鈴木悟の異世界支配録   作:ぐれんひゅーず

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サブタイ通り人間になってどういう状態か確認していきます。
完全な独自解釈なので深く考えないように。
アインズ様の心境としては人間と異形が入り混じった半端状態。


2話 現状確認

 ナザリック地下大墳墓9階層アインズの部屋

 

 アインズは現在ベッドに腰掛け自分が使用できる魔法やスキルの確認をしていた。

 己の中に意識を向けてみれば、まず魔法は全て使える事が分かる。

 スキルに関しても<アンデット創造><絶望のオーラ>等が代表的な種族スキル。

 <The goal of all life is death/あらゆる生ある者の目指すところは死である>等の職業スキルも問題無く使える。

 これらは種族LV40、職業LV60の合計100であり<星に願いを/ウィッシュ・アポン・ア・スター>を使った時に自分が願った想いを指輪が正確に汲み取ってくれた結果かもしれない。

 もう二度と手に入らないであろう超々希少な課金アイテムを使うのに躊躇いも少なからずあったが、今回自分に使ったのは、将来アインズ自身の手で友人の子供を殺してしまう可能性を危惧しての事であり、ナザリックの者を守る為に指輪を使うと決めていたのにも反しないだろう。

 ただ、アンデットの基本特殊能力は完全に無くなっているようだ。これには自分が願った結果とはいえ、弱体化してしまったと言わざるを得ない。

 

 ユグドラシルでは見た目の悪さから人間種が圧倒的に多かったが基本的に異形種の方が強い傾向にある。その理由がステータスの高さと、種族特性にある。

 アンデットの特性は<クリティカルヒット無効><飲食不要><毒・病気・睡眠・麻痺・即死無効><死霊魔法に耐性><肉体ペナルティ耐性><酸素不要><能力値ダメージ無効><エナジードレイン無効><ネガティブエナジーでの回復><精神作用無効><闇視>(ダークビジョン)

 弱点として<正攻撃脆弱Ⅳ><光攻撃脆弱Ⅳ><神聖攻撃脆弱Ⅳ><殴打武器脆弱Ⅴ><神聖属性・正属性エリアでの能力値ペナルティⅡ><炎ダメージ倍加>がある。

 ユグドラシルでは全てに耐性を付ける事は出来ないが、炎が弱点なのに耐性を付けているように虚偽の情報を掴ませたりしてのPvPの勝率は高かったのだ。

 

 パンドラズ・アクターに()()人間用の装備を宝物殿から見繕うように頼んでいた。

 そう・・・。現在パンドラズ・アクターはナザリックにはおらず、デミウルゴスと共にいる。

 

 アインズは深い溜息を今や存在する口から吐き出し先程の会議を思い出す。

 

 

 

「・・・も、申し訳ありませんアインズ様。・・・・・・私はすでにアインズ様の方針に逆らっております」

 いきなりのデミウルゴスの発言に意味が分からず問いかけた所。デミウルゴスの成果の一つの羊皮紙の事だった。

 アインズは聖王国両脚羊(アベリオンシープ)の皮と聞いており、混合魔獣(キマイラ)の亜種だと思っていたが。・・・本当は人間と亜人の皮だったと改めて説明された。

 思いもよらなかった内容に頭をふら付かせてしまった為、デミウルゴスが自分の命で償うと言い即座に行動を起こそうとするのを慌てて止め、とりあえず落ち着かせた。

 アンデットの時ならば人間の皮を剥いでいようと特に気にしなかったかもしれないが今は違う。

 顔を青褪め、意気消沈した様子のデミウルゴスを見る。デミウルゴスも慈悲深いアインズが人間から皮をはぎ取っているなどと知れば心を痛めると考え聖王国両脚羊(アベリオンシープ)、と誤魔化していた。

 自分の事を気遣ってくれたのもだが、そもそもこれは組織のトップが今まで許していた業務を急遽禁止といきなりの方針変更だ。リアルで営業職に就いていた頃に、自分も勝手な上司に辟易していたのを思い出す。

 アインズにデミウルゴスを責める気持ちは毛頭無かった。部下の失態は上司の責任(今回は失態とはいえないが)、ならばどうすれば良いか共に考える為にも詳しい内容を報告させた。

 

 

