金田一
『明智警視の逆鱗に触れたく無ければ、“金田一
――――――――と。
まことしやかに
また、補足すると槍玉に挙げられた平次は父親の平蔵から大目玉を喰らい、思い切り横面を殴り付けられた。
その後、2度とマスコミの前で不用意な発言をしないように誓約書を書かせ、手打ちとしたのだ(本来ならば、探偵を名乗る事自体を止めさせたかった平蔵だったが、自身の息子の性格上完全に頭から抑え付けるのは逆効果だと踏み、妥協したのだ)。
「おや、金田一様のお知り合いの方々でしたか?」
「え?ああ、こっちの3人はそうですがこちらの関西弁の人は……。」
はじめとコナンらのやり取りを見た古賀が尋ねるが、
「ああ、こちらは大阪府警の大滝警部だ。」
「初めまして。」
小五郎のフォローにはじめが大滝警部に頭を下げたところで、古賀が口を開いた。
「おお…!あなたが大滝警部でしたか。ようこそおいでくださいました。執事の古賀と申します。服部本部長の父上とは同期の桜でして…。こんなに大勢で来られるとは思っていませんでしたが…。」
「……わざわざ警部さんまで呼んだ、という事はよっぽどの事があったんですね?」
「ええ、はい…。後に旦那様から詳しくお話がある事と思いますが、実は半年前にこの邸で働いていたメイドが1人亡くなったのです……。それも、殺されたらしく…。」
「殺された?」
「はい。この邸の近くの森の中で遺体が見付かったのですが、その遺体の様子があまりにも奇妙で……。」
はじめの問いに、言い淀むようにしながら説明する。
「森の中で見付かった彼女の遺体は、立てた杭に体を逆さにして縛られた、無残な姿で発見されました。首筋に2つの穴が開けられ、体中の血が抜かれ失血死した姿で……。」
「首筋に2つの穴……?」
まるで……
「……確か、
今回、いつきに頼んでこの周辺に伝わる民話や昔話を当たってもらった中に、確かにそんな物騒な話があった
(
「ご存知でしたか…。それもあって、容疑者として真っ先に疑われたのが、旦那様。この邸の主‐
「何か疑われるような事でもしたんか?」
古賀の説明に、平次が容疑者として挙げられた理由を尋ねる。
「その亡くなったメイドの清水さんが、『旦那様が最近不気味で身の危険を感じるからメイドを辞めたい』、とシェフに漏らしていたそうです。しかし、旦那様にはしっかりとしたアリバイがございまして…。清水さんが亡くなった死亡推定時刻に、旦那様はずっと部屋に籠って寝ていらしたのです。皮肉にも、それを証言したのは清水さんに相談を受けていたシェフなのですが……。」
「なるほど…。」
状況として最も疑わしいが、物理的に不可能だったと。
はじめが今回の依頼人と
そして、古賀の話で気になった点について尋ねようとしたが、それよりも先に声を上げたのはコナンだった。
「ねえ、何なの?最近の旦那様の様子が不気味だったって……。」
「…近頃の旦那様は、陽を避けるように昼間はずっと部屋で寝てらしたり…。愛用なさっていた銀の食器類も自分は銀アレルギーだと急に言い出されて全てお捨てになったり…。先日は、好物のニンニクの入ったスープの皿を叩き割られて、『血が腐るから2度と入れるな。』と大層ご立腹で…。」
(そりゃまた……。)
演技なら大分徹底しているし、本気なら本気で通院の必要性を感じる。
「お、おい…。それってまるで……。」
内心ちょっと引いたはじめの思考に被さるように、小五郎が古賀に向かって口を開く。
古賀もまた、小五郎の言いたい事を理解しているように頷いた。
「ええ…。メイドの清水さんの目にはそう映ったんでしょう…。まるで吸血鬼、バンパイアのようだと…。」
重く告げる古賀に、はじめが気になった事を聞くべく口を開こうとした瞬間、
「「バ、バンパイア!?」」
不意に響いた悲鳴じみた声に遮られた。
何事かと振り返ってみれば、先日ファミレスの事件の時にいた女子高生が2人顔を引き攣らせながら立っている。
「今、バンパイアって
「きゅ、吸血鬼がどうかしたの?」
(苦手なのか、ホラー…。)
知らずに来たのか、この邸に。
2人のリアクションで何とはなしに事情を察する。
「あ、いや……。」
「バンパーやバンパー!レンタカーのバンパーに傷付けてしもて、どないしょー
「何だ、バンパーか…。」
一先ず納得したらしい少女たちが、そのままはしゃいだ様子で平次に話しかけるのを見て、思わず呟く。
「ナイスボケ。」
「ハハ…。」
その声を聞き
「あれ、あんたもしかして…。」
ハッとしたような声が聞こえ、そちらに目を向ければ関西弁を話すポニーテールの少女がはじめをじっと見詰めていた。
「やっぱり…!あんたこの前の、ファミレスの事件の時に
「えっと、確か金田一さん……!」
「何で、あんたがここに…?」
ポニーテールの少女‐遠山和葉の言葉に、もう1人の少女‐毛利蘭が思い出したように声を上げる。
「ちょっと所用があってね…。あんたたちこそ、何でここに?」
見たところ、ホラーが嫌いなんだろうに。
「そ、それよりさぁ!ボク何だか喉乾いちゃったな~…。」
「それでは、皆様中へお入りください。そろそろ陽も傾いて旦那様もお目覚めになられる頃合いですので…。夕食の支度が整うまで、どうかお
コナンの苦肉のフォローに、何かを感じ取ったのか古賀も一同を邸内へと促す。
「問題の遺産相続の話し合いは、夕食後との事ですので…。」
(遺産相続…?)
どうやら、自分が呼ばれたのはその為だったようだが…。
「古賀さん、夕食前に
「夕食前に、でございますか?」
はじめの問いに、古賀がその細い目を見開く。
「はい。私は今日この場所に呼び出されこそしましたが、それが誰からなのか、どんな要件なのかは一切知らされていませんでしたので…。」
「まさか、そんな
「
「は、はい。今日の夕食時に行われる遺産相続の為の話し合いの事もあり、半年前の事件の真相をぜひ解き明かしてもらわなくてはいけないから、
「そうですか…。」
(という事は、
「申し訳ございませんが、旦那様からそう言いつかっている以上、私の一存では…。旦那様がお目覚めになっておられましたら確認させていただきますので、どうか客間でお待ちくださいませ。」
「分かりました、そういう事でしたら…。」
夕食時に会う、と言っている以上何か動きがあるならその後だろう。
勝手に他人の邸を出歩くのも気が引ける。
この場は大人しく待っていた方がいいだろう、とはじめも一先ず納得してみせた。