鈴木悟の異世界支配録   作:ぐれんひゅーず

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誤字報告ありがとう御座います。


14話 定例報告会

「フンガアアア!」

 

 奇怪な大声を発しながら、男が一人だけの空間で訓練用の剣を両手に持ち、藁人形に向かってやたらめったら叩き付けていた。

 

「フンガ!フガフガフンガラガッガ!ウンガ!ウガウガウンガラガッガ!ウンガアアア!」

 

 最後の一撃に、内から沸きあがる全ての負の感情を叩きつけると、藁人形の耐久値が限界を向かえ地面に刺さった杭が折れる。

 人払いをした訓練場でボロボロの無残な状態の人形を血走った眼で睨み「ぜえ、ぜえ」と息を荒げる。

 

 

「クソ!クソ!なぜこの俺がこんな惨めな目にあうのだ」

 

 暴れている男は『バルブロ・アンドレアン・イエルド・ライル・ヴァイセルフ』。リ・エスティーゼ王国第一王子であった。

 

 ゲヘナの際、子飼いの兵を所有していなかったため王城に籠る事を余儀なくされ、評価を下げてしまった。反対に第二王子のザナックは兵を引き連れ自ら市中を回り、民を守る姿を見せ付けていた。そのせいで自分を推していたウロヴァーナ辺境伯がザナックに鞍替えしてしまったのだ。

 

「小賢しいデブが!あいつだって私兵を持っていなかったのに、レエブン侯に借りた兵を使っただけではないか!」

 

 それに伴い、城内での兵やメイドの侮蔑とも嘲笑ともつかない視線を幻視して苛立っていた。

 評価を上げたのはザナックだけではない。

 王も戦士長と戦士団を連れ自ら出陣していた。

 更に第三王女のラナーも自費で冒険者を雇い、王都を守るために動いていた。

 何もしなかった自分だけが評価を下げる結果となった。

 幸いなのは六大貴族の一人で最大の武力を有するボウロロープ侯は第一王子側だ。ボウロロープ侯の娘を娶っているから当然なのだが。

 

「父上の評価が上がるのは別に良い。だがあの二人が評価を上げたのが我慢ならん。……クソがぁ!」

 

 ザナックは自分と王位継承を争っているので当然面白くない。

 継承権の無いラナーは、自分が王位に就いたら自分にとって都合の良い貴族に娶らせる予定だ。すでに相手とは話し合いが済んでいる。あの女は自分の駒であり、政略の道具なのだ。ラナー個人の評価が上がれば自分の好きなように出来なくなる可能性がある。

 なんとか自分の価値を高める方法が無いかと考えるが良い案はなかなか浮かばない。

 

「こんな時こそアレが必要だというのに。八本指の奴らと連絡がつかんとは……」

 

 アレとは『ライラの粉末』。別名黒粉と呼ばれている麻薬である。使用する際は水に溶かして飲用し、とても安価で多幸感と陶酔感をもたらす。しかし、依存性が高く副作用があり、大抵の服用者は神官の魔法が必要なほど中毒性が強い。禁断症状の弱いものであるため、王国では黒粉はほぼ黙認され続けている。

 黙認されてはいても麻薬は麻薬。貴族、ましてや王族が使用しているのが知られれば悪評が立つ。

 バルブロは八本指から賄賂だけではなく、黒粉も受け取っていた。

 自身が直接会う事はなく、こちら側の下級貴族を通してだが。

 「副作用がない」という触れ込みで販売されており、バルブロも黒粉の本当の危険性は知っていなかった。

 モノがモノなだけに完全な依存症になるほど使用してはいなかったが、副作用で脳が少しずつ小さくなっているのに気付くことはなかった。

 

 バルブロの苛立ちの原因はまだある。

 

「ラキュースといきなり現れたどこの馬の骨とも知れん冒険者が恋仲だなどと……メイド共め、ふざけおって。そんな訳あるか」 

 

 最近王都の一部で流れ始めたらしい噂話を城内のメイドが話しているのを偶然聞いてしまった。

 バルブロはラキュースに好意を持っていた。

 戦士としての技量があり、王族では随一の強さを持っていたバルブロは、貴族でありながらアダマンタイト級にまで上り詰めたラキュースを自分のモノにしたかった。ラナーに劣らぬ美貌と美しい肢体を欲望のままに貪りたいと思っていた。