 皮を剥ぐ以外にも、デミウルゴスの牧場では様々な実験が行われていた。

 例えば、羊皮紙に関しては年齢や性差などで品質に差が生じるのかどうかや、治癒魔法実験の効果測定。

治癒魔法実験では、対象者が治癒を拒絶した場合は傷が残る場合があるということ、切断した部位は通常は治癒魔法をかけると消えてしまうが細切れなどにして形状を大きく変化させておいたり<保存>(プリザベイション)を掛けると欠損部位が治ったあとも残る。

 異種交配実験をする予定であった等。 

 人間の心も持ったアインズにはかなりキツイ内容だったが。後始末として

 

 牧場に連れられてからの記憶を消し。それぞれ元々住んでいた場所に眠らせた状態で帰すと決めた。記憶を消された期間の問題があるが、アベリオン丘陵には様々な亜人種が住んでおり、ローブル聖王国の人間とも度々争っているとの事で、牧場が出来てからの期間も短い為『他の種族に攫われていた』という記憶に書き換える・・・もっと良い方法があるかもしれないが今はこれぐらいしか思い浮かばない。必要な人材として

 記憶消去にアインズ。

 魔力譲渡にペストーニャ。

 デミウルゴス含む補佐に配下の悪魔

 <記憶操作>(コントロール・アムネジア)の魔力消費が激しい為、<記憶操作>(コントロール・アムネジア)<魔力譲渡>が使える傭兵モンスターを補佐として召喚。

 

 決定の形となったところに、パンドラズ・アクターがアインズの代わりに行くと言い出した。

 自分の責任だと一度却下したが、人間になったばかりのアインズがいきなりナザリックの外に出るのは危険と皆から懇願された為に渋々ではあるが納得せざるを得なかった。

 

 牧場の今後の扱いとしては撤去せずに隠蔽工作を施し、他の者に発見出来ないように指示した。

 そもそもこの施設が出来た経緯が、ユグドラシル経由の素材がほぼ入手不可能になった為、この世界に一般流通している羊皮紙では第一位階魔法が限界。それの代用品探しをデミウルゴスに求めたからだ。

 第三位階まで込められる羊皮紙は今後も必要になる為の処置だ。

 尤も、村々を虐殺するような外道等を牧場行きとするのにアインズ自身躊躇いは無い。

 そういった輩はナザリックに少なからずいる食人種や人間を玩具と見ている者に渡すのも良いと思っている。

 デミウルゴスを代表として種族やカルマ値により残酷な行為を好む者達の趣向を完全に上から抑えるのも戸惑ってしまう。アインズにとっては大事な子供達なのだから。

 

 

 牧場の後処理の話が終わったところ。

「アインズ様。今回の会議の詳細をセバス、ソリュシャンに私から伝えましょうか?」

 

 アルベドからの問いにアインズは右手を顎に添えながら。

「・・・そうだな。・・・ユリ。セバスは私が人間になった事を知って反対すると思うか?」

 セバスはナザリックの中では珍しいカルマ値300の極善だ。人間に対して初見から下等と罵ったりはしない。心配はないと思っているが同じく『善』のカルマのユリなら自身の上司でもあるし参考になるだろう。

 

「はい!セバス様であれば反対などされないでしょう。・・・むしろお喜びになるかと」

 

 ユリの返答に分かってはいたが安心した。・・・だが

「セバスならそうだろうな。・・・ナーベラル。ソリュシャンはどうだ?」

 

 ソリュシャンは確かカルマ値ー400の『邪悪』だったはず。同じプレアデスの三女でありカルマ値も同じナーベラルならソリュシャンがどう思うか分かるだろう。

 

「はっ!至高の御方がお決めになられた事にソリュシャンも反対などありえないと思われます。」

 

(そういう事じゃないんだが)と頭を掻きながらアインズは僕の自身に対する盲目とも言える忠誠心にまいってしまう。もう少し自分の考えや意見を言ってきてほしいと。

 蜥蜴人(リザードマン)の一件でコキュートスが自分の意見を示してくれたような成長を他の皆にも表れるのを期待して待つしかないかもしれない。

 それと人間を玩具と認識している者には制限により少し窮屈な思いをさせてしまうだろうから、なにか望む褒美を与えて贖罪替わりをした方が良いかもしれないと今後の課題に加えた。

 

