鈴木悟の異世界支配録   作:ぐれんひゅーず

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鈴木悟の卒業!!後悔はしていない。



3話 サトルの望み?

 

 

 

「くふふふ・・・とうとうアインズ様と結ばれましたわ。ついに私とアインズ様との御子が。・・・くふー」

「あらぁ。なにを勝手な事を言ってるのでありんしょうか。アインズ様はわ・た・しを愛して下さいましたのに」

「あなたこそ何を言っているの?吸血鬼であるあなたは身ごもる事なんて出来ないでしょう?」

「それとこれとは別でありんす。アインズ様はわたしで満足されたのでありんしょうから」

 

 俺の左右で二人がいつものようにいがみ合っている。

「・・・ああ・・・やってしまった。タブラさんとペロロンチーノさんになんて謝れば良いんだ!?」

 

「!!・・・アインズ様。タブラ・スマラグディナ様であれば娘を嫁に出すようなものかと。必ず祝福して下さいますわ」

「ペロロンチーノ様も反対されないと思いんす。それに・・・これはわたしの意志でした事でありんすし」

 

 二人の言葉を聞いてもやはり俺の心は納得出来なかった。

 襲われたとしても、大切な友人の子供に手を出してしまったんだと。

 皆を守ると決めたのに・・・これでは・・・はぁ。

 

 現実逃避したい気持ちを抑え二人に告げる。

 

「二人共聞いてくれ・・・俺はナザリック皆の事を愛している。・・・だが・・・親が子に向けるような感情だと思っている。それは二人に対しても・・今も変わっていない」

 

「「!!・・・」」

 俺の語る言葉に二人が泣きそうな顔で見てくる。

 

「だが・・・いつかこの世界の全てを知り、ナザリックが安泰になった時には二人の気持ちに応える事が出来るかもしれん・・・その時まで待ってくれないか?・・・男として情け無い返事で申し訳ないが・・・それまでは以前のような関係で居たい」

 

 言っててかなり情けないが、これが今のアインズの偽らざる心境だった。やはり二人は友人の子。女としての魅力はあってもそういう対象として見るのは心のどこかで拒んでいた。時間が経てばこの心境にも変化が訪れるかもしれないと。特に自分が設定を変えてしまったアルベドには申し訳なく思う。

 

「・・・うぅ。アインズ様がそう仰るなら」

「その時を楽しみにしているでありんす」

 

「・・・二人共。・・・すまない」

 とりあえず納得してくれた二人に微笑んで告げると、またしても飛び掛ろうとした二人に・・・

「それはそれとして二人共しばらく謹慎な」

 

 

「「ふぁ!!」」 

 

 まぁ、かわいそうだけど皆に示しがつかないしな。俺、襲われた側だし・・・

 

 

 

 

 ナザリック地下大墳墓第六階層 闘技場

 

 アインズはアルベドとシャルティアとの事を切り離し。重要な案件として体を動かして以前との差異を確かめる為に闘技場に転移した。

 そこではハムスケとデスナイトが蜥蜴人(リザードマン)のザリュース、ベンゼル?だったか、に武技を教わり訓練している所だった。アインズは四人に近づいて行き・・・

 

「ん?・・・あの御仁は誰だろうか?」

「ありゃ人間か?・・・さぁなぁ、ここには見たことねぇ化物ばっかだしなぁ・・・」

「某も知らない御方でござるな」

 

 三匹にはアインズだと分かるはずもないのも仕方ない。まだ伝わってないのだろう。

 デスナイトだけが召還主として理解出来るのか「グオォォ」となんとなく嬉しそうに唸る。

「訓練ご苦労。私も体を動かすのに交ぜてもらおうと思ってな」

 

 言いつつ、先に自身がアインズであること。元は人間で魔法により姿を戻したことを告げた。詳細は語らずに。ハムスケと蜥蜴人(リザードマン)にはユグドラシルの知識は無いのだし。

 蜥蜴人(リザードマン)は驚きつつも「アインズ様であれば・・」と納得しているが。ハムスケはやたらやかましく「さすが殿でござるよ」と興奮しっぱなしである。

 