 

 悪魔騒動が起きてからバルブロに降りかかる災難に、苛立ちはいつまでたっても収まらない。

 藁人形はまだまだある。バルブロは憎い相手を思い浮かべながら人形に剣を叩きつける。

 

「ウンガアアアアア!」

 

 

 

***

 

 

 

 ナザリック地下大墳墓第九階層 プレアデスの部屋

 

「ふう……」

「あら、ナーベラル。御疲れのようね」

「当然でしょユリ姉様。モモ……アインズ様にお仕えするのですもの。片時も気は抜けません」

「……それ……分かる。でもアインズ様と一緒……嬉しい」

「そうなのよシズ。アインズ様のご命令のたびに、この胸に湧き上が」

 

 ピシッ!ピシッ!

 ユリが教鞭で机を叩く。

 

「はい。おしゃべりはそこまでにして、プレアデス定例報告会を始めます」

 

 円形のテーブルを椅子に座り囲い、報告会という名のお茶会を行っていた。

 

「全員が揃うなんてぇ、初めてじゃないかしらぁ」

「カルネ村に居る事が多かったから前回は来れなかったっすけど、今回は私も参加出来たっす」 

「それもこれもアインズ様が『ふくりこうせい』の充実の一環で始められた休暇のお陰ですわ。御方の為に働けないなんてあんまりだと思った時期もあったけど、こうして姉妹が揃う事が出来るのは嬉しいわね」

「そうねソリュシャン。アインズ様に感謝しないと。……エントマ。お茶菓子を用意してくれる?」

「はあいぃ」

 

 それぞれに紅茶が配られテーブルの中央にお菓子が置かれる。シズには専用の高カロリー飲み物(チョコ味)が用意された。

 

「オーちゃん。聞こえてる?」

『はい。ユリお姉様』

「声だけの参加だけどオーちゃんもよろしくね」

『はい。私も桜花聖域でお茶を飲んでお姉様方のお話を聞いていますね』

 

 末妹の声が天井から全員に聞こえる。

 

 ナザリック地表部やカルネ村の見張りぐらいならプレアデスに代わり、他の僕とも交代出来る。

 が、末妹のオーレオール・オメガは第八階層にある桜花聖域に勤めて階層間などの転移門の管理を行っている。

 また、アインズの持つギルド武器は破壊されるとギルド崩壊を招くため安全のために彼女が預かって管理していた。彼女の代役を勤めれる僕は今のところいないため桜花聖域を離れる事が出来なかった。

 

『それにこの間アインズ様がここに来られた時、いつか私も自由に外に出れるようにすると仰って下さったわ』

 

 それが我々僕の仕事を奪うのではなく、ただ心身を休めさせるための優しさだと理解しているプレイアデス七人は歓喜に満たされる。いつか七姉妹全員が顔を合わせてお茶会が出来る日を夢見て。

 もっと至高の御方のために働きたい。という思いはなかなか拭えないが。

 

 エントマがグリーンビスケットをポリポリとかじりだし、それに続きお茶菓子に手を出す姉妹達。

 恐怖公の眷属を食べないのは周りを気遣ってのことだろう。

 

「エントマは今日はいつものあの男の腕は食べないのね?」

 

 ソリュシャンが何気なしに疑問に思ったことを口に出す。

 

「人間ってぇ、右利きが多いからダイエットに丁度良い硬さなんだけどぉ、最近よく支給される男のは脂肪が多すぎてぇ。美味しいんだけどねぇ」   

「……アインズ様を……不快にさせた人間」

 

 シズの言う人間が誰なのかは全員が知っていた。ナザリックで今一番の玩具的存在で扱われている男だ。

 

「当然の報いね。アインズ様を不快にさせた者には。……でも大丈夫なの?人間ならすぐに壊れたりしないのかしら?」 

「そのあたりはぁ、デミウルゴス様がちゃんと手を打ってるみたいぃ」

 

 至高の御方より命を受けたデミウルゴスに落ち度などある訳がない。

 死なないように逐次治癒魔法を施し、発狂などで理性を手放せないよう精神耐性を施された状態でナザリック五大最悪の永久ループに処されている。その間に肉体の一部を切り取られて、エントマなどの人間を好んで食べる僕にも喜ばれている有様だった。

 

