緋弾のアリア   ~武偵、杉下京香の事件簿~   作:長財布

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第7話

「いや、ちょっと待ってくださいよ・・・何で急に?」

 

もう少しで犯人が分かりそうだって言うのに突然の捜査中止命令、当然はいそうですかと言う訳にもいかない。

 

「既に何人もの武偵が武偵殺しによって殺害されています。この事件に首を突っ込むのは危険です」

 

武偵校の先生がよくそんなことが言えたもんだ。

 

俺達の居る東京武偵校は事件の捜査は推奨されている。その辺りはほぼ生徒の自主性に任せているのだ。

 

そんな教務科がわざわざ呼び出して止めろと言うとからには何かかウラの事情があるに違いない。

 

「そんな理由で納得できると思ってるんですか!?本当の事を言ってくださいよ!」

 

「これは命令なんです、二度も同じことを言わせないでください」

 

感情的になる俺とは対照的に先生は冷静だ。いつもはゆるい雰囲気の彼女だが今回は違う、目の奥には深い闇が広がっているかのように思えた。

 

京香はずっと黙ったままだ、どうしてこんな理不尽な要求に黙っていられるのか・・・

 

「これ以上は学校側がフォローできなくなります。ご理解ください」

 

そう言って先生は面談室を出て行った。

 

「フォローって・・・」

 

残された俺と京香、なんとも言い難い居心と後味の悪さだ。

 

京香は部屋に向かった。俺も付いていこうかと思ったがなんだか彼女が付いてくるなと言っているような気がして歩を止めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

呼び出しのせいで一限目は潰れてしまったため二限目から授業を受け午後に、これからは各学科の専門科目の授業になるのだがアパートに帰ることにした。車輌科に行ったところでする事は何もない。

 

倉庫へ向かうと前に黒の日産GT-Rが停まっていた。あんなの乗ってた生徒なんて居たっけかな・・・

 

閉めたはずのシャッターが少し開いている、中に誰か居るのか?

 

警戒しつつ中に入ると俺のインプレッサを眺める一人の男性が居た。

 

そこそこ高級そうなスーツを着た長身の男性、サラリーマンとは思えないが社長や実業家ともまた違うように見える。

 

そもそもそんな人間がこんな所に居るわけがない。

 

顔立ちは若くもなく年寄でもなく、イケメンというよりハンサムという表現の方がしっくりくるか。

 

何というか・・・その・・・強襲科にいる不知火がイイ感じに年取った姿、が俺の頭の中ではイメージがぴったりだ。

 

「なにしてるんです?」

 

俺が尋ねると男性は此方を向いた。

 

「キミが、神沢くん?」

 

「そうですけど・・・」

 

質問に質問で返されたが突っ込むと面倒な事になりそうなのでまずは相手の質問に答えることにする。

 

俺は目の前に立っている人物に不信感を抱く。

 

武偵という職業をやっていると全く知らない相手が自分の事を知っているという状況はかなり厄介である。すでに情報の量で相手の方が上手と言うことを示しているからだ。

 

この人、絶対に一般人じゃない・・・

 

「そんなに警戒心を剥き出しにしなくても・・・私、こういった者です」

 

男性は懐から名刺を取り出す。そこに描かれていたのは桜のマーク。

 

「警察庁から?えぇと、かんべ・・・そn―――」

 

「たけるです」

 

若干イラつきながらすぐさま訂正を入れる神戸、いやだって・・・初見だとそう読んじゃうでしょう。

 

「そんで神戸さん、警察庁のエライ人が俺に何の用ですか?」

 

「ちょっと世間話でもと思ってね」

 

若干キメ顔で言った。なんかムカつくなぁ・・・

 

「・・・帰ります」

 

「ちょっ!?ちょっと待って!」

 

神戸は車に乗り込もうとする俺を慌てて引き留める。

 

「警察庁だか警視庁だか知りませんけど俺は忙しいんですよ!」

 

「武偵殺し事件の捜査中止命令が出たのに?」

 

俺のキーを回す手が止まった。

 

「どうしてそれを?」

 

「まぁ、立ち話もアレだからドライブしながらにしましょうか」

 

神戸は外へ向かう。俺はと言うと、まだ彼への警戒心を解いたわけでは無いが俺たちの事を調べているようなので仕方なくついて行くことにした。

 

GT-Rの内装は高級感とスポーティさが合わさったとても洗練されたデザインのように思える。価格は確か1000万前後、警察庁って結構金貰えるんだな・・・

 

「さて、じゃあ出発するよ」

 

VR38エンジンの唸り声を聞いて俺は本能的に手摺を握りしめる、この人、俺と同類だ。

 

神戸がアクセルを踏み込むと体がシートに押さえつけられた。GT-Rは武偵校の敷地内を猛スピードで駆け抜ける。

 

「一連の武偵殺し、我々も調べててね。まぁそちら側にとってはあまりいい事ではないだろうけど」

 

「でしょうね」

 

武偵局側が調べているのに足がつかない、そんな状況でもし警察側が犯人を逮捕してしまったら・・・武偵局側の面目は丸潰れどころの話ではない。

 

「それで、警察側は何か掴んでいるんですか?」

 

「君たちに捜査の中止を指示したのは武偵局だ。なんでも上から圧力を掛けられたらしい」

 

「圧力?」

 

「そう、そしてその元を辿っていくとずっと前から公安が追っていたある組織に行き着いた」

 

俺は神崎の病室で京香の言っていたことを思い出す。彼女の推理は当たっていた訳か。

 

「イ・ウー、それが組織の名前。大戦中に枢軸国が作った戦闘員を育成する組織らしくてね、日独の潜水艦のコードネームが由来らしい」

 

「つまり武偵殺し事件はその組織の構成員が起こしていると?」

 

「そういう事・・・詳しいことはこの資料に書いてあるから」

 

神戸は俺に封筒を渡す、中にはUSBメモリが1つ入っていた。

 

「それを杉下さんに渡して、彼女ならきっと食いつくと思うよ」

 

「杉下さんに・・・」

 

封筒を眺める。武偵殺しの捜査は教務科から止めろと言われているが。

 

しかし犯人をそのまま放っておく訳にもいかない、「武偵は決して諦めるな」だ。

 

「僕から君たちに捜査の依頼をしたい。受けてくれるね?」

 

覚悟は出来た。俺は神戸の目を見て言う。

 

 

 

 

「分かりました、依頼を受けます」

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