 

 冒険者モモンの姿になり、しばらく一緒に素振りや模擬戦を繰り返した結果。

 ハムスケと共に武技<斬撃>を使えるようになった。

 内心「おお」と喜び、戦いの動きも全く問題が無かったのでアインズは訓練を打ち切る。他の者は休憩を挟みながら励むよう伝えて自分の部屋へと向かう。

 ちなみにデスナイトは武技を習得出来ていない。

 予想はしていたがユグドラシル由来の者はこの世界独自の技術は習得出来ないのかもしれない。デスナイトにはもうしばらく訓練を続けてもらうが期待しない方が良いだろう。不可能と分かるだけでも収穫なのだから。

 

 

 

 

 

 ナザリック地下大墳墓9階層 アインズの執務室

 

 アインズはデミウルゴスから<伝言>(メッセージ)を受け、後十分程で帰って来ると連絡を受けて待っていた。

 ノックの音が執務室に響く。今日の当番のフォワイルがデミウルゴス、パンドラズ・アクター、ペストーニャの訪問を告げてきたので入るよう促す。

 

「「「ただいま戻りました」」」あ、わん」

 

 三人同時に跪いたのを見てから、全員をソファーに座るよう勧める。

 並んで座る三人の対面に自身が座り全員分の飲み物をメイドに頼む。

 

「まずは私のワガママで面倒を掛けた事、すまないと思っている」

 頭を下げた事に対しとんでもない、といつものやりとりが始まるが今回の件はアインズのワガママだ。特にデミウルゴスには謝罪を受け容れてもらわねば、アインズ自身納得出来ない。

 少し問答があったが、最終的に受け容れてもらえたので胸の痞えが取れる思いだ。

 

「では報告致します。・・・アインズ様の望む通りに差配する事が出来ました。捕らえていた人数もまだ少なく、傭兵モンスターをお借り出来たので速やかに事を運べました」

 デミウルゴスの報告に胸が若干痛みつつも無事終わった事に安堵した。

 

「ところでデミウルゴス。今回の方針にお前自身や配下の悪魔は不満に思わないのか?」

「とんでもありません。我々は至高の御方に仕える事こそ望み。・・・たしかに私などは悪魔故人間の悲鳴などに愉悦を感じますが、そのような感情を抑える事は何の苦もありません。それに・・・アインズ様は愚かな者にまで慈悲を与えるつもりはないのでしょう?」 

 

「そうだな。私は聖人君子ではないし、そう成ろうとも思っていないさ」

「ふふ・・それでしたらそういった愚か者を牧場。またはこちらに廻していただければ部下達も喜びましょう・・・もっともアインズ様の決定に意義を唱える者はこのナザリックには皆無ですが」

 

「・・・ペストーニャ。プレアデス達も何か言っていなかったか?」

「はい。皆アインズ様の事を十分に理解を示しておりました・・・あ、わん・・・ただ」

「うん?」

「ナーベラルが少し心配かと思われますわん。あの子はナザリック外の者を特に見下す傾向にあります、演技もうまく出来ないようですわん」

「ううぅん。別に見下すなと強制する気はないんだがな。ある程度の演技で構わないんだが・・・あまり皆のストレスになるような事は強制したくない。あくまで無理のない範囲で構わないと全員に通達しておいてくれ」

「畏まりましたわん」

 

「デミウルゴス。そもそもナザリックの者はなぜあれほど人間を嫌っているのだ?・・・私やお前達の創造主は元人間だと教えたにも関わらず。カルマ値や種族によるだけなのか?」

 

「そうですね・・・至高の御方が人間であると知り、人間に対して僅かな共感を持つ者もいます。しかしやはりナザリック外の者は下等と見なしていますね。カルネ村の人間達はアインズ様に感謝の気持ちを持っているようなので例外としまして・・・後はあのナザリックに土足で踏み込んできた輩の原因もあるでしょう」

 

「うん?・・・ああ。1500人の討伐隊の事か」

 