「面白いのがぁ、未だに自分が何故こんな目に遭っているのか分かっていないみたいぃなところかしらぁ。デミウルゴス様もある意味感心してたわぁ。うふふぅ」

 

ピシッ!ピシッ!ユリが教鞭で机を叩く音が部屋に鳴り響く。

 

「そろそろ始めるわよ。ボク……いえ、私、副長ユリ・アルファが議事進行を務めます。今回の報告は主に三件。ナーベラル」

「はい。私の方は冒険者ギルドを通じた護衛依頼で旅をしました。……もちろん、アインズ様と共に」

 

 最後の方をやたら強調したナーベラルに周りから「羨ましい」、「自慢してる」、「ズルイっす」などの野次が飛ぶ。

 嫉妬の声を気にせず、キラキラとエフェクトを放ちながら話を続ける。

 最初はアインズ様の活躍を熱弁していたが、途中から自分主体の話になりだした辺りでユリが止める。

 

ピシッ!ピシッ!

 

「ナーベラル!もういいわ……次はルプーね」

「はいっす。私からはカルネ村の件っす。え~と、大規模小麦畑をマーレ様の魔法で収穫を早め一次収穫が終わり、大量の穀物をエクスチェンジ・ボックスにブチ込み金貨に替えたっす。大量っす。パンドラズ・アクターの試算ではカルネ村に投資した額も余裕で賄えるそうっすよ」

 

 エクスチェンジ・ボックス。通称シュレッダー。なんでも査定し、投入した物の材料の価値の分だけユグドラシル硬貨を排出する。

 商人系の特殊技術を持っていると高額査定されるためパンドラズ・アクターにギルメンの音改(ねあらた)に変身させていた。

 価値ある絵画などはただの絵の具とキャンバスとして査定されてしまう。では、鉄鉱石などの含有量や産地に差があればどうかとアインズは色々調べた。

 結果、純度や質の良い物は査定額が上がった。レベル100のマーレが魔法を使用して育てた小麦や野菜は最高品質となり、ユグドラシル金貨の確保の目処がたったのだ。

 「さすがアインズ様」。全員が至高の御方の素晴らしさをかみ締めている。

 

「「……………………」」

 

 ルプスレギナ以外の全員が突然黙りこむ。ソワソワと聞きたい事ががあるけどなかなか言い出せないような感じだ。

 

「?…………!!はは~ん、さては皆エンちゃんのことが聞きたいんっすね?あっ、カルネ村のエンちゃんっすよ」

 

「「!?」」

 

 ビクッと全員が体を震わせる。

 イタズラ好きなルプスレギナなら「ニヤァ」と意地の悪い笑みでも浮かべそうなところなのに、なぜか微妙そうな顔をしている。

 

「聞くのは止めておくわ。だいたいの話は知っているから」

 

 ユリが皆の気持ちを代弁するかのように話の続きを止める。

 

「いやあ~良かったっす。私もこの話はあんまりしたくなかったんすよね、言えば言うほど羨ましくて夜も眠れなくなっちゃうっすから」

「……私は同じ宿に泊まる事もあるのに、そんな空気になったこともないわ」

「それは任務だからでしょうぅ」

「それはそうだけど……うぅ」

 

 凹み出したナーベラルを尻目にソリュシャンが話の方向を変える。

 

「そういえば希少な生まれながらの異能(タレント)を持っている男が居たわよね?」

「ンフィーレアって少年の事っすね。ずっとお婆ちゃんと一緒にポーション作りで篭もってるっすね……そういえば最近は村に来た赤毛のブリタって女と一緒にお酒を飲んでるっす。不可視化して聞いてたっすけど酔っ払ってて何言ってるかよく分からなかったっすけど、なんか愚痴を零してて女に慰められてたっすね」

「……もしかして……アインズ様に……不満?」

 

 表情を変えずに冷たい目になったシズが問いかける。

 

「ああ……それは違うっすよ。アインズ様に対しては感謝してるようだし憧れも持っているみたいっす」

「研究がうまくいってないからじゃない?」

 

 ナーベラルがそれらしいことを言うが、頻繁にカルネ村に行けていない者には分からなかった。

 村によく居るルプスレギナはそもそも研究所に篭もりっ放しのンフィーレアと碌に話したこともなく、また強力な生まれながらの異能(タレント)持ちで重要人物と言われていても、人間的に興味が無かったので詳しく知る気も起きなかった。

 

ピシッ!ピシッ!