「うむ。・・・特に問題は無さそうだな。内容が内容なだけに<伝言>(メッセージ)で伝えるのも問題があると思う。二人には情報収集が目的で目立った行動を慎むよう伝えてある、今の業務が一段落してから直接伝える方が良いと思うが。・・・アルベド」

 

「はっ!あの二人であれば問題は無いかと」

 

 アルベドの了承も得られたし、問題は無いだろうとアインズも安心した。・・・この時は

 

 

「アインズ様。私とパンドラズ・アクターが牧場に赴き準備を進める間、ペストーニャに御身の御体を調べられては如何でしょうか?御身になにかあれば一大事ですので」

 デミウルゴスの提案にアインズ自身、今の体が具体的にどうなっているか調べるのは重要と思っていた為。会議の解散後ペストーニャに診て貰う事にした。。(デミウルゴスが現場に向かう際、なにやらアルベドに囁いていたが何だったのだろうか?)

 結果・・・・・・

 

 

「申し訳ありませんアインズ様。私では御身の状態を正確に判断する事が出来ません。・・・あ、わん」

 ペストーニャに診て貰ったが、はっきりとは分からないとの結果だった。

 

 詳しく聞くと、どうやらアインズが腹の中に装備していたワールドアイテムが原因かもしれないと。

 通称『モモンガ玉』11個ある『ギルド:アインズ・ウール・ゴウン』が保有するワールドアイテムの中でギルドメンバーに認められ唯一()()となった紅玉。(指輪を使うのにこれを装備したままなのをアインズはすっかり失念していた)

 『モモンガ玉』は今も玉としての形があるかは分からないが、アインズの中に確実に在るようだ。意識を向けるとその力を行使するのも可能だとアインズにも認識出来た。

 肝心の人間か否かがはっきりしない。理由の一つが『不老』になっているかららしい。

 ただ、人間が持つ内臓や生きるのに必要なモノは人間そのものだがオーバーロードの力が使える人間種なんてユグドラシルには当然存在しない。

 これも指輪に願った『皆と共にありたい』の結果だろう。

 ナザリックの皆は異形種ばかりで寿命は基本無い。唯一(オーレ・オール・オメガ)は人間だが彼女は不老として創られている。

 そんな中ただの人間になってしまえば50年程で皆とお別れになってしまう。・・・それは御免だ。

 彼女も不老でありながら『人間』なのだ、ならば自分も人間と定義してもなんの問題も無いだろうとこの話はとりあえず終了とした。

 

 

 

 会議の事を振り返っていると扉からノックの音が鳴る。

「入っていいぞ」

「失礼します。アインズ様。御食事をお持ちしました。」

 

 扉を開けて入って来たのはワゴンカートを押したアインズ様当番のシクススであった。

 会議の後、腹を空かせてしまったアインズは牧場の後始末を任せたデミウルゴス達に申し訳ないと思いつつ食事の用意を頼んでいた。

「ありがとう。シクスス」

 

 彼女は嬉しそうにしながら寝室にあるソファーセットに座ったアインズに微笑みつつテーブルに皿を置いていき。コーヒーを淹れてくれる。

 

 サンドイッチである。具材は玉子、ハム、ツナマヨとありきたりだがリアルではこれでも一部の富裕層しか口に出来ない嗜好品だ。ナザリックにはリアルには無いもっと高級な料理があるのだが、それはまた今後の楽しみとして転移して最初の食事はこういった軽食から楽しもうと思っただけである。ちなみに紅茶も勧められたが今回はコーヒーを選んだ。

 

 それにしても旨そうだ。アインズは逸る気持ちを抑えてゆっくりと味わう。

(う、美味い。美味すぎる)ナザリック基準でいえば簡素な食事だが、一つ一つが生涯食べた事が無い程美味かった。コーヒーもコクがあり深い味わいがありお替りする。リアルの支配者層の者もこれほど美味なモノを味わった事があるのだろうか?・・・いや無いだろう。

 満面の笑顔で平らげたアインズは十分に満足したように「ご馳走様」と手を合わせてシクススに感謝を伝えた。料理長にもお礼を伝えておいてほしいと加えて。

 

 