 かつてユグドラシルでも伝説となったギルド:アインズ・ウール・ゴウンを討伐せんとナザリックに押し寄せて来た1500人のプレイヤー(傭兵NPCも居たが)。

 あの時は八階層で全滅させたがその際、第一から第七階層の守護者や領域守護者は一度殺されている。その時の記憶を持っている事は確認済みだった。

 それに、ユグドラシルには異形種は少ない。1500人の中にも殆どが人間種で異形種はいたかどうかも分からない程だった。

 当然だ。そもそもギルド:アインズ・ウール・ゴウンはPKに晒されていた異形種救済から始まったギルドだ。異形種を狩る人間種。その人間種を狩るPKKをしていたのが我等がギルド。その方法や後の復讐も、悪ふざけ好きな濃いメンツばかりだからか悪辣で陰険な心を折るような非情な手段を徹底的に行っていた。

 人間種に嫌われるのはある意味当然である。人間種が圧倒的に多い為ユグドラシルでは悪のギルドの烙印を押されてしまった。まぁそれはそれで皆悪の華として楽しんでいたが。

 つまり人間種に攻め込まれた事に憤りを感じているのだろう。

 

「以前にも説明したがプレイヤーとはリアルでの人間。人間種というアバターを持った私と同じ人間が行った事。この世界に住む者達とはなにも関係はない・・・まぁ気休めにしかならないだろうがこの事実を皆に共有しておいてくれ」

 

「畏まりました」

 

 (あんまり納得してないみたいだな。まぁ気休め程度になれば幸いと思っておくか)

 

「ところでアインズ様。アルベドの姿が見えませんが如何なされたのでしょう?」

 

 デミウルゴスの問いにアインズの額に嫌な汗が流れる。

「あ・・・ああ、アルベドはシャルティアと一緒に謹慎中で今は五階層にいる」

 

 それを聞いたデミウルゴスの宝石の瞳がキラリと光り、「なるほど」口角が吊り上がるのが見えた。

「ん?・・・」

 

「デミウルゴス・・・お前何か知っているな?・・・いや、二人に何を吹き込んだ!!」

 

 アインズのジト目に晒されたデミウルゴスは不意に目を逸らし

「な、なんの事でしょうか?」

 

「デミウルゴス~!?」

 アインズは身を乗り出しデミウルゴスの逸らした目を正面から見据える。

 

「・・・申し訳ありません。私がアルベドを焚き付けました」

 

「はぁ。・・・なぜそのような事をしたんだ?」

 

「はっ。・・・アインズ様が人間に成られた為に早急にお世継ぎを残して戴かなければと・・・」

 

「そういうことでしたか。・・・あ、わん。デミウルゴス様の心配は杞憂ですわん。アインズ様の身に寿命はありません。不老ですからわん」

 

「はっ!?」

 

 (お前の仕業かよ!)どうやらアルベドとシャルティアの暴走はデミウルゴスの早合点が原因のようだ。アインズは自分の身の変化をナザリック全員に至急伝えるよう指示する事にした。ついでに謹慎中の二人のフォローを頼む。デミウルゴスなら上手くやるだろう。

 

「改めて言っておくぞ。私が自らの意思でお前達を置いていくことは無いとな。約束しよう」

 

「アインズ様。ありがとう御座います。浅はかな事をしてしまい、申し訳ありません」 

 宝石の瞳をハンカチで拭いつつ涙ながらに告げてくる。見ればペストーニャも泣いていた。パンドラは・・・埴輪顔なのでよく分からんな。喜んではいそうだが。

 最後にパンドラズ・アクターが話があると言うので他を労って退室させ二人っきりになる。

 

「パンドラ。改まって話とはなんだ?」

 ふだんオーバーリアクション過多な黒歴史が今は随分と静かなのに不安を覚える。(ふだんからそうしてくれてると良いんだけどね)

 

「アインズ様の本当の御望みは何なのでしょうか?」

「・・・?」

「私はアインズ様に唯一創られた領域守護者!他の者と違いナザリックの平穏が望みではありません」

 