 

「カルネ村の話はここまでにして次に行きましょう。最後の議題は……私達がいただいたアインズ様からの御褒美についてね」

 

 アインズはゲヘナで頑張った御褒美にプレアデスを一人ずつ執務室に呼び、個人面談の形を取り、何を褒美にするか聞き取りを行っていた。

 

「まずは私から……と言っても実はまだ受け取っていないのよね。どうしても不敬と思えてしまって。アインズ様からも「焦って決めなくて良い」と言われたんだけど」

 

 長女の性格からしたら「そうなるよね」と、全員なんとなく分かっていた。

 次にナーベラルが報告する。

 

「私も同じようなことをアインズ様に言いました……そんな私に下賜されたのが…………コレよ」

 

 椅子から立ち上がり早着替えを使ったナーベラルの装いがメイド服から変わる。

 

「おお!」「あらあら、うふふ」「良く似合ってるっす」

 

 それは漆黒を主体に金と紫の刺繍が入ったローブに、仄かに赤みのある漆黒のマント。

 冒険者モモンが纏う鎧の魔術師版と言える風であった。

 

「決められない私にアインズ様が提案されたの。しかもアインズ様が以前使用されていた物よ」

 

 美しい形の胸を張ってドヤ顔で披露するナーベラル。

 

 アインズはアダマンタイト級になったのにナーベの装備が貧相なままなのを気にかけていた。

 王都で他のアダマンタイト級の装備品を見て、現地で問題にならない範囲をある程度見極めた。

 ユグドラシル時代に自分が使っていた装備をパンドラズ・アクターに手を加えさせ、モモンの装備に合わせたのをナーベラルに渡したのだ。

 ミスリル製フルプレートメイル程度が上級扱いなので、二つ上の遺産級(レガシー)で、プレアデスが着ているメイド服には劣るが現地からしたら破格の装備だろう。

 ついでにファイターのクラスを持つからと殴打用の杖も一緒に貰っていた。

 

 お古と言えば聞こえは良くないが、ナザリックの配下である者にそれは当てはまらない。

 つまり「羨ましい」である。至高の御方が使用されていた物となれば生唾モノ、たとえ鼻をかんだティッシュであろうと宝物に値する────かもしれない。

 

「素晴らしい物をいただいたわね。…………エントマはどうなの?」

 

 ユリの問いかけにグリーンビスケットを食べるのを止め、動かない表情から嬉々とした気配を漂わせる。

 

「私はぁ、お願いして抱っこしていただいたのぉ。そのまま昔の冒険話を聞かせて貰いましたぁ」

 

 エントマはその時の情景を本当に嬉しそうに話し出す。

 至高の御方の過去の冒険話、頭を撫でられたりなど自慢するように語る。

 

「そう。良かったわねエントマ」

「うん。えへへぇ」

 

 ユリにとって可愛らしく喜んでいる妹の姿が微笑ましい。

 

「妹のシズはどうだったのぉ?」

「…………違う。貴方が妹。…………私もエントマと似ている…………執務をされるアインズ様のお膝の上に…………座った」

「執務中って、アインズ様のお仕事の邪魔にならなかったの?」

「…………問題ない…………むしろ書類選考を手伝えた」

「貴方がぁ、妹ぉ」

 

 ユリの心配に答え、エントマの主張には断固拒否の姿勢を見せる。

 意見を言えた案件は一つだけで、しかもその後は体の向きを変え、アインズと向き合う形で胸に顔を埋めていたのだが。両手両足を椅子に座るアインズの後ろに回して引っ付く様を、シズ推しの当番メイドがキラキラした眼で見ていたが、それはまた別の話。

 ちなみにシズが手伝った書類選考とはパンドラズ・アクターからの案件で、完全ではないが現地の技術を取り込んだ、今後ナザリックに必要になるだろうマジックアイテムの開発であった。

 アルベドとデミウルゴスは保留にしていた。理由は明白で、開発に当たり宝物殿の資源の使用も書かれていたからだ。アインズは傍にいたシズに相談してみたところ。

 

「…………新しいマジックアイテムの開発は必要…………だと思います。…………でも至高の御方が集めた物を浪費するのは…………」

 

 アインズはしばらく考えてから許可の判を押した。補則に「希少、数量の少ない素材の使用にはアインズの許可を得る事」として。

 そしてちゃんと自分で考え、意見したシズの頭を優しく撫でたのだった。

 

