緋弾のアリア   ~武偵、杉下京香の事件簿~   作:長財布

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第6話

京香の提案に神崎・H・アリアは目を丸くする。

 

「再調査するって・・・武偵殺しはかなり狡猾な犯罪者なのよ。鑑識科や探偵科が捜査し尽くしたのに今更何も出てくる筈ないわ」

 

「そんな事分からないじゃないですか。既に幾つか気になっている事もありますし・・・」

 

その言葉に神崎が反応する。

 

「気になっていることって何よ?」

 

「これまでの事件、手口から見て実行犯は単独でほぼ間違いないでしょう。しかしこれほどの事件に対し捜査陣が有益な情報を何一つとして得られていないということは裏で隠蔽工作が行われている可能性が高い。それも組織的に、かなり大掛かりにです」

 

「つまりは武偵殺しは組織的な犯罪ってこと?」

 

京香は頷いた。

 

「かなり実力のある武偵ばかり狙っている点から見ても恐らくは・・・遠山キンジさんを狙ったのは神崎アリアさん、貴女を誘き出すため、貴女は既に犯人と接触している可能性が極めて高いです」

 

「そんな・・・私が知っている人の中に犯人が居るというの?」

 

「そういうことになります」

 

愕然とする神崎、まぁ無理もない・・・犯人が身近にいるという事実を突き付けられたのだ。

 

神崎は暫く黙り込んだ後、再び俺達の方を見た。

 

「分かった、武偵殺しの調査をアンタ達に依頼するわ」

 

「ありがとうございます。早速調査を開始しますのでこの捜査資料は持ち帰ってもよろしいですね。あっ、そうだ・・・」

 

俺達が病室を出ようとした時、京香は何かを思い出したかのように神崎の方を向く。

 

「どうしたの?何か忘れ物?」

 

「いえ、最後に一つだけ聞いてもよろしいですか?」

 

京香はいつもの人差し指を立てるポーズで神崎に尋ねた。

 

「もう依頼しちゃったし仕方ないわね、答えられる範囲なら答えてあげるわ」

 

「現在拘束されている武偵殺しの被疑者をあそこまで犯人では無いと否定する理由は何でしょうか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか今捕まっている犯人が神崎の母親だったとは・・・」

 

その事実は神崎がどうしてそこまで武偵殺しの逮捕に躍起になっているのかという俺の疑問の答えになった。身内が拘束されている、それも何者かに濡れ衣を着せられてとなるとそうなってしまうのも納得だ。

 

「知り合いに調べてもらいましたが確かに彼女の母親、神崎かなえさんは東京拘置所に収監されています。しかし罪状は空白のまま、武偵局や公安のまで手を広げてみましたが見つけられなかったそうです」

 

「一個人の拘束されている理由がトップシークレットねぇ」

 

かなり胡散臭くなってきたぞ・・・

 

これらの状況を見るに神崎の言っていることはかなり信憑性があると思う。だからこそこの杉下京香が動き始めた訳なんだが。

 

そして俺は彼女の言われるがまま、資料にあった場所を順番に回っていた。

 

捜査はまず現場から、1年の時に教えられた事だ。京香はずっと外を見回している。

 

「武偵殺しの次のターゲットは十中八九神崎さんです。司法を動かす事が出来るということは警察組織に繋がりがある人物、又は組織ということになりますが、そのあたりは後で調べることにしましょう」

 

首都高台場線に乗ってレインボーブリッジへと向かう、トンネルや防音壁には弾痕や衝突痕が残っていた。

 

「レインボーブリッジを過ぎますが、これからどうします?」

 

「武偵校に戻りましょう。戻って考えを整理します」

 

「分かりました」

 

京香に促され俺達は武偵校、探偵科棟内にある彼女の個室へと戻った。

 

「どうぞ」

 

「ありがとうございます」

 

ティーカップを受け取る。最近この紅茶も俺の生活の一部になりつつあるんだよなぁ。

 

「それで、何かわかりましたか?」

 

「まぁ、それなりに」

 

ほぅ・・・と俺は呟く。現場を少し回っただけで手がかりを見つけ出すのだからやはり大したものだ。

 

「何が分かったんですか?」

 

「ありませんでした」

 

「え?」

 

想像していなかった答えに俺は頓狂な声を出してしまう。

 

「なかったんですよ。武偵殺しの手がかりが」

 

「いや、それだと報告書となんら変わりないじゃないですか」

 

俺は報告書を見る。少し皺の寄っているそれは神崎がゴミ箱に放ったもの、彼女ならその報告書以上の事実を見つけてくれると期待していたのだが・・・

 

そんな俺の表情を察したのか、京香は続ける。

 

「どこのビルから見てもルートには死角になる場所がある。それに首都高の監視カメラは500メートル毎、さらにズームも回転も出来ない。そんなものでバスの監視は不可能、それに犯人の計画に私達は含まれていなかったはず、それなのにあれだけの数の無人自動車を動かすのは不可能ではないでしょうか?」

 

「つまりどういう事なんです?」

 

「音声は合成音声、車と銃は自動制御、自動だから犯人がわざわざ監視する必要はない。つまり鑑識科が行った捜査は全くの無意味だったんですよ。犯人は何処で、何をしていてもいい訳ですから」

 

確かに、あの時ぶつけられてしばらく動けなかったとき、ルノーは俺の方を通過してバスに向かった。そしてキンジが頭を上げたタイミングを狙って発砲していた。

 

そんなことが人間一人で出来る筈がない。

 

「それに犯人は既に神崎さんに接触している人物、このあたりを調べていけば真相にかなり近づくはずです。明日はこの辺りを重点的に調べていきましょう、チェックメイトは目の前ですよ」

 

そう言う京香の眼には唯ならぬ自信が宿っていた。

 

しかし次の日、俺達が居たのは彼女の個室でも事件現場でもなかった。

 

朝一番、学校へ行くと掲示板に俺と京香の名前があったのだ。内容は―――

 

 

2年車輛科 神沢恵亮  2年探偵科 杉下京香 

 

至急教務科へ来る事

 

 

という張り紙を見た俺は教務科のある棟へとダッシュで向かったのだ。

 

既に教務科に来ていた京香と共に面談室へと通される。

 

「失礼します」

 

中に居たのは探偵科の高天原ゆとり先生だ。彼女に促され、俺達は先生と向かい合う形で着席した。

 

予想外の状況に戸惑っていると高天原先生がゆっくりと口を開いた。

 

「二人とも、呼び出された理由は分かっていますね?」

 

彼女と共に呼び出されたとなると理由は一つしかないだろう、武偵殺し事件の捜査に関することだ。

 

「武偵殺し、ですか?」

 

京香が俺の代わりに言った。

 

「そうです」

 

高天原先生が頷く、やっぱりな・・・

 

だがどうしてその事件で呼び出されたのか、俺には見当がつかなかった。武偵校の生徒は若干の規定があるものの自由に捜査することが出来る。それが単位の取得にも繋がる訳で学校側がとやかく言う理由は無いはずだ。

 

そして高天原先生が言った言葉に俺は驚愕した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「単刀直入に言います、この事件から手を引いてください」

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