緋弾のアリア   ~武偵、杉下京香の事件簿~   作:長財布

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アドシアードと魔剣とマセラティ
第11話


「意味って?」

 

思わず聞き返してしまった。

 

「峰理子の言い方からして貴方の過去を何か知っているようでした。貴方、1年までは強襲科に居ましたよね?それと何か関係があるのかと思いまして・・・」

 

「なんで俺が去年強襲科に居たことを知ってるんですか?」

 

確か彼女には言ってなかった筈だが。

 

「以前担当していた事件の実働部隊の中に貴方の名前がありまして、覚えていたんです。1年生でSランクというのも珍しかったもので」

 

成程な・・・

 

確かに1年の11月まで強襲科に居た。そしてとある事件をきっかけに転科したのだ。

 

俺は引き出しからホルスターを取り出す。中に入っていたのは俺がいつも使っているHK45ではなくデザートカラーのカスタムガバメント、コルト・ファイアーアームズ社のM45A1だった。

 

「これは?」

 

「姉貴が持っていたものです」

 

「お姉さんがいらしたのですか?」

 

俺は首を横に振る。

 

「俺達の1つ上の先輩です。名前は澤代香織って言います」

 

「戦姉弟ですか・・・」

 

今度は首を縦に振った。

 

「澤代香織、当時2年生で確か・・・」

 

「山裾産業川崎工場爆破事件の捜査中に殉職しました」

 

俺が京香の言葉を継いだ。

 

山裾産業川崎工場爆破事件、国内における平成最悪の自爆テロ事件として当時は騒がれていた。

 

化学薬品の製造を行っている山裾産業の最大規模のプラント、川崎工場を突如武装集団が占拠。警察の交渉も虚しく包囲された犯人は工場の化学薬品を使用して自爆という最悪な結末になった。

 

というのは警察の公式発表、実は裏で武偵局が動いていたのである。

 

密かに工場内に潜入し、犯人グループを制圧しようとしていたのだ。その潜入部隊の中に澤代先輩は居た。

 

結果は工場全体を巻き込んだ自爆、遺体は回収されていないが生存は絶望的と言われた。

 

「でも報道では警察の事ばかりで先輩達のことは一切伝えられず、武偵ってその程度の存在なんだなって思ったワケです」

 

京香は何も言わず、静かに俺の話を聞いていた。

 

「俺が武偵高に居るのは一般の大学を受けるために高校卒業の証明を貰う為、だから危険な強襲科から移ったんです。まぁ車が好きだったってのもあって車輛科に行きました」

 

するとずっと黙っていた彼女が口を開く。

 

「話は分かりました。だとるすると今回の事件をこれだけ熱心に捜査しているのは何故でしょう?」

 

俺は1枚の資料を取り出した。前に警察庁の神戸から貰った資料の一部だ。

 

「あの事件、どうもイ・ウーが関わっていたみたいなんです」

 

資料の中にはイ・ウーが関係しているとみられる事件が一覧にして書かれてあった。その中にこの爆破事件を含まれていたのだ。

 

「調べるかどうか迷ったんですが・・・どうしても気になってしまいまして・・・」

 

俺がそういうと京香は「なるほど」とだけ返した。

 

今まで誰にも話していなかった。話したくもなかったが・・・

 

なぜだか彼女になら話してもいいと思った。そして話した事で少し胸の奥の閊えが取れた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無事に傷も完治し、久々に武偵高に行くと早速教務課に呼び出された。理由は察しの通り、捜査中止命令を無視して捜査を続けていた事についての処遇だろう。

 

停学は確定だろうと思っていたが俺に下された処分は厳重注意のみだった。

 

そして捜査の中止命令は撤回されるとのこと。なんとも胡散臭い・・・

 

しかしこれで何の気兼ねなく捜査ができるというもの、結果オーライだ。

 

教室棟へ戻ると1限目は終わり休み時間になっていた。

 

「神沢、退院早々重役出勤とはいいご身分だな」

 

廊下で武藤に声を掛けられた。

 

「そうだぞ、俺は偉いんだ。頭が高いぞ」

 

皮肉たっぷりに言われたので俺も同じように言い返してやった。

 

「ぬかせ・・・それよりお前、アドシアードに出ることになってるぞ」

 

ほれ・・・と言われ見せられたメンバー表にはしっかりと俺の名前が書かれていた。

 

「俺は何も言ってないぞ」

 

だって入院してたし。

 

「沈黙は肯定と同義ってことだろ。じゃぁよろしくな!」

 

武藤は足早に去って行った。

 

「マジか・・・」

 

アドシアードで車輛科はジムカーナのタイムアタックを行う、広い場所にカラーコーンを置いてコースを作り、そこをぐるぐる回ってタイムを競うのだ。

 

ここまでなら各地で行われているジムカーナの競技と何ら変わりないのだがアドシアードでは少し違う、車両があらかじめ用意されているのだ。しかもそれらは車輛科担当講師の江戸川先生のコネで揃えた高級スポーツカーを使う。

 

なんでも普通の車を走らせるだけだと地味で他学科に見劣りするからというしょーもない理由だ。

 

普段見れない高級スポーツカーの性能を直に見てもらう為、生徒にどんな車両でも乗りこなすことができる能力を培ってもらう為というもっともらしい大義名分が一応ある。

 

だが高級車が事故るのが面白いからという理由で見に来る人が一番多い、噂によると去年はドイツのスーパーカー、アウディ・R8がコース脇のガードレールに突っ込んだらしい。その時、周囲のギャラリーはとても盛り上がったそうだ。

 

ハイジャック事件が終わると今度はアドシアードか・・・

 

俺がゆっくり出来る日はいつ来るのだろうか。

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