「エンちゃんもシーちゃんもやるっすね。次は私がいくっすよ、驚くっすよ。私はアインズ様に私の上に乗ってもらったっす。いやあ、あの時は激しくて汗びっしょりだったっすよ」

「「!!?」」「なっ!?不敬よ!不敬!」

 

 驚きの声が上がる中、シズだけが冷たい眼でルプスレギナを見据えている。

 

「…………ルプスレギナ。その言い方には語弊がある…………私は第六階層で見ていた」

 

 シズの言い分はこうだ。

 アインズとルプスレギナが第六階層の森で散歩していた。

 途中狼の姿になったルプスレギナにアインズが乗り、巨大なジャングルの中を疾走していたのだった。

 

「なあんだ、見られてたっすか。私が褒美に選んだのはアインズ様とのお散歩っす。まあその後私の体を御手自らブラッシングしてもらったっす。あんまりにも嬉しくて、思わずアインズ様のほっぺたや首筋をペロペロ舐めちゃったっすけどね」

「やっぱり不敬よ!」

 

 ユリの咎めを「テヘペロ」、と頭に拳を当てておどける。

 舐めてる際、気付かずに人間形態になってしまっていたのを話すかどうか迷っていた。

 

「最後は私ね。…………私はアインズ様に私の中に入っていただいたわ。ああ、今思い出してもアインズ様のお体の感触がまだ私の中に残っているよう…………」

「「!!??」」「貴方も不敬よ!」「ソーちゃん。パねえっす」

 

 頬を染め、恍惚の表情で天を仰ぐソリュシャン。不敬と言いながら下の妹二人の耳を塞ごうとワタワタする長女。

 

「あら、ユリ姉さん。不敬って言うけど私はそうは思わないですわ」

「えっ!?」

 

 ソリュシャンはアインズに願った時の事を雄弁に語る。

 

 

 

 

 

 

「私の望みは…………アインズ様の玉体を洗わせて頂きたく思います」

「ほえっ!?」

 

 ソリュシャンは以前、アインズがある用途で使っていた三吉君を嫉妬の余り隠してしまったことがあった。

 自分の方が玉体を綺麗に舐め回せると確信しているからこその願いで、前回は却下されたが今回はある秘策があった。

   

「アインズ様!」

「な、なんだ?」

 

 却下される前に切り札を切ろうと瞳を潤ませながら迫真の演技をする。

 

「アインズ様は常々仰られておられます。私達ナザリックの者達はアインズ様にとって子のような存在だと」

「ああ、うむ。…………確かにそう思っているが…………」

「ならば、娘が父親の背中を流したいと思うのも自然なことではないでしょうか?」

 

 

 

 結局アインズはソリュシャンの願いを断りきれなかった。

 実際アインズは皆を愛しており、大事な存在であるのは真実なのだが。ここで無下に断ると自分の発言が嘘であったように取られかねないと思ってしまった。

 

 そしてソリュシャンと二人で家族風呂に入り、上半身を残し本来の粘体形態でアインズの体を包み込む。

 

「ソ、ソリュシャン。私は今マジックアイテムを装備していない。あまり強力な酸は…………」

「分かっております、皮膚を傷付けず汚れだけを溶かせるよう調整しますわ」

 

 半透明の粘体で酸を分泌しながらアインズの全身を同時にマッサージしていく。

 

「…………おお。これはなんとも、気持ちの良いものだな」

 

 少しばかり不安だったが、足の裏や指の一本一本、全て同時にマッサージが可能なのはスライムならではだろう。

 あまりの心地よさに目を瞑り身を任せるアインズ。

 

 かたやソリュシャンは見られていないのをいい事に、表情がヤバイ程欲情していた。

 

(ああ、アインズ様のお体がとうとう私の中に。も、もう我慢出来ませんわ)

 

 このまま全力でアインズの男性部分を攻め立てようとしたが、彼女は出来るメイド。分別を弁えていた。

 

(い、いけない。危うくあのお二人と同じようになるところだったわ。度が過ぎるとこの栄誉をもういただけないかも。アインズ様に嫌われるかもしれないことは絶対に避けないと)

 

 今回は娘として奉仕するから許可されたこと。だから男性部分への刺激も他よりも弱めて「洗ってるだけですよ」感を出している。

 

