鈴木悟の異世界支配録   作:ぐれんひゅーず

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プロローグ

「......か、体が動かん」

「い、痛いよう...うぅぅぅ」

「な、なんでこんな事に」

「モモンガさん...あなたは」

 

 

 かつてモモンガであった死の支配者(オーバーロード)の目の前には四人の異形種が倒れていた。

 周囲にはなにも無く、腐敗した大地や、砂漠、荒野が広がっており。

 死の支配者(オーバーロード)の後ろには巨大玉座が在り、近くには遺跡の残骸らしきものが転がっていた。

 

 もはやなんの抵抗も出来なくなった四人の前で死の支配者(オーバーロード)の眼窩は赤黒く光り怪しく揺らめかせながらトドメを刺そうと骨だけの右腕をあげようとし......

 

「ちょ、モモンガさん待って」

「いやぁぁ、やめてよう」

「なんでこんな事すんだモモンガさん」

「あなたに一体なにがあったんですか?訳を言って下さい」

 

 死の支配者(オーバーロード)の目の前の異形種の四人。

 

 ペロロンチーノ

 ぶくぶく茶釜

 ウルベルト・アレイン・オードル

 たっち・みー

 

 ユグドラシル時代ではこの四人を相手にモモンガ一人ではどう転んでも今のように圧倒する事は出来ない。

 お遊び重視と言われているアインズ・ウール・ゴウンでも数少ないガチビルド勢である四人を相手に死霊系に特化しロールプレイを重視した浪漫ビルドの死の支配者(オーバーロード)では瞬殺されたとしてもおかしくはない。

 

 しかし死の支配者(オーバーロード)からすればこの結果は当然であった。

 

 まず目の前の四人はユグドラシルを引退する時に、己の最強装備と予備装備、個人で持っている様々なアイテムの全てをモモンガに、あるいは宝物殿に譲っており。死の支配者(オーバーロード)も「売ってオッケー!」と言われていた記憶を持っている。つまり今四人はなんの装備もしていない裸状態である。

 

 逆に死の支配者(オーバーロード)の装備は自身の最強装備に加え、ギルド・アインズ・ウール・ゴウンが入手していたゲームバランスを崩壊させかねないほどの破格の効果を持つワールドアイテム全てを持っている。

 

 ワールドアイテムの効果をワールドチャンピオンであるたっち・みーがスキルをタイミングよく使用することで防ぐことが可能といえど複数のワールドアイテムを相手に無装備で凌ぐのは不可能であった。

 

 様々な状態異常に加え瀕死の四人が攻撃や逃げる等の行動を起こせるにはまだかなりの時間が必要と判断した死の支配者(オーバーロード)は四人の呼びかけに応える為か、なんの感情も篭もっていない声で今までの出来事を語りだした。

 

 

 ユグドラシルのサービス終了の瞬間、ナザリックごとこの異世界に転移した事。

 NPCが意思を持って自ら動き出した事。

 アバター(死の支配者(オーバーロード))の姿だが、仮想現実ではなく現実である事。

 ただ一人残った自分が去っていったメンバー全員を背負う意味を込めて「アインズ・ウール・ゴウン」と名乗っていた事。

 アインズ・ウール・ゴウンの名を広めギルドメンバーを探す為にこの世界を支配下に置いた事。

 仲間を探す内に人間としての感情が無くなってきた事。

 捜索を行っていた現地人が捜索自体に疑問を持っていると聞いた時に本人及び家族、住んでいた都市ごと消し去った事。

 その後も全て破壊、殺害、蹂躙し続け、ナザリックを維持する資金も無くなり崩壊した事。

 そして、世界に生あるものは居なくなり朽ちた都市跡等にアンデットが徘徊するだけとなったと。

 

 死の支配者(オーバーロード)は静かに、ただ記憶にある事実のみを語っているようだった。

 

 

 四人は絶句し、唯々死の支配者(オーバーロード)を見上げる。

 

 しばらくしてペロロンチーノが問いかける。

 

「モモンガさん、それじゃあなんで俺達を殺そうとするんですか?」

 

「そうだよ、モモンガさんは私達を待ってたんじゃないの?」

 

 二人の悲鳴にも似た問いかけに残りの二人も同じ想いだと強い眼差しで死の支配者(オーバーロード)を見つめる。

 

 

 

 

 

 

 「理由か」 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「それは」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「お前達が生きているからだ」

 

 そう答えた死の支配者(オーバーロード)の赤黒く光っていた眼光が激しく揺らめき、濃縮された憎しみだけが篭もっているようだった。その姿は生者を憎むアンデッドそのものであった。

 

 そして、四人は光に包まれ世界から消滅した。

 

 死の支配者(オーバーロード)は残骸に囲まれた玉座に座り、瞳に灯っていた光が消え眠ったように俯く。

 

 新しく現れた命あるものが消え、世界は静寂に包まれた。

 

 死の支配者(オーバーロード)は君臨する。

 

 この何も無い、アンデッドのみが存在する世界で。

 

 意思を持つものも無い、何も生み出すことの無い世界で。

 

 誰に認識される事もなく。

 

 不老である死の支配者(オーバーロード)はただ一人で。

 

 

 

 永遠に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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