 いきなりの発言にパンドラの真意が分からずアインズは戸惑うばかりに。

「どういうことだ?」

 

「私が創造されたのは創造主の心を癒すため。アインズ様の幸せ(・・)こそが我が望みです」

 

 俺の幸せ。・・・そう言われてもピンとこない。

 

 ナザリックの皆を守る事。

 かつての友人に再び会いたい。これが自身の望みなのはハッキリしている。

 だがそれで自分が幸せなのかと問いかけるも・・・分からない。

 ディストピアな世界で家族も恋人も居なかった鈴木悟には幸せがなんなのかイメージ出来なかった。

 

「分からない・・・私自身の幸せがなんなのか・・・」

 

「ならばご自身の。ナザリックの支配者としてではなく、アインズ様自身の望みはどうでしょうか?」

 

 望み!ナザリックを除いて考える俺自身の望み。

 

 

「・・・この美しい自然のある未知の世界を見て回りたい・・・そう思う」

 

「・・・「ギルド長はもっとワガママを言ってくれれば良いのに」、宝物殿にて至高の御方々が話されていた言葉です。アインズ様には周りを気にせず御自分の望む様にして戴きたい・・・それが私の願いでもあります」

 

 思えばナザリックのNPCは創造主に似ている部分が見受けられる。ならば目の前のパンドラはアインズの一番の理解者かもそれない(黒歴史含めて)。

 

「ふっ。・・・はははは。そうだな、私の幸せを探して行くのも良いかもしれないな・・・ありがとう・・・パンドラよ」

 

Wenn es meines Gottes Wille(我が神の望みとあらば)

 

 (これだよ)禁止したはずのドイツ語をここぞとばかりに披露してくる。二人の時はまぁ許すけど、それ以外では禁止。オーバーアクションも控えるよう再度厳命しておく。「はぁ」

 

(ワガママに・・・か)

 

 こんな話までしたのだ、もうパンドラ相手に取り繕う必要は無いんじゃないか?パンドラはナザリック一の知恵者のデミウルゴスとアルベドと同等の頭脳がある。

 空いた時間等に政治、経済等、支配者に必要な知識を内密に教えてもらうのが俺にとって最善なんじゃないだろうか。

 自身が器じゃないと諦めず高めるのは悪いことではない。

 いつか本当の意味でもナザリックのトップとして在るように。

 あらゆる面で優秀なパンドラを創って良かったと初めて思えた瞬間かもしれない。

 

 

 

 

 ナザリック地下大墳墓五階層 氷結牢獄

 

 本来は極寒の外部よりなお寒いのだが、反省室として平温に保たれている牢獄に二人の守護者がいる。

 

「ねぇシャルティア。ふと疑問に思ったんだけど?」

「なんでありんすか?アインズ様を妄想して楽しんでいるのに」

 

死体愛好家(ネクロフィリア)であるあなたがオーバーロードのアインズ様に欲情するのは分かるけど、今のアインズ様は人間になったのよ」

「はっ!なにかと思えばそのような事でありんすか。確かにオーバーロードであった御姿は超絶イケメン。この世の美そのものでありんしたが・・・わらわが好いているのはアインズ様自身。姿形は関係ありんせん・・・それに変わらぬ圧倒的なあの気配・・・あ、また下着が・・・」

 

「それよりおんしの方はどうだったでありんすか?デミウルゴスに言われて身篭る事は出来たでありんすか?」

「良く聞いていたわね・・・残念ながら御子は授かれなかったわ・・・でも次こそは・・・くふふふ」

「へえ~。さすがはサキュバスでありんすな。そういう事も分かるでありんすか。次は二人っきりで・・・ぐへへへ」

 

 色々妄想で盛り上がっている二人がデミウルゴスから忠告され、自粛させられるまであと少し。

 ただ二人共、一度関係を持てた事実に満更でもなかったという。




アインズにとっては、まだNPC達はそういう目で見れない状態。今後心境の変化が起こるかもね。
3期7話の恐怖候とニューロニストのええ声にビックリ。


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