「頭も綺麗にしますので少しだけ息を止めていて下さいませ」

「ん、分かった」

 

 荒くなった息を整えてアインズの顔を態々胸に埋めるように体の中に入れていく。

 

 取り込んだ獲物の喉を酸で焼いてしまった場合など、自身の体の器官の一部を獲物に挿入する事で窒息を防止出来たりするが、至高の御方にそんな事する筈がない。苦しくならないよう瞬く間に頭と顔を綺麗にしていく。

 

「…………ふう。正に頭から足先までの全身マッサージだな。見事だ」

「ありがとう御座います。私が一番御方を綺麗に洗えると証明出来たかと、ではこのまま湯船までお運びしますわ」

 

 アインズを半透明の粘体に入れたままズリズリと移動し、そのまま湯船に入る。

 アインズは浴場に入ってからここまでほとんど体を動かすことがなく、正に至れり尽くせりだった。

 

 ソリュシャンは人間の姿に戻り、アインズの腕に寄り添うように湯の温かさを堪能する。

 本当は湯よりもアインズの感触を堪能していたのだが。 

 

 

 アインズはソリュシャンの裸に、自分のある部分が膨張しないように様々な妄想をしていた。

 一番効果があったのがパンドラの痛い姿を思い浮かべた時だったのになんとなく微妙な気分になっていた。

 

(しかし、ソリュシャンの技というか、スライム風呂は凄いな。全身磨かれたようにツルツルだ。これなら今後も世話になるのも良いかもなぁ)

 

(うふふ。成果は上々。今は娘として接して、いずれアインズ様が私を女と意識されれば…………うふふ)

 

 ソリュシャンは正妻の座を狙っている訳ではなく側室狙いだった。

 ナザリックで正妻を狙っているのはアルベドとシャルティアであり、アルベド派の方が多かった。

 自分は気が合うシャルティアを推している。

 

 

 

 

 

 

「…………なるほど。そう言って許可を貰ったんすね。やっぱソーちゃんパねえっす」

「…………ズルイ…………私もアインズ様のお体…………洗ってあげたい」

「次の御褒美を頂ける時かしらぁ」

「わ、私もアインズ様と…………」

「全く貴方は…………そういえばオーちゃんから全く反応がないわね。オーちゃん!どうしたの?大丈夫?」

『…………はっ!?ごめんなさいユリお姉様。私には刺激が強すぎたようで、お姉様方の褒美の話あたりから気を失っていました』  

「「…………」」

 

 初心すぎる末の妹に誰も、なにも言えなかった。

 

 

 

 その後、ソリュシャンから褒美の話を聞いたシャルティアがアインズに褒美として『添い寝』を願い出た。

 シャルティアとアルベドの褒美を保留にしていたアインズは『娘』としての願いを拒みきれず、「一緒に寝るだけだぞ。絶対だぞ」と念押ししてベッドに入った。

 

 どこから聞きつけたのかアルベドもシャルティアと同じ願いを、同じように言ってきた。

 アルベドだけダメと断るのは流石に可哀想と思ったアインズは「本当に寝るだけだぞ。分かっているか」と念押ししてベッドに入ったそうな。

 

 後にアインズは物思いにふける。

 

(いやぁ、かなり不安だったけど二人共大人しくしてたのが意外と言えば意外だったな)

 

 実際は、リング・オブ・サステナンスを外したアインズは猛烈な睡魔に襲われ、すぐに寝入ってしまった。

 睡眠を必要としないシャルティアは御身に引っ付き「ハァハァ」していた。

 アルベドは起こさないよう憧れの『だいしゅきホールド』を形だけでも試そうと、やっぱり「ハァハァ」していた。寝ている相手を『だいしゅきホールド』に持って行くのはあまりに困難で、結局諦めざるを得なかったが。

 

 デミウルゴスの忠告が効いていたのかそれ以上のことはしなかった二人。

 それでも満足したのか、機嫌良く自らの階層を見回るシャルティアの姿があった。

 腰が抜けてしばらく立てなかったアルベドは、自室で身悶えながら仕事をしていた。

 

 

 

 

 




 ソリュシャンの本性は汚い色をしているみたいだけど、半透明になるぐらい出来るでしょう。
 ユリは何を望んだのかな?膝枕からの耳掃除とかかな?
 今日もナザリックは平和です。

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