 一方シクススは望外の想いで給仕を務めていた。オーバーロードであった頃のアインズは食事を必要とせず、飲食自体不可能であった為、これまでメイドとして食事のお世話をする事が皆無であった。料理長も初めて至高の御方の為に料理を振舞える事にはち切れんばかりの意気込みをかけていた。

 シクススは今ナザリックで一番の幸福を味わっている気分であった。以前の御方は骨であり、その表情を読み取るのは難しい。なんとなく嬉しそうな気配等を感じる事は出来たが。今の食事を楽しんでおられる御方の輝かしい笑顔。ナザリックの食事を初めて味わっておられての喜びに違いない。自分もナザリックの食事は世界最高だと思っているがそれらは最後まで我等を見捨てず御一人で膨大なナザリックの維持費を稼いでおられたアインズ様の尽力から出されているのだ。感謝しない日は無い。

 今後アインズ様当番を務めるメイドは皆御食事の給仕を勤めてアインズ様の笑顔を拝見する事が叶うだろう。・・・しかし初めての体験をされている今の笑顔を堪能できるのは私一人だけ。その事実がシクススの全てを歓喜と幸福に満たし天にも昇ってしまいそうだった。 

 

 アインズはお替りしたコーヒーを飲みながら、・・・ふと部屋にある姿見用の鏡に目が行った。

 

 ・・・・・・(似合ってない。笑える程似合ってないな)

 そこには豪奢な漆黒のローブを纏った男がいる。

 これが骸骨姿であれば誰が見ても魔王然とした姿に見えるのだろうが。いかんせん人間の顔では着せられてる感がハンパ無い。

 神器級(ゴッズ)で着心地は最高なのだがずっとこのままでいるのは恥ずかしかった。

 とりあえずパンドラが戻り、人間用に色々耐性の付いた装備を持って来てもらうまでの間着替えようと、手持ちの装備から適当なのを取り出してみる。

 

 たいした装備ではないがここは安全なナザリックの9階層の自室だ。あまり拘らずゆったりとしたズボンとYシャツ風の装備を選ぶ。

 

「お召し物を替えられるのですね。お手伝いします」

 シクススが音もなく高速でアインズの傍まで詰めてきた。

「あ、いや・・・」

 

 アインズは以前にも着替えぐらい自分でする、と言った時にメイドが泣きそうな(実際泣いてたけど)顔をするので折れて彼女達にされるがまま受け入れていた。

 悩む。ここで断ればまた泣かしてしまうだろう。以前は骨の体だから割りかし平気だったが・・・

 

「・・・分かった。では、手伝ってくれるか?」

「はい!」

 

 嬉しそうに元気良く返事するシクススを見て心が温まるようだ。

(人間になり完璧な支配者の演技はもう無理そうだが、それでも皆の上に立つ者として支配者らしく振舞うのにも少しずつ慣れていかなきゃな)アインズがそう思いつつシクススに着替えを任せていると・・・

 

 

「・・・ゴクリ・・・」

 

 目の前のシクススからハッキリと聞こえる音が聞こえてきた。

 

 前をはだけ、両肩から外され半分ほど脱がされた漆黒のローブ。そこには・・・

 

 「・・・え!、ちょっ・・・」

 上も下も丸出しの支配者の姿があった。

 

 あわててメイドの魔?の手から逃れローブを羽織りなおし虚空から装備を探し取り出した。

 出て来たのは『ステテコパンツ』特殊効果はないが一応の防御力を持つなんでもない下半身装備。

 アインズが即効でステテコを履きなんとか落ち着いた所で

「んん・・・シクスス。続きを頼む!」

 もはや威厳もへったくれもないが、何もなかったかのように振舞う。

 

「・・は、はい。では失礼します」

 

 アインズは『恥ずか死ぬ』と悲しくなりながら、今度は割りと普通に(顔が赤いが)作業を開始するメイドに着替えを任せる。

 

 殆ど無心でいたアインズの着替えが終わり鏡を見て。・・・リアルでもありそうな、だが当時と比べると遥かに上質な出で立ちに満足する。途中なにか変な事があったがもう忘れる事にしとこう。・・・うん・・その方が良い。

 

(・・・?)

 

 

(・・・???)

 

 またもアインズは違和感を覚えた。(・・・?)

 

 

 

(あぁ!)

 違和感の正体に気付いた。・・・ズボンを()()に装備()()ている事に。

 ユグドラシルでは重ね着は出来ない。外装を好きに替える事は出来るが、装備効果を持ったモノを同じ部位に装備す事は不可能なのだ。

 防御力のあるステテコの上に同じく防御力のあるズボンを履いている。・・・効果も重複している。

 ユグドラシルでも異世界に転移してからも起こりえない現象が今起こっている。

 

 (なぜ)と考える。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「!!」

 一つの憶測を立てる。

 この異世界ではユグドラシルのシステムが反映されている。

転移当初の実験で魔法詠唱者(マジック・キャスター)が剣を持つ事は出来ても振ろうとした瞬間に取り落としてしまったように。クラスを持っていない者はそれに準ずる行動が起こせない。それはNPCも同様だ。

 この世界の魔法詠唱者(マジック・キャスター)は拙いながらも剣を振る事自体は可能で、ユグドラシルのシステムに完全には縛られていない。

 魔法に関しては変わらないが、俺だけシステムの縛りから一部抜けた。・・・なぜか?

 答えはこの鈴木悟の肉体だろう。

 恐らくだが、御伽噺にある『六大神』『八欲王』には人間もいただろうが奴等はシステムから外れてはいなかっただろう。

 なぜなら『人間種』であって『人間』ではないから。

 そう。『人間種』という『アバター』という存在であったからユグドラシルの住人としてシステムに縛られていたのだろう。

 そして、オーバーロードの魔法とスキルを持つ事でシステムに縛られているが。今の俺はリアルの『鈴木悟』。純粋な人間だ。一部分はユグドラシルの理から外れているのだろう。

 ユグドラシルのシステムを変えるなどワールドアイテム二十の一つ<永劫の蛇の指輪/ウロボロス>を使わないと不可能だろうが・・・アインズ専用のワールドアイテム『モモンガ玉』が影響したのかもしれない。

 

 色々考えてみたがあくまで仮説。なんの確証もないし、証明する術もない。

 同じ方法でNPCの装備強化が出来るかもしれなかったが、NPC達は今の姿に誇りを持っている。創造主に創られた姿を変えようとはしないだろう。

 

 それにアインズにすればこれは破格な誤算だった。人間になる事で弱体化した分を装備で賄える算段が付いたのだ。この喜びを守護者達に教えるのが楽しみでしかたなかった。

 

 ルンルン気分で無くなった耐性をどう装備で揃えようか考えていると扉からノックの音がした。

 アインズが考え事をしている間。邪魔にならないよう静かに控えていたシクススに頷き対応してもらう。

 

「アインズ様。アルベド様とシャルティア様が参られました」

 

 ちょうど守護者達に朗報を伝えたかったアインズはすぐさま入るよう指示した。(なんてタイミングが良いんだ。さすが守護者統括に守護者最強だ)

 

「アインズ様。突然の訪問誠に申し訳ありません」

「アインズ様。シャルティア・ブラッド・フォールン。御身の前に」

 

「ああ。良く来てくれた。ちょうど二人に会いたかったのだ」

 

 普段のアインズであれば行き過ぎた好意を持つ二人にこのような言い方はしなかっただろう。もう少しやんわりとした言い方をするはずだった。しかし、今のアインズは早く話したくて失言を失言と気付かぬまま歓迎してしまった。・・・アルベドが大事な用事だとシクススを扉の外に追い出したのにも気付かぬまま・・・

 

「!・・・やはり、アインズ様も同じ想いだったのでありんすね!」

「くふぅぅぅ!嬉しいですわ。アインズ様ーー」

「え?・・・・・」

 

 突如稲妻の如く突貫してきた前衛LV100二人にベッドに押し倒された絶対支配者。

 

「ちょ!おま・・・待っ・・・・・・」

 

 支配者の制止も虚しく魔法詠唱者(マジック・キャスター)の力では二人に抗う事も出来ず。天井に居た八肢刀の暗殺蟲(エイトエッジ・アサシン)もアインズ自身により席を外させていた。

 部屋には獰猛な肉食獣二人と子羊一人。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しばらくして部屋に飾ってあった花瓶の足元に花弁一つ・・・ハラリと落ちていった。




牧場の人達はとりあえず解放。施設は残し今後活用。

肉の体持っちゃったらこうなりますよね。
特にアルベドが行動を起こした理由を次話で投稿する予定。

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